モニタールーム。
オーナーの蛭谷は頭を抱えていた。
「まさか…」
事態は思っていたより深刻だ。
あの女はファレを倒した。
蛭谷の予想ではファレに倒され、最終決戦でグリムリーパーが勝つ。
という予定だった。
今回の興行で彼はイタリア本国の親分たちに金を借りてしまった。
その金額は日本を丸ごと買収できる金額だ。
もしも、その金額を書けながら今回の興行が失敗すれば…親分たちは怒り狂いヘタすれば俺は処刑されてしまう。
「おじさん、あせってるの?」
人質の碇シンジが皮肉を言い始めた。
「黙れ!」
「言っておくけど、僕にもミサトさんは止められないよ。それに…僕の父さんも黙ってないと思うけど」
蛭谷は舌打ちをすると、シンジの頬に一撃を食らわせた。
「黙れといってる!」
シンジの体は吹き飛ぶと、地面に倒れた。
「いいか、小僧…俺のやさしさに感謝しろ。お前を売ってやってもいいんだこんな興行を開かなくてもな…元々はこの興行は金儲けのためだ。お前はあくまで副産物でしかない。」
シンジは口から少し血を流しながら蛭谷を睨んだ。
そして、減らず口を止めなかった。
「あんたは間違った相手に喧嘩を売った、そのことだけは覚えておいた方がいいよ。」
「このガキ…」
そんな時だった。
蛭谷の手の動きが止まった。
否、止められた。
シンジはその止めた相手をみつめた。
「貴様ッ!」
青白い皮膚をした巨漢。
グリムリーパーだ。
巨漢グリムリーパーの顔は無表情だった。
しかし、沈黙を破って声を出した。
「試合の商品に手を出せば商品価値が下がるぞ。」
蛭谷は怒りに震えながらもこらえた。
「貴様、このようなマネを‥人の前でオーナーである私に恥をかかせるようなことをして…ただで済むと思うな!!!お前は所詮ファイターの身でしかないッ!!!!勘違いするなよ!!!」
グリムリーパーは蛭谷を睨んだ。
その冷たい目をみて蛭谷は心底震えあがった。
「あ・・・あああ・・・・。」
そんな蛭谷を無視したグリムリーパーは小さく告げた。
「女の事は心配するな、いずれにせよ…八つ裂きにしてやる…。」
「貴様ッ!!!」
シンジはグリムリーパーをジッと睨んだ。
「お前の前歯全部折ってやる!」
グリムリーパーは首を縦に振ると、黙ってその場を去っていった。
一方選手控室にはミサトがいた。
彼女はオープンフィンガーグローブを手に付け、スポーツビキニとスポーツブラを新しいものに着替えていた。
少し先ほどの試合で少しケガをした。
そこはまだ少し痛む。
だが、シンジ君が経験した痛みに比べればこんなものは屁でもない。
彼を復讐の道具にした。
その償いになるなら、どうでもいい。
「いいんだな、お姉さん。」
先ほどのヤクザのコウジロウだ。
「ええ。」
「アンタが勝てば、ここの利権は俺がもらう。」
「私が勝てば商品は、私の物になる。」
「がんばれよ。」
彼の言葉を背に、彼女は今一度エントランスに向かっていった。
観客たちの声援がわきあがっていた。
そんな中、ミサトの知らないところである人物が観客として紛れ込んでいた。
惣流・アスカ・ラングレーと加持リョウジだ。
ドイツに出向になっていたはずの両者は話を聞きつけ、うっかり紛れ込んでいた。
「ミサト、本当にあんなのに挑むのかしらー。」
「あいつなら、やるかもしれないな…。」
「シンジ、大丈夫かしら…もし何かあったら。」
その先を言おうとした矢先だった。
アスカは腹痛に見舞われた。
「う、ごめんと・・・トイレ!!!」
アスカは悲鳴をあげると一人トイレへ向かっていった。
加持はそんなアスカを黙ってみつめると、何かをみつけた。
屋上にあるキャットウォーク、そこでさきほどから何かきらきらしたものがみえる。
明らかに照明ではない。
「悪いな、アスカ。」
加持はそれだけいうと、一人キャットウォークに向かって走っていったのだった。
それと同じ頃だった。
数分間のトイレをすませたアスカは会場席に戻ってこようとしていた。
トイレの外にでると、アスカは心配そうに周囲をみていた。
「シンジ、どこにいるのかしら…。」
彼女はそんなことを呟きながら、周囲を見回した。
「おい、ここで何をしている!」
男の声がした。
アスカはビクッとすると、振り向いた。
「お前、蛭谷さんのところの女だろ?」
蛭谷?
