異世界転生で欲張り過ぎてしまいました   作:真紅或は深紅

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08話  裏組織への危惧

「今日はこの辺りでやってみるか」

 

 ヤス(仮称)とのタワバの街冒険者ギルド最弱決定戦を生き抜いた俺だったが、結局、その後一度も冒険者ギルドを訪れていない。ヤスのことが話題になっていて万が一何か知らないか聞かれて挙動不審になってしまってもいけないので、ほとぼりが冷めるまで近付かないことにしたからだ。

 

 まだ冒険者として銀貨一枚も正式には稼げていないが、ヤスから頂戴した決闘代金はちょっとしたものだったので自分的には気にしないことにした。ここ数日は宿屋と魔物の森を往復する平穏な日々を過ごしている。成果も今一歩というところだが、別に怠けていたわけではない。

 

 グレイウルフ相手の狩りを続けていたら、一応三匹レベル6の奴がやって来たので、槍術と魔法で攻撃距離の長い方から選んで風魔法と土魔法をレベル3にはしておいてある。そこで近場の群れが打ち止めになったのか、昨日はとうどう夜通し待ってもグレイウルフが掛からない空振り日になってしまったのだ。

 

 そのため今日は最初にグレイウルフを倒した場所にあった川を橋のある下流側から超えて進み、より森の中心に近い外縁部に餌場を移して罠をかけることにしたのだった。

 

 街を出て少しの所にある分かれ道を左に折れるとすぐに橋だ。街の外だというのにローマ時代の水道橋の土台部分を思わせるような重厚な作りの橋が、結構な幅と流れのある川を跨いで架けられている。不思議に思って地図を見直すと、この橋を超えて真っ直ぐ北に向かうと魔物の森と隣接するような感じで鉱山があるようだ。この立派さは鉱山からの物資の搬入搬出に使われるのが主目的らしい。

 

 橋を渡って鉱山に向かう道と分かれて川沿いを行き、またひたすら歩くと森の外縁部に到達する。いつものように準備を終えて待つことしばし。川を跨いで森の中心部に近づいたおかげか、今日はめでたく探査魔法に対象が現れた。数は四個。

 

 グレイウルフは五匹の群れが多いのにと思いながら森の出口を鷹の目で眺めていると、今日のお客さんが現れた。いつものグレイウルフと似てるけどなんだか違う。鑑定にかけてみると『ブラックウルフ レベル6』という結果だけが帰って来た。なんだかどれも一回りグレイウルフより大きくて強そうだし、久々に格上相手の登場だ。その上一匹は更に上位のレベル7だ。今日は、うまく行くのかなあ……

 

 と、悩んでいた時もありました。

 

 存在の格が少し上がっていても所詮同類ということか、少したった今その四匹は俺の匂い袋攻撃を受けて目の前で泣き喚きながら、一生懸命、地面に鼻をこすり付けております。

 

 後はいつもの手順ということで、両手に持った槍に力を込めて無防備な腹側から即死しない程度の深い傷を負わせていく。ここまでくれば、もう自身への心配はないということで、後はお楽しみのレベルアップチャレンジの時間だ。俺は剣を手に取るとまずレベル6のブラックウルフに突き刺して絶命を待って自分を鑑定する。

 

『テオ 人族 15歳

 

ジョブ 剣士 レベル4

スキル 火魔法2 水魔法2 風魔法3 土魔法3 回復魔法2 治癒魔法0 洗浄魔法1 浄化魔法0 収納魔法1 鑑定魔法1 探査魔法1 隠行魔法1 強化魔法1 剣術4 槍術3 

 

…』

 

 さあ、ここが問題だ。まだ息のあるレベル7のブラックウルフを再鑑定する。

 やったぜ、レベルアップした俺が鑑定しても『ブラックウルフ レベル7』という情報しか表示されない。つまり、こいつを剣で刺殺すれば念願の連続レベルアップの達成だ。

 喜び勇んでレベル7のブラックウルフに剣を突き刺し絶命させてから自分を再鑑定する

 

『テオ 人族 15歳

 

ジョブ:剣士 レベル5

スキル:火魔法2 水魔法2 風魔法3 土魔法3 回復魔法2 治癒魔法0 洗浄魔法1 浄化魔法0 収納魔法1 鑑定魔法1 探査魔法1 隠行魔法1 強化魔法1 剣術5 槍術3 

 

…』

 

 一晩で二段階もレベルアップなんて今日はとても良い日だなあ。一通り心で喜んだ後、残りの二匹で槍術を4、迷った結果として風魔法を4に上げて今日の狩りは終了したのだった。

 

 

 元の世界では好事魔多しという言葉がある。

 調子に乗っていると予想外の出来事で痛い目に会うという例えだ。

 

