女闘士 ミサト   作:井上ああああ

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第3話:ミサトvs相撲取り大巨漢

ミサトは休憩室でコーラを飲んでいた。

 

どうやらミサト以外はほとんどラウンドガールしかいないようだ。

こちらを怯えた顔でみている。

シンジ君がかかっている。

ビールなんて飲めない。

 

ミサトはそんな風に考えているといかにも白髪まみれの中年男がドアに入ってきた。

 

 

「おう、お姉さんよお!すげえなまさか女があいつをぶち破るとは思わなかったぜ。」

 

 

ミサトは少し睨んだ。

 

 

「アンタは?」

「俺の名前は増田コウジロウ」

 

 

増田と名乗る男は名刺を出してきた。

 

 

「近江侠客連合会 舎弟頭 増田コウジロウ」

 

 

やっぱヤクザか。

 

 

「ごめんなさい、コンプライアンス的にヤクザと色んな意味で付き合うのは…。」

「そういう話じゃねぇ。」

 

 

増田と名乗るヤクザは笑って否定した。

 

 

「お姉さん…ここのルールを知ってるか?」

 

 

ミサトは少し考えた。

そういえばシンジ君を取り戻すためにきた。

あまり考えていない。

 

 

「そういえば…」

「ククク、そうだろう。」

 

 

増田はアゴをさわりながらニコニコと微笑んだ。

 

 

「ここはいわば、トーナメント式。1試合、2試合と勝ったものがここのボスと戦える。」

「ボスっていうのはあのグリムリーパーね…。」

「その通り、ヤツはこの団体の番人だ。次の試合で勝てばお姉さんはおそらくヤツと戦えるだろう。」

 

 

ミサトは警戒した。

なにがでてくるかわからない。

ミサトは黙っていると、増田は話をつづけた。

 

 

 

「ここに来る選手は大体はヤクザや海外マフィアや各国政府といったスポンサーがついてくる。スポンサーがついている側の選手が勝てば、スポンサーが商品を獲得できる…。」

 

 

 

シンジ君は商品。

優勝トロフィーのようなものか。

恐らくはシンジ君をさらい、交換条件でエヴァ初号機を引き出そうという考え。

 

 

「悪いけど、私とスポンサー契約を結ぼうと思うなら大きな間違いよ。」

 

 

ミサトは睨んで小さく言った。

増田は面食らったようだ。

 

 

「ほお」

「私は今日の商品以外に何の価値も見出していない。それを手に入れるなら反則だってするわよ。」

「そうか…それで納得しよう」

 

 

ミサトは安堵した。

だが、増田は顔がより真剣なものになっていった。

 

 

「だが、それでは、ほかの組織が納得しない。」

「え?」

「この興行は複数の組織の利権で成り立っている。優勝した選手のスポンサー契約を結んだ組織がそのあとの興行を牛耳ってもいいということになっている。だから、どこかの組織と手を組まないといけない。それが嫌なら、特定の組織に金を払うかだな。」

 

 

なるほど、金はよこせという事か。

 

 

「金が欲しいの?」

「そういうことだな。」

「悪いけど、あなたと手を組んで何もメリットはないわよ私には…。」

 

 

増田はミサトの言葉を待っていたように言った。

 

 

「お姉さん、ここはどこだ?アンタは表の世界の人間だよな‥‥ここは裏側なんだ。昨日今日来て突然参加…それじゃほかの組織のメンツがたたねえな。」

 

 

メンツ、ヤクザの好きな言葉だ。

だが、正論だ。

自分はここに土足でやってきたアウトサイダー。

彼らからすれば気に入らないのも無理はない。

 

 

 

「裏側の世界に来たならこっちのやり方にも敬意を示してもらわねえとな、じゃなきゃ、試合に勝ってもあとあとアンタ狙われちまうかもしんねぇよ。」

「それはアンタの知り合いが?」

「それは知らないな。」

 

 

金と利権はこいつらにやろう。

私の知ったことじゃない。

 

 

「じゃあ、この興行の利権と賞金はあなたに、商品は私たちに…それでいい?」

「いいだろう。」

 

 

ミサトと男の契約は進んだ。

 

 

「次に試合する選手についてだが…次にやるのはファレ・ウマガだ。」

「ファレ?」

「そう、ファレは元々日本で相撲留学をやっていた。だが閉鎖的な日本の角界にブチギレちまった、そして先輩力士と親方を含めた6人をその怪力で全員撲殺した。ヤツの逮捕に戦略自衛隊もかりだたされたが、その特殊部隊が全員まとめて皆殺しになった。」

 

 

ミサトはゾッとした。

そんなバケモノがいるのか。

 

 

「そんなファレは数年前、この興行に初参加した。そして…チャンピオンだったグリムリーパーと戦った。」

 

 

グリムリーパー。

私を襲ったあの巨漢だ。

 

 

「ファレは赤子の手をひねるように潰され、その時左目をくりぬかれた。」

「え?!」

 

 

目をくりぬかれた!?

