異世界転生で欲張り過ぎてしまいました   作:真紅或は深紅

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大変期間が開いてしまいましたが本作品の第二章にあたる14話~25話の12話分を予約投稿させて頂きました。本日4/8より偶数日の公開になります。全話投稿済ですので感想などがあれば展開予想も含め何でも書き込んで頂いて問題ありません。どうぞ宜しくお願い致します。


第2章  初級冒険者編 (旧南北街道、商都市フルト)
14話  異世界への順応


「さて、これでとりあえず問題はないかな」

 

 宿屋の一階の食堂入り口のところで一心地ついた俺は言葉を発した。

 

 そろそろ夜が明けてくる時間帯で鎧戸からは白みかけてきた空の様子が伺い知れる。

 俺の目の前には縄で縛られ猿轡の下で必死に何かを訴えかけようとしている老年にさしかかった風体の男女の二人組、即ちこの宿屋の夫婦が転がっている。

 

 食堂の床には先ほど俺が書き殴った『この夫婦は長年に渡り一人旅の宿泊客の食事に睡眠薬を盛り身ぐるみを剥いで殺害しては死体を遺棄していた。領兵に突き出して真贋の鐘による裁きを受けさせるのが妥当と考えられる』という走り書き。

 

 つまりはそういうことだったりする。

 

 タワバの街を予定外の短期間で離れることになった俺は次なる目的地に向かって旅していた。その途上、昨日泊まった村の一軒しかない宿屋で食事に薬を盛られてしまったわけだ。だが、予め索敵スキルで宿屋夫婦の害意を察知していた俺は給仕していた女将の目を盗んで出された食事を皮袋に捨てアイテムボックスに放り込み罠を回避した。

 

 後は俺が熟睡しているものと思って部屋に来た親父を返り討ちにして猿轡にして縛り上げ、しばらくして親父が戻ってこないのを気にして様子を見に来た女将も同じ運命に会わせたのだった。

 

 猿轡の下でもがきながら自分たちの助命嘆願を行う宿屋夫婦と円満にお話しをして、夫婦の持つ全財産の半分で許してあげることにした俺は聖人の部類に入るんじゃないかという気がする。食堂の走り書きを見れば俺を強盗だと強弁することも出来ないだろうから、後は村長あたりに残った半分の資金から幾らか掴ませて事件をもみ消して無かったことにして貰うくらいが関の山だろう。

 

 ここまで何だか手際が良すぎると思うかもしれないが正しくその通り。

 実はタワバの街を離れてすぐ、一人旅の二日目でいきなり同様の手口で酷い目に遭ったのだった。

 

 今日は俺以外宿泊客がいないという村に一軒だけの寂れた宿屋の食堂で何も考えずにたらふく夕食を食べたのが運の尽き。部屋に行ったら調子が悪くなってきて毒だと気付いて、そこでようやく索敵をかけて宿屋夫婦の害意を知っても後悔先に立たず状態だった。

 

 激痛にもだえ苦しみ脂汗をかきながら部屋の鎧戸を開け、逃亡したふりをしてから空いていた隣の部屋の寝台の下に転がり込んで、宿屋の主人に気付かれないよう隠行スキルで気配を消し続けた。吐いてる時の音や吐瀉物の悪臭で不審感を抱かれないよう、懸命に音を出さずに皮袋に吐いてはアイテムボックスにしまうのを繰り返したのを覚えている。

 

 部屋に確認しに来た親父が悪態を尽きながら宿の外を探し回るのを遠目に聞きつつ、ひたすら気分の悪さに耐え続けて夜を越えた。明け方に動けるようになった時には回復スキルと隠行スキルのレベルが一つずつ上がっていたのは自分でも驚いた。やはり命の危機というのは人を成長させる。

 

 階下に降りて暢気に熟睡している宿屋夫婦を手加減しながらたこ殴りにして部屋のかけ布で縛り上げて吐かせたところ、一人旅の足がつかなそうな人間が宿に来た際には毒を盛って殺しては身ぐるみ剥いで捨てていた事を白状した。あまりの話に頭が割れそうになったが、ナイフで頬を叩きながらどう落とし前をつけるか聞いた所、宿屋に存在する限りの金を払って自分たちの身柄を買い戻すというので一応それで見逃すことにした。

 

 この世界でも裁判になると先に手を出した方が原則悪いということになるので、殺しにきた相手に手加減した暴力の返礼で済ませて置いた俺の対応は間違いなく許される範囲内のはずだ。

 

 何だか割と簡単に結構な大金を差し出した所を見ると、宿屋夫婦は後から村の若者にでも追いかけさせてどこかで取り返せる算段があったのかもしれない。だが、日の出とともに村を出て身体強化をかけて北に向けて走り抜け、次の村もその次の村も立ち寄らずに素通りしてしまった俺には勿論何の関係もないことだった。

 

 というわけで幾つかの村や町を越えるうちに次回同じ目に遭ったらどうするのかを考え、宿で知り合った商人から縛る縄、猿轡用の布、糾弾のための書置きをする塗料と筆などを購入しておいたのが今回無事生かされたわけなのだった。

 

 ちなみに結構な金額を払って筆記用具を入手した俺は異世界で意識を取り戻してからの日々まで含めて総て日記に書き残してある。記録というのは後から見直すのに大切な資料になる。しかし見返すと来る日も来る日も暴力の連鎖。全く異世界は殺伐さが過ぎる。

 

 まあ今日の分に関しては睡眠薬ということで食事を入れた皮袋も洗えば済むし実害がなかったので良しとしよう。前回の泥仕合と比べると、今回は睡眠薬を使って部屋を汚さないようにしていた宿屋夫婦も熟練の技だったし俺の対応も洗練されていた。

