海軍本部マリンフォード。ここには現在海軍の精鋭を始めとする10万の兵が集められていた。後3時間ほどで白ひげ海賊団の2番隊隊長である“火拳”のエースの公開処刑が行われるがそれまでに救出に動き出すと思われる白ひげ海賊団に備える為でもあった。
「全く、飛んでもない数を用意したな」
「……」
勿論、これらの中にはノワールとルートも含まれており、中央付近にて待機していた。ノワールは右も左も海兵ばかりの状況に軽く興奮しているかのように楽し気に笑う。一方、ルートはそんな兄に相槌一つうたずにひたすらに
「……ルート。くまに出し抜かれたのは俺だって悔しいがその代償はもう受けている。忘れるんだ」
「……」
ルートが何故こうなっているのかを知っているが為にノワールはなるべく穏やかな口調で諭したがルートの耳に入る事はなかった。ノワールは呆れつつも白ひげ海賊団がやって来るのを待っていると、遂に処刑対象であるエースが処刑場に姿を現した。そして、そのすぐ後に処刑台にセンゴク元帥が立ち、電伝虫を片手にある女性の話を始めた。
その女性、ポートガス・D・ルージュはエースを腹に20カ月も宿した状態で
「そして、ポートガス・D・ルージュが腹に宿した子エース、貴様の父親はゴールド・ロジャーだ!」
「「「「「!!!???」」」」」
その言葉に誰もが絶句する。海賊王ゴールド・ロジャー。世界で唯一グランドラインを制覇し、海賊王の異名を持った男。彼は海軍に捕まり処刑されたがその死に際の一言で世界を大海賊時代を作り上げた世界最悪の海賊。その息子がエースであったと。
それをシャボンディ諸島で見ていた人々は悲鳴を上げる。大海賊の血筋が存在していた事に記者たちは直ぐに記事を作成していく。
「は、はは。マジかよ……」
ノワールもまさかの出生に驚きを露にする。シャンクスがフーシャ村を絶ってから直ぐに海兵となるべく村を出たノワールとルートはエースと出会う機会がなかったためにその血筋については一切知らなかった。
「成程、白ひげ海賊団と全面戦争になってでも処刑をしたいという理由が分かるな。となるとこの戦争、想定以上に多方面に与える影響は強くなりそうだな。……
ぼそりと呟いたその一言を聞いた者は誰もいなかった。しかし、ノワールの口角は上がり、狂気とも言える笑みを浮かべておりそれを見れば誰もが異常性に気付ける程の表情だった。
「……ルート。敵は白ひげ海賊団だ。いい加減くまを睨むのは止めて備えろ」
「問題ない。何時でも動ける準備は整っている」
漸く、ルートはくまから視線を外してそう答えた。彼の言う通り既に準備は万端であり、後は実際に白ひげ海賊団が襲来するのを待つだけの状態となっていた。
「左右には計50隻の軍艦。正面には三日月型の湾港に複数の砲門。裏は崖。……ルートならどこからせめる?」
「正面だ」
「海兵としてはいいかもしれないが海賊として考えればそれはない。むしろ……」
ノワールがそこまで行った時だった。遂に白ひげ海賊団が姿を現したのだ。警報が鳴り響き、誰もが警戒する中、霧から突如として現れるように40隻を超える白ひげ海賊団の参加の海賊がやって来る。
「海中だな」
ノワールがそう呟いた瞬間、湾内の海中より白ひげ海賊団の船、モビーディック号がまるで飛び跳ねるように姿を現した。その船はコーティング、海中を移動するのに欠かせない技術が用いられており、彼らがどうやってここまで来たのかを物語っていた。
「そして続けて3隻」
その言葉に信ぴょう性を持たせるように更に3隻のモビーディック号が姿を見せる。それらの船には白ひげ海賊団を支える14人の隊長達が勢ぞろいしているだけではなく、“白ひげ”エドワード・ニューゲートの姿もあった。
「アッハッハッハ! 見事に出し抜かれたなセンゴク元帥! これじゃ左右の海軍船は置物同然だ!」
「笑っている場合ではないだろ。行くぞ」
「まぁ、待て」
笑いながら敵にしてやられた事を認めたノワールに苛立ちながら先陣を切ろうとしたルートを止める。肩に置かれた手は覇気すら込められて完全に引き離す事は困難となっていた。
「今行ったら“白ひげ”の力の巻き添えを喰らうぞ」
「? それはどういう……!」
瞬間だった。“白ひげ”が両腕を左右に振るとまるで大気に罅が入ったように亀裂が走り、マリンフォードを挟み込むように巨大な波が出現した。それはマリンフォードの奥に聳え立つ海軍基地よりも巨大なものであり、この二つだけでマリンフォードを飲み込めるほどであった。
「これは……!」
「“白ひげ”の力だ。先手はあっちが取った以上気長に待とうぜ。この戦いは防衛戦。エースの処刑まで守りきればいいんだからな。時間の経過はこちらを有利にする」
そもそも、本来はエースを処刑するだけでよく、白ひげ海賊団を相手にする必要はなかった。ではなぜ相手をしているのかと問われれば“白ひげ”がエースを救おうと乗り込んできているからだ。それを迎撃する準備はしたが別に白ひげ海賊団を殲滅するのが目的ではないのだ。
「ほら、そうしている間に白ひげの攻撃が来たぞ」
白ひげの能力、グラグラの実で起こされた津波はやがて自分たちに戻ってきてマリンフォードを飲み込む大波へと変貌した。海兵たちが騒ぎ出す中ノワールは落ち着いた様子で話す。
「焦る必要はない。この程度なら直ぐに対応できる人が海軍にはいるんだからな」
その言葉通り、大将“青雉”が動き出した。彼は自らの能力ヒエヒエの実の力で波を殺い付けにするとそのまま白ひげへと攻撃を行う。しかし、それたグラグラの実の力で弾かれると青雉は足場と逃走経路の遮断の為に湾内を凍らせる。モビーディック号4隻は動けなくなったがそれならばと白ひげ海賊団が遂に動き出した。14人の隊長を先頭に一斉に氷の上を通って広場へと侵攻を開始したのである。それを阻止するべく海兵たちも氷漬けになった湾内に居りて戦闘を始めた。
「ついに始まったな。海軍と白ひげ海賊団。総力を上げた戦いが」
既に彼の近くにルートはいない。自らの正義の為に前線に出た彼は一兵士として大局に影響を与える事無くこの戦争を乗り切るだろう。
「だが、海軍にも、白ひげ海賊団にも悪いがこの戦争、利用させてもらうぞ」
そう言って笑うノワールの表情は酷く歪んでいた。
絶対にいらないであろうマリンフォード頂上戦争におけるおおよその陣形図
【挿絵表示】
緑:海軍の軍艦
オレンジ:処刑台
黄緑:住宅街
青:海軍基地
紫:王下七武海初期位置
灰色:ノワールとルートの初期位置
赤:モビーディック号
それぞれの矢印:おおよその動き
ノワールの力
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本
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実