あ、ここのオーナー!
シンジをさらったやつだ!
「あ、はい!」
「蛭谷さんは、4階のモニター室にいる。ここは3階だから階段を上った先のところだ。今度ははぐれるなよ。」
それだけ言うと黒服は去っていった。
アスカはためいきをつくと、階段を上っていった。
意外と他の黒服もあまり気にしていないようだ。
「何よ、ここネルフよりずさんね…。」
アスカがそんなことを言った瞬間だった。
凄まじい寒気がしてきた。
「ッ!!!!」
アスカは思わず両腕を抱くように身を寄せた。
何だこの寒気は…。
背後からするぞ…。
背後から凄まじい何かおぞましい気が漂っている。
アスカは恐る恐る振り向いた。
そこには210㎝ほどの大きな大男が立っていた。
まるで死人のような顔をしている。
「!!!!!・・・」
アスカは腰がぬけそうになった。
「あ。ああああ・・・あああああああああああああ・・・・。」
こいつ知ってる!!!
ミサトと戦うグリムリーパーだ!!!
さっきの会話を聞かれてるなら私は・・・・私は・・・・殺される!?
嫌、死ぬのは嫌・・・。
助けて、ママ…。
「あああああ・・・・あ、ああああああああああああ・・・・・・。」
だが、グリムリーパーはアスカを観ても無反応のまま通り過ぎた。
アスカはゾッとした。
こんなバケモノ、ミサトが勝てるのか?
グリムリーパーは黙って突き進んでいた。
元々プロレスラーとして生計を立てていた。
それが、ある日団体が潰れていった。
気がつけば彼は趣味のバイクで知り合った仲間と暴走族を結成した。
そして、地下格闘技に何回か出ていた。
そこで、彼はイタリアンマフィアと契約を結んだ。
この契約は永遠の奴隷を意味していた。
恐らくこれは永遠に続く苦しみなのだろう。
彼はエントランスに向かって突き進んだ。
オクタゴンの中でミサトは相手を待ち構えていた。
ミサトは屈伸運動をすませながら、入場ゲートを睨んでいた。
その時だった。
ゴーン
鐘の音だ。
そして、会場は暗くなった。
観客はどよめいて、歓声をあげていた。
すると、たいまつをもったドルイド僧数人が突き進んできた。
ゴーン
鐘の音がまたなった。
そして、パイプオルガンの旋律が響いてきた。
ショパンの葬送行進曲が鳴り響いた。
そして、ドルイド僧のたいまつの間をゆっくりと歩いてくる男がいた。
その姿は異次元の魔王のようなものだった。
「グリムリーパー…。」
ミサトは憎々し気に吐き捨てた。
私の愛車に傷をつけ、シンジ君までさらった。
その憎悪を終わらせてやる。
グリムリーパーはオクタゴンに入場すると、身に着けていたロングコートとテンガロンハットを脱いだ。
そして、白いむき出しの目で睨みつけた。
モニター室、シンジと蛭谷はみつめていた。
シンジは息をのんだ。
シンジは手を握り、自分の不能を呪った。
こんな時エヴァに乗ればあんな連中…。
あの男は今までの連中と違う。
ミサトさんは死ぬかもしれない…。
「ミサトさん…。」
シンジは一息をつくと、考えなおした。
ミサトさんがいる。
僕はミサトさんを信じる。
彼女は生きて帰ってくる。
絶対に…。
ミサトはグリムリーパーの前にたった。
二人の間をレフェリーが入ってきた。
「この試合はラストマンスタンディングだ、反則無し・ギブアップなし・10カウントのみで試合が決まる。わかったな?」
ミサトはうなづいた。
そして、試合開始のゴングが鳴り響いた。
先に仕掛けたのはミサトだった。
「うおおおおおおおおおっ!!!」
獣のような唸り声をあげると、ミサトは空中を蹴り大きく飛び上がった。
そして、先ほどファレを打ち破ったその膝をグリムリーパーの顔面めがけて放とうとした。
