はつゆきさくら―Ghost Graduation―   作:小谷翔平

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正直、はつゆきさくらには明かされてない設定とか真相とか結構あるのでその辺ガバくなる可能性高いですが生暖かい目で見ていただけたら幸い
あと当時の時代背景だと書きにくいところもあるかも知れないのでそれとなく『都合良く』現代の時代設定に寄せてます


第一章―3―『そして物語は動き出す』

「ああ、荒金か。初雪……いや、今は『大野ゆうき』としてお前と話す」

 

 深夜、寝ている桜達を尻目に廃ホテルを抜け出し肌寒くなってきた夜空の下でスマートフォンを開き電話を掛けている。

 相手はあの日俺達の後援者として付いたカスガの幹部、荒金だ。

 

「成程。遂に貴方もカスガを継ぐ決断が出来ましたか」

 

「そうだな。そろそろ俺も良い歳だ、大事な奴らを守る為に……権力を手に入れるという事の重大性も理解出来ていると思っている。俺自身に祝事や政治への介入は微塵も興味は無い上に権力への執着も無いが……こうする事でしか守れないってのも分かってるからな」

 

 あの日荒金と約束した『成長するまでカスガの首領になる事は待ってほしい』という言葉。

 俺も一人で様々な世界を見られる、判断出来る年齢になった。

 いつまでも精霊達を抑えられるとも限らない中で、早めにカスガを継いで行動に移すという事は何よりも先決事項であるのは明らか。

 この9年で荒金が、少なくともカスガ関連で信用がある人物なのは自分でも判断していたからこそ真っ先にこの決断を伝えておきたかった。

 

「ようこそ、我らが首領。カスガの道を継いで下さる事、心から感謝致しますよ」

 

「フン……その代わり俺が成るのは『穏健派』の首領だ。佐々木恭介派閥をテロや暗殺紛いで殺害しようとしている『過激派』は全員追放しておけ」

 

「ほう、そう来ましたか」

 

「勘違いするなよ。俺は家族を守る為の手段としてカスガになるのであって、カスガになる事でアイツらが悲しんだり傷付いたりするのは論外だ。俺を殺人組織のトップになんてするんじゃねえぞ、分かってるんだろうな?」

 

 きっと、俺に桜達が誰一人いないまま記憶を残していたら。

 逆に俺は過激派のトップとしてカスガの首領になっていただろう。

 何せ、全てを失い守るものの無い人間に残された感情など『復讐』しか無いからだ。

 だが俺には四人も家族がいる、大切な奴らがいる。

 守る為に手に入れる権力に血の色など不要だ。

 

「……貴方がそういう人間である事くらい、昔から知っていましたよ。いつの間にかサクヤの事も、正体を知りながら家族と認識する程の心優しい方が血を好むなんて有り得ない」

 

「は? 俺が優しい? 馬鹿は寝て言え、極力殺しはしねえだけで桜、ラン、しずか、サクヤに手ェ出すってなら最悪殺しても何も思わねえぞ」

 

「そういうところが貴方の優しさを良く表していると思いますがね」

 

「チッ、面倒な……」

 

 コイツは何か勘違いをしている様だが話せば話す程誤解を招きそうだからもう諦めておく。

 優しい優しくない以前に家族に手を出されて怒らない人間なんぞいる訳ねえだろうが。

 

「あ、それはそうとですね首領」

 

「なんだ、面倒事はもう要らんぞ」

 

「いえ、そうではなくてですね。貴方が正式にカスガを継ぐというか事で『9年前の続き』がようやく出来ると思いまして」

 

「続きだぁ……? あのパーティー、何か特別な事あったか?」

 

 溜め息を吐いたところで次は身に覚えの無い話をされた。

 荒金の話し方からして9年前、爆破テロさえ無ければ執り行われていたであろう事なのだろうが……正直、嫌な予感しかしねえ。

 出来る事ならこのまま通話を切りたいくらいだが……このタイミングで話すとなればそれなりに必要な事、か。

 

 面倒な……

 

「ええ、首領は覚えてらっしゃらないのは年齢的に無理も無いと思いますが実はあの日、そもそもあのパーティーの主題とされていたのは……首領と桜様との婚約だったのですよ」

 

「は?」

 

 訂正しよう。

 面倒とか、そういうレベルでは無かった。

 あまりにも予想外な事を言われ思わず素っ頓狂な声が出る。

 そうだろう、あのパーティー自体が俺と桜の婚約の取り決めの場だっただと?

 つまり俺と桜は8歳にして将来の相手を強制的に決められ掛けていたのか?

