モブに厳しいリバイス世界で生存してしあわせになりたいんだが 作:オルゴメタルム
第一話 絶望1
──気がついたら『仮面ライダーリバイス』らしき世界に転生してしまってるんだが。
もう今世何度目かもわからない絶望の嘆きが内心で木霊する。可能ならば、この悲しみを某SNSで叫び散らしたい。しかし残念ながら、この世界でそんなことをすれば即刻フェニックスに特定されて灰塵に帰されるだろう。
「あっ、手ー止まってるよ! 早く終わらせないとご飯間に合わないよ〜!」
「……ごめんね、
男湯よりも広い脱衣所で、彼女、
じゃあ、一つ言っていい?
(なんで! 私が! 『しあわせ湯』ではたらかないといけないんだ!!)
もう、把握した方もいるだろう。
私はあの明らかにモブに厳しい『仮面ライダーリバイス』の世界に転生してしまっている。
それだけでなく、主人公・
「おーい! 二人ともそろそろ切り上げて来いよー!」
「あっ、ちょっと
「まあまあ、別に掃除してるだけだから……」
「あっ……悪い! 今は誰も風呂入ってないし、直接伝えるのが早かったんだ」
噂をすれば主人公ご本人が来てしまった……。
彼こそが、五十嵐家の長男坊にしてこの世界の主人公・五十嵐一輝。前世知識の通りなら、『仮面ライダーリバイス』という番組は彼が内なる悪魔の囁きを聞いてしまうところから開始するだろう。
だが幸い、今はまだその時ではない。それを把握し、私はトラブルに巻き込まれることを承知した上で『しあわせ湯』に乗り込んでいるのだ。
ホントは平穏に生きたいんだけどな……。すべては自分の生存のためなので致し方ないのだが。
なぜ私がこの世界に絶望し、トラブルフラグの塊である五十嵐家と交流するなんてことになっているのか。この際「ライダーオタクの虚言妄想乙」て扱いでもいいから来歴を聴いてくれ。
幼少期から今世と似た前世があるという感覚が朧気にあった。
が、それとは別になんの関係も無いある日、なんと通っていた小学校が何者かに爆破されたのだ。
呆気なく倒壊していく校舎。マジで唐突で意味わかんなくて宇宙猫になってたと思う。
現代日本に似合わぬいきなりのド派手テロ行為に目を見開きあんぐりしてしまう。とにもかくにも避難している最中、私は見つけてしまったのだ。
あの近未来的な全身白の隊服を着た人達を。
(あの服……えっ? いや、見間違いに決まっ……てか今避難誘導してくれてる人も同じ服じゃん!
この人ら間違いなく《政府特務機関フェニックス》じゃねーか!)
あ、よく耳を澄ませると避難勧告の中に『デッドマンズによる…』とか聴こえる……。
……ウワーッ!? ここ間違いなく『仮面ライダーリバイス』世界だ! 対戦ありがとうございましたッッ!!
そんな感じで、今世の衝撃光景が引き金となり、前世の情報量がなだれ込んできた結果、私は情けなく気絶してしまった。
私は前世で『仮面ライダーリバイス』の一視聴者だったらしいので、否応にも思い出さざるを得なかったのだ。デッドマンズのニュースとか見てたら事前に思い出せたのに……。
さらに、しばらくして目を覚ました私は再び驚愕してしまった。
「気がついたか……! もう大丈夫、怪我は無かったからショックを受けただけだろう。さあ、立てるかい?」
「────」
ちょ、ちょっと勘弁して……。
前世の情報量による頭痛に重なり、目の前の光景に頭がさらに痛くなる。
まだ小じわもなく若々しいが間違いない。目の前の私を介抱してくれた人物の名は──門田ヒロミだ。
(わー、ホントに新人のヒロミさんだ……ってそうじゃない! 今は『いつ』だ!?)
ラッキーにも程がある。いや、被害を受けてる時点で最悪だが。
パニックになったフリをして、情報を聞き出すべく門田ヒロミにマシンガン質問をぶつける。人の良さと面倒見たがりは若い頃から健在だったようで、若干狼狽えながらも丁寧に色々話してくれた。
彼と五十嵐一輝はリバイス公式から年齢が明示されていた数少ないキャラなので、時系列を特定しやすい。話を聞くと本編開始8、9年前だということが特定できた。てことは私は多分、五十嵐大二と同年代なのか……。
また、今回の爆発はやはり《悪魔崇拝組織・デッドマンズ》による副次的被害だということが判明した。いや、これでコラテラルダメージとかデッドマンズやばすぎでしょ。
リバイスを視聴した方々ならお分かりだろうがこの世界、かーなーりー物騒な世界観である。
はるか数千年前に地球外生命体ギフが飛来し、人類の文明を一夜で滅亡させた。絶望し、隷属した契約者兼メッセンジャーとなった人物が数千年間人類を見定めた結果、戦略的退化として人類を支配する結論に至ってしまった。
そのための狂言回しが今回のデッドマンズであり、その前身であるノアも軍事のために人体実験を重ねまくってたやべー組織である。
それでデッドマンズだが、ギフの詳細も知らないくせに偶像崇拝し、人類の社会をリアルタイムで脅かしている危険すぎる宗教団体だ。
奴らが使役する人類の悪性を形体化した存在がデッドマンで、大体はそれによる被害らしい。
本編では早々に壊滅していたが、描写されてないだけで常に社会もインフラも脅かされていると身を持って思い知ってしまった……。
想像する限り最悪の世界観だとわかり、頭を抱えてしまう。そう、リバイス世界は日々名も知らぬモブの犠牲の上で成り立っている物騒な世界だったのだ。
そして、私もやはり一般人でモブに当たる存在だった。
(なるほど把握──じゃねぇよ! イヤだ! なんでよりによってリバイスなんだよ!
悪魔が具現化して跋扈する世界とかマジないから! モブが生き残れるわけないから!!
もし命あったとしてもいずれウィークエンドかアララト行きなんでしょ!? 凡人がその環境で耐えられるわけないだろ!!)
この日、私は今世に絶望した。
……とにかく。その他情報を引き出した後、その日は避難所を介してさっさと家に帰ることにした。
ヒロミさん、ほんといきなり捲し立ててゴメンなさい。発狂しかけたロリに親切にしてくれてありがとう。でも心配だからって連絡先交換までしてくれるのは、逆にちょっと色々心配になります……。
特典なしの平凡オリ主転生ものです。ご査収ください。
息抜きのつもりでのんびり更新できればと思います。