もしもTot Musicaの代わりにうっせぇわを歌っていたら   作:匿名希望の雑草さん

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他の小説見てるとやっぱりサボの一件は鬼門なんだなって。

可燃ゴミの日は発生が深夜だったので一部修正しました。


5話

 

 新聞王モルガンズ。おれが活字のDJなんて呼ばれるようになったのは新聞屋という生業に真摯だったからだろう。正義・悪・天竜人・海賊・革命家・海軍、おれはこれらをまとめてろくでなしだと思っている。もちろん俺自身を含めてだ。だが俺個人の主義主張は関係ない、新聞屋にとって重要なのは新聞を売ることだ。より多くの新聞を売るコツはよりショッキングな内容にすること。嘘も偽装も真実も関係ない。面白い方を載せる。そういう意味ではおれは至って中立な新聞屋なのさ。

 

 例え政府に脅されようともおれはおれが面白いと思った方を載せる。おれはおれを新聞屋と考えているから正義だの悪だのに惑わされずに済んでいる。しかし、かといって正義や悪の信奉者が間違っているともいえない。

 

 もちろん奴らが巻き起こす騒動がおれの飯の種になるからな。民衆が注目するのは奴らだ。だが確固たる信念をもって自らの正義を信じる奴らにおれはシンパシーを感じる。なんてったってどんな分野でも突き抜けたやつにはそうなった理由がある。おれが新聞屋として立っているように自分てやつをもっていてその通りに生きているわかりやすい奴が大好きなのさ。

 

 そしてウタ、2つの起源を持っている女。世界の歌姫になるという夢と新時代を作るという野望を持つ女。

 歌で大成したいというのなら十分に悲劇を体験している。あれだろ、歌っていうのは誰もが共感できるのがウケるんだろ?ならこの悲劇だらけの大海賊時代なら十分な共感を得られるに違いない。民衆の心に寄り添い、歌い、支えとなり、明日を生きる糧となる。

 新時代を作りたいなら力は十分にある。ウタウタの実は不安定のようだが革命には十分。なぜなら歌は思想を伝播するのに最適なツールだからだ。歌は民衆を扇動する、兵士を鼓舞する。たとえ負け戦であろうと、歌があれから『負ける気がしない』と突撃できる。それだけの力が歌にはあるのだ。

 どちらかを選ぶにしても世界を大きく動かすだろう。

 

 だがウタはそのどちらも選ぼうとしている。それは茨の道だ。1つでも手一杯なのに2つも選ぼうとしているのだ。当然どちらも中途半端になる。腕っ節もあるが歌唱力もあるといえば聞こえはいい、実際あいつはかなりいい線を行っている。一つの道を選んだ場合の8割くらいのところまで来ている。驚くべきことだ。しかしそれで許してくれるほど世界は優しくない。このままだとどちらも叶えられず死んでしまうだろう。

 

「だが俺はお前がたどり着く頂きから極上のスクープの匂いがするんだ」

 

 俺の鼻は絶対だ。俺は俺のスクープのためにお前をパパラッチするぞ!革命家にして歌姫ウタ!お前の新時代を見せてくれ!

 

 椅子にどっかりと座りウタが戻るのを待つ。会場の準備はとっくに終わっている。真新しいマイクとステージが海の反射光に照らされキラキラと輝いている。ライブの運営チームが何やら喋っているがこれはウタの判断が必要だ。

 

 海賊共はどうだと思い海を見る。あれは確か麦わらの一味の船だったか。ほとんどすべての勢力に狙われている。周りにいる船はバルトクラブか、傘下の船がアシストしているとはいえ多勢に無勢なのにマスト一つおれていない。強いな。ホールケーキアイランドの件から見ていたがあいつらは実にしぶとくそして面白い。だがこの海には四皇幹部に海軍大将までいる。沈没するのは時間の問題か、そう考えていると船が俺のいるライブ会場へ船体を向けた。

 

 何をするつもりだ、と考えていると船は思い切り飛び上がり追手を全て引き剥がした。すげぇ!あれが噂の後ろに主砲をつけた空飛ぶ船か!バルトクラブの船と一緒に空を舞い、ライブ会場の手前で大きな水しぶきを上げ着陸した。

