もしもTot Musicaの代わりにうっせぇわを歌っていたら 作:匿名希望の雑草さん
いつもうるさい世界政府共がだんまりだ。このモルガンズ様に対して沈黙ってことは公表していいってことだよな。目の前にいるのはウタそっくりのガキ。アラマキがスペアだのなんだのべらべらと言っていたことからしてあれは海軍肝いりの新兵器ってやつだ。何らかの悪魔の実を食べさせているようだが、それはあのガキがワンオフ機ってだけで素体自体は量産可能だろう。
思い浮かべるのはジェルマのクローン軍団。ホールケーキアイランドで見かけたクローンは姿形が同じで時間はかかるが好きなだけ量産できるって代物だった。廉価で質のいい兵士を生産できる技術。そいつにどうにかして手に入れたウタの血統因子を入れればウタそっくりの人形の出来上がりだ。
下種張った天竜人の考えることはあれだろ?世界最高の歌声を量産して天竜人の皆さんにプレゼントってやつだ!つまらねぇ!!どうせウタ以外の血統因子も手に入れてるんだろ!??ウタを造る必要なんてねぇよなあ!!
おれの顔にびっくりするアタッちゃんに筆談で撤収するように告げる。スクープ映像はこれで十分だ。トラファルガー・ローがウタを回収したのを見て電伝虫を停止する。こうでもしないとアラマキあたりがこっちをぶっ飛ばそうとしてきそうだからな。
「いつになく気が立ってるっすね」
とアタッちゃんが筆談で返してきた。これで怒らないならおれは聖人か?商品をコピー・密造するのは違法だろ?人間をコピー・密造するのは合法なのか?違うだろ。ああそうさ、おれはおれが肩入れして注目しているウタにつまらないちゃちゃを入れられて苛ついている。とはいえこのスクープにおれの主観は入れない。すべて事実だけをばらまいてやる。
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ウタにそっくりな顔立ちの8歳ほどの少女が現れライブ会場にいた海賊たちを蹂躙する映像は世界中に放映された。
五老星は事態が好転したと見て各地に連絡を取れるか確認しようとするがもう遅い、手遅れだった。
「なんだ…これは」
ライブを見ていた者の中に四皇シャンクスはいた。赤髪海賊団のクルーたちも唖然としている。
ウタのような姿をした少女は褐色の体に髪は白一色、背中に炎と翼を背負っている。
「スペアだの言ってたが肌の色や翼はなんだ?背中に炎とか意味ないだろ」
「ルナーリア族だ」
シャンクスの言葉に一味が振り返る。
「特徴のすべてが絶滅したルナーリア族を示している。ルナーリア族は自前で飛行能力と発火能力、それに硬化能力を備えた種族だとレイリーから聞いたことがある。つまり」
あいつらはなにかとんでもない研究にウタを巻き込んだってことだ。
船の周囲を猛烈な覇王色の覇気が放たれ、周囲の鳥や魚が気絶する。シャンクスは激怒していた。普段は唾を吐かれようと酒をぶっかけられたとしても笑って済ますような男だがそれは自分の周りの大切な人を傷つけないようにする処世術だ。自分の娘の複製を造るなんて真似をされたのなら、それがどのような理由であれ許すことは出来ない。
怒れるシャンクスに対して船医のホンゴウは情報を分析するために言葉を紡ぐ。
「それは多分クローンだな。体の一部を使ってそっくりな複製を造る技術だ。ルナーリア族との融合はベガパンクの研究成果だろう」
ホンゴウの言葉に徐々に事態が判明していく。
「体の一部だって?」
「血液や肌、できれば口の内側部分の組織を採取するんだ」
海軍がそれらの体組織を得る手段。副船長のベン・ベックマンは心当たりがあった。
「お頭、確かウタは海軍に捕まったことがあったよな」
「…ああ」
それはウタが10億4000万ベリーの懸賞金首になった原因の事件だった。あの事件の後、ウタは一時的に捕まったがその後逃げ果せている。
2年前、ウタはバーソロミュー・クマによって飛ばされた島で戦争に巻き込まれていた。2つの国が争うこの戦争はもはや収拾がつくことがない事態まで発展していた。
その2つの国の名はもはや意味をなさない。この2つの国が争い合うことになった理由も、もう意味がない。
