モブに厳しいリバイス世界で生存してしあわせになりたいんだが   作:オルゴメタルム

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第四話 桃源に臨むゼラニウム

水無瀬とさくら視点です。

この世界の一般人として生まれた水無瀬によるシリアスな独自解釈が目立ちます。

 

ゼラニウム:「尊敬」「信頼」「真の友情」

ピンクのゼラニウム:「決意」「決心」

 


 

 ──数時間後

 

 

「……今話したのが、私が持つギフにまつわる情報だ。もう後戻りはできないが、本当に良かったのかな?」

 

「はい。五十嵐家が理性なき悪魔に果てるはずがないと信じて、時が来たら直ぐに積極的なフォローと連携をしてくださることも約束してください」

 

 私はぶーさん立会いの下、なんとあの白黒仮面マッドサイエンティスト・狩崎真澄とコソコソ密談していた。

 車椅子をぶーさんに押してもらう姿が痛々しいが、まだ身体が動くようで何より。WEメンバーにバレぬようにと、密会の手引きと場所の用意は渋ってたはずのぶーさんがしてくれた。

 来てから気付いたが、ベイルにクリムゾンスタンプ渡した地下駐車場だった。WEは本当に地下が好きだね……。

 

「ああ、約束しよう。正直唐突過ぎて感情論を浴びせられるかと思ったが、君は機関を志望していて新鮮な情報を基に思考できる方だったのがよかったよ」

「一般人、被害者から見る悪魔についてですか? それこそ取り留めのない話柄でしたけど……」

 

 ギフ、WEの情報を受けた感想、という体でリバイス知識から悪魔の性質について幾らか砕いて提示した。

 一定の理解度を示すことで信頼してもらい、身の保証やサポートの要求を確実に通すためだ。

 

 例えば、悪魔って居なくなるとやばいねとか、元太はベイルと元サヤしないとやばいねとか……

 そんな本編の見直しみたいな話題の中、特に耳を傾けられたのが「悪の力の利用」云々だったか。

 

(リバイスの「ライダーが利用する悪の力」の大元はギフの力。でも最終回の大二インタビューとか、一般人目線で馴染みあるのは別の方向性なんだよね)

 

 

 人によって産む悪魔の力に個体差があり、五十嵐家ですら相棒と向き合うプロセスが強化に必須なので、ギフやデバイス以外の内的要因がある。

 

 誰しもが持つ裏の部分や悪性が『悪魔』と解釈される世界。

 実際にやり取りや使役ができる素質を持つ『特別』は、一握り。

 指を咥えて見るしかない。理不尽に被害を受けるばかり。自分たちは無力だと嘆く一般人を今世では実際に見てきた。

 彼らは皆、漠然と共通の答えを持っていた。リバイス知識を持つ私は、それを一解釈として告げられる。

 それはこの世界で人類どころか生物全てが抱く可能性。遺伝子や概念にすら宿るものだった。

 

『広義における悪の力の源とは──人間の善がる、欲する、願う心の強大さかと存じます』

 

 進化、修正、肯定、否定、創造、破壊、達成、終幕へ。ただ望みを叶えたいがための原動力。

 叶えるために度を越えたものが自他を顧みずやがて毀損し、それでもと剥き出しに突き進むモノが悪や怪物と見做されるのだ。

 そして、自分の内なるそれらが発露と上手く秩序立てて付き合っていくことは「悪の利用」に直結する。その様は時代や情勢によって、正義や英雄……仮面ライダーとも受け取られる。これが率先できる運命に生まれたのが、五十嵐家なのだ。

 

 

「いや、古株の私は過去の惨憺たる悪魔が目に焼き付いているからね。どうしても悲観寄りになってしまう。

 それでも人間は悪魔が必要だと言える希望を、君は示してくれた。過去に学んだシステムによって、WEが悪魔を利用し、未来を勝ち取れるビジョンだよ」

 