 

 船から真っ先に降りてくるものがいた、あれは黒足のサンジ。ヴィンスモーク家の末っ子、ホールケーキアイランドで見た奴らも続々と降りてくる。

 

「なあウタさんの控室はあるか?ウタさんが眠っちまってるから連れてく」

 

 船から黒足のサンジがウタを背負って現れた。おれはさっさと場所を教えると一味全員で向かっていった。さて、海が凪ぎ始めた。太陽に照らされた海はキラキラと光を返す。変化の時ってやつだろうか、願わくばウタと麦わらの一味、この出会いがおれのスクープにつながるように願いながら電伝虫の調子でも見に行った。

 

______

 

「お、起きたか」

 

 目を覚ますと控室の中にいた。ルフィの仲間たちが周りを囲んでいるところをみると眠った私をここまで連れてきてくれたようだ。

 体を起こし背伸びをする。何やら彼らを見ていたのが久しぶりな気分。私ルフィと戦ってたのよね、一方的に敵対して自分たちの船長を攻撃したのにどうして連れてきてくれたのだろう。

 

「ここまで連れてきてくれてありがとう、ついさっきルフィのこと殴ったのにどうして助けてくれたの?」

 

「まあルフィはそういう気にしないやつだし。私もココヤシ村を救うために一度裏切ってるから気持ちはわかるの。それにロビンとフランキーはもともと敵対してた。ウソップは一度喧嘩になって船を降りてるし、サンジなんてルフィを殴って無理矢理去ろうとしたのよ。ようするにルフィはあの程度じゃ見捨てたりしないわ、ココヤシ村の件もあるし」

 

 ええ…私の幼馴染みどうやっていままでまとめてきたの…昔のままの性格なのにやるときはやるんだから、まるでシャンクスみたい。

 

「ウタが眠ったあと海軍にも海賊にも襲われて死ぬかと思ったわ」

 

「黄猿やあと1人大将がいるようだったがあいつらは攻撃してこなかった、なんでだ?」

 

 海軍大将はジャルマック聖に従っているから奴の意向だろうと伝えると海賊狩りのゾロは得心がいったようだった。

 

「ねえ、ルフィは起きてる?」

 

「いんや、まだ寝てる。チョッパーもな」

 

 やっぱりまだウタワールドにいる。ウタウタの実で造られたウタワールドは私が起きている間だけ維持される。私が眠ったら解除されるのにウタワールドが維持され続けているのはおかしい。

 

 それに、ウタワールドにいる私と同期が取りづらい、届く情報がまるで早送りをしたように圧縮されている。時間の流れがおかしくなっているの?

 

「たぶんウタウタの実の能力のせいだよ。ルフィとチョッパーはウタワールドに囚われてる。でも私も解除できないの」

 

その話をナミ達に伝えると

 

「あなたが出現させた青い髪の子がTot Musicaって奴にほとんど乗っ取られてるって言ってたわ」

 

 と返事が返ってきた。

 

「その子は【ギラギラ】の歌の化身ね。それにTot Musicaは伝説に存在する怪物だよ、悪魔とも魔王とも呼ばれている」

 

「ええ、私も聞いたことがある。エレジアにそういう伝説があるらしいわね」

 

「でもそのTot Musicaとウタさんはなんの関係があるんだ?」

 

「Tot Musicaはウタウタの実の能力者が歌うと出現するの、原理は私が出現させた【ギラギラ】の歌の化身とおなじ、でも私はTot Musicaを歌ったことがない」

 

 そうなのだ、私はTot Musicaを歌ったことがないどころか楽譜を見たのも幼い頃の一度きりだ。ウタウタの実の最終手段だからある程度調べているけれど、伝承を見る限り歌わないほうがマシだろう。

 

「他にその【ギラギラ】の歌の化身はなんて言ってた?」

 

「ま、まあ、あとは雲をつかむような話よ。あなたはもっと精神的に成長しなければならないって、ウタウタの実のさらなる覚醒をしなければならないそうよ」

 