なぜならその戦争は天竜人が人が殺し合う姿をみるための箱庭と化していたからだ。双方の王は天竜人から資金援助を受け、永久に勝ってはならない、負けてもならない戦いを甘んじて受け入れていた。天竜人は殺したり殺されたりする姿を喜び時には賭けの対象にし、時には気に入ったモノを奴隷とした。
ウタとこの時に知り合ったジュエリー・ボニーは仲間を増やし、やがて戦争をやめさせた。しかし天竜人は激怒しバスターコールで2つの国を吹き飛ばした。致命的だったのはその中に一般人であったはずのアラマキがいたことだろう。ウタはなす術なく捕まってしまった。
その後ウタはシャンクスによってすぐに助け出されたが恐らくその時に血統因子を採取されていたのだろう。
「これでだいたい現状がわかった訳だがどうする?」
「…」
「いままでウタへの干渉は最低限にしていた。これからは?」
シャンクスは不意にワナワナと手を震えわせた後にガックリと肩を落とした。
「ライブ会場近くまで船を寄せる。だがウタが対応できる範囲のうちは干渉しない」
明らかに無理をするように絞り出すように言う。シャンクスはウタが世界の歌姫になるまでウタと会わないと誓っていた。かつてルフィを助けたようにどうしようもない事態になるまで傍観の姿勢を取ることにした。
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私はトラファルガー・ローによって舞台裏まで移動していた。
「ここは防音室か、やはり歌声が聞こえる範囲外では聴覚は正常に戻るようだ」
なるほど、じゃあ私の声も出るようになってるのかな。
「(あーあーあー、出ない!)」
「それは
…そっか。じゃああの子を気絶させるしかないんだね。
ローはダンと壁を殴りつける。凄い形相だ。あの子に何か思い入れがあるのか、何かトラウマがあるのか。
ローはルフィの同盟相手だけどどうして私を助けてくれたのかな。とりあえずおじぎをするがあまり余裕がないようだ。
「おれは対抗できる奴らを集める、ナギナギの実で死人は出させない!お前はどうする、このまま逃げるか」
私は首を振る。逃げるつもりはないよ。
「わかった。そうだ、鏡に潜り込む能力者を見かけた。どうするかはまかせる。」
と言うと何処かへ行ってしまった。
1人になった控え室で少し考える。私にそっくりなあの子、人体実験とかそういうものなのかな。私には何もわからない。『スペア』として生まれた子の気持ちはわからないから、知りたい。寄り添いたい。歌は寄り添うものなら私も人に寄り添って理解したいってずっと思っている。
そういえばこれって全国配信のライブだったよね。ならあの子の存在も配信されているのかな。
…うん、想定よりいっぱい死人が出る。世界政府に対する長年の不満がこの出来事を起爆剤にして爆発する。行く末は暴徒やデモ、革命。多くの血が流れる。多くの人が死ぬ。これはそういう出来事だ。モルガンズは人の死は極上のエンターテイメントになるって言っていた。一個人の出来事は状況次第で世界を揺るがす大事件に発展いうる。そして今回は一個人の出来事を大きく逸脱している。確実に私の想定よりも死人が出る。
ここからの私の行動で世界がどうなるか決まる。私にはこの出来事を制御する義務がある。革命が血でしか成せないのなら最小限に抑えるべき。
なら私の意思を表明するための私らしい手段はなにか。
私は控室に用意していた箱を取り出した。中には金銭での解決が必要になった場合に備えたまとまった数の財宝が入っている。その中から手頃なものを取り出し鏡へ投げた。とぷんと音がして鏡へと吸い込まれる。さっきローが言っていた鏡の能力者がいるみたい。私は紙とペンを用意して書いた内容を鏡に見せた。
「財宝をあげるから協力して欲しい」
すると今度は鏡から長い鼻が特徴的な女性が出てきた。どことなくおとぎ話に出てくる魔女のようだ。
「なんだい、私は今忙しいんだよ」
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少しして私は地下の港にいた。
ここにあるのは運営スタッフ達、モルガンズ達世界経済新聞社の社員、バギーズデリバリーの傭兵、この計画でお世話になった人たちを逃がすための船だ。船にはシャボンコーティングをしており潜水で脱出する算段をしていた。