「……ぶーさんに言った通り、考察も行動も五十嵐家の魅力のおかげです。惹かれて呼応、共鳴する人がいずれ現れるのも当然でしょう」

 

 狩崎真澄が関心なのは、自分が生んでしまった悪から始まったライダーを肯定されたと思ったのと、今後民間人であるWEのモチベに密接する話題だったかららしい。

 

 その通り、ライダーもヴィランも悪魔も魅力的だ。だって、持たざる者は彼らのように心を貫けない。環境、才能、財力、熱量……どこかでストップがかかってしまうから。

 嫉妬が擦切れるほどに、困難を越える強さが熱い。

 羨望が届かないほどに、突き進む様は遠く眩い。

 届かないと解ってるのに、憧れも尊敬もやめられない。

 

 何をも踏み越えてでもどんな苦難を受けてでも、たった一つを叶える姿。

 そんな力、それ程の強さ、そうした物語が自分にもあれば。

 真似出来ない力強さに惹かれ、ライダーや悪魔の後を追う者は、必ず現れる。

 殆どはやめるか、絶えてしまうだろう。どうあっても永い命じゃない。

 しかし、そのまた一握りの『特別』が、新たに悪の力を御して凱旋するのだ。

 

 悪が蔓延ることは無くとも、悪が消えることはない。

 だから、悪と向き合う仮面ライダーも生まれ続ける。

 戦いは、終わらない。

 

 

「WEは五十嵐家に呼応し、命懸けで自由のために闘争するだろう。五十嵐家そのものに共鳴する者も出てくるはずだ。できるだけ私は、皆が心に従いつつも命を守れるよう励もう。責任も同様だ」

「やっぱり、貴方が代表でいるのは戦後の責任を出来るだけ個人で担うためだったんですね」

 

 ……なんて言ったが。

 これは平凡な一般人として生まれたくせに、なまじ本編知識と視聴者の視座を持つ私だから、特殊な状況が綯い交ぜになって否応なしにそう捉えてしまう(解釈を強制される)だけ。

 本当は何かしら『特別』な才を持つか、いっそ何も知らない人で転生したかった。難しく考えなくていい、純粋な気持ちでライダーを応援していたかった。

 

 ……まあ、もう仕方がない。どうせモブはどんな環境でも静かに溶け込むばかりなものだ。対して、この世界には応援できる仮面ライダーがいる。

 どう転んでも、結果悪い様にはならないのが仮面ライダーシリーズだ。内なる発露──相棒(あくま)と手を取り制御できる五十嵐家が主役なので倍々頼もしい。

 

 狩崎博士もそこをわかっているので、五十嵐家やWEが殉死しないようバッファの用意に躍起している。彼が代表を引き受けたのも一環だ。

 身も蓋もないがWEは一般人が塊になった思想犯だ。戦後、狂った個人による洗脳工作で団員を操ったとかの方向性で罪を独り背負い、彼らは配慮ある措置で済むことを願っているらしい。

 

 

(まあ中途で息子にやべーこと暴露して死ぬんだけどね。WEはフェニックスの強権を継いだブルーバードに迎合されるから、大丈夫だよ)

 

「君がオブザーバーになってくれてよかった。五十嵐家が希望を託せる存在だと完全には確信できていなかった中で、踏ん切りがついた気がするんだよ」

 

 ダイジョウブ…ミライ,アンシン…と念を送っていたら、顔はわからないがスッキリした声音で返されたので、良かったことにする。

 ちなみにここでのオブザーバーとは、傍観的で許可された場合のみ発言権を持つ役割というニュアンスだ。私は立ち位置秘匿してもらう。本編に関わりたくないのがバレバレである。

 

 

「大二くんはフェニックスに行くし、一輝さんは多分……」

「君は彼らの人となりをよく知っている。中立になるということだね」

「……ええ。なので、さくらちゃんと五十嵐夫妻を特にサポートください。前者は特に心配ですから」

 

