もしもTot Musicaの代わりにうっせぇわを歌っていたら 作:匿名希望の雑草さん
ルフィと初めてあった頃、フーシャ村を一望できる場所までルフィが連れて行ってくれた。とびきり美しくて、私の中にある世界そのままの景色とルフィの自慢げな顔が目に焼き付いている。あの時と全く同じ夕日が映し出すフーシャ村はおもちゃみたいに小さくて、遠くに見える酒場を懐かしげに見つめた。
私は今、ウタワールドにいる。ウタウタの実の本来の能力はこのウタワールドへ誘うこと。夢の世界へ招待して皆んなで現実逃避するのだ。…こんな捻くれた考えになっちゃったから追放されたんだろうね。けれど今私はウタワールドにいる。ソウルキングの眠り歌が私をここまで導いたのか、それとも誰かが招いたのか、ここで論ずるよりもまず動いたほうがいい。
自分が小さくなっていることを確認して、村で少し聞き取りをしてからこの風車へやってきた。一緒に眠ったならここにやってくるはずだよね。ルフィ。
______
「ウタ、ここにいたか」
振り向くと子供の頃の姿をしたルフィがいた。心做しか息が上がっている。そっか、子供の頃の体力に戻ってるんだ。
「ルフィ、見つかっちゃったね」
「なあここウタの世界だろ?なら早く目覚めさせてくれよ。ライブも始まっちまうし。おれ、ウタと一緒に冒険したいんだ!」
「…ごめん。できない」
「どうしてだ」
「制御できないの。起きようとしても、起きれない」
本来のウタワールドは私の思い通りに操れる世界。人をおもちゃにすることから、怪物を生み出すことまで何でも出来る。そんな世界に歌を歌うだけで誘い込めてしまう。だから政府は私を最大限警戒している。
けれど今は何も出来ない。この変質したウタワールドで動かせるのは私の体だけ。
「そっか、なら探そう!なにか起きるための手がかりはあるか?」
手がかりといえば彼女たち歌の化身だろう。彼女たちは普段はウタワールドにいるみたいだから何らかの情報を知っているだろう。
「手がかり…歌の化身達ならなにか知ってるかも、でも私はあなたと戦っ」
「じゃあ決まりだな。世界中走り回ってそいつらを探す!」
私を抱きかかえ風車の2階から飛び出す。そのまま地面に着地し私の分の衝撃まで吸収する。
「ちょ!ちょっと待って。私達さっきまで戦ってた!!こう、剣呑な雰囲気はないの!?」
「ない!!!」
ええ…じゃあルフィとあった時のセリフ考えてたわたしバカみたいじゃない…
ルフィと戦うためにフーシャ村を歩いてどの時期か調べたりしたのに…どうもこのウタワールドでは身体能力が当時のものに戻っている。だからルフィがゴムゴムの実を食べる前なら普通に倒せる可能性があると踏んだのだ。実際はゴムゴムを食べたあとだったから戦ったら苦戦するけど。
まあウタワールドから抜け出すなら協力しないとね。
「ウタ、船あるか?」
「…港に行ったけど無かったよ」
「そんじゃ、まずはゴア王国を目指そう。あそこなら2人で乗れる船あるだろ」
______
ルフィは私の手を引きズンズンと山へと入っていく。途中私達の母親のような存在の山賊ダダンのねぐらが見えたがルフィは避けるように道をそれた。
「ダダンには合わないの?」
「それじゃエースに会っちまうだろ!」
エース。
正直最初は相性悪かったな…
私はエースの死を映像ごしで見た。絶対乗っちゃいけない挑発に乗ったエース。白ひげは死ぬことよりも大切な父親だったのだろう。私も同じ状況でシャンクスを侮辱されたら耐えられただろうか。…あいつは自分の愛する者のために死んだ。その時点で私は泣いていたけれど、そのあとルフィはボロボロだしシャンクスは出てくるしで私の情緒は崩壊していた。
ルフィにとってエースは兄だった。だから会いたいのは普通のことなのに。
「どうして会いたくないの?」
「夢を見たんだ、あの時にサボとウタがエースが助けてくれた夢」
もしもサボが早く記憶を取り戻してウタと一緒にマリンフォードまで救援に向かっていたら。そんな夢を見たらしい。命からがら逃げおおせた私達はダダンの酒を飲みながら楽しく語り明かす。幸せな夢の一欠片。
…私もその夢は見ている。偶然にしては不自然ね。
「そんな夢を見てたんじゃ俺たちは前に進めねぇ!エースはそんなの望んじゃねぇだろ?」
「…確かに、死んだ俺のためなんかに泣くならとっとと海賊王になれっていいそうだね」
自己肯定力が低いから。いつも他人のために頑張ってたあいつならそう言う。
「ちげーよ」
「?」
「海賊王と世界の歌姫になれっていうよ」
…自己肯定力が低いのは私もだったみたい。同じ夢を見た時私はかなりウジウジしてたのに…ルフィは自分の海賊王になるという夢にひたむきで不安を吹き飛ばすくらい夢中なんだ。
「フフ、そうだね」
「お、笑ったな。久しぶりに会ってからずっと真剣な顔だったから心配だったんだ」
「あ…」
そういえば最近笑ってなかったかも、いやそうでもないか。でも。
「ありがとう」
「ししし、気にすんな」
そうして2人で笑い合っていると何やら焦げ臭い匂いがしてきた。これはゴミが燃える匂いだ。
…この先の
「…なあ、今日っていつかわかるか」
「今日は私が出港した日だよ。だからブルージャム達がグレイ・ターミナルを燃やしたあの日じゃない」
フーシャ村でマキノさんから聞いた日付は私が黙って出港した日。港に行ってみたけど出港に使った船はなかった。
でもここはウタワールド、私の心が作り出した世界なら日付なんていくらでも変えられる。
「おい!やっぱり燃えてるぞ!!」
ゴミの燃える嫌なニオイ。腐敗と退廃がもたらした酷く不愉快な腐臭。
誰かが言った、国の汚点は残らず燃やそう。だってここはキレイな国だから、ゴミがあるのはおかしいじゃないか。天竜人も来るし、ちょうどいい。人もゴミもみんな燃やせばここは世界一清潔な国!
