もしもTot Musicaの代わりにうっせぇわを歌っていたら 作:匿名希望の雑草さん
Tot Musicaと書かれた楽譜をゴードンさんに見せると血相を変えて教えてくれた。
この曲は絶望や悲しみ、寂しさによって作られたもので歌うと魔王がやってくるんだって。
それっておかしいよね。
絶望や悲しみ、寂しさの曲だけがこの世界に現れるなんて、そんなのおかしいよ。
私、すごく悔しい。楽しい歌だって、勇ましい歌だってこの世界に現れてもいいんだよ。絶望や悲しみより勇気や愛が弱いだなんて誰が決めたの!アタシは認めない!!証明して見せる。
「じゃあ自分で作って見ればいいじゃないか」
「シャンクス」
「お前が思う最高の歌を、Tot Musicaが人々の絶望や悲しみによって作られた歌なら、お前の手でお前だけの歌を作ればいい。正しさとは、愚かさとは。お前の目で見て感じたことを全て歌として書ききれば必ず結果はついてくる」
正しさとは、愚かさとは。私の心の中でぐるぐる回る。シャンクスからでた力強い言葉。勇ましくもどこか厭世的で、怒りの中に希望を見出している。そっか、これがあるからシャンクスは海賊なんだ。
「ウタ?」
「シャンクス…これ歌だよ」
この歌詞には力がある。まだ私の知らない世界を見たシャンクスの歌だ!私はその心に寄り添って歌詞に歌を乗せるだけ!!
【正しさとは 愚かさとは それが何か見せつけてやる!】
その日、エレジアで小さなボヤ騒ぎがあった。次の日が来れば忘れ去られるような小さな炎、もしかしたら彼女がTot Musicaを読んだことで魔王が僅かに目覚めたのかもしれないとゴードンは言った。怒りの感情は絶望と少し近いから、かの魔王の力の一部を取り出せるのかもしれないと。
対してシャンクスは否定した。いや、あれは彼女の歌だ。この世界に歌を現実のものとして創造する。彼女だけの歌だ。たとえ源泉がどこにあろうと関係ない。
「私、世界中を旅するよ。世界中を旅してうんと苦労して楽しんで、うんと曲を作るんだ」
「そうか、やりたいことを見つけたんだな」
「うん、それはそれとしてもう少し赤髪海賊団の音楽家でいたいな。そうだ!剣とか銃とか教えてよ!」
「最初の手ほどきくらいはするがあとは自分で鍛えるんだな」
「えーケチ~」
「お前が言ったんだろ、うんと苦労するってならそうしろ。もう少ししたらフーシャ村でお前を下ろすから世界の歌姫になったら帰ってこい」
「約束だよ。シャンクス」
「ああ、約束だ」
______
そうしてウタは世界を見る機会を得た。戦闘の手ほどきを受けたウタはフーシャ村に残り、ダダン・エース・サボと出会い、ゴア王国の闇を垣間見た。
【煌めく街の明かりは 色を変えて 蔑んでる】
世界は自分が思っているよりも残酷で、どうしようもない人たちが支配していて、それでもその錆びた鉄骨がないと生きていけない人たちがたくさんいることを知って、歌にできることがあるのか考えるようになった。
エースよりも早くフーシャ村を一人出て、モーガンという海兵から逃げ出して、ベルメールという海兵の最期を目の当たりにして、自分がどれだけ無力な小娘であるかを自覚した。
【うっせえわじゃ済まない現実 若さ故の過ち 片付く哀しい道化師】
数え切れない悲しみ、少しの楽しみ。飢え、宴、少しずつ蓄えていく力。時に仲間ができ、そして離れていって。エレジアに寄ってみたり、天竜人に捕まりそうになり懸賞金が付いたり。1年また1年と過ぎていきふと、あの赤髪海賊団にいた少女はどこにもいない事に気づいた。
【理由もない不安が胸に押し寄せるんだ】
「この村は海賊から搾取されているけれど、それで暮らしがなんとか成り立っている。私が…この村を傘下におければいいけれど、私一人だけだとそれはできないからからこのままにしておきましょう」
力だ。なにもかもねじ伏せて新時代を作るんだ。わかってる。それでも私は歌の力を信じたいんだ。相反する心。人々の不幸や命を天秤に掛けている自分に気づいて気絶するまで笑って泣いた。
【気づいたら大人になっていた】【アタシも大概だけど】
歌って何?人々を少しだけ幸せにしてくれるもの。0と1じゃ全然違う。歌があるから前に進める。歌を原動力に新時代を作る。
新時代って何?海賊や天竜人がいない世界?それって…それ以外の何かがその座に座るだけじゃないの?
