英雄の孫にして革命家の息子の三兄弟   作:鈴木颯手

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第16話「マリンフォード頂上戦争5」

 処刑台の眼下、オリス広場はまさに大乱戦場と化していた。エースを救おうとする白ひげ海賊団とそれを阻む海軍。そして両者を相手に大暴れをするノワールが主導したと思われる第三勢力。三つ巴の戦いは勝者を分かり辛くし、そして今後の運命さえ予測し辛くしていた。

 

「海軍は中将以上は俺とシャハリヤールが! パシフィスタはウェンディが! 白ひげ海賊団は親衛隊が相手をする! 行くぞ!」

 

 湾頭の時と同じようにロックが全体に指示を出していく。それぞれが億越え且つ新世界で独自の勢力を保てるだけの実力を有していた海賊である。中将やパシフィスタと言えども苦戦は必至だった。

 

「オラオラオラァ! 雑魚はどけぇ!」

「へ、ヘイムダル聖!? 何故あの方がここに……!?」

 

 そして、海兵を動揺させるのは第三勢力に天竜人であるはずのアーズガルド・ヘイムダルがいる事である。彼は天竜人とは思えない実力で以て海兵を相手に無双している。天竜人ロ言う事で攻撃を躊躇する隙をついているのもあり攻撃を止めづらくしていた。

 

「くそ! ガスに触れるな! 触れれば……ゴフッ!」

「離れろ! 死にたくないなら離れるんだ!」

 

 白ひげ海賊団に対して次々と紫のガスが打ち込まれていく。ガスを吸い込む、触れる等した海賊たちが体中から出血しながらその場に倒れていく。あまりにも凶悪なガスに誰もが死に物狂いでガスから離れて行くがそのガスの中をガスマスクを付けた親衛隊が進んできて更にガスを打ち込んでいく。

 

「ふん!」

「ガッ!?」

 

 しかし、そんな親衛隊を止めるように白ひげがグラグラの実で地震を起こしてガスごと吹き飛ばしていく。親衛隊の半数がこれによって吹き飛ばされたがその後方から次の部隊がガス弾を打ち込んでいく。更には吹き飛ばされた者達もすぐに立ち上がると戦列に戻っていく。その姿はゾンビを思わせるような不気味さを持っていた。

 

「ちっ! アーズガルド家の兵だけあってこの程度では倒れもしねぇか」

 

 アーズガルド家の親衛隊。それは海賊たちの間で恐怖の象徴として知られている。黒い軍服で統一された彼らはアーズガルド家への忠誠を誓い、どんな命令でもこなしていく。たとえそれが敵陣に単騎で突っ込めというものでも、爆弾を抱えて突っ込めという物でも、ただただ死ねというものでも喜んで遂行していく。そんな彼らは海賊を相手に実戦を積んでいる。親衛隊によって殺された者は万を超えており、既に海賊たちはその名を聞くだけで震えあがる者まで出てくる始末だった。

 そんな親衛隊の強さを示すように白ひげの攻撃を受けても倒れたままでいる者はいない。いたとしても直ぐに立ち上がって来る。老いと怪我で威力が落ちているとは言え世界最強の海賊の一人である白ひげの一撃にも屈さない親衛隊に白ひげ海賊団の誰もが恐怖を抱き始めた。

 

「グララララ! お前ら! 先に行け。……こいつらは俺が対応する」

「っ! おやじ!」

「行け! お前らではこいつらの相手は不可能だ!」

 

 そう怒鳴りながら再び大気に罅を入れ、衝撃波を踏み出す。瞬間、親衛隊が発射したガス弾事遠くに吹き飛ばしていき、味方であるはずの第三勢力の海賊たちに着弾する。血を噴き出しながら死んでいく彼らに親衛隊のみが現状でガスを無効化出来る存在だという事が判明する。

 

「ちっ! やはりガスすら吹き飛ばす力を持っているか……!」

「……仕方ない。親衛隊、下がれ」

 

 ロックは改めて白ひげの実力を見て吐き捨てるように言うが逆にヘイムダルは真顔のまま親衛隊を下がらせると白ひげの前に躍り出た。

 

「あ? 小僧、お前が相手か」

「そうだ。俺の野望の為に死んでくれ。いや、殺す」

「てめぇごときに出来る訳ねぇだろ!」

 

 白ひげが手に持った薙刀、むら雲切をヘイムダルに振り下ろすが、それを手に持った刀で簡単に防ぐ。しかし、それによって起きた衝撃波が周囲に波及し、敵味方問わずに近くの者を吹き飛ばした。

 

「……意外と威力はないな。やはり老いと怪我が原因か?」

「グララララ! まさか、今のが本気だと思っているのか?」

 

 そのまま一回、二回と打ち合っていくが両者の力は拮抗しているように見えた。少なくとも、能力を使っていないとはいえ白ひげを相手にヘイムダルは余裕の表情を見せているのだから。

 

「やはり一撃一撃が軽いな!」

「ぐっ!」

 

