第三新東京市。
その日、バイクの乗った集団の男たちが高速道路の中にやってきていた。
「ターゲットはわかるな?」
「ああ、ばっちりだ。」
すると、男たちをかき分けながら210㎝ほどの巨漢がやってきた。
黒い革製品のジャケット、カウボーイ風の帽子をみにつけていた。
肌はゾンビのように青白いが、筋骨隆々な男はまさに異次元からきた魔王のような姿をしていた。
死人のように青白い顔をした彼はバイカーたちのリーダーだった。
「いいんですか?」
バイカーの一人がいった。
巨漢は何もいわずクビだけを振った。
すると、バイカーたちはエンジン音をひびかせながらある場所へと向かっていった。
第三新東京市、郊外。
そこへはミサトとシンジがいた。
「…もうシンジ君もそろそろ15ね。」
ここにシンジが来て1年ほどになる。
「ミサトさんと1年ほど過ごしてわかったことがあるけど…。」
「何?」
「ミサトさんって子供みたいな人だよね。」
真顔で憎まれ口とは…。
ミサトは少しコケそうになったが、何とか耐えて聞き返した。
「失礼ね!」
「別にいいよ。」
シンジは少し頬を染めていった。
「そこがかわいいし‥。」
かわいい?
シンジ君もちょっというようになったのか?
「あっのーねー!!!!」
そうするとシンジはいたずらそうに微笑んだ。
こんなシンジは観たことがない。
色んな顔を持っている子なんだな、もっとこの子の色んな所が知りたい。
ミサトがそんなことを想っていた矢先だった。
ドルン!!ドルン!!!ドゥルン!!!
ミサトは一瞬でわかった。
「このエンジン音は日本のバイクじゃない、アメリカの…しかも改造されたバイクよ。」
ミサトはシンジを庇うように前に立った。
男たちは鉄パイプを持っている。
明らかに危険な人種だ。
すると、バイクから一人の男がおりてやってきた。
白いタンクトップと半ズボン。
そして角刈りを地味にパンチにした独自のヘアスタイルをしていた。
タンクトップからは鍛え上げた筋肉がみえる。
「おばさん、そのガキ俺たちにちょーだいよ!悪いよーにはしねーからよッ!」
「アンタ誰?」
「俺は見立キョウイチ。」
ミサトは名前だけ知っていた。
関東にその名を轟かせた暴走族連合『堕天使』。
元々CIAの金と情報をかけて本国から送られたバイカーチーム『ブラック・エンジェルズ』が原型にあるらしい。
「なあ、おばさん…さっさとわたしてくんねー?邪魔すると死なせっから。」
「…死ぬのはそっちの方よ。」
ミサトは構えをとった。
すると見立は鉄パイプを持つとバイクに乗り、猛スピードで突進してきた。
「シンジ君、車の中にいて。」
ミサトはそういった。
「ミサトさん、気を付けてね…。」
「ええ。」
シンジが車の助手席に乗ったのを軽く確認すると前を向きなおあった。
するとバイクはミサトの3m前まで迫ってきていた。
「くたばれ、ババア!!!!」
迫りくるバイクと狂人をミサトは横にジャンプをしてよけた。
「んなにっ!!!」
見立は悲鳴をあげた。
そして、その一瞬だった。
ミサトは銃をとえると、見立てのバイクの前輪のタイヤに向けてはなった。
パン!
銃弾の音だったのか、タイヤが避ける音だったのかわからない。
だが、見立とバイクは大きく姿勢を崩すとそのまま地面に転がっていった。
「うおおおおおおおおおおっ!!!」
ガシャーン!!!
バイクは転がりガレキへとかわっていった。
見立は頭を抑えながらようやく立ち上がった。
ケガはない。
「チクショー!!!ば、ババア!!!!!!!!!!」
見立は大声をあげ周囲を見回した。
「私はここよ。」
声だ。
背後にいた。
見立はゾッとした。
「なんだ、てめえ!」
そして、鉄パイプをもち振りかぶろうとしたその時だった。
シュンッ!