その瞬間だった。
パシッ
グリムリーパーはつかんでいた。
そして、ミサトの足をつかむとオクタゴンの網にまみれた壁に向かって放り投げた。
しかし、ミサトは別の足を使い、網を蹴りあげさらに飛び上がり遠心力をつけて再び膝を放った。
今度は当たった。
バシィーーン
観客の一人がいった。
「やったか!?」
だが、ミサトは苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
確かに当たった。
だが、まるでビクともしていない。
「クソッ…。」
ミサトは地面に着地した。
まるでグリムリーパーは次の技を待つように棒立ちしていた。
「うらッ!!!」
ミサトは左足を矢のように伸ばすと、グリムリーパーの顎めがけて突き刺すような蹴りをいれた。
はずだった・・・。
グリムリーパーはビクともしていない。
「…ちっ!!!」
すると、次に動いたのはグリムリーパーだった。
リーパーの右拳は素早く動くと、ミサトの首をガッとつかんだ。
「ぐっ!!!」
そして、もう一つの腕もミサトの首をつかんだ。
両腕はミサトの首をつかむとそして、そのまま空中高く持ち上げた。
「ぐがっ!!」
ミサトの呼吸が途切れていく。
息ができない。
モニター室でみていたシンジは驚愕した。
そんな彼を侮蔑したような表情でみていた蛭谷は告げた。
「ククク、小僧アレはなネック・ハンギング・ツリーというのだ!」
「ネック・ハンギング・ツリー!?」
「両腕で相手の首を絞めながら持ち上げる、そして吊るす…処刑技だ!」
ミサトの顔が赤く染まあがったと思えば、青くなっていった。
視界が薄れていく。
その時だった。
ミサトは全身の力をこめて、空中で体を一回転させた。
ミサトをつかんでいたグリムリーパーの両腕から逃れたそのまま、バク転状に一回転をすると、グリムリーパーの背後をとった。
「今度はこっちの番よ。」
すると、ミサトはグリムリーパーの左膝めがけて蹴りを放った。
パァン!!!!
空を切る音が聞こえた。
「!!!」
グリムリーパーは苦痛に顔をゆがめた。
ミサトは攻撃の手を緩めなかった。
王者はミサトの方を振り返り、彼女をつかもうとした。
だが、ミサトは地面をスライディングするように避けると、そのまま左半身に逃げた。
そして、また一撃を加えた。
王者の顔はさらに苦悶に包まれた。
「あんたはでかい、だから足から潰していくのがいい。」
ミサトはそういうと、グリムリーパーの足めがけて足払いを行った。
グリムリーパーの140㎏以上ある巨体は地面に倒れた。
そして、素早くグリムリーパーの左足の足首をつかむと全身の力を込めて締め上げた。
観客の一人が叫んだ。
「アンクルホールドだッ!!!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
グリムリーパーは地面に倒れ、苦悶しながら倒れた。
そして、ミサトは時間をかけてゴリゴリと攻め上げた。
この試合にギブアップはない。
だが、足を潰してしまえばギブアップもクソもないだろう。
その時だった。
グリムリーパーの右足がミサトの顔面を貫いた。
その蹴りの一つで、ミサトの鼻はつぶれ、血が噴き出た。
だが、それでも気にしなかった。
ミサトはゴリゴリと相手の足首を攻め上げた。
「死になさいッ!!!!」
だが、再びグリムリーパーの右足はミサトの顔面を貫いた。
それでもミサトは離す気がない。
しかし、あまりの痛さに頭がくらくらして力が抜けていった。
その瞬間、グリムリーパーは強制的に抜け出した。
そして、立ち上がるとミサトの顔面に激しい蹴りを打ち付けた。
ガンッ!!!
