もしもTot Musicaの代わりにうっせぇわを歌っていたら   作:匿名希望の雑草さん

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私が書くと全てのキャラクターが冷静さ5割増しくらいになってる印象です。
びっくりするくらいみんな落ち着いてる。でも映画と違って小説は横槍くるとダレるし…


3話

「チェルロス聖に渡すにはおしいえ」

 

 男は天竜人だった。この世界で最も高貴なる世界貴族たる天竜人。彼らに反抗できるものは殆どおらず、故にどのような傲慢をも許された。男の傍らには奴隷の女が傅き、彼が座る椅子は奴隷の男だった。

 

 男は奴隷の女を1人1人撃ち抜いた。このような模造品などもはやいらないからだ。そう男には新たな女を迎え入れる準備があった。ずっと待ち望んでいた女だ。これまで何度も手に入れようとするたびに器用に逃れてきたが此度はそうは行かない。男は懸賞金のポスターを見た。

 

 ALIVE ONLY "傾国の歌姫" ウタ 10億4000万ベリー

 

 懸賞金を課したのはこの男だった。出会ったのはエレジア。今日のような晴天の日であった。とはいえここで多くを語る必要はないだろう。男は女を欲した、途中で何人か銃で撃ったのが気に触ったのか何やら騒いでいたが無理矢理にでも連れて行こうとした。その後なぜか気を失い、気がついた時には姿を消していたが彼の心には女の顔が残った。

______

 

【ビンクスの酒を 届けに行くよ】

 

 【ビンクスの酒】を歌いながらサニー号はライブ会場へ向けて進んでいた。ウタウタの実の消耗が激しいので誰かに連れて行ってもらうほうが楽なのだ、決してルフィと一緒に行きたいからではない。それに1つ言っておかないといけないこともある。

 

「ヨホホ。まさかウタさんがルフィさんと幼なじみだったとは知りませんでした。まえに一緒にコラボした時に言ってくださればルフィさんとのお話をしましたのに」

 

「あの時はソウルキングが麦わらの一味って知らなかったの。知ってたら根こそぎ聞いてた」

 

「そういえばあの時は素性を隠していましたね。ヨホホホ、失礼いたしました」

 

「ウタ!準備できたぞ」

 

 ルフィに言われついてくると、一直線に敷かれたコースの先に机があり、その上に肉が二皿あった。

 昔ルフィと一緒に競い合ったチキンレースだ。ルールは簡単、犬がコースの先端から襲いかかってくるので攻撃される前に肉を全部食べる。先に食べたほうが勝ち。

 

『ルフィこれあげる』『お、サンキュー…ぎゃー』

 

 いつもルフィの方が早く食べるので私はズルをしてジュースをルフィに渡し、気を取られている隙に完食するのが常だった。…つまり私は勝負に勝ち越しているけれどルフィには負けているのだ。

 

「ルフィ、今日は正々堂々勝負よ」

 

「ああ!」

 

「犬役は俺がやるからな…俺は犬じゃねぇ!!」

 

「自分で言うなよチョッパー…」

 

 綿あめ大好きチョッパーが人獣型からシカに変化する。…あの子ってシカシカの実とかかな、いつも人獣型でいるってモルガンズみたい。

 

「俺はトナカイだ!珍しい間違い方だな!」

 

「あ、なんかごめん!」

 

「審判はこのスゥーパーな俺がやる、準備はいいな」

 

「おう」「うん」

 

「んじゃはじめぇー!」

 

 食べる。食べる。食べる。食べることだけに集中する。隣のルフィを見ないようにただ目の前の肉を食べる。昔からルフィは食い意地を張っていたが、私ももう何回かわからないほど飢えを経験して食い意地なら。肉はどんどん減っていく、蹄の音が近づいてくる。

 

 あと2本…あと1本…食べきった!

