英雄の孫にして革命家の息子の三兄弟   作:鈴木颯手

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ちょっと長くなりました


第8話「兄弟喧嘩」

「アッハッハッハッ!!!」

「笑っている場合か!」

 

 聖地マリージョアの一室、そこには王下七武海などが招集された際に使用される円卓のテーブルが置かれた部屋があった。そこでは海軍元帥センゴクを始めモンキー・D・ノワール、ルート、そして大将“黄猿”ことボルサリーノ及び一般海兵がいた。

 

「お前の弟だぞ! 何故お前達の一族は凶悪な犯罪者をこうもだすのだ!」

「いや、そう言われても困るんだけど……」

 

 ノワールは何時もの調子でセンゴクに答える。彼の言う通り別に出したくて出している訳ではない。何なら方法はどうであれガープはルフィを海兵にしようと思って行動していた。それでも本人が望んで海賊へとなってしまったのだからどうしようもなかった。

 

「まぁ、今回の動きは流石に見過ごせないか。よし、センゴクさん。俺達が行ってこようか?」

「賛成だ。身内の恥は身内で対処したい」

 

 普段は性格が合わずにそれほど仲が良いとは言えないルートもノワールの意見に賛同するがそれに否定的な意見を出したのがボルサリーノだった。

 

「いいや、ここはわっしが行きましょう。天竜人を傷つけられた時は大将が出る。そう言う決まりでしょう?」

「それもそうだな。だったら三人で行こう。俺達はルフィ……、麦わらの一味を。ボルサリーノさんは他の二人を相手にすればいい」

「……センゴクさん。どう思いますか?」

 

 ボルサリーノはそれでもいいと思いつつも上司の判断を仰ぐ。その場にいた海賊は3つ。うち麦わらの一味が主犯と判明している以上ボルサリーノが担当するべきなのは麦わらの一味だ。しかし、身内の恥を対処したいという二人の気持ちも理解でき、ノワールは将来の大将候補だ。直ぐにでも大将としてやっていける実力がある以上能力面で問題はないのだ。

 

「……良いだろう。ボルサリーノはローと“キャプテン”キッドを。ノワールとルートは麦わらの一味を捕まえろ」

「了解しました」

「こっちとしても問題ない。むしろ我儘を聞いてくれてありがとう」

「……感謝します」

 

 全員が納得のいく答えとなり3人は動き出した。大将が動くというだけでもすごい事にも関わらずに更にそれに続くのは将来の大将候補と言われ、“黒の英雄”と呼ばれる海軍本部少将ノワール、サカズキと同じ思想を持ち、海賊を抹殺する事を生きがいとする海軍本部大佐ルート。誰か一人だけでも麦わらの一味は逃げる事も抗う事も出来ないだろう。3人はそれだけの実力者であり、海軍を代表する人物であった。

 

「さて、意外と早く再開する事になりそうだが悪く思うなよ。そんな所で騒動を起こしたルフィが悪いんだからな」

 

 そう言ってノワールはにやりと笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 事の発端は簡単である。友人である人魚のケイミーが人さらいに攫われ、オークションに出品される事となった。それを阻止しようと麦わらの一味は動き出したが彼らが出せる金額の遥か上を天竜人が提示してしまい手を出すことが出来なくなってしまった。しかし、そこにルフィが現れ、力で救い出そうとしたがケイミーと同じタコ焼き屋で働く魚人族のハチが止めようとしたが正体を知った天竜人に銃撃されてしまう。それに怒ったルフィがその天竜人を殴りつけた。と言うのが真相であった。

 結果として麦わらの一味は次の島である魚人島への出航を早める事になったが魚人島は海中1万メートルの所に存在している。そこに行くためにはシャボンディ諸島特有の現象であるシャボン玉によるコーティングが必要不可欠だった。しかし、それをするには最低でも3日必要と言う事でそれまで逃げる事となったのだ。