 さらなる覚醒。え…なにそれ。

 

 

 

「で、もう一つ言っていたの、覚醒のためにあなたにルフィの代わりをしてほしいって」

 

「は?そんなの通るわけ無いでしょ」

 

 【ギラギラ】なんでこんな事言ったの…

 

「仮にあなた達私の言う事聞きたいと思う?ルフィの幼なじみとは言え初対面の人に船長代理をさせたい?」

 

「いえ、私はルフィさんの命令しか聞きたくありません」

 

 だよね。

 

「でも、あなたの問題を解決しないとルフィは起きないのよね」

 

「そうそう、そこよ。そのためには私がルフィの代わりをしなくちゃいけないって言ってるんでしょ」

 

 ルフィはウタワールドに閉じ込められている。解除するにはウタワールドの制御を取り戻す必要がある。制御を取り戻すには私が精神的に成長しなければならない。そして、成長するには。

 

「私ね、仲間を全滅させてるの。今も立ち直れてないからこんな天竜人を殴るなんてことやろうとしてる。だから、もう一度やってみろって【ギラギラ】は言ってる」

 

 あの時のことを思い出す。仲間の死体を1人ずつ抱きかかえて埋めたこと。一人ひとりの重さを噛み締めて冷たい土に押し込めて。あんなのもうやりたくない。だから、1人で動いたほうがいいって思った。

 

 けれどそれもおしまい。この過去をこえないといけないんでしょ。

 

 ルフィともう一度グレイ・ターミナルの悲劇を体験して自分の原点を思い出した。私はみんなを幸せにしたい。そのために

 

 

 

 私は自由(ルフィ)になる。

 

「みんな、私はルフィじゃない。腕は伸びない。あんなに大食いじゃない。明るくて、肝心なところはバシッとする性質じゃない。ルフィも私の能力の暴走に巻き込まれて迷惑をかけてる。誰かに助けてもらわないと極端な選択をして死んじゃう女だよ」

 

 

「だから力と命を私に預けて、必ずルフィを助け出そう」

 

 

______

 

 

「ということがあったの」

 

「くかー」

 

「ルフィ寝ちゃってる…ウタワールドの中で…」

 

 結構大事な話だったのに…まあウタワールドの今の時間帯は深夜だから眠いのはわかるけど。

 ここはイワちゃんが用意してくれた革命軍の船の船室。靴をカツカツと叩き少し不機嫌になりながらルフィを揺さぶって起こした。

 

「わりぃ寝てた。それでなんだっけ」

 

「現実の方はナミと私でなんとかするって話」

 

「そうか、分かった」

 

「心配しなくていいの?」

 

 私だったら上手くいくか心配して何度も聞くんだけど。

 

「おれはあいつらがいねえと生きていけない自信があるが、おれは船長だからな。あいつらが出来るって言ってんだろ。なら信じる。そのかわりウタ、お前はここから外でも動けるんだろ。ならあいつらを守ってくれ」

 

「わかった、もともと私がルフィを眠らせちゃったのが原因だからね。絶対に守るよ」

 

「おう、じゃあさっさとこの場所から出ねぇとな」

 

 時折波の音が聞こえる船の中で、2人で誓い合っているとドアを開ける音が聞こえた。音の主は青のパーカーと青の仮面をかぶり、頭上に天使の輪が浮かんでいた。

 

「【夜のピエロ】の歌の化身ね」

 

「さっきぶりね」

 

 私が作った歌の化身。だけどどうしてか私に反抗的な目をしていたのであまり歌っていない歌だ。

 どこであったかと記憶を辿ってみるとさっきグレイ・ターミナルで助けた少女だった。仮面を被ってなかったから気づかなかった…

 

「宿主、どうしてTot Musicaを歌ってくれないの」

 

 剣呑な雰囲気が広がる。私は拳を固めて攻撃する準備をした。

 

「Tot Musicaってなんだぁ?」

 

「伝承では国一つ滅ぼせる上に倒す方法さえわからない魔王を開放する気にはなれないよ」

 

「どうして?歌ってくれないのは寂しいよ。歌は歌われてこそその価値を示せる。みんなに憶えてもらえる」

 

「よく分かんねぇけどおれが歌うんじゃだめなのか?」

 

 そうだそうだ。歌うなら誰でも出来るよ!