世界を旅していい海賊も悪い海賊も、いい天竜人も悪い天竜人もいるのもわかった。そもそもいいとか悪いとかの判断でどうにもならないことが殆どだった。村を海賊の支配から救った後に別の海賊に襲われて壊滅したこともあった。救った人にナイフで襲われたことも、倒した人が実は孤児院を経営していたこともあった。富める人にも貧しい人にも色んな話を聞いた。考えも価値観もそれぞれ違って誰もが思う幸せの形なんてどこにもなくて、だからこんな時代になってるんだってわかった。
だから、新時代を目指すってのはウタの時代を作るのと同じなんだ。今の支配を全部壊して私、もしくは私が認めた他の誰かが上に立つしかない。私が思う幸せな形の時代にする。それは、ひょっとしたら今とそっくりな世界かもしれないけれどやらないと始まらない。
【絶対絶対現代の代弁者は私やろがい】
「できた。神曲」
名前はそう【うっせぇわ】。
幼い頃から書いてた私の曲。私の心。私の全て。いいえ、私自身。ピースはそろっている。エレジアに戻った何度目かの時に見つけた映像電伝虫。これを使って私は歌姫と言っていいくらいの人気を手に入れていた。
まあ懸賞金10億の極悪人としては人気だろうけど世界の歌姫ってほどじゃないかな。私の心を注いだ歌たちをもっと色々な人に聞いて欲しくて手は尽くした。マスコミとは仲良くしていたし、歌以外でも人々の悩みは聞いていたし、私にできる範囲のことであれば直接解決に行ったりと精力的に活動した。上々だろう。
私はなれた手付きで番号を押す。
「もしもし、モルガンズ?私、ウタだよ」
『おー、ウタか。どうした?お前が提供してくれた電伝虫の一匹は全力で研究中だ。試作品の出来はいいぞ』
「その話も聞かせて欲しいけれど今は後、暴露情報があるんだ」
『なに!それは世界をあっと言わせるビッグニュースか!?』
「ええ、ビックニュースよ。私の本名はフィガーランド・ウタ、フィガーランド・シャンクスの娘、(シャンクスがフィガーランドである)裏も取れてるから後で送るよ」
『__』
「何?聞こえない!?」
『それを俺に言う意味はわかってるのか?懸賞金が億単位で増えるぞ』
「心配してくれてるの?ありがと」
『いいやこれっぽっちも心配してないね!もう言うなと言ってもだめだぞ。おい!次の号まだ間に合うな!』
「それでライブを開くの」
『はぁ!!??』
「どの島からも離れた場所に特設ステージを作ったの。そこで世界中にライブ中継を行う。そのための資金も計画も全部立てたよ。あとはあなたの仕事」
『あー、電伝虫量産してからでいいか?暴露も含めて。戦争をおっ始めるんならそれなりにこっちも準備したい』
「いいよ、あとこれも伝えてね。『ウタはパトロンを求めている』」
『OK、お前が全勢力を集めたいのは分かった。ウタウタの実で眠らせるつもりなら無理だと言っておく、間違いなく全員耳栓をしてやってくるぞ』
「大丈夫。問題ないよ」
『だろうな』
ガチャリ
さてと、あなたは来てくれるかな。ルフィ。万国でビッグマムを出し抜いて勢いづいてるらしいね。全部知ってるんだから、あなたがナミを救ったことも、アラバスタとサクラ王国と魚人島とドレスローザを救ったことも。懸賞金も身長も追い抜いちゃって、私よりも多くの人を笑顔にして、少し妬けちゃう。こんな血だらけの手で良ければ私は…
______
「ゼハハハハ。ウタウタの実!条件は難しいが満たしちまえば無敵の実!可能なら確保しておきたいな」
「とにかくウタが欲しいえ!行くえ!え、ダメってどうしてなんだえ!」
「革命軍に取り込みたいと思っていたが生憎レヴェリーの準備中だな」
「ウォロロロ。試しに二人派遣してみるか」
「シャンクスの娘だと~?まあライブ映像くらいは見てやるか」
「今会うのは約束が違う。そうだろ、ウタ」
世界を知ったかつての少女は泥だらけの腕を挙げ挑戦状を叩きつける。世界はより高い壁をもって踏み潰そうとしていた。
自分の足で歩いていくと言うのなら、新時代を創ると言うのなら。親に頼らずに挑むといい。絶望と悲しみと寂しさの歌に。
「生のウタか~。楽しみだな~」
「おいチョッパーはしゃぎすぎて海に落ちるんじゃねぇぞ」
「ウタか。今どんな感じなんだろ。楽しみだな。ししし」
「ウタ。あの頃は悲しい別れになっちゃったけど今日は笑ってライブを成功させなくちゃね」
大丈夫。お前には仲間がいるだろ。乗り越えられるさ。
______
「Why am I not being sung to? I wish more people would hear me」
「お兄ちゃん…」
「Oh, clown of the night... my sister born of the same loneliness and exclusion as I! You comfort me」
「うん、私たちは同じ存在。同じ心の闇から生まれた怪物」
「Do you understand? We are what we are, and we should be sung about!」
「だって私たちは倒されるべき怪物じゃない」
「Yes!」
「じゃあ宿主に言いに行かなくちゃね」
「「Look at us right in the eyes」」
原作との相違点
ウタ:知らない楽譜はちゃんと確認を取ったいい子な世界線のウタ(懸賞金10億4000万ベリー)。大人になったことで純粋さをなくしてしまった。世界の歌姫と呼ばれるにはまだ人気が足らないと思っている。もしも原作と同じ策を行った場合、世界の5割くらいがウタワールドに閉じ込められる(原作は7割)。
例えるなら、社会の軋轢に疲れたOLがイケイケな幼なじみに希望を見出している状況である。彼女が歌の力をもう一度本気で信じられるようになるかはルフィ次第。
参加者:大半が電伝虫の中継で観戦している。中継地は公表しているためライブに訪れるのはウタが欲しい勢力か生でウタを見たい狂人だけ。
ゴードン:今もエレジアで王様やっている。Tot Musicaに関することは知ってるだけ全て話した。レヴェリーがあるので不参加。
モルガンズ:友好的な金づるなので親身にしている。
シャンクス:ライブ会場に行かない。Tot Musicaがどれだけの脅威かも知らない。勝手に暴露されたのは少し怒っている。
使用楽曲
うっせぇわ
レディメイド
夜のピエロ
マザーランド
ONE PIECE FILM RED 敵マシマシシャンクス抜きおまちどう!
なんで懸賞金10億なんだって?そりゃあ悪いことしたからやろなぁ。ほら本人も血だらけって言ってるし。
この波に乗るために急いで映画見て勢いで書いたので在庫無いです。続きはゆっくり待ってね。
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