「馬鹿な……! 一体何が起こっているというのだ!」
センゴク元帥は突如として現れた第三勢力と、作戦が発動できない状況に苛立ちと焦りを感じてくる。壁は起動盤が破壊されて修復すら不可能となっており、更には目撃者及びそこにいた海兵は全員が体中から血を噴き出して死んでしまっている。一体だれが、どうやってここまで出来たのかは結局分からずじまいとなっていた。
そして、そんなセンゴク元帥及び海軍を追い込むように更なる情報が入って来る。
「センゴク元帥! 各支部が謎の攻撃を受けていると報告が!」
「何!? 詳細は!」
「そ、それが……。報告が入った支部の半分と連絡が途絶しました! そして残り半分も混乱が激しく、詳しい情報が全く入ってきません!」
「戦力を集めた隙をつかれたという事か……!」
ここまでくれば敵が頂上戦争が始まった事で急遽襲撃して来た存在ではなく、
「悔しいが支部は放棄しても構わない。負傷者を少しでも減らすようにせよ」
「はっ!」
「伝令! 聖地マリージョアでアーズガルド家による反乱が発生! 複数の天竜人が殺害されています!」
「これは奴らの仕業か……!」
アーズガルド家。腐敗した天竜人の中で数少ない有能な者達がいる一家だが、その代償と言わんばかりに彼らは野心的であった。特に現在の当主は若い頃に聖地マリージョア、パンゲア城に存在する虚の玉座を座ろうとしたり、他の天竜人相手に暴力を振るい、心の傷を負わせたうえで自分に従う様に脅しをかけるなど問題行動が目立っていた。その子供たちも大なり小なり問題のある行動を起こしていた為に世界政府から要注意一家として見られていたがさすがの彼らもこのような行動を取る事は予想外であり、結果的に大きな損害を被る事となっていた。
「……アーズガルド家。まさか……!」
そして、アーズガルド家が関わっているという事実を改めて認識した時、ある事を思い出した。最近、この天竜人に気に入られている者の名を。普通ならあり得ないが彼なら、正義を信じない英雄なら今回の出来事に関わっている可能性が高い。
それを理解したセンゴクは目を見開いて上空を見上げる。リトルオーズjrを下してからと言うもの遥か上空で戦況を眺める事しかしていないモンキー・D・ノワールを。視線を上げれば、ふと目が合った。センゴクの位置からでは豆粒ほどに小さいがそれでも目が合った事が理解できる。そして、ノワールは全て正解だと言わんばかりに邪悪な笑みを浮かべて嗤っていた。
「っ! ノワール……!」
湾頭には紫のガスが発生している。ここからでも分かる悲鳴が聞こえてくる程だ。あのあたりに展開していた海兵と海賊たちは全滅しているだろう。壁が展開出来なかった事で広場に上がろうと白ひげ海賊団が押し進んでいる。更には赤犬の策略で傷を負った白ひげも船を降りてエースの方へと向かってきている。更にその後ろから迫るアーズガルド家を含めた第三勢力。マリンフォードが戦争前の風景を取り戻す事は出来ないだろう。
「……全軍に通達する! 壁の展開は不可能となった。こうなっては仕方ない。作戦を変更する。白ひげ海賊団相手に広場に侵入させない事は事実上不可能だ。
だからこそ左右の砲台は広場に敵が殺到するように誘導せよ。左右に逸れるような動きを見せる海賊を徹底的に叩け!
そして中央の広場を両軍の決戦の地とする! 巨人部隊は壊滅状態だが残った者は全てにここに集まれ! これは湾頭にいる中将も同様だ。湾頭は放棄する。第三勢力は白ひげ海賊団にも攻撃を行っている。多少は奴らと無用な争いをして足止めをしてくれるだろう
こちらに集められる最高の戦力でもって白ひげを迎え撃つ! 各々準備を行え!」
智将と呼ばれるセンゴク元帥だけあり作戦が失敗してもすぐに別の作戦を練り上げる。とは言えそれは個人の武に頼った一か八かのものであったがやらないよりはマシと判断した。実際、センゴクを始めとして三大将に中将、王下七武海を合わせれば白ひげ海賊団に遅れは取らない戦力となる。第三勢力の出現もあってお互いに全力を出す事は難しいが第三勢力は湾頭から雪崩れ込んできている。位置関係から白ひげ海賊団の方が大きく被害を受けるであろうことは明白だった。
「ノワール……! お前が何をしたいのか知らないが我らを思い通りに動かせると思うなよ……」
センゴクは未だ上空で静止するノワールを睨みつけながらつぶやく。そんなセンゴクの視線を受けるノワールは、涼しい笑みを浮かべていた。
「センゴク元帥からの命令だ! 中将は全員広場に向かうぞ!」
白ひげ海賊団や第三勢力の相手をしていた中将たちに命令が下る。それは仲間である海兵を見捨てていくようなものであったがどちらを優先するべきかは明白だった。
「モモンガ中将! ここは我らに任せて行ってください!」
「しかし……!」
「中将程ではありませんが私とて海軍本部で大佐をしているのです! 多少は戦えますよ」
とある大佐に促されるモモンガ中将だがその表情は迷いが見て取れた。第三勢力は海賊たちを先頭に上陸を仕掛けてきており、既に海兵や白ひげ海賊団と激しい戦闘を繰り広げていた。更にそれを援護するように紫のガスが打ち込まれて行き海軍・白ひげ海賊団双方に被害を出している。
「中将! 我らを信じてください! 必ず生きのびてみせます!」
「……すまない! 無理はしないように!」
モモンガ中将は覚悟を決めると襲い掛かって来た白ひげ傘下の海賊を切り捨てて広場へと向かっていく。残された大佐は笑みを浮かべて彼を見送ると、近くにいた大尉の下に向かう。
「新手を殺せ! 敵は毒ガスを用いてくる! 乱戦に持ち込んで……!」
必死に指示を出す大尉の後方に立った大佐は、無言のまま背中から刀を突き刺す。胸から剣先を生やした大尉は何が起こったのかさえ理解できぬまま、この世を去った。
そして、そのような光景は至る所で発生していた。佐官尉官新兵関係なく、突如として味方を後ろから襲う者達によって海兵側は一気に大混乱へと陥った。
「モモンガ中将、私は生き残りますよ。ですが、海軍本部大佐としての私はとうに
嘲笑交りにそう呟いた大佐は正義のコートを投げ捨てると、黒いコートを近くの第三勢力の海賊から受け取り羽織った。裏切り者達はそうして自分たちが何ものであるか、どちら側の人間かを見せつけると大佐の号令の元、駆けだした。
「諸君! 敵は海兵である! 我らがオーダーを実行せよ!」
「「「「「オオォォォォォォォォッ!!!!!」」」」」
この瞬間、右翼に展開していた海兵のうち、4割近くが第三勢力側に着き、海兵を奇襲したがために戦線は崩壊。白ひげ海賊団と同じように、彼らもまた広場への道を確保する事となる。
戦場は急速に動き出し、そして終息へと向かい始めていくのだった。
ノワールの力
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本
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実