異世界転生で欲張り過ぎてしまいました   作:真紅或は深紅

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22話  集団戦への準備

 

 昨日は冒険者ギルドへのお願いとその後の展開の確認で一日潰してしまったので、今日からまた日常業務だ。と言いつつ寝るのが遅かったのでもう陽は中天に上っている。

 

 今日は放っておいたフルトの街への連絡員二人組みの排除を予定している。これを日常業務と見なしてしまう辺り、俺もかなりこの世界に毒されているのだろう。

 

 夕方に現れた砦に戻る道中の二人組をまた前回と似たような場所で襲うことにする。幸いなことに索敵で荒事向けらしい大柄な男の方に戦闘状態表示が灯いていない。これならば勿論、風の刃での先制攻撃で充分だ。

 

 毎度御馴染みの頚動脈への一撃を食らわせた後に鑑定を行う。

 

『人族 レベル18』

 

 ああ、久しぶりに名前の出ない鑑定結果だ。

 

「ヒッ、ヒャー!」

 

 突然首から血を噴き出して崩れ落ちた大柄男の様子を見て、変な悲鳴を上げながらもう一人の小柄な男が逃げようとする。

 

 戦意喪失状態なのか索敵での戦闘状態は解除されている。さきほどまでは追いかけて実力行使しかないかと思っていたが、これならば風の刃が使える。ついている。慌てふためいて逃げ去ろうとする後ろから首筋に風魔法の一撃を食らわせると、膝から崩れ落ちもがくだけになった。

 

 まずは大柄男の処理からだ。レベル18ということで久方ぶりのレベルアップが期待できる。首筋に再度剣を刺して傷を上書きする。これでいつ絶命しても大丈夫だ。

 

 次はうつぶせに倒れてもがいている小男の方の処理を行う。

 

『ガブ 人族 32歳

ジョブ:盗賊 レベル15 …』

 

 これはもう置いておけば良いだろう。

 魔物寄せを振り掛けて放置する。

 

 山道に戻って大柄男を見ると絶命していた。思ったより早いな。これも魔物寄せを振り掛けて今日の作業は終了。一応確認のため両者の荷物も漁ったが新規の情報は無い感じだったのでそのまま懐に戻しておいた。

 

 一息入れていると索敵に幾つもの輝点が入ってきた。もう獣の団体さんの到着だ。なんか俺が餌付けしてるのに味を占めたんじゃないかというくらいの素早い登場だ。後は頼んだということで身体強化で現場を離れて拠点に向かい一目散に撤収する。今日の成果で剣士はレベル16で風魔法がレベル15だ。久しぶりのレベルアップで満足して眠りに就いた。

 

 翌日、当然の経緯として幾つもの輝点が昨日の殺害現場に登場して去っていった。立ち寄った時間がごく短かったことを思うと、死体を検分して別の殺害可能性を考慮したとは思えない。増員で対処するというのが次の流れだろうかと思うが、まだ単なる害獣被害と思っているなら、手段を変えない可能性もある。

 

 結論としては後者だった。しばらくして前回と同じような風体の新たな二人組が経路に現れたときはこんなに安直で良いのだろうかと思ったが、またしても護衛役の方らしい男側が戦闘状態にない。この時点で罠という可能性は無いと判断して良いだろう。

 

「なんで俺がこんな面倒な役やるはめになるんだよ。獣に食われるような間抜けな奴らと一緒にするんじゃねえよ」

「いえ、そうは申されましても…」

「なにおどおどしてんだよ。獣なんて十匹でも二十匹でも出てこようが俺様がいればいちころに決まってる」

 

 こういう考え無しの奴らが相手で良かった。

 次の瞬間に俺の飛ばした風の刃が首筋に直撃した男はそのまま前向きでばたりと倒れた。

 

『人族 レベル18』

 

 前回の経験を踏まえて極短時間で二撃目の風の刃を作り出して狙いもつけずに背中に放ったのだが、あまり深手にならなかったようだ。背中に傷を負いながらも必死に現場から逃走しようとしている。

 

 鑑定。

 

『人族 レベル17』

 

 思ったよりレベルが高い。そういうことか。大慌てで身体強化をかけて逃げ出そうとしている男に近づくと即座に後ろから剣を突き刺して大急ぎで絶命させる。とって返して大男の方にも剣で首筋に傷を付け直す。間に合ったか?

 

 自分自身に鑑定をかけてみる。

 

『テオ 人族 15歳

ジョブ:剣士 レベル18…』

 

 なんとか正しい手順と順番で絶命してたようだ。

 

 小男の方に戻り状態を確認する。ぐっさりと剣の跡がついてしまっているから、こいつの死因の偽装はもう難しいか? いや、頑張るしかない……剣のあとを石でほじくったり手を突っ込んで肉を引き裂いたりして、傷口部分を後から来るだろう獣が食べやすくなりそうな状態に改善しておいた。洗浄魔法があるとしても二度とやりたくないが、自分の命に直結するレベルアップが引き換えだったと思えば納得するしかない。

 

 こんな所を誰かに見られるわけにはいかないので、変な奴が来ないよう索敵をしながらの力仕事だったが何か変な感じがする。一体、何だろう。

 

 今日の件に関しては心配があったため、翌日の明け方に再度現場に来て二人組の死体の状況を確認してみた。空が明るくなりかけているので砦の連中と出くわさないように索敵をしながらだ。今日は変な感覚はない。

 