 初心者狩りのおっさんヤス(仮称)を返り討ちにして連続レベルアップを果たした俺は、やっぱり少し浮かれていたのかもしれない。

 

 いつものごとく朝一番で宿に戻って爆睡して目覚めた夕方。森に向かおうと門を出ようとしていた俺は、ヤスのときと同じく俺を認識した途端に索敵モードを点灯させる相手に出会ってしまった。しかも今度は二人組だ。

 

 一体どうしたんだ、と思いながらも何も気付かない平静な振りを装い俺に害意を持つ二人組の横を通り過ぎ門を出る。

 

『リカルド 人族 19歳

ジョブ:遊び人 レベル5

スキル:

…』

 

『ヨナ 人族 17歳

ジョブ:遊び人 レベル4

スキル:

…』

 

 間違いなく俺にとっては初見に違いない二人組の、索敵警告対象の鑑定結果が表示される。

 俺より格下なのは不幸中の幸いだが、そもそも遊び人が俺になんで殺意を抱かないといけないんだ?

 

 とりあえず様子を見ることにして、街を出た後に尾行されていることを確認しながら、ヤスを返り討ちとしたときと同じ峠の広けた荒地に誘導する。

 

「一体、どうして俺がお前らに狙われないといけないんだ?」

 

 目の前に対峙する近さになるまで待って、二人組のうちリカルドと表示されていたレベル5の男の方に問いかける。

 

「新米冒険者のテオだな。お前、ダグのおっさん殺っただろ?」

「俺は確かにテオだが、誰だそのダグって奴は?知らないな」

「白ばっくれるなよ。いつも冒険者ギルドにいる目つきの悪い小汚いおっさんだ」

 

 分かりきっているという顔でリカルドという男は続ける。

 

「あのおっさんに新人冒険者狩らせて毎月上納金を納めさせてたんだが、今度テオってやつを殺るって連絡があってから、ダグのおっさんがいなくなっちまったんだよ。

 どうみてもお前が殺ったに決まってるじゃないか」

 

 衝撃の事実が発覚だ。仮称ヤス改めダグおっさんは、個人の趣味?としてではなく、どこかの組織から命令された仕事として冒険者を狩っていたらしい。ん、上納金ってことは外注あるいは下請けなのか?しかし冒険者狩りを仕事になんて、そんなこと本当にあるのか?

 

「新人冒険者を狩らせて上納金だと?衛兵に言えば、お前一発で縛り首だろ」

「俺の話だけで確たる証拠もなしに、新人冒険者のお前が衛兵に言ったところで何が起きるっていうんだ。

 俺らの組織『闇の牙』はこのタワバの街で一番大きなシマを持ってて繋がりも多い。

 誰も真面目に取り上げやしねえよ」

 

 自分が大きな裏組織、遊び人だから半グレ集団か?に所属していることを自慢げに喋るリカルド。

 なんだか、面倒くさそうな話になってきたぞ

 

「お前が殺っちまったせいで、ダグのおっさんがやってた新人冒険者狩りを、俺らがやらされるはめになっちまったじゃねえか。

 糞面倒な仕事を押し付けられていらいらしてんだよ。原因になったお前にはここでちゃっちゃと死んでもらうからな」

 

 腰に下げている剣を抜くリカルド。あんまり様になっているとは言い難いのはジョブが遊び人なせいか?

 

 

「なあ、ここで銀貨を何枚か渡すから俺を見失ったことにして、このまま引き返すというのはどうだ? 

 話を聞く分にはお前も別に是非とも俺を殺したいというわけではないんだろ?」

 

 元社会人としては金で解決可能なら要らぬトラブルは避けたいところなんだがな……

 

「いや、初めての仕事だからきっちりお前を殺して来いと言われてるんでな。

 それに、お前を殺せばお前の金も全部俺のものになるのに、どうして今数枚の銀貨で我慢しなくちゃいけないんだよ」

 

 ダメだ。殺人への忌避感とかがないかと期待してみたけど、異世界半グレの兄ちゃんにそんなもの期待するだけ無駄だったな。

 

「お前はどうだ。兄貴分のこいつよりも更にお前はこの仕事に意欲なさそうだよな」

 

 ヨナという名前が表示されている、レベル4の小柄な男にも声を掛けてみる。こいつはどうみても兄貴分のお供でついてきただけで仕事のヤル気はゼロにしか見えないしな。

 

「俺はどこまでもリカルド兄貴に着いていく。だから、お前をここで殺す」

 

 ありゃ、俺の言葉でさっきまで点いたり消えたりしていたヨナの索敵モードの反応がちゃんとした輝点になった。覚悟完了ということだな。

 

「そうか。なら話は決裂ということで良いな」

 