 

「本来は政略結婚の予定でしたが……貴方はあの日、そもそも桜様とパーティーで仲良くお話されていたのです。ですから、本来の目的が無くなったとしても昔も、今も、首領の気持ちが桜様に向いていると判断し我々穏健派で『9年前の続きを』と画策していたのです」

 

 そう言えば朧気だが、桜の髪色と同じ、白いドレスを着ていた奴と仲良くなった記憶がある様な無い様な気がする。

 アレが桜だったとは……何故気付かなかったのか。

 

 ……まあ今となっては過去の話だとそんな婚約話一蹴しても良いのだが。

 

 そうだ、恋愛なんぞに現を抜かしている場合で無いと言ったのは自分自身だろう、何を迷う必要があるのか。

 

 俺はフン、と悪づいてからこう告げた。

 

「俺は構わんが、桜に話は」

 

「既に了承済みですよ」

 

「……オイ、嘘だろ?」

 

 どうせ桜に話を通してないか、桜は反対するだろうと思い言ったのだがどうにも聞こえてはならない言葉が聞こえてきた。

 

 既に了承済みだと?

 

「桜様はずっと貴方の事を慕っていたそうですよ、男性として。信じられないとは思いますがね」

 

「……本当なんだろうな、それ」

 

「何なら明日、聞いてみては?」

 

「チッ……分かった分かった、明日聞いてやるよ」

 

 確かに俺は恋愛を今する気にはならないと言った。

 だがそれはあくまでも、家族を守る為にそっちを優先するという意味でと、家族に向ける感情では無いはずだと自らに言い聞かせていたからだ。

 俺自身恋愛に興味が無い訳ではない。

 寧ろアイツらから家族という感情を取払ったら俺の歯止めは効かないだろう。

 

 ……文句なら美人に育ち過ぎたアイツらに言え。

 

「……ところで荒金」

 

「なんでしょう?」

 

「……カスガの『王』に俺はなる訳だが、跡継ぎは能力が高くないといけねえんだよな?」

 

「そうですね」

 

「だったら跡継ぎ候補は……多い方が良くないか?」

 

「……側室なら我々は歓迎致しますよ」

 

「……フン」

 

 決してこれは、欲を出したとかそういう事では無い。

 一応、一応聞いたに過ぎない。

 だから俺は悪くない。

 

 

 

 

 

「オイ、今日は折り入って全員に話がある」

 

「ゆー君からお話? 珍しいね」

 

「あはっ、お兄ちゃんはいつもぶすーっとしてるだけですからね」

 

「なんだろなんだろ~」

 

「……」

 

 翌日、話題を切り出すといつも通り四者四様の反応をされた。

 しずかはこう見えてしっかり話は聞くタイプであるから心配はしていない。

 サクヤは……リアクションこそ薄いが、少し心配そうな表情になっているのを見逃さなかった。

 フン、ああ見えて過保護な奴め……

 

「しずかお前は後で脳天チョップだ。……ゴホン。まあ、一応大事な話だからな……俺はカスガの首領になる事を決めた」

 

「……そっか、決めたんだねゆー君」

 

「ちょ、ちょっと待ってください! そうだとしたらお兄ちゃんはこの場所から離れるんですか!?」

 

「うるせえよしずか……その心配は無い。あくまでも有事の際に本部に呼び出されるだけで基本的な行動の拘束は無い。荒金から言質は取ってある」

 

「……それなら大好きなお兄ちゃんが離れずに済むわね、しずか」

 

「なっ……!? さささささサクヤ!? 私は別にそんな事? み、みみみ微塵も思ってませんからね!?」

 

「いやバレバレだろ」

 

 何だか愉快な事になってきたが、俺はこう言った愉快な事で桜が一言も発していないのを見逃していない。

 つまりは……まあ、十中八九そうなのだろう。

 

「で、だ。本題はまだある……その、9年前のパーティーがどうやら俺と桜の婚約の席だったみてえでな。荒金達の派閥が、9年前の俺達の姿を見てどうしてもあの続きを叶えさせてあげたいなんて抜かしやがって来た訳だ……だよなァ、桜?」

 

「……うっ、流石に隠せないよね。私はぁ……その、ずっと知ってました……あはは……」

 

「お前も後で脳天チョップな」

 

「ぴゃー!?」

 

 コイツ……天然そうに見えて俺の事だけは確信犯としてずっとやっていやがったな……アホ桜が……俺の葛藤を返せよ、ったく。

 

「お、おに、お兄ちゃんと桜が……?」

 

「あー、それまだ覚えてたんだあっちは……」

 

「……二人はどうなの。いくら当時は好きあっていたとしても今はまた別の気持ちになっていたりしたら強制はさせられないわ」

 