 信頼しているが、万一に備えバッファは欲しい。博士と同じ考えだ。とりわけ、さくらと悪魔(ラブコフ)の関係値には注意したほうがいいかも……?とした。

 なぜ二人の絆が重要なのか。前に言ったヒーロー精神を確立したさくらのその後がキーである。

 

 彼女はシリーズ終盤、ブラックサタン事件や兄たちの激昂激動に揉まれ、英雄性から翻って鈍感や無力感が呈されるようになる。一人間としてのパーソナリティや立ち位置の限界が、ここに来て強調されるのだ。

 強くなれたのか不安になるさくら。これらは「ラブコフを心から信頼できていなかったため」に通ずると明かされた。

 

 自分の悪魔を信じていないとはどういう意味か。

 ──向き合うべき自分の弱い部分を一方的に守る(隠す)ばかりで、対話してこなかった(なおざりになっていた)のだ。

 

 ヒロミさんの「誰だって守る側で居たい」がさくらに一番刺さっていたのがヒントだった。

 私に守られればいい、私は守っていればいいという暴かれた本性。そう()()()対象にして象徴が、イマジナリーフレンドモチーフのラブコフだった。

「強ければいい」……守れれば、その強さがあれば良いという観念は当初から根強かった。美徳や常識は裏と意義を飛ばし気味に身につけてきた。まるで、コブラがエサを咀嚼せず丸呑みし、味を識る前に消化するように。

 

 自分が取り零していた強さや美徳の裏の部分。それらを担った存在──ラブコフを理解し、ぶつかれば、解決していける。

 サンダーゲイルやエビリティライブからこのプロセスは必須だと判る。二人は互いに引っ張り合い、高め合えるコンビだったのだ。

 

 本編で気づけたのは、かつて救った夏木花の激励と……相棒に先立って全幅で信頼していたラブコフのおかげだった。

 証拠はリベラドライバー最大の欠点……変身やゲノムチェンジは悪魔側の意思に左右される。つまりラブコフは具体的な契約もないのに、最初から相棒を想い寄り添い続けたことになる。

 守られるのではなく、武器として共に戦う形の承認。弱さ未熟さ至らなさであろうと、守るではなく持っていき共に往けることをずっと示唆していた。

 

 もう弱さの一言では収まらない。

 家族を食べたいバイスや嫉妬や卑下を餌にしていたカゲロウが変わったように──彼女だって進化していたのだ。

 

(悪魔、移ろいやすく繊細な人間の心の発露である以上、姿も喋りも目的もめちゃくちゃ流動性高いからね。

 五十嵐家は悪ほどは心が一貫しない普通の人たちで、だからこそ悪魔は性質を変えられた)

 

 ギフの遺伝子を持って戦う運命に生まれた『特別』なのは事実だ。しかし、悩んで迷って拗らせる普通の人間だったから、相棒は変化・進化する余地を得た。誰しもを守り寄り添おうとできた。例外的に強固な一貫性に堕ちたのはホーリーライブぐらいだ。

 

 見過ごしたモノの裏とは向き合える。自分の強弱表裏……尊厳として全て抱え、共に戦っていける。その自覚を持ち、さらに強く生きていけるのだと。

 さくらは大切なことを気づかせてくれたラブコフに尊敬を払い、信頼を置き、真の友情を確信した。

 その集大成にして始点が、インビンシブルジャンヌなのだった。

 当たり前の尊厳を尊重し、救える範疇を救う。ヒーロー精神はさらに練磨された。ライダーとして、普通の一人間として、さくらは確かに成ったのだった。

 

 

 

(要するにジャンヌのバイタルは二人の絆が肝。気にしてくれれば、本編通りダディは指摘してくれるはず)

 

「もちろん、さくらさんを全力でフォローする。そして君は……」

「フェニックスには受かれませんし、五十嵐家で貢献できるよう励みます。私よりも……息子さんの身の振り方が気になりますね」

「ジョージ……君が合宿ですれ違って見た書類にデモンズドライバーらしきものが乗っていたなら、もう参戦は間違いないか……」

 

 さくらの話で締めようとしたのに、やっぱり無視できない話題に頭が痛くなる。

 ヤツは正直、話題をスムーズにするため、いなくても見たと言うつもりだった。……でもなんで本当に居たのジョージ狩崎!?