 

 気を取り直した俺は朝日を浴びながらにこやかに門番に挨拶をして村を出た。そのうちいつまでたっても営業が始まらない宿屋に気付いた誰かが覗きに行って、宿屋夫婦と二人のこれまでの悪事を発見するだろう。一応念のため後方を気にした索敵は定期的に行う予定だが、今日は誰かが俺の後を追いかけてくるという事態にはならないはずだ。

 

 初夏を感じさせる陽気の中、街道と言いつつせいぜい馬車一台がなんとか通れる程度の幅の道をひたすら進む。タワバの街を出てからはずっと平けた高低さのない田舎道を進んできたが、領界を越え王国中部圏に入ってからは近場に山の連なりなどが見えてきて景色も変化してきたようだ。

 

 さて、現状を確認してみよう。現在の俺のレベルは12。タワバの街で鑑定した時に思ったように、この12というレベルはその日に見たとさか頭の大男と同じ値になる。闘いを専門としないその辺にたむろしている街のチンピラの中でなら、かなり強い部類に入る程度という感じになるだろう。

 

 戦闘を専門とする人間ではレベル20に到達すると一応一人前とみなされる世界のようで、街を守る衛兵の上位者がその位の目安となる。王国の上級貴族の子弟は成人の儀が終ると最低でも養殖で一気にレベル20まで到達させるのがならわしらしい。

 

 領軍や国軍の中核となる騎士団ではどこでもレベル25が最低限ライン、平均レベル30を超えるのが錬度の標準とみなされるようなので、とりあえず早期でのその水準への到達を目標に考えたい。

 

 元々の予定では安全マージンを取りながら時間はかかっても良いからタワバの冒険者ギルドでレベル20くらいまでは……と思っていたのが、程々レベルは上がったとはいえ高々月が半分巡るほどの短期間でタワバの街を離れるはめになるとは予想もしていない展開だった。

 

 次の目的地はとりあえず王国中西部で冒険者ギルドのあるアボンという街にしようと考えている。転生前に女神様の元でチェックした際には魔法のレベル上げを行うのに適した魔物が出るはずだった。せっかくだから次はゆっくりと色んな魔物を見てみたいし、とりあえず放ってあった火魔法やら水魔法もレベルを上げたい気がする。

 

 現在、俺はタワバの街を離れてから王国西部を貫く旧南北街道と呼ばれる商用路を北に向かって進んでいる。旧という名前が付いている所からも解るように、昔は賑わっていたものの王国全体が王都の移転も含め東部に向かって発展した結果、今は廃れて行きかう人もそれ程無い街道だ。

 

 王国東部に新しく南北を貫く街道が整備され新南北街道と呼ばれていたのが、交通量の逆転であちらに本家の南北街道の名前を取られて、こちらが旧南北街道と呼ばれるようになったという経緯があるらしい。

 

 もうしばらく行った所に東部から合流する道があり中部圏での主要商用都市へと通じていてそこが直近の目標地点になっている。

 

 王国中部圏は山が多い。嘗てのこの地方の繁栄も鉄鉱山などからの鉄の産出に依存するものだった。二百年程前に鉄鉱脈を掘りつくして鉱山都市の機能の一部が商用都市に変わる形で交通の便の良い東側に少し動いたという歴史があるそうだ。

 

 これが何に繋がるかというと旧鉱山の廃棄された施設などに住み着いた山賊などが存在することで、都市から旧街道を通って王国を北西方面に抜けようとすると山賊に狙われる危険がとても大きいということになるのだった。旧街道の衰退に山賊も間違いなく一役買っている。

 

 とりとめの無いことを考えながら、アイテムボックスのおかげで軽装のまま快適に旅を続けると山岳域の麓に到達した俺の索敵に輝点が現れてきた。輝点の動きが活発なので精査してみると戦闘状態モードにあるようだ。

 

 これはもしかしてと思い鷹の目を使うと見事に山賊に襲われている馬車の姿が目に入ってきた。まだ東部からの道の合流前だというのに山賊の活動もお盛んなことだ。俺は山賊の連中の実態がどのようなものかを確認するため意識を集中するのだった。

 

(15話に続く)

 

テオ 人族 15歳

 

ジョブ:剣士 レベル12

 

スキル:火魔法2 水魔法2 風魔法10 土魔法5 回復魔法3 治癒魔法0 洗浄魔法1 浄化魔法0 収納魔法2 鑑定魔法1 探査魔法1 隠行魔法3 強化魔法1 剣術12 槍術4

 

 




ここまで読んで頂いて有難うございました。
(あと前章の終了後に評価や感想などを頂きました方には、果てしなく遅くなりましたがこの場を借りて深くお礼申し上げます)

長期間置いてありました作品ですが、この間から少し纏まった時間が取れましたため第二章の分を書き上げて投稿させて頂きました。作者の頭の中に作品の先までの話の展開の予定はあるのですが、本章、そして次章を通じて主人公がひたすら最弱の状態から抜け出す努力をする過程になりますため、作品のメインヒロイン候補になる高貴な身分の少女たちの登場には物語上まだしばらくかかりますことをお許し下さい。

あと、この作品では主人公がひたすら自分の秘密を隠してレベル上げするせいで、主人公が一人で行動することが多く、誰とも会話が発生せず独白の嵐になるのが如何ともし難い点になっています。こちらも当面お許し頂きたく思います。

次回、15話は4/10 23:10に予約投稿済です。
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