 魔物寄せを増量しておいたご利益があったのか獣たちはきっちりと仕事をしてくれていたようで、二人とも獣に襲われた死体の雰囲気を醸し出してくれていて一安心だ。

 

 さらに翌日、山賊砦からフルトの街への連絡員は連絡役らしき男一人と護衛三人の四人組の構成に変更された。流石にこの状況では簡単に手を出すわけにはいかないだろう。

 

 相手が四人ということならば、一度だけなら隙を見つけて仕掛けて殲滅できる可能性もあるだろうと思う。だが、砦側に気付かれないように必ず証拠を残さないようにしてという条件をつけるとまず無理だ。騎士団の急襲が近づいていると思われる今、変に砦側に疑念を持たれるような真似はしたくない。

 

 こうして手持ち無沙汰になってしまった俺は、空いた時間に拠点で手紙をしたためることにした。無論、決戦を前にした遺書などの類ではなく、次回フルトを訪れるときに商業ギルドに寄ってダンテさん宛てに送るのを依頼する予定の手紙だ。

 

 前世日本人の記憶を取り戻したテオこと今の俺の半分は嘘で出来ている。だから手紙の内容も嘘まみれなのは、ダンテさんや父さんを始めとした家族やニナには申し訳ないがこれはもう仕方がない。

 

 タワバの街で俺の少し前に冒険者ギルドに登録した同名で似たような風体のテオという奴が街の半グレ組織と揉めたようで、事件自体は解決したものの人違いで残党などに狙われてはたまらないので着いて早々だが登録を諦めタワバの街を離れることになった。タワバの街に行ってももう無駄で俺には会えないので家族にはそう伝えて欲しい。

 

 今は別の場所での登録を考えて北に向かっているが、途中で山賊に襲われた商隊に出会って護衛の人達に協力する機会があった。貴重な商品を守れたとのことで思った以上に感謝されて、副業としてやろうと思っていた商業ギルドへの登録を推薦してもらえたので会員になった。今後はこちら宛に連絡して欲しい。ついでに貰った褒賞をニナ宛に送りたいので宜しくお願いしたいという感じの内容だ。

 

 タワバの街を離れてしまった件をなんとかダンテさんと家族に伝えておかないとということでひねり出した少し無理目のカバーストーリーになっている。話を聞いたアラン父さんが「テオの奴、一体何をやっているんだ……」とぼやく姿が目に見えるようだ。人に信用してもらうには真実と嘘をほどほどに取り混ぜるのが重要というのがよく言われる話なので、必ずしも全部嘘ではないようにしておいた苦心作だ。

 

 本当はもっと送りたいのだが、送金額は怪しまれないように俺くらいの若者が無理したら何とか手に入れられそうなくらいということで金貨四枚にしておく。ダンテさんなら着服される心配も無い。以前のテオが感じていた開拓村の金銭感覚だとこれでも大したもの扱いだろう。商業ギルドの会員間だと送金の決済手数料がぐっと安くなるのが良いところだ。ダンテさんの会員証の番号を控えておいて本当に良かった。

 

 この所山賊対応でばたばたしていたけれどタワバの街を離れてからずっと気になってた課題をこれで解決できると思うと心が少し軽くなった。

 

 こうして俺は自重した日々を送っていたのだが、自重してくれなかったのは俺が提供を繰り返した連絡員の死体に味を占めていた獣たちだった。三日もしない内に結構な数の獣の群れが四人組を襲って森の中での大乱闘になってしまった。鷹の目で観察していた結果、獣達は全滅、連絡員は二人重傷、二人軽傷の痛み分けで俺の偽装工作は事後的に完璧なものになってしまった。自分が原因とはいえ予想していなかった展開に驚くしかない俺だった。

 

 

 獣の全滅で一区切りという雰囲気になり、砦から出てきてフルトに向かう連絡員を襲うという手段に見切りをつけた俺は、拠点に転がって新規の方策を考える。

 

 何とかして今までとは別の方法で砦から出てくる山賊を個別に補足して……砦から出てくる……間違いない!それだ!

 

 先日からの違和感の原因に思い当たった俺はがばっと起き上がると拠点を出て前回二人を殺害した場所に行き索敵をかける。

 

 砦の作業所を中心にして多数の輝点が確認できるが、良く良く見ると砦の北西方向にある幾つかの輝点は山賊達の砦の境界を明らかに踏み越えている。これは廃抗の先にある場所か?

 

 俺は隠行をかけながら砦の南側から周り込んで北西部に向かった。索敵に出てくる輝点から距離を置いて鷹の目で慎重に動きを観察していく。そして発見した。

 

 砦の奥にある廃抗の左端にある抗道の先に人が一人通れる程度の幅の穴が開いていて、そこから人が出たり入ったりしている。

 砦は正門だけの袋小路ではなく実は他の出口も備えていた。

 

 衝撃の事実という奴だ。だがこれは使える。

 

 レベル30以上の連中が殺し合いをする騎士団の山賊砦襲撃時の立ち回りをどうするべきか考えていたが、この発見は光明になる気がする。

 

 方針は決まった。

 

(23話に続く)

 

テオ 人族 15歳

 

ジョブ:剣士 レベル18

 

スキル:火魔法2 水魔法2 風魔法15 土魔法7 回復魔法3 治癒魔法0 洗浄魔法1 浄化魔法0 収納魔法2 鑑定魔法1 探査魔法1 隠行魔法3 強化魔法1 剣術18 槍術4

 

 




次回、23話は4/26 19:10に予約投稿済です。
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