恋愛短編小説集   作:松平 蒼太郎

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三作目はBL。可愛い男の娘が登場します。


幼馴染の男の娘にガチ恋されて困ってる

「お兄ちゃん、早く付き合ってよ」

 

いつの頃からか、妹がそう急かしてくるようになった。なぜこうなったのかは、俺にも分からない。だが、返す言葉はいつも決まっている。

 

「無理。俺、ノーマルだから」

 

そう、俺はノーマルだ。物心ついたときから、そのように自負している。だというのに、コイツときたら…

 

「えー、つまんない。幼馴染さんのこと嫌いじゃないんでしょ?だったら、付き合う一択じゃん」

 

もちろん、この場面においての『付き合う』は男女としてのお付き合いという意味だ。間違っても買い物に付き合うとか、そういう類いの意味ではない。

 

たしかに妹の言うとおり、俺には幼馴染がいるが、そいつは…

 

「なんで男と付き合わなきゃいけないんだよ。普通に勘弁してくれ」

 

俺には幼馴染♂がいて、幼稚園の頃から付き合いがあり、今も同じ高校に通っている。いわゆる腐れ縁というやつだ。

 

だが当然ながら、そいつに対して恋愛感情は一切持ち合わせていない。したがって、付き合うことなど全く考えられない。

 

「お兄ちゃん、告白されたんでしょ?幼馴染さんに。早く返事しなよ。監禁されるよ?」

 

「なぁお前、普段どんな同人誌見てんの?お兄ちゃんに一回見せてみ?」

 

「あ、いいの?男の人同士のお付き合い(意味深)について知りたい?仕方ないなー、じゃあ今日の夜あたしの部屋に…」

 

「ごめん、嘘。俺、明日は学校で朝練あるから早く寝なきゃいけないんだった」

 

俺、逃げの一手。腐女子と化した妹の話なんぞ真面目に聞いていたら、冗談抜きで夜が明けてしまう。

 

「じゃあ寝ながら聞けばいいじゃん。可愛い妹が隣で囁きながら寝かしつけてくれるんだよ?役得じゃん」

 

無理だよ(迫真)。何が悲しくて腐女子と化した妹のBL講釈を聞きながら寝ないといけないのか。それならまだ羊の数を自分で数えたほうがいい。

 

「もう…そうやって逃げてばかりじゃ、問題は解決しないよ?幼馴染さんにはどう返事するつもりなの?」

 

「いや、返事はした。男と付き合う気はないって、はっきり断った。まぁ、『僕は諦めない』って捨て台詞吐かれちまったけどな」

 

幼馴染♂は俺の至ってまともな返事を聞いてなお、俺への攻勢を緩めない。つらい、つらすぎる。早いとこ、誰かあいつを止めてはくれまいか。

 

「え〜…幼馴染さん、可哀想。あんなにお兄ちゃんラブなのに、あんまりだよ…」

 

黙れ。お前は自分のBLライフを充実させたいだけだろ。

 

「お前なぁ、他人事だと思って…俺は普通の可愛い女の子と付き合いたいの。分かる?」

 

「え、でもお兄ちゃんのクラスの人も、『お兄ちゃんと幼馴染さんがくっついたら〜』って言ってるよ。友達から聞いたもん」

 

ダメか(諦め)。どうやら周りを見渡しても、俺の味方はいないらしい。外堀まで勝手に埋まってるなんて誰が予想できようか。

 

と、その時俺の携帯が鳴った。幼馴染♂からだ。

 

「あ、幼馴染さんからライン?なんて言ってきてるの?」

 

「『今からデートしない?』だってさ…はぁァァァ…」

 

「もう!無駄に深いため息つかない!うざいから!とにかく、せっかく休みの日に誘ってもらってるんだから、早く出かける準備!ほら、早く!」

 

妹に急かされまくって渋々、俺は簡単な身支度を整えて家を出た。

 

 

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ーーー

 

 

「休みの日に悪かったね。わざわざ出てきてもらって。迷惑じゃなかったかな?」

 

「いや、めちゃ迷惑。家でずっとゴロゴロしてたかったわ」

 

「ははっ、そっか。でも結局出てきてくれるサトルのことが僕は好きだな」

 

俺の口撃を意にも介さず、むしろ気持ちをストレートにぶつけてくる幼馴染♂。全然動じた様子がないのが普通に怖い。

 

駅前で待ち合わせた幼馴染♂の容姿は、それはそれはイケメンボーイッシュな女の子だった。知らない人が見たら、十中八九、女の子だと答えるだろう。

 

