モブに厳しいリバイス世界で生存してしあわせになりたいんだが   作:オルゴメタルム

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第二話 絶望2 / 出逢い1

 

絶望一人称&出逢いの別視点です。

 


 

 

 では、頭の痛くなる本題に入ろう。

 どうして私がトラブルフラグの塊である五十嵐家と交流するなんてことになっているのかについてだ。

 

 普通、主人公らレギュラーメンバーに関わるなんて、モブにとってはトラブルに巻き込まれるフラグでしかない。いつ死亡フラグに変わるかもわからないクソみてェな旗を自ら立てに行くなど自殺行為だ。本気で悪魔に食われるか裂かれるかして死ぬ。

 

 そうだとわかっていても……いやだからこそ、私は彼らに近づくほか選択肢は無かったのだ。

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「リバイス世界も悪魔も怖すぎでしょ……こうなったら今から人生プラン立てるしかないよなぁ……」

 

 今世では、小学校爆破事件の後もちょくちょくデッドマンズによる直接的被害を受けてきた。また、人生プラン作成中に顧みた悪魔の性質がどう考えてもヤバすぎたこともあり、私は完全に悪魔アレルギーである。

 

 

「いや、どう考えても『実体化する人の悪性』とかムリ。本編では人間には悪魔が必要って言ってたけど、単純に害しかない悪魔もいるから受け入れ難いし」

 

 リバイスの複雑な点として「悪魔のカテゴリが多様すぎる」問題がある。そもそも、一般的な悪魔の概念とは全く違うのだ。

 

 この世界では、人間が心の内に宿す悪性こそが『悪魔』であり、それがプロトバイスタンプによって引き出されたものがデッドマンとなる。

 他にも、ギフジュニアバイスタンプを押したらどこでも出てくる最強戦闘員ギフジュニア、ギフスタンプで人間を犠牲にして生まれるギフテリアン、上級契約で人間自身が悪魔となったギフテクスなどがいる。

 

 まあ、こうやって例に出した悪魔たちのコワモテからお分かりになっているだろうが、悪魔の種類が多様なくせに、そのほぼ全てが人間に百理で害のあるヤツばっかなので大問題なのだ。

 厳密には人間が心に宿す悪性としての『悪魔』と実体化して暴れるデッドマンは別物だが、一括りにして呼称されることが圧倒的に多いので混沌を極めている。

 

 

 さらに他にも、ギフの遺伝子の影響で実体化する、特例の悪魔がいるのでもうわけわかめである。

 「特例ってことは逆に人に友好なんだろ?」と思われそうだが、違う。これは、主人公ら五十嵐家の家族にのみ発現する悪魔なので、他の誰にも該当しない特殊例すぎるのだ。

 

 だが、実際に彼ら自身は自分の悪魔と関係を積み重ねることで物語を進め、番組を背負う主張をいつしか確立していった。

 カテゴリなんてぶち壊して、その力をもってテーマを標榜できるのだ。

 

 

 が、私は人間は誰しも……という悪魔関係のテーマ性に対して猜疑心を抱いてしまう。

 五十嵐家はいわば運命の血筋、選ばれた人間なので、特例の悪魔と心を通わせられる。

 対して、運もなくて凡人な私は悪魔の実害を受けまくっているので、どうにも共感しにくいままだ。視聴者だった身としてはなんだか申し訳ない。

 

 結局、実害を被っている今世の私は、本編の主張のうち「悪魔は許せる」「悪魔が必要」などに対して、いまいち乗り切れないのだ。

 私は五十嵐家の悪魔やデッドマンズについては前世からのファンなのでこんなこと言いたくないが、悪魔はヤバすぎて本気で関わりたくなくなってる。内心、悪魔とか近づかないで出てこないで消えてくれてもいいから!!と常日頃嘆いている。

 

 

「悪魔アレルギーだからデッドマンズはムリ! ウィークエンドとフェニックスは試験と環境が多分ムリ! アヅマと世捨て人になるのもムリ!