 半グレ野郎への説得工作は失敗した。仕方ない、俺も覚悟を決めよう。

 

 おりしも横殴りの風が突然周囲に吹き荒れた。舞い上がった砂塵が俺たちを包み、衣服をはためかせる。後方では枯れた草の塊が風にあおられ回転しながら視界の隅を横切っていく。

 峠みたいな場所では珍しくもないことなんだろうが、気分はもう完全に『荒野の決闘』だ。

 

 

 俺は無造作に剣をかついでリカルドに向かった。

 

「新米冒険者風情が舐めやがって!」

 

 リカルドが俺に向かい剣を振り下ろす。身体強化のスキルがあり攻撃力+2の俺の剣はいとも簡単にリカルドの剣を弾いた。仰け反ったリカルドの右腕を次の動作で問題なく切断すると、リカルドの顔が苦痛に歪むのを確認する間もなく風魔法4を直撃させリカルドの頚動脈を切り裂いた。血を噴出しながら倒れるリカルド。当然のように致命傷だ。

 

 ヨナの方に動きがないのは気配で分かっていたが、視界に入れると現状が信じられないようで目を見開きながら棒立ちになりガタガタと震えている。と思うと、ギクシャクとした動きで俺に背中を向けて逃げようとし始めた。

 

 悪いな。これもお前の選択した結果だから、大好きなリカルド兄貴と一緒にあの世に逝け。

 

 腕を一振りしてリカルドを殺してレベル5になっているはずの風魔法でヨナを攻撃する。

 レベル5の俺が放つレベル5風魔法を特殊な技能や装備を持たないレベル4のヨナが避けられるはずもなく背中に致死級の傷が刻まれる。倒れこんだヨナの命が尽きない前に土魔法で首から土槍を生やして命を刈り取った。

 

 誰も付近にいないことは探査魔法で確認済みだがまずは片付けが必要だ。レベル4に上がった土魔法を使うと、仮称ヤス改めダグおっさんを廃棄したときとは雲泥の楽さで現場の証拠隠滅が完了した。今回も勿論、二人の剣と財布は回収済だ。遊び人が剣を振り回しているだけあって防具は俺のより安そうで、わざわざ剥ぎ取って収納するほどの価値は無さそうだったのでそのまま一緒に土の中だ。

 

 さて、とりあえず返り討ちにしたけど、はっきり言ってこの状況はかなりまずい気がする。

 

 Q:ボク、なんかやっちゃいました?

 

 A:はい、タワバの街最大の半グレ集団の構成員を二人殺っちゃいました。

 

 レベル5やレベル4ということは間違いなく最底辺だろうが、それでもタワバの街の最大半グレ集団の正規メンバーだ。俺の名前をご指名で上からの指示でやって来ているということは、この二人が戻らなければ間違いなく俺にヤられたと見なされ、次にはもう少し格上の刺客が送られてくるに違いない。

 

 リカルドの兄貴とか呼ばれてた奴がもう少し柔軟な頭をしていて買収可能だったら良かったんだが、こうなってはもう簡単に収拾がつかないぞ。初心者用冒険者の街で新人登録しただけの俺がどうして半グレ集団との全面抗争におびえないといけないんだよ!

 

 あー、今考えてみれば俺とリカルドが同じレベル5で俺が身体強化を使えるってことは二人の話を聞いた後にやり合わなくても、状況がわかったんだから方針転換して二人の目の前から、そのまま走って逃げ出せば間違いなく逃げ切れたんじゃないか。

 

 なに「話は決裂ということで良いな」とか格好つけて戦ってるんだよ。

 

 俺のアホ! 考えなし!

 馬鹿なの? 死ぬの?

 

 俺の馬鹿さ加減をあざ笑うかのように、なんかこの世界に転生して初めての雨まで降ってくるし気分はもうどん底だぞ。

 

 

(09話に続く)

 

テオ 人族 15歳

 

ジョブ:剣士 レベル5

スキル:火魔法2 水魔法2 風魔法5 土魔法4 回復魔法2 治癒魔法0 洗浄魔法1 浄化魔法0 収納魔法1 鑑定魔法1 探査魔法1 隠行魔法1 強化魔法1 剣術5 槍術4 

 

 

 




モヒカン男やチンピラ兄ちゃんが溢れているタワバなんて名前の街で、どうして主人公がのんびり新米冒険者として生活できるなどと思ったのか?(それは無理というものです)

今回出てきたブラックウルフの設定による計算は以下のようになります。
人間レベル:グレイウルフレベル = 1:1.333…(グレイウルフレベル6=人間換算レベル4.5なので倒せばレベル4になる)(グレイウルフレベル7=人間換算レベル5.25なので倒せばレベル5になる)

次回、09話は9/22 20:10に予約投稿済です。

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