…ヘドが出る。
ようするにゴア王国の国王は天竜人を招く為にスラム街とかしたグレイ・ターミナルを燃やすことできれいな国を演出しようとしたのだ。
森を出ればあの頃と同じ、壁を隔てた天国と地獄だった。
「可燃ゴミの日って言うらしいよ」
「可燃ゴミの日?」
「今日は汚いものを燃やす日なんだって」
「…そうか」
「ルフィ、私達の体は子供の頃に戻っているけれど覇気は使えるよ」
「!」
覇気は人間の精神に備わる力だ。強い意思を持つものには強い覇気が備わる。意思に備わる力だからこそ、精神世界のウタワールドでも発揮できる。
本当は言わないつもりだったけど私はこの情報でルフィを挑発したい気分だった。
「今だったらブルージャムもゴア王国の国王もぶっ飛ばせる、どうする?」
ルフィはこういうこと言ったら怒るよね。だって夢の中でそんな憂さ晴らしをしても前へ進めないのだから。私に怒ってくれる。そしたらルフィもちゃんと戦ってくれるよね。私を倒してくれる。けれどもし、もしもだよ、一緒にブルージャムやゴア王国の国王をぶっ飛ばしてくれるなら…海賊をやめて私だけのルフィになってくれるのなら。地獄の底でもどこへでも一緒に行ってくれる?
ルフィが私のことを見つめる。その瞳はすごく怒っていた。
「そんなの!自分で考えろ!!」
ルフィの発した言葉は私にとって完全に予想外の言葉だった。
何に怒っているのかわからない。
「そうやって自分のしたいことに蓋をして!それでお前は満足か!?」
「いや、この国の嫌いなやつをぶっ飛ばすって」
「違うだろ!それは選ばされてるだけだ!」
『家に火が!』『…あ…』『誰か!子供が下敷きになってるんです!!』『俺たちはゴミだってのかよ』
今でも聞こえる声。
『なんでだよーーー!!』『早まるでニー!お前が助けニー行っティも死体が増えるだけだ!』
「お前はあの時…何をしたかったんだ!」
「私…私は…」
私は…新時代を…
ぐるぐる回る思考の中でふと自分の声が聞こえた。
『私には夢がある
シャンクスと一緒に世界を旅してたくさんの曲を作って
最高のステージと私の歌で、世界を幸せにする!』
心からカチリと音がして、欠けた心のピースが埋まったような感覚に包まれる。
「みんなを幸せにしたい」
「…」
「こんな燃えて死ぬ結末なんてたくさん。目の前で苦しんでいる人を救いたかった。だって、目の前で死なれると寝覚めが悪いから。私は、このグレイ・ターミナルにいる人達を救いたかったんだ!!
誰かのためとかそんなの偽り!!目の前で人が死んだら私は悲しい!サボの船が沈んだら泣く!そんなのは嫌だ!
だから目につく不幸は自分勝手に手当たり次第救って救って救いまくる!