ミサトはオクタゴンの網だらけの壁に吹き飛んでいった。
「うぐ!」
そして、グリムリーパーは大きくかけだすとその強肩をぶつけてきた。
その時だった。
ガチッ!!!
オクタゴンの壁が外れた。
ミサトとグリムリーパーの両者は壁ごと観客席に飛び出してしまった。
「うわああああああああああああああ!!」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
観客の数名が巻き込まれたらしく、黒服が救護班を呼んでいた。
ミサトも肩を痛めたのか、左肩をかかえうずくまっていった。
グリムリーパーはその好機を逃がさなかった。
「貴様らどけええええええええええっ!!!!!」
獣のような雄たけびをあげると、観客席・黒服その他もろもろを引かせた。
その先には冷たいコンクリート製の床があった。
そして、グリムリーパーは面室に画鋲の入った工具箱を手にするとそれを一気にぶちまけた。
「あれは・・・まさか!!!」
シンジにもわかった。
あれは・・・。
グリムリーパーはミサトの首をつかんだ。
「貴様には処刑が相応しい。」
リーパーはミサトの首をつかむとそのまま片手で持ち上げ画鋲にまみれたコンクリート状の地面にめがけて叩きつけた。
「あうううああああああああっ!!!」
叩きつけられたミサトの全身にダメージがいきわたった。
複数の画鋲がまるで剣山のように突き刺さりミサトの全身にダメージを与えている。
そして、激しく痙攣をするとそのまま倒れた。
「ミサトさあああああああああああああああん!!!!」
モニター室でみていたシンジは悲鳴を上げた。
そんな、ミサトさんが・・・・ミサトさんが・・・・・・・・。
グリムリーパーはレフェリーを呼び、10カウントをさせた。
「1・2・3・4・5・6・7・8・9」
グリムリーパーは勝利を確信した。
そして、左足を引きずりながらリングに戻ろうとした。
その時だった。
ミサトの手が上がった。
観客はどよめいていた。
グリムリーパーは苛立ったように彼女に近づくと、彼女の顔を再び蹴りはじめた。
「ぐぶっ!」
ミサトの口から血の混じった唾が噴き出た。
そして、グリムリーパーは彼女の顔面にパンチを繰り出そうとした。
その時だった。
ミサトは大きくジャンプすると、空中で一回転しながらその遠心力を使い大きなかかと落としをグリムリーパーの頭に打ち付けた。
ゴン!!!
グリムリーパーは片膝をついた。
ふと、さきほど自分が画鋲まみれになった場所にヤツがいる。
ミサトは走りながら、グリムリーパーの顔面めがけて蹴りをぶちこんだ。
「うらっ!!!」
グリムリーパーの顔に蹴りがあたり、先ほどのミサトと同じくグリムリーパーの放った画鋲にまみれた床の上に倒れた。
「ぐあああああああああああっ!!!」
今度はグリムリーパー自身が画鋲まみれになり全身を血で染め上げていった。
そして、ミサトは先ほど痛めつけていた彼の左膝をつかむと、捻り締め上げていった。
「うがああああああっ!!!」
膝の割れていく音が周囲の観客にも聞こえた。
モニター室でみていた蛭谷は舌打ちをした。
そして、無線を使いある命令を出した。
「Bプランでいくぞ。」
Bプラン、それはいざという時のために狙撃銃で相手を射殺することだ。
だが、その相手は葛城ミサトではないグリムリーパー。
彼を撃つことで、この試合はノーコンテンストにする。
撃ったのは女の仲間、ということにすれば…問題はない。
「了解しましたボス…。」
その時だった。
「おいおい、アンタ…人が真剣勝負してるっていうのに邪魔をするなんて…許せないな。」
男が立っていた。
その男の名前は加持リョウジ。
ミサトの元カレだ。
「なんだお前は!!」
狙撃手は銃を離すとハンドガンに変えようとした。
だが、加持の動きは早かった。
素早く男の懐に近づくと、男の鳩尾めがけてパンチを繰り出した。
そして、男を無力化させた。
「悪いなそこでいい夢みてくれ。」
男から無線を奪うと、加持は言った。
「あーおっさん、悪いがプランBはおじゃんだ。」
シンジはこの声に聞き覚えがあった。
加持リョウジ。