さっぱりしたショートの髪型に、切れ長の目、整えられた眉毛&まつ毛…見ようによっては男にも見えなくもないが、やはりボーイッシュな女の子といった印象は拭えない。

 

ほっそりした手脚に、華奢な体つきなのもあり、ぱっと見では誰も彼を男だとは思うまい。

 

俺も中身を知らなければ、ホイホイついて行く自信がある。イケメンと可愛さを両方兼ね備えているんだから。少なくとも見た目は。

 

「じゃ、行こっか。僕、ちょうど見たい映画があるんだ」

 

映画に行くのは決定事項らしい。ちなみにデートの予定は俺に事前に一切知らされていない。

 

 

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ーーー

 

 

「面白かったね。最後の爆発オチだけは、どこぞの三流漫画みたいだったけど」

 

「まーな…てか、役者さんにあんだけ派手なアクションやらせといて、最後あんなんでいいのか?」

 

俺と幼馴染♂は映画の感想を話しながら、フードコートで昼食をとっていた。

複合商業施設内の映画館で映画を見終わってから、現在は同じ館内にあるフードコートで食事をしている次第である。

 

「あはは…まぁいいんじゃないかな?よくあるご都合主義とかもそんなになかったし、僕は結構満足だったよ」

 

本当に満足しているようで、さわやかに笑う幼馴染♂。ガワだけは本当に女の子にしか見えない。生まれる性別を間違えたことが悔やまれる。

 

「ん?どうしたの?僕の顔をじっと見て……あ、もしかして口に何かついてる?じゃあ、取ってほしいな、なんて…」

 

可愛i…じゃなくて!いかん、目の前にいるのは男(の娘)だぞ!ときめいてどうするんだ、俺!

 

「あ、いや…別に何もついてないぞ。心配すんな。ちょっと考え事してただけ」

 

「そうなんだ…その考え事が僕のことだったら嬉しいな♪」

 

くっ…あざとい(可愛い)。コイツ、本当に男か?たまに疑ってしまう自分が嫌になる。

 

「お、お前なぁ…前から言ってるけど俺、お前と付き合う気は…」

 

「分かってるよ。でもね、僕はサトルのことが好きなんだ。昔からずっと僕のそばにいてくれて、僕の味方でいてくれた。男女なんて呼んでいた子たちを追い払ってくれたこと、ちゃんと覚えてるよ」

 

昔のことは覚えてるような覚えてないような…まぁそんなこともあった気がするけど、今はとにかくきちんとお断りをすることが、今後のお互いのためになるだろう。

 

「あのな…よく聞いてくれ。俺は普通に可愛い女の子が好きで、女の子と付き合いたいって思ってる。だからな…」

 

「うん、だからこそだよ。性別の壁が乗り越えられないなんて思わない。むしろハードルが高い方が僕としては堕とし甲斐があるよ」

 

相手の心(ハート)に火をつけてしまう俺氏。これ、何言ってもダメなやつかな?本格的に参ってしまう。

 

「サトルの心が今は僕から離れていても…いつか必ず近づいてみせるから。周りの女の子には負けないよ」

 

彼女…じゃなかった、彼の決意は固い。あまりの決意の固さに俺が二の句を継げずにいると…

 

「あっ…口元、クリームついてるよ。取ってあげるね…」

 

えっ、と思う間も無く、幼馴染♂は顔を近づけて、俺の口元を拭った…自分の舌で。

 

「はっ?や、ちょ、おま…!」

 

「ふふふっ…慌てるサトルも可愛いなぁ。ちょっと勇気を出した甲斐はあったかも」

 

俺の目の前に小悪魔がいた。女子じゃないから、小悪魔系男子。誰得だよ。

 

と、脳内パニクってるうちに、幼馴染♂が耳元に口を近づけて囁いてきた。

 

「ね…僕はいつでも準備万端だから…サトルがその気になってくれさえすれば、いつでもソウイウコトしてもオッケーだよ」

 

可愛い(あざとい)。俺がコイツに敵う日は来るのだろうかと思わずにはいられなかった。

 

「そ、そんなことにはならねえよ。ほら、行くぞ。腹一杯だし、腹ごなしにその辺ブラブラしようぜ」

 

「いいよ。僕のわがままに付き合ってもらったし、次はサトルの行きたいところで」

 

にこやか+さわやかに笑う幼馴染♂の声を後ろに、俺は特に目的地を決めることもなく、歩き出した……顔が火照ってるのは気のせい、だよな…?




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