 

 

「グリムリーパーは冷酷な男だ、強敵とみなした相手を倒した後に目をくりぬく。」

 

 

ミサトは黙った。

どうやら、ここには私の住む世界とはまた違う異世界があるようだ。

ただの格闘家の集まりではない、世界中から殺しを楽しむ狂戦士たちが集まう『殺し合い』の場だ。

 

 

 

 

 

「葛城選手、次です」

 

 

黒服の一人がきた。

私の番か。

ミサトは覚悟を決めた。

 

 

 

「お姉さんよォ…死ぬなよ。」

 

 

 

 

ヤクザは挑発の言葉をかけた。

ミサトはそれを無視した。

 

 

 

「では、準決勝試合を始めたいと思います…皆さん拍手とともにお出迎えください…葛城ミサトぉ!!!!!!」

 

 

 

観客はどよめいている。

ミサトはその観客の歓声を背中で浴びながら突き進んだ。

先ほどは下卑た目線を飛ばしてきた観客も崇拝の目でみている。

入場曲はよくわからないが、どこかのロックなのだろう。

ギターが鳴り響いている。

 

 

 

ミサトは花道から入ると、ゆっくりとリングインした。

私が先か。

次にくるのが対戦選手か。

 

 

 

 

「対戦するのは…ドン・ファレ・ウマガ!!!!!」

 

 

 

 

すると、先ほどミサトが入場したゲートから巨漢がやってきた。

 

 

 

ズゥウン…!!!

 

 

 

大きな足音が響く。

リングまでゆれている。

 

 

 

そして、入場ゲートから巨大な大男が割り込んできた。

 

 

 

色は日に焼けた肌をしている。

恐らくはポリネシア系だろう。

金髪のオールバックをしていた。

身長は210㎝ほどはある。

そして、その太鼓腹はすさまじい大きさをしていた。

 

 

 

「グフフフフ…!!!」

 

 

 

巨漢はリングインをした。

片目は義眼なのか動きをみせない。

 

 

 

「ここはブタをかっているの?」

 

 

 

ミサトは軽い口を叩いた。

 

 

 

「ブヒヒヒヒ…!!わしをブタ呼ばわりとは…中々品のいい女性だ。」

 

 

 

 

 

どうやら悪口は聞いていない。

心理戦は通じない、か…。

 

 

 

 

その様子をモニターでみていたシンジは蛭谷に聞き返した。

 

 

 

「あんなに太っていて…ミサトさんに対処できるの?」

 

 

 

蛭谷はシンジの嫌味を聞き流していた。

 

 

 

「フフフ、お前にはあれがただのデブに見えるのか…。」

 

 

 

シンジはキョトンとした。

だってあんな奴速く動けないだろ。

 

 

 

 

「ラウンド1,ファイト!!!」

 

 

 

試合開始のゴングとコールがなった。

 

 

 

その時だった。

ヒュンッ…!!!

 

 

 

空気が切る音だ。

 

 

 

 

 

ミサトの前方でジョークを受け流していた相撲取りの巨漢は表情を変えて突撃をしてきた。

 

 

「!!!」

 

 

 

 

ミサトは対処ができなかった。

320㎏の巨漢は肩を向けると、ミサトの上半身めがけてその強肩をぶちあてた。

 

 

 

 

バゴッ!!!!

 

 

 

モニター状でも聞こえた。

シンジは目の色を変えた。

速い。

早すぎる。

 

 

 

 

「なに!!!」

「あのファレ・ウマガは元々ラグビー選手、スピードもケタ違いだ!!!」

 

 

 

 

ミサトはまるでエアバックの耐久実験の時にはねる空気人形のように浮かんだ。

そして、地面に倒れた。

反応がない。

 

 

 

 

「フフフ、お前の女は死んだようだな…。」

 

 

 

 

 

蛭谷は笑った。

 

 

 

「み、ミサトさああああああああん!!!!!!」

 

 

 

 

ファレは失望したように息を吐いた。

なんだ、女だてらよくやるのかと思ったらこの程度か。

まあ無理もない、わしのショルダータックルは1トン以上ある。

彼は自身の勝利を確信し、背中を向けた。

 

 

 

「1・2・3・4・5・6・7・・・・」

「レフェリー、そいつは死んでいる。わしはちと本気を出しすぎたかな?がはははは!!!」

 

 

 

ファレは高笑いした。

カウントは8までいった。

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

ミサトの手が上がった。

シンジは安堵の声を漏らした。

 

 

 

「生きているッ!!!!」

 

 

 

観客は歓声の声を出した。

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「やるぞ、あの女!!!!!!!!」

 

 

 

 

ファレは目を疑った。

身長170㎝程度のこの女、まさか…わしのタックルを喰らって生きているのか。

 

 

 

 

「ぬうううううううう!!!」

 

 

 

レフェリーがミサトから離れた。

と、同時にファレはミサトの髪をつかんだ。

 

 

 

「小娘、死んでもらうッ!!!」

 

 

 

そして、勢いのいい張りてを食らわせようとしたその時だった。

ミサトの上半身は一回転すると、上空で腕菱木十字固めの形でファレの右腕を抑え込んだ。

 

 

 

「ぬううううううううううう!!!!」

 

