異世界転生で欲張り過ぎてしまいました   作:真紅或は深紅

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16話  行商人への増援

 因縁を作った山賊連中から離れようと野宿込みの駆け足で街道を進んだ俺は、翌日には東部からの街道との合流点に辿りついた。ここまで来たら直近の目的地である商都市フルトまで後一日程度の道のりだ。

 

 元々の王国西部での南北の人の行き来よりもこの先の商都市と東部諸都市の往来の方が多いようで、東部から合流してくる道と合流後の道の方が心なしか広く整備もされているように感じる。

 

 フルトに付いたらとりあえず武具屋によって半グレ団からせしめた防具や剣を処分して身軽になりたい等と考えていた俺の前方に複数の輝点が現れた。どうやら商隊らしいが、今しがた合流した東部方面の道からの来訪者かもしれない。

 

 等とのんびりと思っていたのも、西側山手から新たな集団の輝点が出現して明らかに商隊に向けて接近し始めるまでだった。

 

”連日の山賊のお出ましか……”

 

 距離と山賊達の移動速度を考えると今回は間に合うかもしれない。俺はとりあえず身体強化をかけ全速力で街道を先へと進むのだった。

 

 俺が南方から現場に近づいた時には山賊達と商隊の護衛たちとの戦いは始まってしまっていた。昨日の襲撃現場を再現するかのように襲撃側の山賊は男七人で商隊の方は護衛が四人。男二人女二人の構成だ。違っているのは今回は荷馬車が二台で戦闘での頭数にならない商人が三人という部分だけだ。

 

 護衛の男のうちの一人、四人の中でぱっと見で腕が一番立ちそうな男が山賊を一人斬り捨て、指示を出している山賊のリーダーの方に向かった。頭を潰すことで数の劣勢を覆そうという考えだろう。間をおかずに二人は斬りあいに入るが、実力的には年齢が若そうに見える護衛の男の方が劣勢のようだ。助けるならこいつが斬られる前にしないとな。

 

 判断した俺は現場を斜め後方から廻り込んで気休めに隠行をかけながら山賊リーダーの背後に駆け寄る。あと数秒、何とか間に合うかと思った瞬間に護衛の男が袈裟斬りにされる光景が目に入ってきた。だが、ここまで来れば俺のやること自体はもう変わらない。俊足のスピードに乗ったまま残心の体勢になっている山賊リーダーの背後から心臓を目掛け身体強化をかけた剣を突き込む。

 

 俺の一撃は問題なく山賊リーダーの身体を貫通した。悲鳴を上げながら仰け反った姿で剣で宙吊りにされた後、投げ捨てられるリーダーの姿が現場に晒される。鑑定をかけたところリーダーのレベルは17でやはり俺より格上の相手だった。こちらを見て動きを止める山賊達。

 

 一番近くにいた手下の一人に鑑定をかけるとレベル12だったので馬車に向け俊足で横を通り抜ける際に剣を薙いで胴を切断する。問題なく致命傷になったはずだ。そのまま前方で赤毛の女冒険者と斬り合っていた山賊を鑑定するとこいつもレベル10だったので俺を認識して逃れようとした動作に入った所を無造作に踏み込んで正面から斬り裂いた。

 

 残りは三人のはずと思い見渡すと馬車に取り付いていたレベル12の男が劣勢を悟って逃げようとしていたので俊足で近づいて刺し貫いた。最後に残った二人を探すと、男女二人組の護衛が残りの二人を相手に戦っていたのが、ちょうど女冒険者が斬られて気を取られた男の方も続けざまに倒される光景を目にしてしまった。

 

「嫌よ!嫌! ミア、ダンしっかりして!

 ゼオン、ミアとダンが……ゼオンはどこ!」」

 

 同じ光景を目撃したらしい俺が助けた女冒険者が、斬られてしまった仲間の冒険者に向かって走りながら名前を叫んでいる。取り乱した状態で辺りを見回し男の姿を探している。

 最初に男が斬られたのは自分が斬り合っていたせいで認識できていないようだ。

 

 二人を斬った山賊達はすぐさま踵を返して山に向かって逃走を図っている。鑑定、レベル11と13か。魔法を見られて良いものか少し迷うが、ここで殲滅するべきだと判断して風魔法を起動して山賊二人の背後から風の刃をぶつける。予想に反してレベルの高い相手にも深手を負わせたようで二人とも倒れこんでいる。

 

 戦意を失った逃走時には戦闘状態は解除されているということなのだろうか。次回、同じ状況になった場合には索敵で確認してみよう。

 

「ゼオン、ゼオン。しっかりして!嫌よ!起きて、目を開けて!」

 