 ……どうしろと!?」

 

 絶望の中、それでも私は人生プランを練るしか無かったのだった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

(色々あったが、ついに勝負の日が来てしまった……)

 

 高校に入学して間もない日。私はついに計画を実行に移すことにした。

 

 

 中学生活は情報収集やプランニング、その他諸々で全部ぱぁになってしまった。せっかくの体感セカンドライフが……。

 だが、すべては自分が普通に生きるためである。

 前世を思い出したことで、私はより一層生に執着するようになってしまっていた。自分の命が一番かわいい。生存のために、本編通りストーリーが進行してほしいと心から願っている。

 

 

 その過程で多くの犠牲者と宿命を背負う仮面ライダーが出てくるというのに、完全な最低思考である。

 しかし、凡人の自分に物語の大筋を変える力も勇気も全くないので、救えるはずの人物を……なんて考えること自体が驕りであり、許されないとも思う。考えれば考えるほど、私は自分の安全しか考えられなくなっていった。

 平凡な私にアドバンテージがあるとしたら本編知識だけなのだ。それが原作ブレイクして使い物にならなくなくなったら困る。本気で生き延びたいのなら、選択肢を選ぼうとすること自体が浅はかになるだろう。

 

 

 凡人は、多少強引にならなければ生きられない。

 人生プランを立てた結果、私は非常に怖いが、五十嵐家に直接接触することに決めた。そう、バイトなら彼らを間近でチェックできるのだ。

 ……本当に緊張感がすごい。未だに身体は拒否反応を示して動かない。

 

「…………行きましょう」

 

 それでも、計画を立てて決断したのだ。

 震えていた脚を、爪先で拍子をとって落ち着かせる。強ばっていた顔を、一打ちして緩ませる。

 さあ、一世一代の勝負だ。私はゆっくりと夜更けの通りに出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ──本編突入4、5年前。

 

 

 俺──五十嵐(いがらし)一輝(いっき)は深夜にもかかわらず、『しあわせ湯』の表に出向いていた。

 

 

「おっ、あったあった。なんでこんなとこに落ちてんだろ……」

 

 表から少し離れた絶妙にわかりにくい隅に、探していた銭湯の吊り看板を見つけることができた。

 なぜか今日無くしてしまったこれを目当てに、もうみんな寝静まった時間に一人で出てきた。これがないと営業しているかわかんなくなるから大変だ。責任を感じた俺は、早く見つけようと躍起になっていた。

 うーん、あんまりこんなミスしないんだけどな……。

 

 

 『しあわせ湯』の経営に全面的に携わると決断してから間もない。まだまだ慣れないことがたくさんある。

 早く母ちゃんの負担を減らしてあげようと頑張っているが、やっぱりこういうミスをしばしば犯してしまう。

 

「……いや、めげてる場合じゃない! もっと気合い入れていかないと────あれ?」

 

 

 表からは死角になっていたんだろうか。ちょうど、今の場所まで来て、初めて気づいた。

 ──女の子が一人、『しあわせ湯』の方を見ている。

 

 ……こんな夜更けに一人で?

 こちらからは暗くて姿がよく見えなかったが、あまりにも動きがないので心配になった。

 おそるおそる近づいていく。女の子もこちらに気が付いたのか、ゆったりとした挙措で俺の方を振り向いた。

 

 

「……あの! こんな夜中に、うちになにか──」

「────見つけた」

 

 

 

 温かで落ち着く声。浮かんだ優しい笑み。

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 

 

 大事な大事な宝物を見つけたかのように、瞳が輝く。

 そして──か細い手が、伸ばされた。

 

 

「やっと、やっとあえ──」

「っ──あ」

 

 

 あっけにとられる間もなく、慈しむような手がこちらに届こうという瞬間……急に彼女は倒れてしまった。

 

 

 

「…………」

「……し、しっかり! えっと……とにかくうちで──」

 

 そのまま、彼女は気を失ってしまった。

 突然のことに焦るが、助けなければ。とにかく大事にならないよう、うちで介抱することに決めた。

 上半身と下半身を腕で分担する形で彼女を抱きかかえ、五十嵐家に向かって歩き出す。

 

