英雄の孫にして革命家の息子の三兄弟   作:鈴木颯手

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ちょっと予定より長く書いてしまった……


第2話「ルート」

 懸賞金2000万ベリーの海賊、ノコギリのアーロンにとって今日は最悪の日だった。

 先ずは麦わら帽子をかぶった男とその仲間3人による自身の居城であるアーロンパークが襲撃された。この程度なら何も問題はなかったが麦わら帽子の男、モンキー・D・ルフィによって幹部以外の同胞は全滅した。

 そして幹部たちはそれぞれルフィの仲間と対峙した。ここでアーロンは大技を決める為に地面に足をねじ込んだルフィを地面事海に投げようとした。ルフィは悪魔の実を食べた能力者であるため泳ぐことは出来ない。それを利用してルフィを海に投げ入れ仲間がそれを助けるまでの動向を眺めるゲームを行おうとした。これは魚人である自分たちを倒せないという前提の話であり早速アーロンが地面を抉りルフィを海に投げようとした時だった。

 

「……ノコギリのアーロンだな?」

 

 突如として声が聞こえてきた。そしてアーロンの横にはいつの間にか一人の男が立っていた。アーロンよりも低いがその体からは溢れんばかりの闘志を出しておりこの場にいる実力者はその男に警戒する。だが、一人だけ違う反応を見せた。アーロンに成すすべなく海に投げ入れられようとしていたルフィである。ルフィは震える声で一言呟く。

 

「に、にいちゃん……」

「ルフィ……、フーシャ村を出ていたのか」

 

 まさかの兄の登場にルフィは驚いているがその仲間、ロロノア・ゾロとサンジはルフィに兄がいた事に驚いていた。だが、その姿をよく見れば兄弟という事も頷ける程容姿が似ていた。簡単に言えばルフィを少し成長させ真面目さを表情につぎ込めばこうなるだろうな、という顔立ちをしていた。そんなルフィの兄、モンキー・D・ルートは左腰に吊るされた刀を抜きながら再び問う。

 

「……アーロンであっているな?」

「そう言う貴様は何もんだ?」

「海軍本部大佐モンキー・D・ルート」

「海軍!?」

 

 ルフィの兄と言う事で驚いたサンジとゾロは海兵という事で更に驚いた。ルフィの兄と言う事で海賊かなにかだと勝手に思っていたのである。しかし、実際は相いれない敵であったことで警戒を強めるが二人を無視してルートはアーロンのみを見ている。アーロンも抱え上げたルフィをその辺に投げ捨てて見下ろした。

 

「はん!まさか海兵だったとはな。一応聞くが退く気はないか?今なら200万ベリーを払ってやるぞ」

「海賊は皆、滅ぼす。ただそれだけだ」

「なら、交渉決裂だな」

「もとより交渉の余地など無い」

 

 アーロンの買収はルートの即決により破断した。それと同時にルートは刀をしまう。それを合図にアーロンは腕を振り上げルートに攻撃をするがそこである違和感に気付く。振り上げた右手だが肘より先の感覚が()()()()()()()。アーロンが攻撃をやめ右手を見れば肘より先にあるはずの右手は、()()()()()()()。そして自分の足元に転がる自身の右腕。

 それに気づいたアーロンは同時に激痛に襲われ叫び声をあげた。その様子を見た者たちはルートとアーロンを交互に見やる。肘を抑え痛みで蹲るアーロンを冷たい瞳で見下ろすルート。

 

「ぐっ! 貴様……! 何を……!」

「切っただけだ」

 

 再び抜刀し、剣先をアーロンのこめかみに突き付ける。少しでも動けば触れてしまいそうな距離で突き付けられたそれは自らの右腕を落としたという事もあり言い知れぬ恐怖が襲い掛かって来る。

 

「……無様だな」

「何?」

「ジンベエに助けられたにも関わらず、こうして罪なき民たちを恐怖に陥れる。やはり海賊とは一度痛い目を見た程度では懲りないらしいな」

「っ! 貴様! その名を口にするんじゃねぇ!」

 

 ジンベエの名が出た事でアーロンは怒りで目を染め、残った左腕で殴りかかる。魚人族の肉体を利用した純粋なそれはこの場の誰もが目で追う事すら難しいスピードで以てルートの顔面に突き刺さる……、

 

「聞いていたより弱いな。島の支配者になって鍛える事を怠ったか?」

「っ!?」

 

 気付けばルートはアーロンの後ろにいた。そして、何時の間に抜いたのか半分ほど鞘から出ていた剣をゆっくりとしまい、パチンと音を立てた瞬間だった。

 

「ガッ!? ァァァッ!!!」

 