 女冒険者が仲間二人の下に向かう途中で最初に斬られた男冒険者の存在に気付いた。駆け寄って膝を着くと身体を抱きしめて泣き叫んでいる。恋人とかだったのだろうか。声をかけるのも憚られたので少し距離を置いて急ぎ足で通り過ぎる。

 

 倒れた山賊二人組の場所に着いた俺はレベル11の方は土槍でレベル13の方は再度の風魔法で止めを刺してから剣で傷を上書きして商隊の方向に戻ることにする。

 

 状況終了の雰囲気だが一応確認と思い索敵の輝点を調べると、女冒険者と斬り合っていて俺が正面から斬った男は防具越しだったせいか息があるようだ。

 

「お願い、私にやらせて!」

 

 最後に残ったレベル10の下っ端を土魔法のレベル上げの素材にしようかと思った所に後ろから声が掛かった。先ほどまで斬られた冒険者パーティの男を抱きしめて泣きじゃくっていた女冒険者だ。それほど拘るべき場面でもない。逆らわず譲ってやることにする。

 

「み、見逃してくれ」

「ダメよ。貴方たちのせいでゼオンもミアもダンも死んだわ。私にとって命と引き換えにしても良いと思えるくらい大切な仲間だったのに……絶対に許さない。最後に残った貴方には責任を取ってもらうわ。苦しんで苦しんで死んで頂戴!」

 

 ギラギラした瞳で近づいてきた女は命乞いする下っ端の言葉をはねのけると、逆手に持った剣を倒れていた男のふくらはぎに突き刺した。静かになった荒れ野に男の絶叫が響き渡る。

 

 これは俺が見ていて良い場面でもないだろう。俺はその場を離れ商人の方に向かうことにする。

 

 恰幅の良い商隊の主らしい中年男性が馬車を降りて俺の所に近づいてくる。

 

「今回はご助力を有難うございました。私はフルトを拠点にしている商人のデイルと申します」

「いえ、助けに入るのがもう少し早く出来たならと残念に思います。犠牲になった方々には哀悼の念を表させて頂きます」

 

 俺のような明らかに年下の若造にも深々と頭を下げて感謝の意を示してくる。

 この人は結構な人格者のようだ。デイルさんと呼ぶことにしようと心に決める。

 

「油断していました。これまで幾度も利用していたのですが東部から合流する道を使ってフルトに入るまでの区間で襲われたことは無かったのです。東部に出向いていたとはいえ、現在これほどまでに山賊が跋扈していると気付かなかったのは商人失格級の判断違いでした。うちのヤンと『新緑の森』の冒険者の皆さんにも取り返しの付かないことになってしまいました」

 

 意気消沈した表情でデイルさんは言う。

 

「リズさんの様子を見てきます」

 

 先ほどの女冒険者はリズというらしい。しばらくしてからデイルさんに肩を抱かれて戻ってきた。山賊と戦っているのを見かけた時に思ったのだが、肩口で切り揃えた赤毛の髪が印象的で目力の強いハシバミ色の瞳と整った凛々しい顔立ちをしている。

 

 だが、今は倒れこみそうに肩を落とし直視が躊躇われるほどの憔悴振りだ。

 

 デイルさんによると護衛だった『新緑の森』パーティは田舎から出てきてこの二年一緒にやってきた幼馴染四人組だったらしい。ということは17、8歳ぐらいということだろう。独りだけ残されてしまったということならそれは堪えるだろうな。

 

 こうして一応今回の商隊襲撃騒動は終わりを見た。

 襲撃側の山賊七人は全員死亡。商隊側は従業員一人と護衛の冒険者三人の死亡という結果になった。後、襲撃された際に足止めに後ろの馬車の本体が攻撃されていて後輪が破壊されたそうだ。

 

「こちらの馬車は後輪が破壊されていますので動かすのは難しそうです。前の馬車に詰めるだけ詰め込んで廃棄するしかないかと考えています」

 

 デイルさんの言葉に俺は考える。これはもしかしてこのダンテさんより格上そうな商人に恩を売る機会なのではないだろうか?

 

「あの、実は私は低レベルでごく少量ですが収納魔法を使えます。身軽な冒険者暮らしで荷物も殆どない状態ですので、幾らか荷物運びのお手伝いを出来ると思うのですが……」

 

「ええっ、収納魔法ですか。それは素晴らしい。私たち商人にとっては喉から手が出る程に欲しいスキルです。少し確認させて頂いても宜しいですか?」

 

 収納魔法を使って荷運び可能だという俺の言葉に、いきなり前向きになったデイルさんが身を乗り出してくる。

 峠の戦いで収納魔法のレベルが上がった所からは防具一個と強盗宿屋対策品しか追加してないから余裕あるよな?

