英雄の孫にして革命家の息子の三兄弟   作:鈴木颯手

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あれ? 可笑しいな? なんか思っていた展開にならなかったぞ?
軽くREDのネタバレが含まれているので注意!


第3話「ウタ」

 その日、俺達の故郷フーシャ村に一隻の海賊船がやってきた。当時の俺は12歳、ルートは10歳そしてルフィは7歳だった。俺もそうだが俺達三兄弟は海賊を見るのは初めてだった。そいつらは赤髪海賊団と名乗り、村に危害は加えないので暫く補給の拠点として使わせてくれと言ってきた。村長は渋々了承した事で村との交流が始まった。

 ルートは昔から海賊を嫌っていたから赤髪海賊団とはほとんど顔を合わせなかったがルフィはいつの間にか交流を深めて海賊になりたいという様になっていた。俺はルフィの兄として見守っていたからドンドンのめり込んでいったのを覚えている。

 そして、その海賊団には一人の少女がいた。名前はウタ。海賊団の船長シャンクスの娘らしく赤い髪とかがそれを証明しているようだった。年はルートの一つ下の9歳で、ルフィと気が合うのか気付けば勝負をするようになっていた。

 勝負と言っても内容は様々だ。チキンレースと言う早食い対決を始め色んな勝負をしていたが毎回ルフィがウタの罠に引っ掛かって負けるのがお約束だった。

 

『卑怯だぞ!』

『出た! 負け惜しみ~!』

 

 ルフィがこう言えばウタは手をワキワキとさせながらこの言葉を言う。そんな様子を赤髪海賊団と共に俺は見守っていた。ルフィとは5歳離れている事もあるのかもしれないが末っ子として甘やかしてしまう事があった。

 

『ほらほら、二人とも仲良くしろよな』

『『だってこいつが!』』

『だったら俺と勝負しようぜ。二人一遍にかかってきなよ』

 

 そして当時の俺もまだまだま子供だった。二人の勝負についつい自分もやりたくなっていた。結果的に勝負の勝敗でもめる二人に年上の子供が乱入と言う事が一連の流れになりつつあった。

 無論、勝負は全て俺が勝った。早食い大食い共に得意だし歌も普通に上手いと言われる程度。身体能力は年上と言う事で体が出来上がっているこちらが有利。二人がかりでも負けないくらいにはお互いに差があった。

 

『むー!』

『にいちゃんずりぃぞ!』

『ハッハッハ! 悔しかったら戦略ってものを練ってみるんだな!』

 

 今思えば兄として情けなかったかもしれない。それだけ三人でいる時期はとても楽しかった。ルートもいればもっと楽しかったのかもしれない。そしてこんな日々が永遠に続くと信じていた。ある日、唐突にそれが崩れ去るまでは。

 

『……ウタ?』

 

 その日、赤髪海賊団が航海を終えてフーシャ村に戻ってきた。ウタは船員であるために航海にはいつもついて行っていて俺とルフィで出迎えするのが何時もの光景で笑顔でウタが降りてくるという見慣れた光景となっていたがその日は赤髪海賊団の誰もが表情を暗くし、ウタが船から降りてくることはなかった。

 

『シャンクス、ウタはどうしたんだ?』

『……ウタは、な。世界一の歌手になるために船を降りたんだ』

 

 どこか悲し気に、寂しそうに語るシャンクスの言葉にルフィは納得したようだが俺は違う。あれは娘を応援して離れ離れになってしまった人の顔ではなく、何(・)か(・)の(・)悲(・)劇(・)に(・)あ(・)っ(・)て(・)会(・)う(・)事(・)が(・)出(・)来(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)た(・)人(・)が(・)感(・)情(・)を(・)押(・)し(・)込(・)も(・)う(・)と(・)し(・)て(・)い(・)る(・)表(・)情(・)だ(・)っ(・)た(・)。俺はそれを見てウタは亡くなったんだと思った。