 ドシャリと、アーロンの体が地面に倒れ伏す。しかし、それはアーロンが力を失って倒れた訳ではない。()()()()()()()()()()()()()()()。アーロンの四肢は付け根から全て切り落とされていた。ダルマと化したアーロンはその場にうつ伏せで倒れ無様に這いつくばる事しか出来ない。

 

「あ、アーロンさん!?」

「貴様ぁ!!」

 

 あまりの事に茫然と見ている事しか出来ない部下のハチとは違い、もう一人の魚人族クロオビは激昂してとびかかった。背を向けるルートに対して渾身の魚人空手を叩きこもうと力を入れ放つ。

 

「……」

「っ!?」

 

 そして、その一撃さえルートは躱してアーロンの時と同じようにクロオビの後方にいた。そして同じように半分程抜かれた剣を鞘に戻すと、クロオビの腹部に×字の傷がつく。それらは血を噴き出しながら背中にまで達し、クロオビは体を4つに分断されて即死した。

 立て続けに2人の魚人を無力化したルートに誰もが驚きのあまり声を上げる事も出来なかった。そしてルートが一体何をしたのかさえこの場の誰もが分からなかった。ただ一人を除いて。

 

「……一体何をしやがったんだ?」

「……抜刀術だ」

「抜刀術?」

 

 ルフィの仲間でありコックのサンジがルートの攻撃方法に疑問を持っていると同じくルフィの仲間である剣士のゾロが冷や汗を流しながらつぶやいた。

 

「完璧にみえた訳じゃねぇが恐ろしく早い速度で以て切り裂いていやがる。……おそらく、剣速だけなら鷹の目すら超えているかもな」

「なっ!?」

「ほう? 鷹の目を知っているのか?」

「「っ!」」

 

 サンジとゾロの会話を拾ったルートは意外そうな顔をして二人を見ている。最弱の海と名高い東の海(イーストブルー)に鷹の目ミホークが姿を現すなど中々見られない光景であった。

 

「あいつとは一度戦った事がある。最初の一撃を入れてから全て躱され防がれてボコボコにされたがな……」

 

 ルートはその時の事を思い出したのか眉をひそめている。しかし、直ぐに心を落ち着かせたのかゆっくりと逃げようとしているハチの背を蹴り飛ばす。

 

「ニュウッ!?」

「逃げるな屑。逃げれば殺すぞ」

 

 うつ伏せに倒れた自らの背に乗って冷ややかな声で脅してくるルートにハチは恐怖で顔を真っ青にしながらこくこくと頷き体を丸めて逃げないという意思表示をする。

 一通りアーロン一味を無力化したルートは改めてルフィに向き直る。ルフィはサンジの蹴り技で地面に埋まっていた足を自由にしてもらったところでルートに向き直った。

 

「久しぶりだなルフィ。海賊になったのか?」

「そ、そうだ!」

 

 少しドモリながら答えるルフィ。二人の上下関係がどちらに傾いているのかはその様子を見れば一目瞭然であり、サンジとゾロはルフィを守れるように臨戦態勢で構えている。

 

「……良い仲間を持ったみたいだな。安心しろ。俺の目的はお前を捕まえる事じゃない。ましてや今のお前は懸賞金もないような無名の海賊。本当はそう言ったやつは容赦しないが兄弟の誼だ。今回だけ見逃す」

 

 そう言うとルートはでんでん虫を取り出し何かを指示を出した。

 

「俺はこいつらを護送する。邪魔はするなよ?」

「……」

 

 ルフィはルートの言葉に黙って頷く。彼とて目的はアーロン一味を倒す事。それが達成された以上暴れるつもりもルートの邪魔をするつもりもなかった。

 少しすると沖に一隻の軍艦が姿を見せた。ルートが乗って来た船ででんでん虫を通して迎えに来るように連絡をしたのだ。近くまできたその軍艦は小舟を出して島に上陸するとルートの指示に従ってアーロン一味を捕縛していく。そして自分の用事は終わったと言わんばかりに小舟に乗り込んだルートは最後にと一言だけ言う。

 

「ルフィ。これからは例え兄弟であろうと敵だ。10年前、俺と兄貴が海兵になるためにフーシャ村を出る時にも言ったがお前が海賊の道を歩んだ瞬間、俺達は敵となり、お前を殺す」

 

 11年前、自らの故郷を拠点とした()()()()()()。当時は海兵でなかった彼は顔を合わせないように自室に引き籠る事で避けていた存在だがルフィはその海賊たちに感化されてしまった。幼馴染と言えるその海賊団の船長の娘と遊んでいた事も理由の一つかもしれない。

 

「兎に角、これから先に進むのであれば俺達がお前を殺す。その覚悟でいろ。それが嫌なら引き返せ」

 

 ルートは兄として最後の言葉をかけると黙って見送るルフィに背を向けて軍艦へと向かっていくのだった。

 

ノワールの力

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