 

「ウタじゃないとみんなに憶えてもらえないよ」

 

「じゃあ歌った後に何をするの」

 

「決まってるわ。気に入らないやつみーんな壊すの。海軍も海賊も世界政府も天竜人も!私達民衆を殺してきた連中を皆殺しにする!

 

私達は!エキストラじゃない!!

 

反対意見なんてないわよね。だってあなた達もやってきたことだもん」

 

エニエスロビー陥落インペルダウン襲撃

 

 私が行った2つの国の国家転覆も、目的があってやったとはいえ被った規模は甚大。それは認める。だけど一つ気になることがある。

 

「それをやったあとにお前たちは何をしたいんだ?」

 

 そう目的がわからない。

 

「? 私達は歌だよ?そんなのないよ。それに目的らしいものは私は達成してるし。【夜のピエロ】はいい歌ね。もう少し歌って欲しいよ」

 

 私は拳をゆるめて戦闘態勢を解除した。

 

 そう、ないのね。自分たちは歌だって言ってるけれど、欲も手段も過去さえある。『私達民衆』、ね。前から思ってたんだけど、歌の化身ってさ、降って湧いてくるものじゃないよね。

 

 私が初めて歌の化身を呼び出した時にそう自称していたからそのまま歌の化身として扱ってるけれど、ちゃんと生きていて意思があって、精神的にも肉体的にも傷つくことがある。ならあなた達は人よね。

 

 そしてもう一つ、ウタワールドに人が取り込まれた状態でウタウタの実の能力者が死ぬと、ウタワールドは外とのつながりが切れて永遠にウタワールドは存在し続けることになる。こんな情報が残ってるってことは過去に帰れなくなった人がいたってことだよね。

 

 ならあなた達ってTot Musicaも含めて『過去に存在した人』なんじゃないの?ウタワールドに閉じ込められて出れなくなった人の成れの果て。ウタウタの実を通じて外へ出られるなら私に協力するし、反対にTot Musicaに加担する人も現れる。

 

 ずっとTot Musicaだけが現実に出現できることに疑問を持ってたけど。これが一つの答えなのかしら。ただウタワールドに閉じ込める条件がまだあるとしたら、知らず知らずに閉じ込めている可能性がある。それは恐ろしいこと。もしもルフィがその条件に引っかかってるとしたら辻褄が合う。

 

 どちらにせよ。この話がもしも本当なら、私はTot Musicaを含めた全ての人を開放したい。

 

「島が見えてきたぞ」

 

 ルフィが声を上げる。【夜のピエロ】の歌の化身、いやちゃんと人扱いすべきね。【夜のピエロ】ちゃんは船を降りようとドアへ進み始めた。

 

「まって、あなたのこともっと知りたい。あなた達の身に何が起こったのか。もしかしたら力になれるかもしれない」

 

 【夜のピエロ】ちゃんは僅かに目を大きくして私を見つめた。

 

「私ね。ウタ、あなたに敵対されると思ってたの。けれど違ったみたい。わかった、どこかで話しましょう」

 

 そうして今度こそ【夜のピエロ】ちゃんはその場を去っていった。

 

「なあウタ、あの島どっかで見たことあるぞ」

 

 ルフィは船の窓から乗り出して外を見ていた。私も子供の体を活かしてルフィの上から外を覗いてみると、みかん畑が見えた。

 

「もしかして、ココヤシ村?」

 

「そうだ!ココヤシ村だ。懐かしいなー」

 

 そう、あたり一面みかん畑のナミの故郷。ここが過去を映し出した場所と言うならベルメールさんはいるのだろうか。もしも本物のベルメールさんがいるとしたら。

 

 私はどうすればいいだろう。




アンケート協力ありがとうございます。このままのスピードで行きます。
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