 

(なぜ「リバイス世界で関わりたくない人ランキング」1()()が居たの……? この時期は遺伝子工学研究所に篭ってんじゃないの? 演習所は訓練用スペース以外に医療センターしかないしやる事なかったろ。マジで怖いからリバイスシステム作成に従事しててくれ!)

 

 不穏なフラグじゃないよなと怯える私と、郷愁にふける狩崎博士が互いに緩んだところで、お開きとしたのだった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狩崎博士、一叶ちゃんの決意には悪いが……」

「わかっているよ。彼女とはもっと議論したかったが……危険に関わらせないのが()()だ。WEは有事以外、彼女と再会しないだろう──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──数時間前、WE基地にて

 

 

「ようこそ──ウィークエンドへ」

「ウィークエンドって。全然平日なんですけど……」

「僕たちの組織の名前だよ。さくらさん、まずは事情を共有させてもらえないかな?」

 

 ズレたことを言っている自覚はあるが、状況がわからない故に空回りしてしまう。地下に打ちっぱなしのコンクリで覆われた基地があるなんて、意味がわからない。

 そんな当惑の中私、五十嵐さくらは……オレンジの意匠が付いた黒服の怪しい集団に囲まれていた。

 

 やっぱりこんなの、どう考えても歓待じゃなくて脅迫だ。聞く耳持っていいと思えない。斜め後ろのヤツは体幹の鍛え方がなってない。押すだけで起点にできる。直ぐに他も倒せる。でも徒党の癖に練度のバラつきが激しいのは違和感か……

 

 ……いけない、力任せに打って出るとこだった。今は聞いとかなくちゃダメな話だ。歯がゆすぎるけどこらえないと。

 

「我々はフェニックスを監視している。デッドマンズとの癒着やギフ復活の率先の疑いがあり、それを暴くことで来たるギフという脅威に備える……これが現在の指針だ」

「わかった。で、いっちゃんたちを捕まえたりしてないわよね?」

 

 間髪入れずに切り出す。ここに来ると決めたのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

「彼女はリサーチして無害な一般人だとわかっている。デッドマンズの被害によって海外に出稼ぎに行く必要が出た両親と離れ離れになった不幸以外はね。もちろん、彼女含め誰にも手を出さないと約束するよ」

「銭湯が好きな気持ちはよくわかるし、本当にそれだけの普通の子よね」

 

 いっちゃんは最近ニュースでよく聞くデッドマンズって宗教団体の被害を受けたのは聞いたことあるけど……そんなに深刻だったなんて、知らなかった。

 そんなのおくびにも出さず、忙しいのにいつも話乗ってくれて。お節介じゃない優しさというか……私のためを思ってばっかりなんだって接しててわかる。

 

 大事な人の一人。だから独りで何か重いもの背負おうとしてること、放っておけなかった。

 ぶーさんを問い詰めて五十嵐家の秘密を、知ってしまった。

 全然、もう全く受け止められないし、どうすればいいのかわかんないし、知らなきゃよかったとも思ったけど……同じことを知って考えてる人もいるんだった。

 

 ママの隠したい、平穏を望む気持ちもわかる。じゃあ、いっちゃんは?

 虫も殺さぬ優しい、か弱い普通の人なのになんで背負う決意ができたの?

 

 誰にも相談できない。何もできずやるかたない。いつか事態が動くのを、見てるだけしかできないの──?