 そして、ルフィ達の前には王下七武海の一人、バーソロミュー・くま、を模して製造されたパシフィスタがいた。いや、正確には一味の奮闘で機能を停止していた。しかし、麦わらの一味全員で戦い漸く勝てた相手との死闘で全員疲労困憊となっていた。

 

「あーあ、パシフィスタが破壊されてるじゃないか。これじゃ廃棄確定だな」

 

 そんな麦わらの一味を更なる絶望に落とすように海軍の追手が姿を現した。そして、その相手は誰もが見知った顔であった。

 

「っ! 兄ちゃん!!??」

「よっ! ルフィ。ウォーターセブン以来だな」

「……」

 

 ルフィの兄であるノワールとルート。二人ともかなりの実力者であることは判明している。特にルートの力の一端を見ているルフィとサンジ、ゾロは一味の全滅すら覚悟して臨戦態勢を取った。

 そんな三人の様子をノワールは楽し気に見つめる。

 

「ウォーターセブンでも思ったが良い仲間達じゃないか。これは捕まえるのが惜しい海賊だな」

「馬鹿な事を言っているな。さっさとやるぞ」

 

 ルートは直ぐにでも始末するつもりでいるために真っ先に動いた。六式の一つ“剃”の如き速度で以てルフィの目の前に突如として現れる。

 

「っ!?」

「ルフィ!!」

 

 ルフィが気付いて離れようと動き出した時には既にルートの右手は刀を握り、今にでも抜刀しようとしている状態であった。アーロンパークで見た神速の一刀が自らに振るわれるという事が理解できてしまう。

 

「おっと」

「!?」

 

 しかし、そんなルートを止めるようにゾロが割り込んでくる。彼独自の剣術である三刀流の構えを取っており既に準備はばっちりだった。

 

「こいつは俺達の船長だ。そう簡単に倒されてたまるかよ」

「海賊狩りか。良いだろう。先ずは貴様からだ」

 

 ルートはゾロでさえ刀の機動を読み切れない程の速度で以て切りかかる。それらをゾロは長年の感を頼りに防ぎつつ攻撃を行っていく。

 

「……どうやらルートはロロノア・ゾロとの一騎打ちになってしまったようだな」

 

 必然的に残りの一味を相手にする事となったノワールはため息をつきつつ表情を真剣なものにする。飄々とした態度は鳴りを潜め、かつて出会った大将青雉をほうふつとさせる殺気が一味を襲う。

 

「っ!!」

「行くぞ? 精々死ぬなよ」

「は、はや……!」

 

 最初に狙われたのは航海士のナミだった。ルートと同じように目で追いきれない速度で以てナミの前に立ったノワールは驚き固まってしまったナミの腹部に蹴りを入れる。まるで柔らかいものを蹴ったようにノワールの足がナミの体にめり込み、とてつもない速度で以て瓦礫の山に叩きつけた。

 

「……! ……!?」

「ナミさん!? おいお前! よくもナミさんに……!」

 

 サンジが怒りと共に抗議をするがその声は最後まで続かなかった。サンジの懐に入り込むとがら空きの腹部に肘内を見舞う。しかしそれは先ほどの蹴りとは違い、めり込んだ時には痛みを感じずに遅れて全身を衝撃波が駆け巡った。体全体を攻撃されたかのような痛みを感じながらサンジはナミがたたきつけられた瓦礫に吹き飛ばされた。

 

「これで二人だな。案外脆いな」

「兄ちゃん! 俺の仲間に手を出すな!」

 

 クルー二人が呆気なく倒された事にルフィは怒り、渾身の一撃を叩きこむべく腕を後方に伸ばす。

 

「ゴムゴムのォ! バズーカァッ!!!」

 

 ルフィが使う技の中で高威力を持つこれは後方に伸ばした腕を戻って来る反動ごと相手に叩きつけるというものであり、その気になれば遥か彼方にまで吹き飛ばす事が出来る程の威力を持っている。

 そんな技がノワールの腹部に向かってさく裂……、

 

「なっ!?」

「残念」

 