とはいえまだこの船は使わない。
「そう、シャーロット・ブリュレと取引をしたの」
合流したロビンがミロワールドへ入る人々を見ながら言った。私は筆談で返す。
「うん、話の通じる人ですぐに話がまとまったよ」
まずシャーロット・オーブンが気絶していたことでシャーロット・ブリュレに余裕がなかったこと。まとまったかずの財宝を渡したことで協力する口実ができたこと、正直ブリュレの根がいい人そうでよかった。戦って奪う選択肢を取られることも想定していたから無駄な体力を消費しないでよかった。
ローによると海軍が辺りを捜索しているらしい。ここは隠されているとはいえ時間の猶予はないだろう。
もうひとつ気がかりなこととして、ローが助けたページワンからうるティが目を覚まさないと報告があった。やっぱり今気絶するとウタワールドに取り込まれるみたい。原因が私にあることをページワンに伝えるとものすごい剣幕で怒鳴られてしまった。
「姉貴を必ず助けろ、それが条件だ」
ページワンはそう告げるとミロワールドへ入っていった。
全員がミロワールドへ入るのを見届けた後、私もミロワールドへ入った。
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情報は世界を回る。
それが正しいものであれ誤ったものであれ一度出回った情報は消えることはなく残り続ける。
歌姫ウタにそっくりな少女、『スペア』という発言。その後ライブ映像は途絶えてしまったがこれが混乱を生んだ。ウタのファンから家族へ、家族からその友人へ。伝染するように、侵食するように。
人をそっくりにコピーする、しかも細かい容姿や年齢は変えられる技術というのは恐ろしい。最悪だったのはこれ以外の情報がないことだった。憶測は憶測を呼ぶ。海軍大将アラマキの発言はウタを取り替えるとも取れる発言だった。もしも身近な人物が政府製造の『スペア』に取り替えられたら?その人物の死すら知る機会を与えられずに日常を暮らしていたら?突然主義主張を変えて世界政府よりに意見を変えた王が現れるとしたら?
世界の5割がウタのライブを見ていた。そして彼らが友人や家族にこの事実を伝えたらどうなる?依然情報はライブ映像のみの状況で。
そう、今や世界のほとんど全ての人間がライブが再開することを待ち望んでいた。例外は事前に通知を受けていた王侯貴族だけだった。何も映さなくなった電伝虫の前で大勢の人々が待っている。
反応は大きく2つに分かれた、恐怖するか、受容するか。前者は言わずもがな自分や家族が入れ替わることへの恐怖。後者は世界政府、ひいては世界貴族である天竜人に対する恐怖からくる諦めだった。あれだけ恐ろしかった億超えの賞金首が片端から倒されている。これで自分たちに出来ることはあるのか?できない。この新しい世界秩序の方法を甘んじて受け入れるしかない。
恐怖が怒りに転換されるまでそう時間はかからないだろう。
情報は回る。世界はウタのライブに釘付けになる。
…求める情報がウタ自身でなくとも。
「ウタ、ここに電伝虫がある」
モルガンズが見慣れた電伝虫を見せる。
「…」
「おまえが見つけたSSG電伝虫だ。こいつを使えば全世界にお前の姿が放映される。
「…」
「今回の事態は世界に放映されている。方向性を決めるのは今この瞬間にいるお前だけだ」
麦わらの一味が、百獣海賊団が、ビックマム海賊団が、他の人達も聞いていた。
「どうする?なんて言う」
「…」
ウタは文字を書く、そしてみんなに見せた。
「新曲の用意があるの」
そして世界は揺れ動く。世界に自分の12年間をぶつけようとしていた。
今回ものすごくギリギリまで修正していました。
ミロワールドとウタワールド間違えてないかビクビクしてる。
ウタが発表していない曲
【うっせぇわ】
【FREEDOM】
他
話をものすごくぶった切りますが次回からはウタワールドに視点が戻ります。
また正直反省点がものすごくあるのですがこのまま続きます。
10/22追記
まだ出来ていないので19時までに次話が投稿できなさそうです。少々お待ちください。