ミサトさんの元カレだ。
「あと、それから人質を返してくれないか?」
「ふざけるな小僧め!私をなめるな!」
その時だった。
ドアが開く音がした。
「ルームサービスです。」
蛭谷は鬱陶しそうに舌打ちしながら振り返った。
「そんなもんたのんどらん!!!」
だが、それはルームサービスではなかった。
赤毛の少女は大きなパイプ椅子を持つと中年男の顔面めがけてぶつけた。
蛭谷の頭部にあたったパイプ椅子は彼の頭に激しい衝撃を与えた。
「アスカ!!」
「たまには、アンタみたいな格下を助けてあげないとね。」
アスカはそういうとシンジの両腕を縛っていたロープを解いた。
「さあ、逃げるわよ!」
その時だった。
蛭谷のうめき声が聞こえた。
「ククク、バカめ…狙撃手は一人だけじゃない。もう一人いるんだよ!」
「なんですって!」
蛭谷は無線を通じて連絡した。
「ターゲットは変更、葛城ミサトだ。ヤツが痛めつけられてからやれ。」
アスカとシンジの動きが止まった。
無線で聞いていた加持の動きも同じくだった。
その頃、グリムリーパーは余った足で再びミサトのケガをした鼻に攻撃を加えた。
ミサトは再び同じように足を解いた。
だが、ミサトはそのまま地面に倒れた。
しかし、グリムリーパーはそうではなかった。
彼は左手でミサトの髪の毛をつかみ空中に持ち上げた。
そして、余った右手でミサトの腹部を何度も何度も何度も拳をいれた。
「ぐぶっ!!!げぶっ!!!」
ミサトの口から血が噴き出た。
びきっ・・・。
アバラの骨が砕ける音がした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!!!!!!!!!!!!」
そして、グリムリーパーはミサトの髪の毛をつかんだままに、ひきずるとリングの中へ放り投げた。
着地した時、先ほど刺さった画鋲が背中に食い込むのを感じ、ミサトは激痛とともに苦しんだ。
アバラが折れている。
もうやばいかもしれない。
だが、負けるわけにはいかない。
シンジ君はもっと痛い想いをしてるんだ。
リングの中に入ったグリムリーパーは地面に倒れたミサトの腹部をサッカーボールのように蹴り飛ばした。
「うべっ!!!」
ミサトは地面に転がりながらうつぶせ状態で倒れた。
レフェリーがカウントしようとしたが、グリムリーパーは押しのけた。
そして、左腕でミサトの顔を押し付けると、余った右腕でミサトの左腕をつかんだ。
「折ってやる。」
グリムリーパーはそういうと、ミサトの左腕をつかみ持ち上げた。
そして、力を入れて逆の方向に曲げた。
そして…。
ゴキッ。
音がした。
ミサトはうめき声をあげ地面にのたうち回った。
ミサトの左腕は折れた。
モニター室の中にやってきた複数の黒服に、アスカとシンジは取り押さえられてしまっていた。
シンジは取り押さえられもみくちゃにされながら、シンジはミサトの腕が折れる瞬間をみていた。
キャットウォークにいた加持も目を覆いそうになった。
グリムリーパーはミサトの首をつかみ無理矢理立たせると、右腕で何度も何度もパンチを加えた。
そして、そのあと右腕で掌底突きを作ると、ミサトの鳩尾めがけて攻撃を加えた。
やがて、二人の間をレフェリーがかきわけた。
空間が止まった。
ミサトは地面に倒れた。
血にまみれながら…。
「1・2・3・4・5・6・7・8・・・・」
ミサトにはもうレフェリーのカウントしか聞こえない。
立ち上がる気力がない。
このままでは…。
その時だった、シンジは黒服から逃れアスカの大きな椅子をモニター室の大きなガラス窓にぶつけた。
そして、窓に向かって大きな声で叫んだ。
「ミサトさあああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!」
その声は会場中に響きまわった。
グリムリーパーはふと宙を観た。
先ほどの子供か。
その時だった。
地面に倒れているはずのミサトはうめき声をあげながら立ちあがった。
「し、シンジ君・・・!」
10カウントは中止になった。
蛭谷は驚いた。
相手はアバラも鼻も腕も折れている。
なのにまだやるのか!?
