英雄の孫にして革命家の息子の三兄弟   作:鈴木颯手

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FILM RED二回目を見て来たけど凄く良かった……。また見に行こう


第9話「くま」

 バーソロミュー・くま。王下七武海の中では政府に協力的な海賊であり、政府の招集にはほぼ全て応じているだけではなくパシリの様に様々な命令を聞いていた。その姿は海賊とは思わせない程忠実であり、ノワールも一度は自らの野望の為に接近した事もあった。

 

「……バーソロミュー・くま。王下七武海とは言え海賊である貴様の手を借りるつもりはない。失せろ」

 

 威嚇するようにルートがそう言いながら睨みつけるがくまはまるで聞こえていないと言わんばかりに麦わらの一味に近づいていく。ルートは刀を構えてノワールも笑みを消してくまをジッとを観察している。その姿勢は何か動きがあればすぐにでも行動に移せるようになっていた。

 そして、くまが右手の手袋を外した瞬間、ルートが動き出した。刀を抜刀し、居合による斬撃を繰り出すがくまは自らの能力であるニキュニキュの実の能力でその斬撃を弾く。しかし、くまの能力は海兵なら大半は知っている。それゆえに、ルートは斬撃を弾かれた勢いを利用して鞘による回転を咥えた棒打を繰り出す。

 

「……」

「ちっ!」

 

 しかし、当たった個所は右肩であり鉄にぶつかるような甲高い音を立てて弾かれた。現在、くまの体はほとんどが機械と化している。これはくまが海軍で行われている人間兵器開発の実験体として志願したために体が改造されているからである。それゆえに、体は鉄の様に硬いうえに防御、攻撃力共に高い数値をたたき出している。

 

「ふっ!」

 

 ルートは一度下がると今度は刀を振るって斬撃を飛ばす。かまいたちの如く鋭いそれらもくまの前には弾かれてしまうがそれを待っていたと言わんばかりに一瞬でくまの足の前にたどり着くと刀を脛へと当てる。

 

「っ!」

「くそっ! これも駄目か!」

 

 しかし、痛みを与える事は出来ても切断どころか切り裂く事すら出来なかった。一撃の重みより、速さに特化したルートの剣術は敵を浅く切り刻む事は出来ても堅い敵を倒すのには向いていなかった。加えて覇気の習得を始めたばかりであり、武器に覇気を纏わせる事が出来ないルートではくまに決定的なダメージを与えられなかった。

 

「成程。“パシフィスタ”。侮っていたが想像以上に強いな……」

「冷静に観察している場合か! こいつは明らかに俺達(海軍)に反抗的な態度を取っている!」

「いや、そもそもくまが何をしようとしているのか分からない現状で決めつけはよくないだろう?」

「……ならば馬鹿な弟とその仲間を殺してくれ。俺はくまが何かしないように見張っている」

 

 くまは現状において何をしようとしているのか? それが分かる前にルートが攻撃を仕掛けた為に現時点では黒寄りのグレーであるが潔白と言えた。それゆえにルートはルフィの処分をノワールに任せてくまの監視を行う事に決めた。ダメージを殆ど与えられないとはいえその動きを止める事が出来るくらいの実力はあると考えていたからだ。

 そんな弟にノワールは肩をすくめつついうとおりにルフィの処分を行うべく動き出した。

 

「それは待ってもらおうか」

 

 しかし、そんな彼の動きを止めるように一人の老人が立ちはだかった。ノワールはその人物を見て目を見開いて驚き、ルートは嫌そうな顔をしつつその人物を睨みつける。

 

「驚いた……。まさかお前が弟の味方として現れるとはな。“冥王”シルバーズ・レイリー」

「海賊王の右腕が何故……?」

 

 “冥王”の異名を持ち、“海賊王”ゴール・D・ロジャーを支え続けたロジャー海賊団副船長にして海賊王の右腕。生きる伝説となった人物がルフィを守ろうとしている。予想外の展開とはまさにこの事だろう。

 

「さて、悪いが引いてもらう事が出来ないだろうか? 私としても君たちを相手にするのは少し難しいからね」

「それは無理ですね。弟の不始末は兄の俺達がする。そうセンゴクさんに宣言して来ているから手ぶらで逃がすわけにはいかない。何ならあなたの首を代わりに持っていけば許してくれるかもしれませんが」

「それは困る。私とてまだまだ長生きしたいのでね」

「ならば退け」

 