する前に甲高い音を立ててノワールの前に展開された魔法陣のようなものに弾かれた。黒色の円形のそれ自体は薄いがルフィの技を止められるだけの頑丈さがあるというのが今ので理解できた。

 

「俺の能力の一つだ。これを破れるようになればかなりの強者と言えるぞ」

「っ! ゴムゴムのォ! 銃乱打(ガトリング)!!」

 

 ルフィは次の攻撃として両腕による連打。武術が全く感じられないそれだがゴムの力を利用する以上威力は武術を用いた攻撃を上回る。

 

「まだまだだな」

 

 しかし、それすら黒い魔法陣の前では無力だった。全てが甲高い音を立ててノワールにダメージを与えられずに防がれていった。

 

「そんな力じゃこれを破る事は出来ないぜ」

「ならこれはどうだ! フレッシュ! ファイアァッ!!」

「!?」

 

 ルフィと相対している隙をつく形でフランキーが横から回り込み、口から火炎放射を放つ。ノワールは魔法陣の展開を止めその場から消える。

 

「っ! さっきの……!」

「邪魔だ」

 

 姿を見失った事で攻撃を止めたフランキーの後方に現れたノワールは空中に黒いランスのような武器を生み出した。その数、3つ。全てが鋭く、当たればただではすまないと思える大きさであった。

 

「黒の、槍!」

「グッ!? ガアァァァァッ!!!」

 

 フランキーが慌てて振り返るがその時には槍は高速で接近し、鉄で出来たフランキーの体を易々と貫いていった。

 

「フランキー! 畜生! 喰らえ! 必殺……!」

「黒の弾」

 

 フランキーが倒れた事で焦ったウソップが攻撃をしようとした瞬間、ノワールは右手をかざし、大量の黒い球体を生み出し、マシンガンの如き速度で放つ。それらはウソップに直撃し、土煙を建てながら地面へと縫い付けた。

 

三十輪咲き(トレインタフルール)!」

「ん?」

 

 ウソップを倒したことで一瞬の隙が生まれたと判断したニコ・ロビンが自らのハナハナの実の力でノワールの体を拘束する。予想外にも拘束する力は強く、ノワールが少しだが動けなくなった。

 

「行きます! 夜明曲(オーバード)・クー・ドロア!」

「ウオォォォッ!! 刻蹄(ロゼオ)!」

 

 拘束され身動きが取れない隙をつく様に骸骨のブルックとチョッパーが攻撃に出る。前後から挟み撃ちにするように繰り出される攻撃はロビンの支援により成功すると思われた。

 

「黒の、処刑!」

「え!?」

「ウッ!?」

 

 しかし、こんな状態からにも関わらず、ノワールは地面から黒い槍を生み出し二人を串刺しにする。禍々しい形のそれらは複数個が突き刺さり、出血を起こさせる。

 

「っ!」

「黒の幻影」

 

 次に自らの体を拘束するニコ・ロビンに狙いを定めたノワールは自らの黒い幻影を生み出し、高速で以てニコ・ロビンに近づく。逃げる事さえ出来ない速度でもって近づかれたそれはニコ・ロビンの顔面を狙い回し蹴りを放ち

 

「ゴムゴムのォ! ジェット(ピストル)!」

 

ギア2により高速に移動できるようになったルフィの一撃で消え去った。ノワールと戦う前に行ったパシフィスタとの戦闘で疲労がたまっていたルフィだが仲間が次々とやれて行く中で休んでいられないと体に鞭を撃って切り札の一つを使っていた。

 

「へぇ、それがルフィの切り札か」

「行くぞ! ゴムゴムのォ!」

 

 ルフィはギア2になる事で六式の一つである“剃”を再現してみせた。つまり、ルフィの姿は一瞬にして消え、ノワールの右に攻撃態勢を整えた状態で現れた。

 

「っ!?」

「ジェット! バズーカァ!」

 

