はつゆきさくら―Ghost Graduation―   作:小谷翔平

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この間コロナでずっと死んでた
展開がガバかったりカオスなのはやりたい事しかやらないと決めてるからしゃーない許して(手遅れ)


第2章―1―『居心地の良い空間』

「……もうすぐ冬、か」

 

 カスガの首領になり早一月程。

 トップに立ったからと言って別段やる事等が劇的に変わる訳でも無く、昔から受けていた稽古はそのままに、偶に佐々木派閥の情報が入ってきたり街の自警何かをしたりしている程度に留まっている。

 

 俺と桜の挙式も冬休みに入ってからしっかりやりたいだのと言う荒金達の言葉でもう少し先になるらしくそこまで変わった事が起きるという事も無い……はずだった。

 

「……テメェらはアホなのか?」

 

「…………」

 

 俺が店長代理とかいう事になっている人形喫茶、カンテラ。

 実は名目上オーナーがランだったり、荒金一派の資金援助を受けていたりという話があって俺に社会経験を積ませる為とか何とか宣い店長代理に仕立て上げられたこの店。

 

 面倒ながらも偶々今日は俺が店仕舞いとあってやっと先程終わらせて帰れる……と思った矢先道端で不良共が爆睡していた。

 しかも一人は盛大に知り合いだ、こんなもう冬も近付く季節に一応はこの街の自警をしている俺が、こんなすぐにでも凍死しそうなアホ共を見て放っておける程性根が腐ってはいなかった。

 全員叩き起して店に引き摺りこんで今に至る。

 

「未成年飲酒だの喫煙だの、俺はそんなのに説教かませる程出来た人間じゃねえ。その辺は何かあっても俺は知らねえ。だがな、アホ共。命だけは粗末にすんじゃねえぞ」

 

「うっ……わ、分かったよ流石に羽目外し過ぎた」

 

「だ、だな」

 

「つーかアキラの話だとかなり怖い奴って聞いたけど」

 

「割と優し……い……?」

 

「まあ次同じ事したら二度と目が覚めねえ様に追撃掛けてやるから安心しろ」

 

「前言撤回、やっぱこの人やべーわ」

 

 俺はムカついたら喧嘩もした。

 多人数相手に乗り込んで壊滅させた事もあった。

 その度に桜やラン達に怒られてばかりだった事もあり、迷惑を掛けて来たという自覚はある。

 だから今は、多少なりそういうアウトローな人間に気を掛ける事くらいはしたくなってくるものなのだ。

 

「オラ、帰れ帰れ。せめて群れるにしてももう少し場所考えとけ」

 

「へーい」

 

 適当に説教も終わらせれば後は散り散りに追い出す。

 俺からしたら死にさえしなきゃ後は自己責任だ、どう生きるも当人ら次第なのだから俺には関係が無い……一人を除けば。

 

「アキラ」

 

「……一度道を違えた者に、帰る場所なんて無いのさ。それでも気に掛けてくれる相棒には感謝してるけどな」

 

「……そうかよ」

 

 コイツとは結構前から気の合う友人同士という立ち位置で付き合いがあった。

 そうでなくてもコイツ、アキラには剣道の師範代というポジションもあり悪くない生活を送れていた。

 それが、一度道を外し家からは破門、そこからは不良として仲間を数人引き連れ街を彷徨っているらしい。

 

 若気の至り、馬鹿な奴……まあ、思わなくは無い。

 だが、だからこそ、今のアキラには俺みたいな不良仲間でも身内でもなく、道を違える前から気軽に絡んでいたポジションの人間が一人だけでも残ってるべきなのだと抽象的に感じる。

 

「オイ、少し待て」

 

「なんだよ、相棒」

 

「売れ残りの飯とマカロンだ、どうせ廃棄予定だから次いでに持ってけ」

 

 適当に理由付けて、強引に売れ残った物を持たせる。

 心配だからとか、そういうのでは決して無い。

 捨てるのも忍びないから食い扶持に困ってそうな奴に持たせただけだ。

 

「……ほんと、変わらないな君は」

 

「……冷めねえ内にあのアホ共と食っとけ」

 

「ありがとう、初雪」

 

 だから礼だとか、そんなもの聞こえてない。

 チラリと振り返ると、申し訳無さそうな、それでいてやはり嬉しそうな顔をする友人が見えたので舌打ちをして家路を急ぐ。

 

 もう振り返る事は無かった。

 

 

 

 

 

「暇だね~店長」

 

「……ま、客が来なくても潰れねえし良いだろ」

 