 レイリーの言葉を聞いたノワールは一気に攻撃を始める。先程フランキーを無力化した黒の槍がノワールの上空に大量に現れる。日差しを遮り、大きな影を作る程の数を生み出したノワールは右手を上げると一気に振り下ろした。

 

「黒の、雨!」

 

 その名の通り雨の如く降り注いでいく。違う点を上げるとするならそれが一本で人間を貫通させる威力を持った槍である事だろう。それが音速に近づきそうな勢いでレイリー一人に向かっていく。

 

「!」

「っ!? へぇ……」

 

 しかし、レイリーはまるで()()()()()()()()()()()()()()一本ずつ対処していく。甲高い音を立てながら槍を破壊して攻撃を防ぐレイリーの離れ業に流石は生きる伝説だとノワールは評価を上げた。並みの海賊、それこそ新世界の海賊とてこの攻撃を防げるものはそういない。それもレイリーのように向かってくる槍全てを破壊して対処するなんて事が出来るのは更に少ないはずだ。

 

「見聞色と武装色の覇気。流石に使えるしこの程度なら簡単に破壊できるか」

「ふぅ、少し激しい準備運動だった。さて、次はなんだね?」

 

 槍を全て防がれた事で軽く頬が引きつるノワールに対して余裕をもって答えるレイリー。両者に差があるのは明白であり、ノワールはどう攻撃しようかと頭を悩ませた。

 

「……困った。どうすれば勝てるのか見当もつかないな」

「ほう? 意外と冷静ではないか。てっきり怒り狂って攻撃してくると思ったが……」

「そう言うのは弟たちに任せているですよ。俺は知略を用いて合理的に戦うのが好きなんでね!」

 

 そう言うとノワールは次の攻撃に移る。前方から黒の弾を縦横5列で発射し、槍を斜め上空から複数発射。更に両脇から幻影が切りかかる。そして追い打ちと言わんばかりに上空から黒の手が二つ落ちてくる。

 

「まだまだだな」

「やっぱり無理か……」

 

 レイリーはそれらを余裕をもって対処する。黒の弾は斬撃を当然の如く飛ばして吹き飛ばし、槍は体を少し動かすだけで全て回避し、上空からの黒の手は一気に前方に駆けだす事で回避した。当然、駆けだした先にいるのはノワールである。

 

「っ!」

「兄さん!」

圧力(パッド)砲」

 

 くまを監視したルートがノワールの下に駆け付けようと目を話した瞬間、くまが動き出した。能力で空気を弾くと無防備なルートの頭に直撃させる。衝撃波が頭部に直撃したことで血を吐きながら吹き飛ばされる。

 

「がっ! ァァッ……」

「なっ!?」

 

 明らかな反逆行為を行うくまにノワールも驚き一瞬固まってしまう。一瞬とは言えレイリーが相手ではそれは大きな隙であった。迎撃する暇もなく、ノワールがレイリーに意識を戻した時には既に目の前にまで迫られていた。

 そしてレイリーは武装色の覇気を纏わせた剣でノワールを切り裂く。凄まじい衝撃と共にノワールは切り裂かれて廃墟に突っ込んだ。

 

「ぐっ!」

 

 辛うじて致命傷は避けたノワールだが衝撃波までは躱しきれずにその場から動けなくなった。視界が歪み、頭が回るような感覚で意識を失わないようにしているのが精一杯の状況となっていた。

 

「……さて、くまくん。後は頼んだぞ」

「任せろ」

 

 くまはルートとノワールの無力化を確認すると麦わらの一味を自らの能力で吹き飛ばす。全員を吹き飛ばしたのを確認するとくまとレイリーは速やかにその場を離れて行った。手を組んでいるかの如き二人の行動を全て確認できたのはこの場には誰もいない。

 

 

 

「……くくッ」

 

 

 

 二人はそう思っていた。二人が去った後にノワールは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と廃墟から出て上空を見上げた。遠くの方では黄猿が暴れているのが分かる程の激しい戦闘音が聞こえてくる。

 

「流石は革命軍の兵士だ。機械にされようとも海軍には簡単には従わないってわけか」

 

 面白そうに笑みを浮かべるノワールはくまの一撃で気絶したルートを回収すると自らが乗って来た海軍船へと歩みを始めた。その姿は麦わらの一味を取り逃がしたという感情は浮かんでこない程、軽やかなものだった。

 

ノワールの力

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