 ノワールが初めて余裕の笑みを崩して驚きの表情でルフィを見るが既にその時にはルフィの一撃が放たれた後だった。今からでは防御も回避も間に合わない。ルフィを含めたその場の誰もがノワールにダメージを与えられると確信していた。

 

「……なんてな」

 

 しかし、そう思っていない人物、ノワール本人は驚きの表情からいたずらっ子のような笑みを浮かべた。その笑みを見たルフィの全身を悪寒が走る。幼少期、ウタすら引っかかるいたずらをして来るなど騙しが得意なノワールがその時に浮かべていた笑みに似ている。罠だと気づいた時には手遅れだった。

 ノワールはルフィの両腕を難なく避けて見せた。そして、勢いが弱まらずに伸び続ける腕を掴むと自らの方に引っ張った。当然、ルフィはノワールの方に引きずられる形となり、伸びた腕が元に戻ろうとする動きでノワールの方に向かってしまう。

 そんなルフィを攻撃しようとするのはノワールの背後から現れた巨大な拳。黒いその手は握り拳を作り、力を貯めるように少し後ろに引いている。

 

「黒の手」

 

 瞬間、ルフィの顔面に言いようがない激痛が走る。ゴムであるルフィが久しぶりに感じる殴られた事の純粋な痛み。それはルフィの意識を奪うには充分すぎる威力を持っており、ルフィは吹き飛ばされて遠くの建物を貫通して遠くまで吹き飛ばされた。

 

「相手の裏を取った行動を少しは取れるようにならないとな。こんな風に騙される。さて……」

「っ! し……!」

「遅い!」

 

 ぎろりとノワールに睨まれたニコ・ロビンが拘束しようと動こうとするより先にノワールが黒の手を用いてニコ・ロビンの体を掴む。そしてそのまま力を込めて行き、彼女の体をきしませる。

 

「っ! う、アアァァァァァッ!!!」

「少し眠っておけ」

 

 ニコ・ロビンの頭が地面と垂直になるように黒の手の向きを変えるとそのまま地面に向けて拳を振り下ろした。地面に罅が入り、ニコ・ロビンの上半身を地中に埋め込むほどの威力を受けた彼女はピクリとも動かく事はなかった。

 

「これで全員だな」

 

 黒の処刑を解除し、気絶した二人が地面に落下する。骨であるブルックはチョッパーとは違い右足、腹部、顔に槍が刺さっており、あまりの激痛で気絶していた。

 僅か十分程で麦わらの一味を壊滅させたノワールはルートの方を見る。ロロノア・ゾロとの一騎打ちはルートの優勢で進んでいた。今のゾロでは視線で追いきれないルートの居合の攻撃に防戦一方である上に攻撃を繰り出せばそれ以上に鋭いカウンターが飛んでくる。せめても守ってもダメージを受け続けるロロノア・ゾロは遂に膝を屈した。

 

「無様だ。所詮は海賊。海軍には勝てない」

「へっ。俺はそんな海軍をいくつも倒してここまで来たんだ。それに、俺は負ける訳にはいかねぇんだ」

「海賊にプライドでもあるのか? ゴミのようなものではないか」

「っ!」

「海賊が誇りだ意地だ夢だと語れる存在ではない。海賊は海賊らしく地べたを汚らしくはいずり回れ、そして俺達が正義の名のもとに踏みつぶす」

 

 そう言うとルートは止めを刺すべく刀を振り上げる。

 

「一撃だ。それで貴様を殺してやるよ。その後は愚弟とその仲間達だ。直ぐにお前のもとに送ってやるよ。地獄にな!」

 

 そう言ってルートが刀を振り下ろした時だった。

 

「……待て」

 

 ルートの刀を()()()()()()()()()()、一人の男が乱入した。ルートはその存在に怒り、ノワールは何故ここにと言いたげな表情でその男を見た。

 

「悪いが彼らは私に任せてもらう」

 

 “暴君”の異名を持ちつつも元国王にして王下七武海の一人、バーソロミュー・くまはそう言って二人の前に立ちはだかった。

 

ノワールの力

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