 そして、ヘイムダルの一撃が遂に白ひげを捕らえた。上段からの振り下ろしを体を丸めるようにして躱して白ひげの懐に入ったヘイムダルがその脇腹を刀で切り裂いたのだ。しかし、それで倒れる白ひげではなくすかさずに右手を握るとそのままヘイムダルの目の前の大気に罅を入れ巨大な衝撃を生み出す。

 

「ぎっ!?」

 

 その衝撃波を至近距離で受けたヘイムダルの体は吹き飛ばされる。途中で何度も地面に叩きつけられたためにヘイムダルは気絶しており、立ち上がる事はなかった。

 

「……ちっ! あの小僧、厄介な事をしやがる……!」

 

 白ひげはヘイムダルに切られた箇所を抑えながら吐き捨てるように呟く。切られた箇所は紫色に変色しており、明らかに毒にやられていると分かる状態だった。ただでさえ満足に戦える状態じゃない白ひげを更に追い込む形となったがそれでも止まらないと報復と言わんばかりに向かってくる親衛隊に再び衝撃波をお見舞いしていく。

 

「グララララ! どちらにしろエースを救えれば問題はない。……どうせもう持たない体だ。精々暴れてやるよ」

 

 白ひげは怪我も病も無いと言わんばかりに余裕を含ませた笑みを浮かべて更なる衝撃波で親衛隊を吹き飛ばしていった。

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろか」

 

 広場は地獄絵図と化し、三つ巴の乱戦場となっている。しかし、そんな中でもルフィを中心にエースを救おうとする白ひげ海賊団が少しづつ処刑台へと向かってきており、それを迎撃するように三大将が攻撃を仕掛けている。更にそんな両者を攻撃する第三勢力。どこが戦争の勝者となるのかは未だに分からなかった。

 そんな状況だが、ノワールは遂に動き出す。彼は再び槍を空一面に生み出していき、その標準を下の乱戦場に向けた。

 

「黒の、雨!」

 

 その言葉と同時に一斉に槍が()()()()()()()()()()()()()。唐突の攻撃、それも奇襲と言える攻撃によって海兵たちに犠牲者が出てくる。頭上からの攻撃と言う事もあり命中しているのがほぼ頭部であった事で大体が即死していく。

 

「の、ノワール少将!? 一体何を……!」

「ノワール少将まで裏切ったのか!?」

「そんな……!」

 

 ノワールの攻撃は海兵たちに大きな絶望を与えた。“黒の英雄”と呼ばれ、大将候補に名が挙がっている彼を慕う海兵は多く、海賊もその名を聞くだけで怯える程その存在は大きくなっていた。それだけに彼の裏切りは辛うじて保たれている海兵の士気をズタズタにした。

 

「兄さん! 何故!?」

 

 そんな中で人一倍驚きの感情をあらわにしているのは実の弟のルートだった。彼は白ひげ海賊団の船員を切り裂きながら白ひげを狙っていたが結局近づく事も出来ずにこの場に来ていた。それゆえに、兄の反逆行為をその目で見ることが出来てしまっていた。

 

「……これより、海軍は世界の守護者ではなくなる」

 

 ノワールはルートの叫びを無視すると、手に持った拡声用の伝電虫で話を始める。更に、何時の間にか第三勢力の者達、正確に言えばアーズガルド家の手の者によって配備された映像伝電虫によってノワールの様子は全世界に映し出されていた。勿論、先程の裏切り行為も。

 

「世界政府、海軍。彼らでは世界を平和に導く事は出来ない。そもそも、正義とは何か? 正義を掲げているからといってこの世界を平和に出来る訳ではない。正義で人は救えても、平和には出来ない。俺はそう考えている」

 

 正義の否定。これまで明確な正義を掲げないノワールに疑問を持つ者はいたがそれを深く追求する事はしなかった。彼も自分なりの正義が定まっていないのかもしれない。将来有望だからこそ気長に待とう。そう言う雰囲気もあってノワールの真の理由に気付くものはいなかった。

 

「俺はこの時を以て宣言する! 俺は、俺達は世界を平和に導くために必要となる、()()()()()()()()()()()()! 俺が、()()()()()()D()()()()()()が皇帝となり、53の世界政府加盟国と12の非加盟国を吸収した()()を建国して世界の誰もが安心して暮らせる新時代を作り上げよう! それを行えるだけの準備は整った。それゆえに、全世界の人々よ、我らが行動を見て決めろ。俺たちを受け入れるか、否かを!」

 

 そう言うとノワールは右手を上空にかざし、そこから巨大な球体を作り上げた。

 

「これは建国における花火変わりだ。受け取れ! 黒の、爆弾!」

 

 瞬間、ノワールがそれを地面に叩きつける動作をすれば球体もそれに倣う様に地面へと落下する。位置は海兵が密集した地点である。顔を青ざめた海兵たちが逃げようとしたが既に手遅れだった。

 海兵たちに等しい死を与える大質量の球体が逃げる暇も与えずに海兵たちの上に落下し、大きな衝撃波を生み出した。

 

「さぁ、代替わりの時間だ」

 

 ノワールはそう呟くと、戦闘を継続するべく地面へと降り立った。

 

ノワールの力

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