「ゆきちはそうかも知れないけど、私としてはもう少し来てくれても良いんだけどね」

 

 カンテラは喫茶店ではあるが大体閑古鳥が鳴いている。

 特段飯が不味い訳でも無ければ美味い方であるし、店員も俺以外に二人だけとはいえビジュアルは相当に高い方だと思っている。

 風の噂で伝説的な不良が店長をしているから警戒されているだの顔が怖い店長がいるから近寄りにくいだの聞こえてくるがきっと気のせいだ。

 

 個人的には儲かっていなくてもこの店がどうやって存続してるかのカラクリを知っているから別にどうでも良いが、それはそれとして俺が原因で閑古鳥が鳴いてると思われかねないのは何か気に入らん。

 

「ねぇねぇ店長、暇ならちょっと勉強教えてよー」

 

「は? 仕事中に嘗めてんのかクソガキ」

 

 確かにここ一時間以上客は来ていない、来ていないがだからと言ってこのクソガキ店員は嘗め過ぎだろう。

 そもそも設定からして『名前がシロクマ』『ロシア出身』等と宣っているコイツは仕事以前の問題だと断言出来るが。

 

「まあまあ、この感じなら私一人でも対応出来るだろうしちょっとくらい見てあげたらどうだいゆきち?」

 

「チッ……綾はシロクマに甘めーんだよ」

 

「グルルシロ!」

 

「テメェは少し黙れ」

 

「全く、君達は仲が良いね」

 

「どこがだよダボハゼ」

 

 このアホの塊ことシロクマはさておき、もう一人の店員……綾とは初めて会った時から何かと波長が合う。

 飄々とした話し方や性格からして合わないと思っていたが、人間そういうとことは違う根本的な相性というものがあるらしい。

 

 あと……アキラの姉という点も、何かしらの縁を感じてしまうところではある。

 

 少し前までは姉弟揃ってつるんでいたんだがな。

 

「文句言いつつしっかりシロクマに勉強教えてるところとか、かな?」

 

「……チッ」

 

「シロクマはね、店長の教え方上手くて好きだよ?」

 

「俺様なら人に教える程度造作もねえんだよ。それよりテメェは脳ミソと手を動かしやがれ、俺の教えを無駄にしたら二度と鮭が食えねえ様に口を縫い合わせるぞ」

 

「ひえー店長の鬼ー!!」

 

「……やっぱり仲良いよね、二人共」

 

「それだけは絶対に有り得ねえ」

 

 実際問題、人に教えるというのは別段難しい事では無い。

 というのもカスガの首領になる以上身体能力もだが勉学の教養も付けておいて損は無いだろうとある程度以上の成績は出せる様にしている。

 そして桜が思ったよりポンコツだったお陰で下手な教師よりは他人に知識を放り込ませる事は得意だと自負出来る程にはなった。

 

 その点気に入らないがこのクソガキの吸収力は良い方ではある。

 

 だがそれとこれとは別として仲が良いと言われるのは心外だ。

 

「……」

 

 そうやって偶に茶々を入れられながらシロクマと騒いでいるが、ふと気付くと綾はどこか浮かない顔をし始める。

 十中八九弟のアキラの事だろう。

 少なくとも家を出ていった後身内の前に姿を現した事が無い事くらい俺でも分かる話だ、姉としてはやはり心配にもなるというものだ。

 

 ったく、いつもは掴み所の無い様な奴の癖して身内の事になると死ぬ程分かりやすい奴で逆に安心するくらいだ。

 

「アキラなら、昨日ちょっかい掛けといたぞ」

 

「えっ……あ、そ、そうなのかい? ありがとう、ゆきち」

 

「礼を言うくらいならお前からも多少ちょっかい掛けとけ。俺の知らない場所で勝手に死なれても迷惑だ」

 

 シロクマも一応はこの話を知っている為、騒がしさは鳴りを潜めている。

 しかし身内以外を気に掛ける事なんて俺らしくも無いと自分でも思うが、アキラは友人関係だ。

 それに……何となく、何となくだが綾が暗い顔をしているのはどうにも放っておけない気がしてならない。

 

 本当に俺らしくも無い話だ。

 

「うん……やっぱり君は優しいね、ゆきち」

 

「お前の目は節穴か? 俺は身内以外には優しくなんてしねーんだよ」

 

「でも私のお勉強も見てくれてるよね?」

 

「お前が見ろって言うからだろうが」

 

「そういうところが優しいんだよ~」

 

「それ以上何か言ったら脳天に無限チョップするから覚悟しろ」

 

 だが……この空間は、悪くない。

 

 同時にそうも思うのだった。

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