 その日から俺は何処か心に穴が開いたような感覚に襲われたんだ。何をしても楽しくない。何を食べても美味しくない。見慣れた風景が何処か色あせていた。今思えば初恋、だったのかもしれない。4つも年下の少女に恋するなんて俺は変態だったのかもな。

 俺が立ち直る事が出来たのは赤髪海賊団がフーシャ村を離れて行ってからだ。シャンクスたちを見れば嫌でもウタを思い出すから俺は何時までも立ち直る事が出来なかったのかもしれない。

 そして、赤髪海賊団がいなくなってから俺は一つの結論に至った。世の中は理不尽だ。大切な者がある日唐突に消えてしまう。それが災害なら我慢できる。悲しくとも仕方ないと諦められる。だけどそれが人によってなら? 理性ある生物が欲望のままに行動しなければ起きなかったであろう人災なら? なんでそんな事が起こるのか? 簡単だ。それだけ欲望のままに行動する人が多いって事だ。

 

 なら。

 

 

 ならば俺が変えてやる。

 

 

 理不尽に奪われる事のない世界に変えてやる。

 

 

 馬鹿な人間たちを全て正し、世界を平和に導く。

 

 

 俺はこの世界に幸福と平和をもたらす!

 

 

 俺はそう決意した。

 

 

 そして、祖父であり、海軍の英雄と名高いガープに頼みこみ俺は海兵となった。ルートも前々から海兵になりたかったらしく俺と一緒に海軍の本拠地であるマリンフォードに行く事になった。ルフィは海賊王になると言っていたせいで山に連れていかれた。殺されたのかと思ったら海賊になりたいという思いを無くすために知り合いに預けて来たらしい。

 こうして俺達三兄弟は二つの道に分かれた。俺は海兵として功績と実力を付けていき5年で少佐に、去年には少将にまで昇りつめた。ルートも抜刀術を学んで海軍大佐となって今日も海賊を殲滅している。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「少将、失礼します」

 

 マリンフォードにある俺の執務室。そこに一人の海兵が入って来たが部屋に入って珍しいものでも見たと言わんばかりにこちらを見ている。まぁ、それも仕方ない事だろう。俺は作業の手を休めてでんでん虫から流れる曲(・)を聞いているのだから。

 

「お邪魔でしたか?」

「構わないさ。何かようか?」

「ガープ中将より来てほしいと連絡を受けています。行先はウォーターセブン。どうやら数日前のエニエスロビーでの一件の調査を兼ねていると思われます」

「了解した。直ぐに向かうと伝えてくれ」

「はっ!」

 

 海兵は敬礼して部屋を出ていく。一人残された俺は椅子から立ち上がり出航の準備をする。

 ……突然昔の事を思い出したのはこの曲のせいかもしれない。最近活動を始めた顔出しをしない歌手。聞いた人を笑顔にさせる魅了の歌声を持ったその女性は初恋の人に似ていた。死んだと思っていた、二度と会えないと思っていたあの少女に。

 

「生きていたなら何時の日か会いたいなぁ。そして、また昔みたいに……」

 

 そこまでいいかけて俺はそれ以上口に出すのは止めた。俺達は既に止まれない所まで来ている。俺の部屋の壁には一枚の手配書がある。それは弟の手配書でエニエスロビーでの一件で3億になったルーキー海賊だ。ルフィはもう昔の弱虫で泣き虫な末っ子ではない。確実に海賊王候補の一人だ。

 

「あいつも自分の夢に向かっているんだ。俺も負けてはいられないな」

 

 もう俺達は戻れない所まで来ている。きっと俺達が同じ席に座り、笑いながら飯を食うような事は出来ない。顔を合わせれば剣を交え銃を突きつけ合う事しか出来ない。それが俺達が、俺が選んだ道なんだ。

 

「さて、では成長した弟に会いに行くとするか。ルフィ、お前がどれだけ成長したのか見せてもらうぜ」

 

 俺は正義と書かれたコートを羽織ると祖父のガープと合流するべく部屋を後にした。

 




現時点での年齢
ノワール
22歳
ルート
20歳
ルフィ
17歳
ウタ
19歳

ノワールの力

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