アストロナウト   作:戸口

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大晦日

測ったみたい丸くて、くっきりとした白い満月が、冬の寒空にぽつりと浮かんでる。

大晦日のお笑い特番の賑やかな声が、居間のテレビから微かに聞こえてくる。

私はそんな中、寒い庭の軒下で冬毛でもふもふとしたカブを抱え撫でながら、遠野くんのことを考えていた。

 

少し前までは、彼のことを考えるだけでドキドキして。

どうしたら、彼との距離を縮められるだろう、とか。

明日の朝も、弓道場にいるのかな、とか。

波に乗って、自信の持てるに私になって、告白したいとか。

 

私の生活はいつも、彼を中心に回っていて。

今でも、それ自体は変わらないけれど…

彼のことを考えると、前よりも胸が苦しくなる。

 

遠野くんは最近、少しだけ明るくなったような…

前よりも更に、カッコよくなったような気がする。

周りの人と上手く合わせながら、一定の距離を保ったりするところは変わっていないけれど。

彼の目は前よりも、何というか、ちゃんと周りのことを見ているような。

どこか遠くを見ている感じが、無くなってきてるような気がした。

 

私との帰り道、ちょっとした会話の中でも。

言葉使いとかは、変わっていないと思うんだけれど。

仕草や、口調や、目配せや、要するに雰囲気…なのかな。

 

彼の輪郭が、はっきりしたような。

儚げだった部分が、力強くなったような。

ぼやけていた焦点が、合ったような。

そんな気がする。

 

彼にとって何かいいことが、きっとあったんだろうと思う。

それを素直に喜んであげられたらいいのだけれど、

遠野くんがそうやって、もっと強くなって、堂々として、確かなものになっていく毎に。

 

卒業したら、この島からいなくなってしまうような。

もう、行き先が決まってしまっているような。

私が望んでいることから、もう段々と離れ始めていて。

一緒に、いられなくなるような。

 

…そんな予感がどんどん、大きくなっていく。

 

前よりも近くに、遠野くんを感じられるのに。

島を離れていくイメージは、より鮮明に浮かぶようになった。

 

ちゃんと、地に足をつけて。

行き先をしっかりと、見据えて。

いつかそこへ、飛び立つ準備をしているような。

 

私の予感なんてどこまで信じられるのか、わからなくて。

もしかしたら、気にすることも無いのかもしれないけれど。

 

でも、なんだか、やっぱり。

そんなような、違うような…

 

自分の中にあることが、全然整理がつかなくて。

彼のことも、自分が今、何を感じて、どう思ってるのかもわからない。

 

…けれど、遠野くんのことは、どうしようもなく好きで。

それだけは、私のなかではっきりとしている。

 

ずっと、彼のことと。

あとほんの数時間でやってくる、来年のことを考えながら。

空に浮かぶまん丸な月を、カブと一緒に眺めた。

 

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