もしもTot Musicaの代わりにうっせぇわを歌っていたら   作:匿名希望の雑草さん

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誤字報告ありがとうございます。

最新のジャンプのネタバレが若干含まれます。ご注意ください。

予約投稿忘れてた…まあいいか少し早く投稿するくらい


7話

「いいよ。じゃあねナミ。また現実で会おうね」

 

 そういってウタは出ていった。はっちゃんも出ていき残ったのはナミ1人。涼しくなった部屋、それでも明かりはか細く光るだけだった。

 

『ナミ、いつかあなたを開放する人が現れるよ。だから待っててね』

 

 いつっていつよ。とナミは再び涙を流す。せっかく来てくれるなら助けてほしかった。いつなんて待たずにすぐにでも。

 どうして私を連れて行ってくれなかったのと悲しさがこみ上げてくる。闇がナミにまとわりつきそうな時、か細い声でこういった。

 

「…助けて」

 

 

 

 

「ごめんやっぱりさっきの無し」

 

 大きな音を立てて茨がアーロンパークを貫く。大木ほどの茨が目の前に現れその上によく知る人物がいた。

 

「ベルメールさん?ウタ?」

 

 死んだはずのベルメールさんとなぜか大きくなったウタだった。よく見ると知らない男の人もいる。

 

「夢の中とか現実じゃないとかもうどうでもいいや。私に助けを求めてきたんだもん。だったら助けるに決まってるじゃない」

 

『そんな夢を見てたんじゃ俺たちは前に進めねぇ!エースはそんなの望んじゃねぇだろ?』というルフィの言葉をウタは気にしていた。ここで何かをやっても意味がないと言い聞かせてアーロンパークを後にしていた。けれどそれは不自由だ。考えなんて一貫していなくても助けを求められたら助ける。それだけだと思った。

 

「ししし」

 

「あはは!ウタ、強くなったね」

 

 ベルメールさんはナミの肩を叩き抱きかかえる。

 

「ナミも頑張ったね」

 

 ナミは今日何度目かの涙を流した。

 

「ヨシ!!じゃあ行くぞ!!」

 

 ルフィの声を合図に今後こそ、本当に今度こそ茨の穴へ4人は落ちていく。これでココヤシ村の出来事はウタにとって完全に過去になった。少女時代のトラウマを乗り越え、ウタはウタワールドの中で大人の姿を取り戻し進んでいく。

 

【おいで 私がMotherlandになるよ 劣勢らにラブを】

 

______

 

 ヨルエカ少年は羊飼い。ボサボサな髪とそばかすがチャーミングポイントの毎日羊の世話をしているどこかの国のだれか、何事もなければ故郷で結婚してそのまま骨を埋めるだろう。それでいいとヨルエカは思っていた。

 子供ながらに羊の世話を任せられている。それはすごいことだ。責任感と能力がないと務まらない。そしてヨルエカにとって羊飼いこそ自分がやるべきことでそれを誇りに思っている。夢の中にとどまるよりも海賊や世界政府の脅威がある現実を選ぶくらいに自分の職業を気に入っている。

 

 そんなヨルエカはウタという有名な歌姫を楽しんでいた。

 ほどほどに入れ込まず、かといって好きな曲のトーンダイヤルを少ない手持ちで買うくらいには夢中だった。ウタの楽曲は克己心を揺さぶるような曲が多く海賊や革命軍といったアナーキストによく好まれている、そのなかでもヨルエカが好きな曲はしっとりとした異色作【夜のピエロ】だった。

 

【街灯は消えてく 孤独な夜が誘う】

 

 トーンダイアルから流れている曲を聞きながら仕事を続ける。

 ウタ自身の評判を村に住む人達に聞けば二分される。共感するか、それとも恐怖するかだ。ウタの経歴はある程度公表されており時代に翻弄された歌姫と新聞はそう宣伝する。兄と母と慕うものを殺され、住んでいた土地すら2度も追われ、ローグタウンの路地裏でストリートチルドレンとして育った少女時代。培われてきた反抗心は止まることを知らず懸賞金10億ベリーの賞金首になってしまった。