 

 詰めてみたら確かに余裕だった。デイルさんの希望で優先順位一番は勿論、亡くなった従業員と冒険者パーティメンバーの遺体。教会で弔いたいとのことでデイルさんはしごく真っ当な人格者だという気がする。その後で馬車二台の荷物で残った馬車に載せ切れない商品を、デイルさんの指示で生き残った方の従業員の男が並べ直す。価値の高そうな物から順に入れていった所、結局荷物だけなら全部入ってしまった。

 

「ごく少量とおっしゃっていましたが、ここで見た限りでも容量はかなりのもの。収納のスキルを活かして何かなさろうとは思わないのですか?」

「実はフルトの街についたら、商業ギルドに登録できないかとは思っていたのです。ただ私の場合は街に直接の知り合いもいないことですし」

 

 デイルさんの言葉に俺はフルトの街についたらしようと思っていた計画を話す。

 

「ああ、それならば私が商業ギルド登録の推薦人になりましょう。今回のお礼と思えば容易いものです」

「それでしたら、もしご迷惑でなければお願いできますか?」

 

 計画通り。襲われている商隊を助けて商人の知り合いを作るというのは実は山賊イベント介入の大きな目的の一つだったのだ。

 

「あと、出来ましたら収納スキルのことは内密にしたいのですけれど……本業は冒険者で商売は副業としてやりたいと思っていて当分は冒険者としてのレベル上げに専念することになりそうですので、こちらに関しては普通の駆け出しとして小さく始めたいのです」

「そうですか。収納スキルありということで登録すれば、最初からギルド経由で実入りの良い仕事を回して貰えるのにと私などは思ってしまうのですが、確かに冒険者をしながらの副業として小さく始めたいというのでしたら、言わないのもありかもしれませんね」

 

 俺の物言いにデイルさんは少し首をかしげたが、副業だからという言葉に一応納得したようだ。良かった、変な所で悪目立ちしたくはないからな。

 

 馬車一台だけになった商隊は再度出発したが、大して進まないうちに夜を迎えた。やはり一台の馬車に載せれるだけ荷物を載せてしまったのが難点だった模様で、二台目の馬車を曳いていた馬を加えた無理やりの二頭立てでも窮屈なのか馬が疲れてしまったようだ。

 

「今日は俺が見張りをしますから、皆さんはお休みください」

「それは、ありがとうございます。明日のこともありますため、それでは私どもはお言葉に甘えて休ませて頂きます」

 

 日常の一部ということでなんとか野営の準備をして無理やり夕食を終えた商隊一行。

 自分以外の仲間全員を失ったばかりで傷心状態のリズが夜の護衛任務をまともに出来るはずもないので、デイルさんに向かって俺は宣言した。

 

「一晩くらい俺一人で大丈夫だから寝てて良いよ」

「ありがとう。悪いわね」

 

 膝を抱えて焚き火をただ見つめているリズにも一応声をかける。

 期待していなかったのだが、予想外にもまともな返事が返ってきた。

 

 しばらくすると焚き火のわきで毛布にくるまった姿勢に皆落ち着いたようだ。

 

 俺にとっては索敵に人や大型の獣を示す輝点が現れなければ良いだけなのだから、夜の見張りは簡単なものだ。何か考え事をして起きてさえいれば問題ないということで、昨日と今日あった戦いを反省してみる。

 

 今日の展開を振り返ってみると他人の戦闘に介入するというのは格上の相手を横合いからほぼ安全に倒して利益を得るという意味ではとても美味しい。ただ格下の相手を効率良く剣術以外のレベル上げの養分にしようとするには支障が出ることが多い。こんな感じだろうか。もう少し早く現場に到達できていれば冒険者パーティは全員助かった可能性もあるが、そこまで俺の手は長くないと思うしかないだろう。

 

 まあ今日更にレベルが一つ上がっただけでも自分に取っては充分に良かった。

 

 タワバでの前回のトラブルを思うと、アボンの街で冒険者に登録する前に更に一つでも二つでもレベルを上げておくべきだろう。

 

(17話に続く)

 

テオ 人族 15歳

 

ジョブ:剣士 レベル15

 

スキル:火魔法2 水魔法2 風魔法13 土魔法6 回復魔法3 治癒魔法0 洗浄魔法1 浄化魔法0 収納魔法2 鑑定魔法1 探査魔法1 隠行魔法3 強化魔法1 剣術15 槍術4

 

 




感想欄のコメントで指摘がありましたため第0章の後書きの修正と、第0章の内容にのみ関係しているタグ(妹、純愛、婚約)を削除を行いました。あと今回、名前付きの味方側キャラ(本当にただ名前がついているというだけですが)の死亡事例が発生しましたため、良い機会ということで今後の展開で必要になる可能性を考慮して「味方主要キャラの死亡、背信、決別あり」というタグを追加しておきました。

次回、17話は4/14 22:10に予約投稿済です。
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