「……なんでだろう」

 

 思わずこぼれ出た疑問は、彼女がここにいたことや彼女の不思議な行動に対してではないだろう。

 いや、最初はヤバくて不気味に思いかけたのだが、こうやって目にしてみると、この子は本当に普通だ。

 顔立ちとか雰囲気とか、何もかもが普通の少女。本当にそういう風にしか思えなくて、むしろ安心するぐらいに。

 

 

 じゃあ、どうしてこの子は……初めて会ったのに、あるべき場所に帰ることができたかのように、もたれてきたんだろう。

 どうして今も、眠っているのに、家族のもとに辿り着いたような安堵感を滲ませているんだろう。

 

 そして、俺も。

 

 どうして、それを受け入れられているんだろうか──。

 

 

 気が付けば、五十嵐家のリビングに到着していた。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 電気が付いているのはリビングだけで、やはり家族は全員寝静まっている。

 

 先ほどの感覚は、似た感じを知ってるけど、俺にとって初めてもので、でも不快ではなくて。

 何だったんだろうと思い返そうとしたちょうどその時、彼女は目を覚ました。

 

 

「あれ……私は…………あなたは」

「あっ、えっと、その……」

 

 慣れない方向の思考に入ろうとしていたこと。経験の無い状況。そして、目覚めた彼女の雰囲気がやはり、あまりにも普通だったこと。

 色々な要素が合わさったせいなのか、取り乱してしまい、上手く言葉が出てこない。

 

 

「──五十嵐一輝さん、ですよね? えっと、有名なんで知っています。じゃあ、もしかしてここって……しあわせ湯の中……?」

「あっ、ああ……君はしあわせ湯の前に居て、急に倒れて、一旦ここに連れてきたんだ」

「はっ、はい。ありがとうございます、一輝さん。わざわざ介抱までしていただいたみたいで……」

 

 さっきの始まりのやり取りとは打って変わって、慣れ親しんだ日常の中で普通に会話してるような感覚で、面食らってしまう。

 しかし、情報量が少ないせいでたどたどしい。気まずくなる前に、じゃあ、名前とか──

 

 

「助けていただいたのに、自己紹介がまだでした。

 私は一叶、水無瀬(みなせ)一叶(いちか)と言います。高校に入ったばかりです。これからよろしくお願いします」

 

 記憶に新しい、柔らかく優しい笑みが向けられる。やはり、さっきの出来事は幻覚とかじゃなかったか……。

 って、そうじゃなくて。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。『これから』って……?

 あと最初から俺のこと有名だとか知ってたとか、どういう──」

「──そうなんです。ちょうどその事に関して一輝さん、あなたに大事なお願いがあるんです。聞いて下さいますか?」

「あ、うん」

 

 彼女の表情に家族会議中みたいな真剣さが浮かぶ。

 ようやく成り立った疑問はすぐに肯定で打ち返され、同時に、いつの間にか彼女のペースに乗せられてしまっていることに気づく。

 思わず反射で返してしまったが、一体何なんだ……?

 

 

「……単刀直入に言います。

 ──私をしあわせ湯で()()()()()働かせてくださいっ!」

 

 

 ???

 

 

「え? 

 …………………え〜〜っ!?」

 

 

 柔らかに澄ました表情のまま飛び出してきた、予想外な威力のお願い。心の準備もして無かったので、驚きで放心してしまう。

 

「あれ……じゃあ、もう一度、言いますね? 私を住み込みで──」

「なんで!? ちょ、ちょっちょっと待ってくれ!」

 

 

 ──本当に、どういう、ことなんだ……?

 

 片手で待ったをかけながら、顔を覆ってしまう。混乱の中、彼女の方を覗くと、何故か彼女も顔を覆っていた……なんで?

 

 

 

 


 

 

オリ主、緊張で気絶し、焦って即刻オリチャーに転換。混乱と羞恥でやけくそのダメ元になってる。

 

一輝、少女の挙動がバグってるせいで困惑してノーガード状態。

 

 

 

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