 この世界には海賊や天竜人から大切な人を奪われた人が多く、そうした人たちにもウタの歌は評価された。時代に翻弄されまいと抗い自分らしく振る舞おうとする楽曲に共感をおぼえ、だからこそウタという人物をただの革命家の極悪人と片付けられない魅力につながっている。

 

 もちろん被害者ビジネスだと揶揄する人もいる。もしも平和な世の中ならその声も大きいが、同じ被害者の数が圧倒的に多い大海賊時代ではかき消されてしまっている。マスコミやゴシップの力を最大限に利用している強かさをウタに感じていた。

 

 また直接的な繋がりはないが革命軍がプロパガンダ用に【阿修羅ちゃん】の使用ライセンス契約をしており革命軍の支配下でよく流れているそうだ。【閻魔様さえ喰らって】はインペルダウン襲撃、【くだんない僧と踊るくらいなら 悪魔と手繋ぐわ】の僧は「仏のセンゴク」、悪魔は「モンキー・D・ドラゴン」を指しておりあのウタも革命軍を支持していると宣伝している。

 

 ウタが四皇シャンクスの娘であることはすぐに世界中に広まった。次の日にはシャンクス本人から確認が取れ確実なものとなった。同時にシャンクスが幼少期のウタを放任、悪く言えば育児放棄していた事が判明し世界からの評価が少しだけ下がった。四皇の時点でもともと最底辺だったので誤差の範囲だが。

 

 そして【夜のピエロ】は孤独や、何も成せず歴史に名を残さずただ民衆の影に埋もれていく悲しさを歌っている曲だとされている。ヨルエカがこの曲を好きな理由はウタの本性が垣間見えるような気がするからだ。

 

【理由もない不安が胸に押し寄せるんだ 溺れそうだ 足掻くだけの日々】

 

【使い捨てのような毎日に ただ踊るだけのエキストラ】

 

 本人もこんな歌を道具として扱うことを望んでいないのではないか。本当はこんな分不相応な立場を放り投げて小さな酒場の看板娘として時折歌うくらいが幸せだったのではないか。

 結局のところウタの本心なんてわからないので考えるだけで行動に起こそうとかはしないわけだが。それでも1人の少女の幸せを願うくらいはできる。

 

 そういえば今日はライブの日だ。映像電伝虫に録画する準備を村の町長さんがしてくれているから仕事が一段落したら見に行こう。ヨルエカはより一層仕事に精を出すのであった。

 

______

 

【街灯は消えてく 孤独な夜が誘う】

 

 試しに【夜のピエロ】を歌ってみた。やっぱりあっちが呼びかけに答えることが条件なのね、彼女が現れることはなかった。

 

(まああの子は事情がありそうだからねぇ)

 

(ベルメールさんは正体を知ってる?)

 

(いや、全く心当たりはないね。一体どこのどの時代の誰なんだろね)

 

 そう。ならあの子が場を用意するまで放置ね。

 私は今ライブ会場の舞台裏にいる、麦わらの一味はここで待機している。

 

「お前はおれ達を危険に晒してるからな、いくらルフィの幼なじみとはいえ限度はある。だから精々気張って戦え」

 

 ゾロから詰問か奨励かわからない言葉をもらう。多分詰問だろう。いや、錯乱して船長に殴りかかる人は警戒すべきだと思う。しかもそのせいでルフィ眠ったままだし、そんな事になった元凶を船長代理みたいに扱わないと行けないこの状況は無茶苦茶でしょ。

 

「うん。私はしでかそうとした責任は取る」

 

(いいか、お前のウタウタの実は体力を消費する。慎重に使えよ)

 

 【阿修羅ちゃん】の声を聞きながら深呼吸をする。

 短い時間で作戦を練った。

 ロビンの報告によれば四方海戦が繰り広げられているそうだ。今朝のあれだけじゃ聞き入れない荒くれ者が海軍だろうと構わず暴れまわり、それ以外の強かな者たちはライブ会場へ入って睨みを聞かせている。海軍も海賊も同じように席に座っている、といえば聞こえはいいけど実態は一触即発。そして私がこの火薬庫の中心に立っている。

 

 みんな私が目的なんでしょ。ウタウタの実を持っていて、シャンクスの娘。さらえば大金、殺せば名声、目指す先は海賊王。ならみんな海賊やめて囚人にならない?海軍の人とかももっと真っ当な就職先紹介するよ、革命軍とかどう?ま、聞かないよね。聞かないからここまで来たんだもん。