そして!!助かったみんなでライブを開こう!!私は世界の歌姫になる女!私の【衝動は燃やせないから】!!」
【上等さ チルじゃ足んない 衝動は燃やせないから】
「ルフィ、ありがとう。自分で縛ってたことに気づいた」
「…ああ」
「それでね。ルフィ、私と勝負しない?どっちが何人救えるか」
「今のおれに勝てるわけねぇだろ」
「じゃあ私が勝ったら私の付き人になって。負けたらあなたの仲間になってあげる。」
ルフィがにやりと笑う。
「言っておくけど私今なんでもできる気がしてるの、だって」
神曲ができたから。
「名付けるならそう、【FREEDOM】」
【嫌われないように ビクビク下ばかり見ていたって 何も変わんないさ 迷わずに突き進め step and step】
どちらが言うでもなく同じタイミングでグレイ・ターミナルへ向かう。子供の姿の私達があの時と違って逃げずに火の中へ潜る。
できたての曲が私の服装を変えていく。星とハートを象ったサングラスにばつ印のついたシャツの上にフード付きのピンクジャケットを羽織り、下はダメージジーンズ。そして肩に鉄パイプを背負った私の考えたストリート・チルドレンスタイルのファッションだ。
駆け出していく方向は同じ、少しでも困っている気配がしたら2人で助けに行く。障害物は全部鉄パイプと拳で壊す!
私達が辿った道がそのまま避難経路になる。私達のあとを人々が付いてきていた。
【上等さ 取るに足んない 同情じゃ救えないから You and I ガチの勝敗 革命を起こせ】
私ルフィに嫉妬してた!ずっとルフィと比べて勝手に負けてた!!重い女でごめんね!これからは!!直接対決だから!
「おっとここにいたか。お前たちの財宝を」
「(邪魔!!!)」
なにか殴った気がするけど気にしない!
「ありがとう助かった!」「あのよくわからん子供が道を作ってるぞ!続け!!」
感謝の言葉も無視!
【上等さ チルじゃ足んない 衝動は燃やせないから You and I タダじゃ絶対 終われない だから】
だってこんなに楽しい!私今自分のしたいことしてる!なら私が暴れるついでに助かれ!!
「ウタ!海が見えたぞ」
「DEATH WINK!!!」
突然衝撃が来たとおもったら目の前に道が出来上がっていた。
「イワちゃんだ!!」
(誰!?)
「友達だ!」
(じゃああそこまでで決着にしよう!ルフィ今何人!?)
「183人!」
(私も!)
【Hey hey hey 手を掲げ woah (woah)】
イワちゃんという人物が乗る龍の意匠が凝らしてある船へと向かう。そこに青髪に仮面をつけた少女が立ち塞がっていた。どことなく怒っているように見える。
「宿主何してるの!?ウタワールドの中で私達を助けても意味なんてない!!」
ガラリと燃えた瓦礫が少女の上へ落ちようとしていた。私は少女を抱きかかえ進む。ルフィは瓦礫を殴って粉砕する。
「!?!?!?!?!?」
【同調は二束三文 堂々と立ち向かって 明日を笑え】
ゴール!間伐入れずにルフィに言い放つ。
「私が助けた!」
「おれが助けた!」
「え、ちょっと話を」
「「どっちが助けた?」」
「いや、どっちも??」
「おれが瓦礫を壊したから俺の勝ちだ!」
「出た、負け惜しみ~私が直接助けたから私の勝ち!」
「「…ぷ」」
二人して大爆笑する。
「じゃあウタはおれの仲間だな」
「ルフィは私の付き人!」
「…付き合ってらんない」
青髪の少女はスタスタと何処かに行こうとするが「ヴァナアタはこっち!」とイワちゃんに船に載せられていた。
今気づいたけどイワちゃんって革命軍幹部のエンポリオ・イワンコフよね。
「お前たちが噂の子供たちか」
ローブをかぶった男がやってきた。ローブの隙間からは龍の入れ墨が見える。ということはこの人がモンキー・D・ドラゴン。英雄ガープの子でありルフィの父親。
?
どうして私の知らない人がウタワールドにいるの?
「おっさん!この船に乗せてってくれよ!探してる奴らがいるんだ!」
「ル、ルフィ、この人あなたのち」
私の言葉を遮るようにドラゴンが背を向けて言う。
「そうか、なら乗れ!自由の為に戦うものは誰であろうと歓迎する」
「ありがとおっさん!」
そうして私達は移動するための船を手に入れたのだった。
______
その後。ルフィと私は船に揺られながら今後のことについて話していた。
「ルフィ、ついさっきなんだけど」
現実の私が目をさましたみたい
使用楽曲
FREEDOM
あとがき
…なにこのルート。複雑骨折したプロットとウタワールドだからいいだろって気持ちと深夜テンションが生み出したのがこちら、ルフィ革命軍に同船ルートです。
いや、ほんとにどうしてこうなったの?書いてる途中何度もポルシェーミと間違えられたブルージャムさんが雑に倒されてるし…プロット上はブルージャムと因縁の対決だったんですよ。それがルフィがいらんこと言ってそれに対してウタが覚醒した結果がこれだ…
…ウタワールドの中とはいえエース一人ぼっちなんだが…
私はプロットを全く守れない性質なんだと思います。となると素直に原作沿いのほうが良いかもしれませんね…(REDで原作沿いやるとウタが詰みますが…)
あと感想お待ちしてます!