「まだいけるのか?」
グリムリーパーは聞いた。
すると、ミサトは吐き捨てるように返した。
「なめんじゃないわよ。」
グリムリーパーはそれを聞くとニッと笑顔になった。
それにミサトも笑顔で返した。
そして、グリムリーパーは右腕を振るった。
その時だった。
パァン!!!
銃声が響いた。
それは観客席からだった。
銃を持った男が、ミサトめがけてライフル銃を撃ったのだ。
その時、グリムリーパーは動いてしまった。
そして、気がつけばミサトを庇っていた。
「ううっ!!」
うめき声をあげながらグリムリーパーは地面に倒れた。
「うがあああっ!!!」
ミサトは目を凝らした。
右肩にあたっている。
命は大丈夫だ。
だが、グリムリーパーは右利きだ。
右が使えない彼は戦力が低下している。
「あなた、なんで私を」
「お前はまだ死ぬべきではない…。俺以外の手では特にな。」
ミサトはにこっと微笑んだ。
「さあ、試合続行だ!!!」
二人は立ち上がった。
そして、観客は一斉に歓声をあげた。
グリムリーパーは走りながらミサトの方へかけよった。
ミサトもそうだった。
グリムリーパーは左腕を大きな拳に変えミサトの顔面を殴った。
ミサトはジャンプしながら、右足をやりのようにのばしグリムリーパーの右頬に突き刺した。
両者の攻撃はそれぞれヒットした。
そして、両者は地面に倒れた。
レフェリーがカウントをはじめる。
「1・2・3・4・5・6・7・8・・・・9。」
その瞬間だった。
ミサトが右肩をあげた。
グリムリーパーは利き腕が動かなかった。
「10!」
試合はミサトの勝利だった。
観客は雄たけびをあげながら勝利を祝福した。
モニター席ではみていたシンジが安堵の声をあげた。
アスカは黒服にもみくちゃにされていた。
蛭谷は地面に惚けなく倒れた。
するとそこへ、コウジロウがきた。
「蛭谷さん、アンタ狙撃手雇ってたんだってねえ…悪いけど損害賠償を請求させてもらうから覚悟してくれよな」
そういうと、コウジロウはシンジとアスカを連れて歩いていった。
キャットウォークにいた加持も安堵の声を漏らした。
「はああ、葛城お前ってやつは・・・。」
花道を歩きながらシンジは突き進んでいった。
そこにはボロボロになっているミサトがいた。
「シンジ君?」
「ミサトさん!!!」
シンジはリングの中に入ると、ミサトの頬をやさしくさわった。
そして…彼女の唇を自分の唇で奪ったのだった。
ミサトは離れようとしたが、そのままシンジの自由にさせた。
「シンちゃん…。」
「僕、二度とあなたのそばを離れませんから。」
ミサトはそのまま病院に搬送された。
彼女はシンジを命を懸けて守ったことを心の奥底から嬉しく感じた。
数か月後。
やがて、団体運営が蛭谷からコウジロウの組織に変わったというニュースを耳にした。
蛭谷の現在はどうなっているかわからない。
いずれにせよ、複数の組織が利権に絡んでいるこの興行で自分の好きにしたことについてはかなり大きな粛清を受けるだろうとミサトは確信していた。
グリムリーパーは現在、アメリカに帰国しているアメリカの大手プロレス団体に入ると言われている。
そして、現在。
修理されアップグレードしたアルピーノの中でシンジとミサトがいた。
ミサトのケガは思っていたほど深刻ではなく1ヵ月程度で完治した。
「ねえ、シンジ君。なんであの時キスしたの?」
ミサトはいたずらそうに聞いてみた。
シンジは顔を赤くしながらはぐらかした。
「さあーわかんないなー。」
ミサトはそれをさらに悪戯気に聞いてみた。
「あのキスは生まれて一番ロマンチックだったわ…。」
「それをいうのはやめてよ…。」
二人は第三新東京市、箱根市の中をゆっくりと歩みながら進んでいくのだった。