 

 なら私が囮になればいい。目標は私一人だけ、同業他社多数、出歯亀上等、ならどんなに罠だとわかっていても動かざるを得ない。

 私はマイクを手に取りゆっくりと静かにステージ上に姿を現す。歌いながら出てもあなたはどうせみんな耳栓してるでしょ。ならこっちにも考えがある。モルガンズが全世界生中継を行っているカメラへ目線を合わせる。

 

「このライブを楽しみに中継を見ている皆様。しばらくお待ち下さい。今から会場にお越しの方々への対応を行います」

 

 そして指を突きつけながら観客席全体を見渡す。

 ウタウタの実は心に残る能力、ひと度私の歌を聞けば夢見心地になる、ライブは非現実的な空間っていうよね、現実から離れて夢のような空間に招待してくれる。だからウタウタの実はウタワールドに招く能力になっているんだ。

 でも歌の可能性は多様にあり、現実を突きつけて立ち向かう勇気を与えるものもある。私のウタウタの実の覚醒はこっちだ。『まるで車に追突されたかのように錯覚させる』。これに見聞色と武装色をまとわせれば耳栓だろうとなんだろうと『まるで遮るものがないかのように鮮明に』届くようになる。

 

「どうせ私の歌を楽しみに来たんじゃないんでしょ。来なよ」

 

 大人しくライブ会場に来たみたいだけどそれは機会を伺うためでしょ。海賊たちの歓声とどよめきが聞こえる。次々と舞台に上がり私を取り囲むように近づく。海軍は様子見みたいね。

 

「立って武器を抜いたなら覚悟しなよ、私は敵とみなすからね」

 

 私はすっと背筋を伸ばして息を吸う。

 

「ライブの始まりは勢いの良い曲がよかったけど、こんな曲はどう!?」

 

【マザー マザー 許してくれますか 大いなる愛でも 消せないバツを】

 

 大量の茨が飛び出てライブ会場全体を覆う。モーガニアの人たちは人を縛るの好きでしょ、なら自分も同じ目にあいなよ。右往左往する海賊達を次々と捕える。しっとりとした黒色のマントに身を包んだ私はさながら茨の魔女。この歌は私の罪悪感から生まれた、ベルメールさんを助けられなかった私の罪悪感はやがて力を求める渇望へと変わった。バラには棘があり近づくほどにきずがつく、きっと私を嫌う人たちにはこんな感じにみえてるんだろうな。それでも私を理解してくれた、好きになってくれた人がいる限り私は進む。

 

【ああ 私は世界中に疎まれ憎まれ生きていくと 割り切れたら本当にどれだけ良かったんだろうな】

 

「上だ!上から攻めろ!」

 

 海軍や少数の海賊が月歩を使い突撃してくる。茨は天に届かないからそこから攻めるのは当然だよね。じゃあ天からの攻撃はお願いね。ナミ。

 

「雷霆!!」

 

 ナミの大技が決まり。次々と敵が落ちていく。空はナミとウソップ、陸は私、そして海にはジンベエが迎撃準備をしている。これで敵はかなりの人数を倒せた。

 

 そこに私の背中を【マザーランド】の歌の化身がふわりと抱きかかえた。【マザーランド】の歌の化身は茨で周りを覆い、茨が解けた時には私は普通の服に戻り【マザーランド】の歌の化身はベルメールさんへ姿が戻っていた。

 

 どことなく優しい雰囲気に私はベルメールさんの腕を掴み少し俯いた。

 

「ナミは強くなったね」

 

(うん、びっくりするくらい強くなった)

 

 いつでも笑ってられる強さを手に入れんだね。すごいよナミ。

 後でベルメールさんに会わせてあげるからね。

 

「じゃあ次はウタの番かな」

 

 そうだね。そろそろ次に行こう。私は歌をやめあたりを見回す。ベルメールさんが消え、茨も消えると立っているのは実力者揃いだった。

 

 実は万が一本当に純粋にライブを楽しみに来た人には危害は加えないように座ったり攻撃体制でなければ攻撃しないように調整していた。例えばそこにいるうるティは普通に聞いていたのか傷一つついていない。