 

(……そんなわけない。みんなが自分のこと精一杯やってる。私だって、何かできるはず──)

 

『危ないことなら、秘密にするから……私が背負うから!』

 

 ──あれ? あの時私のやるべきこと、やりたいこと……決意はもう口にしてた?

 反射的でほぼ独り善がりでも、私も最初から、自分の指針はあった──? 

 じゃあ何で今まで忘れ、じゃなくて蓋してて。何に、躊躇してるっていうの、この心は!?

 

 

(……そこまで行って、何も変わらないなんて。

 本当にここまでずっとわからずで、進めないの…………こんなの、無敵じゃない)

 

 お風呂でマッサージした後、おんもい過去や全然解決できずでムカムカする私自身のせいで鬱憤が溜まってて、ちょっといっちゃんに当たってしまった。

 あっちも私と同じく悩んでるはずなのに。でも彼女は、いつもの落ち着いた柔らかい声音で、真っ直ぐ向き合ってくれた。

 

「私……全然無敵になれないの! こんなにその場でもやもやするばっかりなんて思わなかったしおかしくて……! ちゃんとしてたいのに──」

「今は無敵を目指せてないの? 励んでるのになんで今止まってるって思ったんだろう」

「やりようないっていうか、それだけじゃダメで……!」

「今できることは打ち込んでるんだね。その延長線の挑戦なら、深呼吸して、立ち戻って……そう。

 何のために頑張れるか、どこに進めば夢を体現できるか。澄んだ心で、今一度自分に聞いてみよう」

 

 いっちゃんはいつも、一緒に悩んだり考えたりしてくれる。しかも、納得できる色んな答えが出せるよう誘導やアドバイスまでされていた。

 激励や褒め方も迫力あって、そんなに私凄いかなってなる時もあるけど。

 気づけば私はホントにできるんじゃないかって気になれちゃう。自信がつくというか……馴染むというか。

 やっぱり落ち着けてきてクリアな思考ができるようになったところで、不意に閃いた。

 

(あ、もしかして。本当に()()()()のことだったりする……?)

 

「私、ビジョンが見えてなかった。どうにかしなきゃって気持ちが先走ってて……今もだけど。

 中途半端なこのままで、私は何もできないの……!?」

「……大丈夫。半端というか、何度も迷うのは当たり前」

「解決できなくて、もう止めろってことじゃ」

「止める止めないじゃないよ。決められるのは貴女。

 言えるのは、迷いながらでも進めること。最初は勢い任せでもダメじゃない。目指す夢が揺るがないなら、堂々とすればいいんだよ。

 それが裏のない上辺染みた精神に思えるなら、大切なものを思い出して。それを守るに足る、相応しい振る舞いを努める。その積み重ねに、いつか心と結果が着いてくる。そして、貴女は自分の望む姿に届くから」

 

 

(……やっぱりそうだ。こんなに腑に落ちるのって──私が目指したい未来に足る在り方だったからなんだ)

 

 迷うならその何倍も考え続けて。夢も家族もいっちゃんも胸に刻んで。ただ前を向いて進めばいい。

 重ねた研鑽も努めた美徳も嘘ではない。……たとえそれが裏のない「らしさ」ばかりの虚勢であっても。

 私なら──諦めない。独り善がりでも刷り込みでもなんでも、恥じることない心で臨める。必ず無敵を目指し続ける。やるべきことを、果たしていくだけだ。

 

「……いっちゃんありがとう。すごい、スッキリした」

「一助になれたらよかった。私もそのぐらい心を強く持ちたいね……」

「そっちもしんどくても頑張ってるでしょ! お返しに、稽古ならまだ付き合うから。フェニックス()()直ぐなんだからね!」

「ウッいや別に私は……じゃなくて、ありがとう。

 ブーストした大二くんはともかく、何で私如きが推薦受けれるかわかんなくて……やっぱり何かおかしい

 