 

 

ファレの右肩に激痛が走った。

ミサトは口と鼻から血を流していた。

 

 

 

 

「まだよ、あの子…シンジ君が経験した痛みに比べれば…こんなものッ!!!!こんなものはああああ!!!!!!!!」

 

 

 

クソ、この女狂ったか。

ファレは舌打ちをすると、ミサトの上半身ごと腕を持ち上げた。

そして、振り払った。

ミサトは素早く空中で着地した。

その時だった。

 

 

 

 

「小娘、わしの腕の中で死ぬがいいッ!!!!」

 

 

 

 

ファレはミサトをその両腕で胴を抱きつかむと締め上げ始めた。

 

 

 

 

「………ッがはッ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

ミサトは今まで経験したことのない電撃が背中を走った。

モニターでみていたシンジの顔から血の気が消えていった。

 

 

 

「小僧、あの技は…サバ折りというのさ!!!」

 

 

 

 

 

ビキッ…。

 

 

 

 

ミサトの背中がきしむ音がモニターを通して聞こえてきた。

 

 

 

 

「フッフッフッ…女は殴るもんじゃないっ!!!抱くもんだああああああああ!!!!」

 

 

 

 

ファレは冗談をいい高笑いした。

 

 

 

 

「ファファファファファファ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

そして、腕の力を強めた。

徐々に…。

だが、ファレはミサトの硬さに驚いた。

普通の女なら背骨が砕けるはず…なのに…こいつはまだ生きている。

だが、ミサトも意識がもうろうとし始めた。

 

 

 

 

まさか、こんなところで…死ぬなんてっ…。

ごめんなさい、父さん…。

ごめんなさい、シンジ君…。

 

 

 

ミサトはその時、ふと相手の顔をみた。

 

 

 

 

 

『ファレは赤子の手をひねるように潰され、その時左目をくりぬかれた。』

 

 

 

 

先ほどのヤクザの言葉がミサトの中でこだました。

 

 

 

片目…潰れている。

ならば…。

 

 

 

 

ミサトはファレの髪をつかんだ。

そして、その頭突きの一撃をファレの義眼に向けてはなった。

 

 

 

 

ゴンッ!!!

 

 

 

 

鈍い音がした。

 

 

 

 

「ぬうううううう!!!」

 

 

 

先ほどのような慌てた声をだしながらファレはミサトを離した。

ミサトは気がつくと、頭を抑えながら地面に片膝をついている。

 

 

 

 

 

「き、貴様ッ!!!!!!!!な、なんて石頭なんだッ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

ファレはもだえている。

チャンスだ。

ミサトは睨んだ。

 

 

 

 

そして、悶えているファレの左目をみた。

義眼に罅が入っている。

 

 

 

 

 

「アンタの弱点、わかったわよ。」

 

 

 

 

ミサトは冷酷に言った。

そして、ファレの左目めがけて膝蹴りを放った。

 

 

 

 

「~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!!!!!!!!!!!!!????」

 

 

 

 

ばしゅっ…。

 

 

 

ファレの義眼にミサトの足が入った。

 

 

 

 

 

「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

ファレの頭蓋骨に電撃が響いた。

そして、脳裏に浮かんだ。

そうだ、わし…俺は…この大会で目を奪われたッ!!!!!!!

まさか…まさか…俺の義眼を潰す気かあああああああああああああああ!!!!!

 

 

 

 

二発目が入ってきた。

また頭蓋骨に衝撃が入った。

 

 

 

「うぎゃああああああっ!!!!!!!!!」

 

 

 

義眼は割れて、破片が目の中に入ってきている。

そして、血がドクドクと流れてきた。

 

 

 

「ぎにゃあああああっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

すると、次はミサトの足は次は右目めがけてとんできた。

 

 

 

 

 

「ぃいいいいいいいいいいいいひええええええええええええええええ!!!!」

 

 

 

 

右目だ…。

まさか…両方潰す気!?

ファレはよろめきながらなんとかよけた。

 

 

 

 

「やめてくれ…ッ!!!もう…」

 

 

 

 

すると、セコンドは観るに見かねてタオルを投げ込んだ。

ゴングが鳴った。

ミサトの勝利だった。

 

 

 

 

 

モニター室でみていたシンジは大きく息を吐いた。

 

 

 

 

「勝った…なんとか勝った…。」

 

 

 

蛭谷は汗をかきながら手を震わせていた。

 

 

 

「バカな…」

 

 

 

あの女、まさか…最終決戦に行く気かっ…!!!

 

 

 

 

 

リングの上でミサトは大きく息を吐いていた。

そして、思わず吐きそうになった。

なんとか勝った…だが次は…こううまくいくだろうか。

 

 

 

 

その様子を控室で観ていた男がいた。

グリムリーパー、この団体のチャンプ。

 

 

 

 

「あの女、中々やるな…。」

 

 

 

彼はほくそ笑んだ。

殺すには惜しい。

だがあの女の黒い目もホシイ。

 

 

 

そして、白い目を向け戦闘態勢に入ったのだった。

 

 

 




次回、最終話かもしれません…。


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