「聞いたところ桜は乗り気らしいが……嘘は付いてないだろうな?」

 

「つ、付く訳無いよ〜! だってだって、私は『あの日』からずっとゆーちゃんの事、大好きだったんだもん……! ゆーちゃんは!? ゆーちゃんは私の事好き……?」

 

 あーあーもう、そんな不安そうな目で見るんじゃねえよバカが。

 そんなの決まりきってるだろうが。

 

「アホ、お前の事好きじゃなかったらその話が出た時点で突っぱねて『無かった事にしてる』っての……」

 

「ゆーちゃん……!! だいすきっ!!」

 

「どわっ、急に抱き着くなアホ桜が……ま、これからは少し意味合いが違う『家族』としても、守っていってやるよ、このカスガの『王』たる俺がな」

 

「ふふ、おめでとう二人とも」

 

「……お、おめでとうお兄ちゃん……桜……」

 

「二人が幸せなら、私から言う事は『お幸せに』くらいね」

 

 俺の胸に飛び込んできては顔を擦り付ける桜、お前は犬か?

 そんでもって他三人は分かりやすいくらいに落胆してやがる……ランは言葉こそ普通だが表情が少し暗い、しずかはあまりにも露骨過ぎる、サクヤは……ツンデレだな、愛いやつめ。

 

 こうなったら俺は自重なんてしない。

 好きな女は一人だけ? 俺はそんな下らないルールや常識には縛られない。

 大事なものは全て俺のものにする、もう二度と何も失わない為に、奪われない様に、後悔しない様に、全部俺が独占してやる。

 

 俺は『王』だ、その器を手に入れる覚悟を持って玉座に座る。

 ならばそれ相応の代価があっても悪くはないだろう?

 

「オイテメーら、何完結させてやがる。カスガの跡継ぎは『能力の高さ』で決まるんだ。桜一人にそんな何人もなんて無茶はさせらんねえよなあ?」

 

「ゆーちゃん……もー、不器用だなあ」

 

「っるせえ、俺は王様だからルールになんか縛られねえってだけだ。大切なモンは全部俺のものにする、だから愛したいと思った女が何人いようと関係ねーんだよ、全員俺が愛して、守る。それだけだ。……なんだお前らその目は。その中に、ランも、しずかも、サクヤも、いるって話だ。察しろ、ったく……」

 

「……顔に火傷跡、こんなに残っちゃってるけど良いの?」

 

「ふざけた事抜かすなよラン、それも含めてのお前だろうが」

 

「ありがとう……ありがとう……ゆー君……」

 

 ランは何泣いてんだか……そんな傷一つで価値が落ちる女じゃねえだろお前は。

 

「え、あ、その……私、実の妹なんですけど? 気持ち悪くないんですか? 実の妹が恋してるなんて……」

 

「だったら俺もお仲間だな。つべこべ理屈捏ねずに愛されろ」

 

「……お兄ちゃん……!! うんっ」

 

 いつもは大人びてる癖にこういう時だけ年相応に可愛くなりやがってバカ妹が。

 

「……兎は、寂しくなると死ぬ。だからずっと一緒」

 

「じゃあ精々長生きしといてやるよ、有り難く思え」

 

「……ぎゅー」

 

 お前は死とかいう概念以前の問題だろ……というのは野暮か

 

 何にせよ、これで俺の全ての覚悟は決まった。

 最初聞いた時はどうしてやろうかと思った今回の件だが、逆に俺を振り切らせるとは。

 急展開に継ぐ急展開ではあったが、結果として俺に好都合に動いたので全て良しとするか。

 

 背負うものの重さは重いながらも、その重さに愛を感じるのどむた。




『大野ゆうきが《カスガの首領》になる』を達成
『オプション・《傲慢でお人好しな王》』を獲得
『オプション・《ハーレムキング》』を獲得

《Ghost Graduation》ルート開放


 


両親を失い、それでも大切な人を得た初雪はある種ヤンデレでもあり傲慢な王でもあります
今までその気質を押さえ込んでいたのはひとえに『家族を傷付けたくないから』であり、それを抑え込まずとも良いと分かった瞬間、カスガの王という便利な立場を照れ隠しの言い訳に欲望に忠実な『傲慢な王』となります
大切な女は全員俺のものにして守ってやるという、傍から見れば『最低』な行為も本心は『もう何も失いたくないから俺が全部守らないとダメなんだ』という恐怖心混じりの狂気でした

まだメインキャラが桜だけというので何かを察した方もいるかもしれませんが……この先もどうぞお楽しみに
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