 

 全て食べたと同時に急いでその場を離れる。辺りをみるとルフィも食べ終わっていた。どちらも食べ終わったためチョッパーは急ブレーキで止まっていた。

 

「「結果は!?」」

 

審判のフランキーに聞く。

 

「うーん、俺には同時に見えた」

 

「そうか!じゃあもう一戦だ!」

 

「ちょっとルフィ!ウタはこれからライブがあるのよ!休ませなくちゃ!」

 

「ルフィ、悪いがこれ以上は作れない」

 

「…そうか、邪魔が来たみてぇだしまた後でな!」

 

「おやおや、見聞色を鍛え上げているようだねぇ~」

 

 声のする方向を向くとサニー号の右隣まで移動した海軍軍艦の上に海軍大将の黄猿がいた。

 

「お前は…黄猿か!」

 

 ゾロが叫ぶ。

 黄猿は麦わらの一味にとってシャボンディ諸島で全滅寸前まで追い詰められた因縁の敵だ。、暴君くまの助けで生還したがあれがなければ全員殺されていただろう。

 

「麦わらの一味…久しぶりだねぇ~。だが今はお前たちとは戦わない。あっしは身辺警護の身でね」

 

「ジャルマック聖の御前である!」

 

 海兵の声で黄猿が後ろへ下がるとでっぷり太った背の高い壮年の男が現れた。

 

「久しぶりだな。ウタ。この日のためにわざわざスケジュールを空けた。さあ、わちきのものになるえ」

 

 瞬間沸き起こる嫌悪感と殺意を必死で抑える。ここで騒ぎを起こしたらルフィたちに被害が出る。楽しみは後。復讐は贅沢品だ。

 

「まるで子供みたいね、おもちゃへの手加減を知らない子供。あなたの壊したおもちゃは私の大切な人たちだった」

 

「違うえ、お前はお前の勝手な主張を持ち出してわちきの所有物を奪おうとした。だから奪われるくらいなら破壊したのだ。革命家には屈しないえ」

 

「戦争を止めることがあなたの言う『勝手な主張』ならそうね。あなたはそんな強大な権力を持って恐ろしくないの。私は怖かったよ。みんなの命が私にかかっているから」

 

「そうしてお前は仲間を皆殺しにした」

 

「違う、皆殺しにしたのはあなた」

 

「いいや違う、素直にわちきのものになっていれば『傾国の歌姫』なんて言われずに済んだえ」

 

「…平行線ね。あなたが何を考えているのかわからない。多分あなたから見た私も同じね。同じ血が流れているとは思えない」

 

「まるでわちきよりも上みたいな言い方だな。気に食わない。フィガーランドでなければ殺してたえ、黄猿、もう行くえ、挨拶はすんだえ」

 

「おいおっさん、ウタと何かあったのか?」

 

「…ふん!」

 

______

 

 軍艦が去っていくとロビンが口を開いた。

 

「『傾国の歌姫』ウタ 10億4000万ベリー、罪状は2つの国を滅ぼしたこと。歌姫としてだけじゃなく…急進的な革命家としても有名よ。もっとも今の話が真実だとすると彼女の本意ではなかったようね」

 

「ウタ、あなたこのライブで何をしようとしているの?」

 

「…簡単よ、かつて上手くいかなかった方法にもう一度ベットするの。つまり、天竜人の顔面をぶっ飛ばす。シャボンディ諸島の焼きましよ」

 

 私が天竜人を殴れば集まった勢力は逃げる。逃げるために海軍と戦う。つまり戦争になるのだ。これが私が集められる最大限の勢力。

 

 フィガーランドとウタウタの実、そしてシャンクスの娘というネームバリューを使えばまとまった戦力が手に入る。もう仲間はみんな死んだか去ったの。私に使える手はこれしかない。

 

 あいつの執着は異常だ。間違いなく来ると分かっていた。なら、極力一般人が来ないようにして向かえ撃つ。これが私の結論。

 

「私は自分の身勝手な思想のために戦力を集めた。あなた達もね」

 

「ごめんね、もうルフィの冒険に戻ったほうがいいわ。こんな狂った女はもう放っておいて。楽しかったよ」

 

 天竜人にも事情はあるのだから理由を探してた。対話で解決出来るんじゃないかって。でもどんなに調べても『気に入らないから』という理由以外見つからなかった。それだけの理由で国が滅んだ。みんな死んだ。

 