 私に自分で答えを出させてくれた頼もしさはどこにやら、急に不安げに陥るいっちゃん。少し体を震わせてしまってる。受験とか秘密とか、心労の要因は多そう。

 でも、私は思い出したから。「世界を守ることでしあわせ湯を守る」のが彼女の願いだったはず。

 いっちゃんは揺るがない。私のように、秘密でも過去でも背負うに足る夢があったんだ。

 

 

 なら先に、腹が決まっていた要素があるとすれば──

 

「──ずっと、こんな日常が続けばいいのに。さくらちゃんたちにしあわせになってほしいって思ってた」

 

 ──覚悟だ。凛として決意の籠った言葉だった。

 普通で、足りなさ未熟さをわかっていて、それでも決意できる心強さだった。

 

「……私も、いっちゃんみたいな優しい人を守れるような強さが欲しい。絶対、誰も居なくなったりなんてさせないからね」

 

 負けていられない。私だって決意した。いつか絶対、強くなった私を見せるから。

 できるかじゃなくてやるんだ、早く、近道なんてない! 背筋伸ばして、前を見据えて! 堂々と、進むんだ──!

 

 

 

****************

************

 

 

 

「事情とかじゃなく、私がここに来た理由は一つ……私なら、戦うことができるんでしょ? その力を……ください」

「君は何か軽はずみに考えていないか? 我々は悪戯でなく本気で──」

「──それが誰かを守れる力なら! 私は本気で、一人でも背負って戦える!

 やれるやれないじゃないの、私が果たすべきことだから! どうか──信じて!」

 

 コンクリで声音が反響する。できるだけ凛然と言い放った。

 家族やいっちゃん、大事な友達。みんなが居たから、今の私がある。

 裏がないハリボテの意義だとしても噓じゃない。かけがえのないものが無くなる可能性なんてあり得ない。

 この日常を、故郷を、私が守るんだ。

 背負わせたくない、晒させたくない。みんなが幸せになれないなんて、いけないんだから。

 

「さくらさん、そこまで……」

「そうか、なら──代表!」

 

 固まっていた牛島家たちの後ろから、ぶーさんと知らない人が来た。 

 

「アンタがここの? ──契約して。私が全部背負うから、みんなを危険に巻き込まないで!」

「伊良部さん、聞いていたね。直ぐに手配を。……彼女を基地に来させてはならない

「ああ。……さくらちゃん、君一人じゃないんだ。たった今からここに居る全員が君の味方だ。これからさらに増える。それだけは、忘れないでくれ」

 

 ぶーさんの示唆はわかる。WEだけでなく、いずれ五十嵐家全員が真実を知る日が来る。

 傷つかずにはいられない。でも、でも。たとえあるはずの無い桃源を求めるようであっても。みんなが何も知らずに平和でいられる可能性は、追いたい……。

 

「相手はこの国最大の正義と崇拝組織だ。君は限りなく厳しいとわかっていても、一人で戦うというのかい? それで平穏が守れると?」

 

 無謀、そんなことわかってる。でも、やらないのはイヤだ。

 ……完全に私が守れればいい、その強さがあればいい。皮相の無謀に勇気が追いつく程の力を。

 振り切ることに躊躇していた。ひたすらに求める、不可能なんて過らせない「覚悟」が、私には足りなかったんだ。

 

 目指す夢と守るべき人たちに不躾がないよう、それに相応しい振る舞いをするから。

 最初は型から始まっても、理想論でも許してほしい。きっとそれでいつか──本当の無敵の私に変身してみせるから。

 

「たとえ悪魔の力でも、絶対みんなを守り通す。──私、無敵だから」

 

 強張りながらも、今から未来に示す、精一杯の夢と覚悟を突き付けた。

 

「──契約成立だ。拒む理由は、ないよ」

 

 

****************

************

 

 

 いずれ人々の避難の憩いとなる、基地より遥かに巨大なシェルターにて。

 誰も気づかない、遮蔽もない……その中央に、五十嵐さくらは背筋を伸ばして佇んだ。

 真澄がベイルドライバーとは全く異なる新型デバイスを手渡した。檻の意匠が鈍く光る──リベラドライバーを腰に当てると、ベルト・メイデンバインドが巻き付いた。

 

「それが、君を新たな段階(フェーズ)に至らせる重器だ。望む自分を、叶えられるかもしれない」

「わかった──」〈コブラ!〉

 

 What's Coming up !?