 

「…姉貴の言う通りにしてみたが」

 

「私も予想外アル、あいつ多分アホじゃないアルか?このまま待機するアルよ」

 

「どっちだよ」

 

 なにか失礼なことを言っている気がするが気にしないことにした。

 さて、ここからしばらくは体力の温存のためにあまり歌わずに純粋な実力で戦っていくことになる。

 サンジやゾロ、麦わら傘下の海賊が飛び出してきて戦闘を始める中、私も戦場に身を投じた。

 

______

 

「フィガーランド家であるのがやりづらいな」

 

 聖地マリージョア、世界政府の首都とも言えるこの土地で一際大きなパンゲア城の執務の間にて5人の老人が話し合っていた。彼らは五老星と呼ばれる世界政府の表向きの支配者である。その彼らが今話しているのは彼らにとって目の上のたんこぶである歌姫ウタの話だった。

 

「事前に手の内が分かっているのは不幸中の幸いだろう、ウタウタの実・Tot Musica、やつの手札はこんなところだ」

 

 スクープとしてすっぱ抜いた世界経済新聞社のモルガンズには称賛を贈りたい気持ちであった。ウタウタの実をあのウタが食べているとわかったのは最近のことだが対策はすぐにでもできる。

 

 場所が分かっているのなら準備の上でひねり潰せば良い。五老星の目的はウタの殺害だった。

 

 そのために海軍大将二人を配備しウタウタの実を無力化するための装置まで用意した。ジャルマックが隠していた虎の子も役に立つときが来たということだ。しかしイム様の手を借りてライブ会場を消滅させることは敵わない。

 

「あれはライブという不特定多数が中継で見ている場で映すわけにはいかないからな」

 

 SSGが開発していた電伝虫がどういうわけかモルガンズの手にわたっており彼の手腕によって今、電伝虫により全世界でライブ映像を配信している。さらに複数の周波数と電伝虫を使用し1つが使用不能になっても他が生きている限り動き続けるシステムを組み上げていた。もちろんやめさせようとしたが全ての電伝虫を停止するには時間が足らず、またモルガンズは会社ごと移動しているので捕まえることも出来ずに各国の支配者階級のライブ視聴を止めるかミュートにするように通達するまででとどまっていた。

 

 そんな五老星もウタウタの実の危険性を配慮し安全に状況を把握するためにライブ映像をミュートの状態で視聴できるように手筈を整えていた。

 

「そろそろ始まるか、電伝虫を起動してくれ」

 

「は!」

 

 CP0のルッチが電伝虫を起動する。すると。

 

【マザー マザー 許してくれますか 大いなる愛でも 消せないバツを】

 

 ライブの音声が大音量で流れ出した

 

「なんだと!」

 

「ミュートはしたのか」

 

「確かにしました、しかし聞こえます!」

 

「もう手遅れだ!!この場にいる全員が聞いてしまった!」

 

 ウタはミュートだろうと声を届けられるまでに成長してしまっていた。それに気づかずに五老星は歌を聞いてしまい慌てふためいた。ウタワールドの厄介なところは気づくこともなくウタワールドに取り込まれるところだ。感知は不可能。実際はウタはウタワールドに取り込んではいないし、そもそも取り込めないのだが、五老星にそれを知る術はない。

 

「どうする!」

 

「どうにもできん!ウタウタの実は能力者本人が解除しなくてはならない!うろたえるな!」

 

「ウタウタの実は能力者が死ぬと取り込まれた者はそのまま目覚めぬ!われらはウタの殺害を命じたんだぞ!!」

 

「だからうろたえるな!」

 

 結局出した結論は待機だった。ここから出来ることは何もない。事態が収束し自分たちの計画が崩れ、ウタが生存することを祈るのみだった。

 

 

 

使用楽曲

夜のピエロ

マザーランド




ウタワールド:憎悪克服 罪悪感克服 孤独開始

やーーーっとライブ始まったよ誰だよ3話目でライブ始めるって言ったやつ…私だ…

あと五老星ごめんね。設定改変した時にこうなるとは想像してなかったよ、でも最近何かと物騒だし、御老体は静かに安静にしているといいよ。

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