 だから私はあいつをぶっ飛ばす。用意した策が作用してできるだけ事態を大きくできればより良い。あとはモルガンズがライブ中継という形で配信してくれる。そうして時代は大きくうねり始めるんだ。

 

「わかった、おまえ今一人ぼっちなんだな」

 

 

 

 

 

「だったらウタ、お前仲間になれ」

 

 カヒュっと息の詰まる音が聞こえる。

 

 嬉しいのか悲しいのかもうわからない。涙は流れている。私が何をしたかったのかもうわからない。新時代って何?美味しいご飯を食べてチキンレースをするんじゃダメだったの?どうしてあの時の1人で海を出たの?

 

「おれも何もかも無くなったと思ったことがあるけど、ジンベエの助けで立ち直ってここにいる。それに天竜人をぶっ倒すのはこれで2度目だ」

 

「聞こえなかったの?もういいの、ルフィ、あなたには会いたかったけど巻き込みたくはないの」

 

 私はもう大切な人を誰も失いたくない。だから会いたいけど会いたくなかったし。仲間になりたいけどなりたくなかった。だってルフィ、あなたは私よりずっと輝いてるから。

 

「…天竜人をぶっ飛ばす程度がお前の言う新時代なのか?」

 

「じゃあほかにどうしろって!?こんな小娘に何ができるっていうの!?」

 

「仲間がいるだろ!!ここに!」

 

「放っておいてっていってるでしょ!」

 

【あーもう本当になんて素晴らしき世界 んで今日もまた己の醜悪さに惑う】

 

 私は【ギラギラ】を歌う。

 どうしてこんなに世界は醜いの?

 どうしてこんなに寂しいの?

 どうしてルフィと戦わなくちゃいけないの?

 私は、どうしてこんなに…

 

「!ギア4!!」

 

 私の武装色の拳がルフィのガードした腕にぶつかる。

 

「な、ルフィのギア4が押し負けてる…」

 

「グッ…あぶねぇだろ!ウタ!!」

 

【だのに人を好きって思う気持ちだけは 一丁前にあるから悶えてるんでしょう】

 

「彼女全然本気じゃないわね。一体どんな無理をすればこんなに強くなるのかしら。まだあんな若いのに。」

 

『もしかしたら歌っている間、あの子はTot Musicaの力を取り出せるのかもしれない』

 

 ゴードンさんはそう言っていた。否定はできない。歌っている間だけ私の力は四皇とも戦えるくらいに大きく増大する。私が、Tot Musicaそのものになりかけているの?

 

【ギラギラ輝いて私は夜を呑み】

 

「えーとそこの美しいお顔のお嬢さんは戦わないのかい?」

 

 ウタウタの実の能力で現れた【ギラギラ】の歌の化身にサンジが話しかけた。彼女の顔には大きな痣がある、普段からそれが嫌いで嫌いで仕方ない様子だった。だからだろうか、サンジにとってなんてことのない一言が彼女にとっては一大事だったようだ。彼女は持っていた槌を手放し恥ずかしそうに顔を隠した。

 

「…私は戦わない、むしろ早く宿主…ウタの暴走を止めたい」

 

 …まさかそうなるなんて…阿修羅ちゃん以外は勝手に行動することはあったけど明確に反抗の意思を示すのは初めてだった。歌を止めるべき?いいえそんなことはできない。歌を止めれば力が弱まり隙ができる。ルフィ相手にそれは避けたい。

 

「どうすればいいの?」

 

「ウタウタの実は消耗が激しい。今日はもう何度も使っているからなにかきっかけがあればすぐ眠る。だからあの子を助けて」

 

「わかりました。では私が彼女を眠らせましょう。眠り歌・フラン」

 

 バイオリンを用意するブルック。どうやら眠らせる手段があるようだ。

 

【もう健やかに狂っていたみたい それは世界の方かそれとも私の方ですか?】

 