空気を切る音が聞こえた。
そして、見立の顔に大きな電撃と衝撃が走った。
彼の鼻は凹み劇中がはしっていった。
「ぶべ!!!」
地面に倒れた彼がみると、ミサトは片足をあげていた。
鼻血を抑えながら徐々に後ずさりをはじめた。
「この女、速い」
ふと、背後にいたバイカーはざわざわしている。
「お前らなにやってんだ、リーダーがやられてんだからお前らもいけ!!」
そんな時だった。
ズシン…ズシン…。
地響きが聞こえた。
そして、バイカーの群れが十戒の後半のように二つに分かれると、その中心部から巨漢がやってきた。
見立は震えた。
「ぐ、グリムリーパーさん…。」
グリムリーパーと呼ばれた青白い顔をした巨漢は見立の前に立ちふさがった。
「こ、これには訳が…。」
すると無表情だったグリムリーパーの眉間にしわがよると、白い眼をむきながら怒りの表情をみせた。
その異常さに横で観ていたミサトはゾッと悪寒が走るのを感じた。
グリムリーパーは見立の首をつかむと、宙に持ち上げた。
「貴様には失望した。」
そう冷たく言ったリーパーは力を入れた。
ゴキッ
鈍い音が響いた。
見立は動かなくなると、そのままぶらりとだらしなく垂れ下がった。
殺された。
そして、グリムリーパーは彼の死骸をゴミを捨てるかのように捨てるとミサトの方へと向き直った。
「次は私?もしかして、シンジ君を狙っているの?彼にはなにもさせないわよ。」
ミサトは銃を持ち狙おうとした。
その矢先だった。
空気を切る音がすると、グリムリーパーという男は姿を消していた。
「!?」
だが、ミサトは感じた。
背後にいる。
そして、銃を向けようとしたその先だった。
ゴンッ!!!
腹部に激しい衝撃がきた。
ふと見るとグリムリーパーはその右の拳をミサトの腹に突き刺していた。
「う!!うっ!!!」
ミサトはその衝撃と激痛のあまり、銃を持っていた手が緩まった。
そして、グリムリーパーは先ほどミサトの腹部に激痛を与えた腕を使い、今度は貫手の形を作りミサトの顎にめがけて一撃を食らわした。
シュゴッ!!!
ミサトの耳に音が聞こえた。
顎に激痛が走るとそのままミサトの体は150cm先へと吹き飛び地面に倒れた。
そして、そのまま気を失っていった。
「ミサトさん…。」
ミサトさんが赤子の手をひねるようにやられた。
バケモノだ、こいつ。
シンジはうめき声をあげた。
すると、それに気がついたようにグリムリーパーはにらみつけた。
そして、彼に向かって徐々に直進をするとシンジが乗っている助手席に向かっていった。
「ロックがかかっている!出せるもんか!通報をしているから後数分で保安部がくる!」
シンジはそうたかをくくっていた。
だが…。
グリムリーパーはドアをつかんだ。
ベリベリベリ…ッ!!
すると巨大な金属音と何かが崩れていく音がシンジには聞こえた。
「まさか!!!まさか!!!」
グリムリーパーはミサトのアルピーヌのドアを引きちぎり放り投げた。
「こっちにくるな!!!」
シンジはポケットの中から催涙スプレーを取り出し、男の前にかけた。
だが、グリムリーパーは顔色を変えず助手席ごとシンジを引きはがした。
「引き上げるぞ。」
グリムリーパーはそういうと、バイカー集団に指示をだした。
ミサトはようやく目を覚ました。
腹部と顎の痛みに耐えながら、何とか車の近くによった。
だが、そこには愛車がドアをはがされシートまで引き千切られていた無惨な姿があった。
そして、まるで挑戦状を置くかのように1枚のチラシがあった。
『ザ・コロシアム 日本公演開始』
ザ・コロシアム。
イタリアンマフィアが始めた地下格闘技。
そこでは人間が商品になるらしい。
つまり、連中はシンジ君を商品にすることが狙いか。
「…必ず復讐してやる。」
ミサトは数m先を睨みつけ、静かに言った。