異世界転生で欲張り過ぎてしまいました   作:真紅或は深紅

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06話  殺戮者への対峙

 初めての魔物狩りを徹夜で終えて戻った宿で爆睡した俺が目覚めたのは、もう太陽が傾きかける頃合いだった。完璧に寝過ごしてしまっている。慌てて用意して宿屋のお姉ちゃんにまた今日も戻らないかもと言伝を残し、既に街に戻る人の流れの方が多くなって来ている門を目指す。

 

 今日のうちにもう一段階レベル上げをしておけば、身体強化と攻撃力+2の装備があるから一安心と思って、魔物狩りに出かけようとした俺は焦りすぎていたのだろう。索敵は使用していたものの鷹の目を使用していなかったのを即座に悔やむことになった。もう門を通らないで引き返すには遅すぎるタイミングで索敵のアラートが浮かび、門の脇で俺が街を出ようとするのを待ち構えているヤス(仮称)の姿を眼前に捉えたのだった。

 

 一瞬、大げさに忘れ物をしたとでも言って引き返そうかと思ったが、流石にそれはないだろうと思い直し、わざと気付かない振りをしながら門番に挨拶して街を出て森に向かうことにした。

 

 前回の冒険者ギルドでの遭遇の時と異なり、今度は害意を持つ存在を示す輝点が俺が門を出て森の方に向かう間もつかず離れず着いてきている。通り過ぎた瞬間に確認したがヤスは冒険者装備ではあるものの長剣は履いていなかった。更に上は防具で固めていたが下は皮のズボンとかだった気がする。多分、ヤスは剣士ではなく盗賊か何かのジョブなのだろう。だとすると陽が完全に落ちてからの戦いは鷹の目があるからと言って俺に有利とは必ずしも限らないな。

 

 俺は割り切ると隠れる場所がない大き目の石がごろごろ転がる峠の荒地まで進んでから止まり、そこで振り向いて仁王立ちした。

 ヤスが自分の実力に自信があるなら、陽が沈むのを待たずにこの場所に出てきて俺と対峙することだろう。さて、どうする。

 

 結局、ヤスは全く立ち止まることなく近づいて来て俺の前に立った。

 

「初心者狩りなんて下種なことをやってくれるじゃないか」

「口と見かけだけは立派でも中身が伴わないレベル1の小僧に何を言われても感じんな。すぐさま内臓をぶちまけて死ぬが良い」

 

 あっという間に決闘の始まりだ。

 

 ヤスは短剣を取り出すと俺に向かって突っ込んでくる。俺は正面から長剣をヤスに向かって振りおろす。レベルの差が一つで攻撃力+2と身体強化がある俺の勝ちだ。

 

 次の瞬間、ガキンという音がして俺の長剣とヤスの短剣が絡み合う。

 げっ、ヤスのやつ元々のレベル3以外に+2補正分の何かを使ってやがる。

 

 驚いたのはヤスの方も同じのようだ。驚愕した顔で飛びのくと短剣を構えて間合いを測り出した。切り替えも早い、だが距離をとったのは悪手だったな。

 

 俺が長剣を左手に持ち振りかぶるとヤスの注意がそちらに向く。

 次の瞬間、俺はアイテムボックスから取り出した槍を利き手の右手で持ちヤスの左腿に突き刺していた。

 

 固まった体勢のまま、信じられないという表情で自分の腿に突き刺さっている槍を凝視するヤスに構うことなく、剣を手放し槍を引き抜いた俺は渾身の力で短剣を持つヤスの右手を両手で持った槍で叩き付けた。短剣が手放されヤスの右腕が変な方向に折れ曲がるのを確認しながら今度は槍を水平に振りヤスの頭部を横殴りにすると、ヤスは力なく崩れ落ちた。槍を置いて剣を持ち直して近づくと、ヤスは口を半開きにして何かを言おうとしているようだったが、構うことはないとそのまま剣で喉を突き刺して終わりにした。

 

 実際に戦っていた時間はごく僅かだったが、なんだかとても疲れた気がする。

 元の俺とテオの生きてきた時間を通して人生初のヤってしまいました案件だけど、ヤスの死体を眺めていても特に何も感慨はわいてこない。村に野盗崩れが流れてきたときにアラン父さんが人を集めて狩り立てて、最後はこんな姿で村はずれで息絶えたのを見てた経験が活きてるのかもしれない。

 

 さて、これどうするんだ。

 

 荒地の隅までヤスの死体を手早く引き摺って運んだ後に悩んだ結果、人生初の土魔法の出番となった。結論として空元気の鼻歌を数回繰り返すくらいの時間で証拠隠滅は外見上ほぼ完璧に実行され、土魔法って便利だなという認識を得るに至ったのだった。埋める前に戦利品として短剣と現金を洗浄魔法をかけてからアイテムボックスに入れておいたのは言うまでもない。

 

 さて、何も後腐れなく心配ごとを片付けることができて、待望の鑑定の結果レベルも(当然剣術も)3に上がったことが確認できた。まだ太陽は沈んでいないけど見事に今日の用事は済んでしまった。

 

 ここで街に引き返して門番さんたちに不審がられるのも何なので、まあ予定通りやるとしよう。昨日グレイウルフ狩りをしたのとは少し離れていて、且つ森からの距離は似たような場所で再度のグレイウルフ狩りに挑戦してみる。本来ならばレベル6のグレイウルフを見つけて倒せばレベル3になるという予定だったのだけど、今日はもうヤスを倒してしまったので暢気なものだ。

 

 結局、昨日とほぼ似たような感じでレベル4のグレイハウンド五匹がやってきたので纏めて相手をすることにした。今日はリーダーがいないグループだったのか一匹残らず撒き餌に食いついてきたので残らず匂い袋の餌食にすることができた。半死半生状態のグレイウルフを四系統それぞれの魔法で止めをさすことで総てをレベル2にすることが出来たのは一日の成果としては十分だったと言えるだろう。

 

 まあ、死に掛けのグレイウルフを水球で包んで溺死させようとしたらレベルが上がらず死因が水魔法にならなかったらしいということが分かって、考え直した結果五匹目を水魔法で作った氷塊で止めを刺すことになったのは自分の未熟さを痛感する出来事だった。

 

 異世界で効率志向の主人公を目指す俺の戦いはこれからだ。

 

 なんやなんやでアリバイ作りのための深夜作業も無事終わって、朝陽と共に開門された扉をくぐって街に入り宿屋を目指す。

 

 心配事も無くなったことだし、今日こそはぐっすり寝るぞ。

 

 

(07話に続く)

 

テオ 人族 15歳

 

ジョブ:剣士 レベル3

スキル:火魔法2 水魔法2 風魔法2 土魔法2 回復魔法1 治癒魔法0 洗浄魔法1 浄化魔法0 収納魔法1 鑑定魔法1 探査魔法1 隠行魔法1 強化魔法1 剣術3 槍術2 

 

 

 




>>信じられないという表情で自分の腿に突き刺さっている槍を凝視するヤス
03話で出てきた屋台の果物売りのおばちゃん『商人 レベル4』を主人公と戦う前に殺ってレベルアップしておかなかったことがヤスの敗因に間違いありません(大嘘)

というわけで、疑問に思う読者の方もいそうですので、一般に戦闘職の人間が非戦闘職の自分より高レベルの人間を殺しても職業域に全く重なりがないという理由でレベルアップしない世界観になっていると了解しておいて頂けましたら幸いです。

次回、07話は9/18 21:10に予約投稿済です。
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