 すぐに止めるためにルフィを振り払ってブルックに攻撃しようとする。しかしジンベエに海水をかけられ動きが鈍る。悪魔の実の能力者は海水が弱点で海に入ると力が抜けてしまう。ただし海水をかけられたくらいではそんなに効果はないのだが私の歌を少し中断させることはできる。単純に海水が口にかかって歌えなくなるからだ。人間は水の中では歌えない。結果、一瞬歌を中断させたことで力が抜けブルックに演奏を許してしまう。

 

【強い酸性雨が洗い流す前に 蛍光色の痣抱いて】

 

 押し寄せる睡魔。それでもなんとかしようと進むがルフィに手を掴まれてしまう。振り向くとルフィも眠る寸前だった。ブルックの眠り歌は周囲に影響するらしい。もう策はない。眠るだけ。そう気づいた私はルフィの手を握り返して眠りについた。

 

______

 

「…さて」

 

 ウタとルフィ・それにチョッパーが眠った頃、【ギラギラ】の歌の化身はおもむろに歌い始めた。

 

【恋をしてしまった 涙の痕 洗う雨は虹の予告編だ】

 

 【永遠のあくる日】を歌うことで歌の化身が姿を現す。【ギラギラ】の歌の化身とおなじ青髪の少女、ただし傷だらけなのか絆創膏やガーゼをところどころ付けている。【永遠のあくる日】の歌の化身は【ギラギラ】を歌う。

 

 【ギラギラ】の歌の化身が身振り手振りで筆談の意思を伝え、ロビンが用意したペンと紙で文章を書き始めた。

 

「サンジさん。美しいって言ってくれてありがとう」

 

 じとーっとサンジに嫉妬の眼差しを向ける【永遠のあくる日】の歌の化身を後目に筆談を続ける。【ギラギラ】の歌の化身はあまり慣れていない好意の言葉に単純に感謝を告げただけで、彼女自身にサンジに対する好意は今のところない。

 

「歌の化身はお互いの歌を歌うことで存在を保つことができる。これは宿主も知らないこと。ただし宿主の体力を消耗し続けるから手短に話すわ」

 

「お願い」

 

「ウタワールドはもう殆どTot Musicaに乗っ取られている。

 

ウタを救って欲しい。不本意だけど私達は夢の中の存在だから、あなた達に託す。

 

まずは彼女の服の中と控え室にあるネズキノコを残らず処分してほしい」

 

 麦わらの一味は【ギラギラ】の歌の化身の話に従い行動を開始した。

 

 

 

______

 

「…ここは」

 

青々とした草原に建つ風車達が作り出す田園風景。道行く人々は優しく声をかけてくれる。そんな穏やかな村だ。

 

「おお!ルフィ。こんにちは。ウタちゃんを探しているのかい」

 

「あ、そうだ。おれウタと喧嘩してってあれ?なんか声が高いぞ。それにおっさんすげぇ背が高いな」

 

「ははは!俺はおじさんだからな。ルフィももっと大きくなるんだぞ」

 

「?おれは十分大きい、ってええ!!小さくなってる!!!」

 

ここはフーシャ村。ルフィの生まれ故郷だ。

 

 

 

 

 

 

使用楽曲

 

ビンクスの酒

ギラギラ

永遠のあくる日

 




あれ、大海賊時代は宇宙世紀だった?

多分Detroit: Become Humanやりながら書いてたせいで原作とは別の意味で重い子になってます。もともと第1話からエレジア以外の国が滅んだ設定にしていたけれど、ウタが想定よりも追い詰められているようです。この世界線のウタがどうしてルフィに執着しているか理由がわかった方もいるかもしれません。

他の方が書いたREDを題材にした小説を見るのですが色々なルートがあって面白いですね。うちはTot Musica未開放独り立ちルートですがやっぱりウタと一緒に旅を出て欲しい気持ちもあります。

あとブルックが暴君クマにエレジアに飛ばされるルート誰か書いてほしい…たぶん2人で音楽活動(supported by ゴードンP)してそのまま2年後編でシャボンディ諸島で合流するはず。

誤字報告ありがとうございます。フーシャ村とココヤシ村間違えてる…赤髪海賊団をシャンクス海賊団にしてる…どうしてこんな間違い方したんだ…

この小説展開速すぎませんか?

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使用楽曲コード:15011429,75191491,N00990168

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