 What's Coming up !?

█████████

 

 コブラの遺伝子情報をオーインジェクターに押印入力、伴って輻射増幅するグローバルゲノムパワー。

 その承認を受け、ドライバーが仰々しい牢檻を築造し、変身者を完全に閉じ込めた。

 しかして反発、反骨──仮面ライダーは、解き放たれる!

 

「──変身!」

──リベラルアップ!

 

 変身者と共に解放された青い蛇がうねり回り、相棒に合流。四肢に巻き付く黄のコブラと共にグローバルゲノスーツを泡立たせ、しなやかな御身を確と顕した。コブラを皮相に被ったその戦士の名は──

 

 

Ah~! Going my way──!!

仮面ライダー──!

蛇!蛇!蛇! ジャ〜ンヌ〜!!!

 

 

 

 

 

 

 

「──おめでとう。我らウィークエンドを自由へと導く『仮面ライダージャンヌ』の誕生だ」

「これが、私……」

 

 力強く宣誓を込めながら手鏡を渡してくれた太助のおかげで、ジャンヌは自分の変容を認識する。インドコブラを逆しまに張った、笑顔が逆転した青の斑紋複眼が印象的だった。

 ……そろそろこっちに気付けやコラという意識に、人々はようやく目を向ける。

 

「──ラブ~。さくら〜コブ、ラブラブ〜!」

「さくらさん、やりましたね! そこの悪魔さんも」

「えっ、コレ……これが!? "ラブ"──ラブってなに!?」

 

 そう、傍に居たデフォルメ体型なコブラの着ぐるみが、まごうこと無きさくらの悪魔だったのだ。

 ……正直誰もが一瞬目を逸らしていた。

 

「ラブ、ラブかー……『ラブコフ』ちゃん、とかどう?」

「ラブ~? ラブコフーっ!? 無敵~~!!」

「なんかイメージと違うけど……とにかくよろしくね、ラブちゃん」

「ラブ〜。さくら〜コブ~! やったラブ〜!」

 

 

 ラブの密度が凄い。

 一つ成し遂げて深刻に張り詰めかけた空気が和んで、ラブコフはしめしめと内心ほくそ笑む。困惑多めなリアクションは及第点だが。

 

 自分にはそんなお役が務まると、体現したてで理解していた。

 今の自分はか弱くキュートな乙女だ。性質上、強さを奮う相棒の隣に最初から並び立つのは難しい。

 

 でも、いつかは互角に向き合いたい。弱さを知り、顧みなかったものを見て初めて、得られる強さもあるのだから。

 未熟で至らないことが辛く、苦しいのは当然のこと。しかし守るだけは避けるのと同じだ。成長すべく向き合う日は来る。

 自分たちの求める無敵のため、いつか受け入れてもらうのだと。

 

(さくら……アタイ、信じてるから──)

 

 寄り添い続けるんだと、ラブコフは決心した。

 

 

 


 

さくら、高一でウィークエンドに加入。仮面ライダージャンヌへと変身を遂げる。

 

まさかのさくらが初変身。オリ主の保険と心配をかける弊害(?)が結実し、ここからの展開は…

 

 

ダディとぶーさんが態々外で密会したのは、水無瀬が乗り込んでさくらとバッタリ!を防ぐため。情報も全部は話してません。そりゃそう。

 

信じて決めて背負って…なモラトリアム編、次回エピローグです。戦います。

大二回は回文、さくら回は花関係のサブタイでした。むっずかったので今回限りかと思います…

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