私は生まれて初めて 一目惚れというものをした。今まで『一目惚れ』というものをしたことがなかったから初めての経験でこれが本当に一目惚れなのかも分からない。だけど、一つ確かなことがあるとすれば…
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マネージャーが変わると聞いても私はいつもの事としか思わなかった。別に頻繁にマネージャーが変わる訳じゃないけど、1~2年ぐらいの周期でマネージャーが変わるのはよくある事で変なことではないから。だから、最初は別に気にしていなかった。彼と会う日までは。
今日は色々と用があって、私は事務所に行くことになっていた……。
でも、目を覚まして、時間を確認すると約束していた時間を一時間も過ぎていた。私は慌てて、身支度を整えて家を出た。
その日に限って、目覚ましをセットするのを忘れてしまった。
「はぁ、はぁ、お、おくれてすみません!」
私が息を切らしながらドアを開けるとそこには、黒髪で中肉中性の男性が立っていた。目の前の男性に視線を移してからはずっと見ていた。見ていたというよりは視線が外せなくなってしまった。こんな経験は初めてのことで自分でも理由が分からない。
「大丈夫ですよ。まだ時間はありますから。それよりしっかりと息を整えてからお話をしましょう」
落ち着いた口調で彼は話した。その声が何故か自然と耳になじんできた。それから数秒、息を整えてから私は椅子に腰を下ろした。
「本当にすみませんでした!!」
「大丈夫ですよ。今日、相談することはそんなに急ぎで決めるようなことはないですから大丈夫ですよ。また後日に時間を合わせることも出来るので…そんなに謝らなくても大丈夫ですよ」
目の前の人は別に怒るわけでもなく、子供を諭すような口調で話してくれた。
「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。自分の名前は〇〇〇〇です。今日から星街さんのマネージャーになることになりました。これからよろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします!!」
私は珍しく焦ってしまい、いつもより声をワントーン高く挨拶をした。何でか分からないけど、この人を見てから心臓がいつもより大きな声でドクンドクンって聞こえてくる。走って来たからだと最初は思ってたんだけど、どうやらそうではない感じがする。
「それで少し時間があるのでこれからの打ち合わせを時間が許す限りしましょうか」
「は、はい!」
改めて目の前のマネージャーのことを見ると……カッコいい。マネージャーは今も何かを説明しているけど、私はそれどころではない。こんなに誰かに夢中にさせられるのは初めて。
私がずっと見ていたことにマネージャーも気づいたのか視線をこちらに移した。
「聞いてますか?」
「き、きいてますよ」
「これは聞いてませんでしたね。では、もう一回最初から話しますよ」
マネージャーには私がまるで話を聞いてなかったことはお見通しのようで、また最初から説明してくれた。その後は何度も話させるのは悪いと思って、さすがに真面目に聞くことにした。
「話は以上ですが、何かご質問ありますか」
「…大丈夫です」
「本当に大丈夫ですか?今のうちに分からないところがあれば言って欲しいのですが」
「いえ、大丈夫です」
「では、話はこれぐらいにして今日のところは解散しましょうか。星街さんも今日はお疲れでしょう。次の収録まで時間が空いているので休憩しといてください」
それだけ言ってマネージャーは、部屋を出て行った。
「本当にうるさいなぁ…もう落ち着いたはずなのに鼓動がうるさい」
マネージャーと会ってからずっとだ。本当に体が言うことを聞いてくれない。鼓動はいつもより倍速と感じてしまうほどの速さで刻んでいる。心なしか顔が熱を帯びているように感じて鏡を見ているとそこに映し出されていたのは……リンゴのように頬が赤く染っていている自分の顔だった。
こんなに赤く染まっている自分の顔を見るのは初めてのこと。人生で一番と言っても過言じゃない。
「一回、落ち着こう……」
深呼吸を繰り返してようやく落ち着きを取り戻してきたところにまた彼の言葉が聞こえてきた。
「あの…お取込み中でしたか?」
「……大丈夫です」
「では、あの~これからの予定ってありますか?」
「な、なんでですか?」
「今日から私も正式にマネージャーになったので昼食を一緒に食べに行きませんか?これからの星街さんのことについても色々と話してみたいこともありましたので予定が取れれば一度お話をするのもいいかと思いまして」
正直な事を言うとこれ以上、一緒にいると心臓が飛び出てきそうだけど、折角、マネージャーさんが誘ってくれているわけだし。個人的にはマネージャーのことを詳しく知るためにも一緒に食事をするという絶好の機会を逃したくはない。
「…………」
「予定があるなら大丈夫ですよ。断ってくださっても」
私が何も言わなかったので、マネージャーさんは私が断りづらいと勘違いしてしまったんだろう。
「い、いや、いきます!!」
「え、いいんですか?何かご予定があるのであれば無理強いはしたくないのですが…」
「いきたいです!!いかせてください!」
「星街さんがそんなに乗り気になってくれるとは思いもしなかったです」
「何でですか?」
「説明の最中、星街さんずっとこっちの方を見ていたのでうっとおしいと思われているのかもとか考えていたのでてっきり断られると思ったので」
変な誤解をされてる。別にマネージャーのことを睨んでいた訳ではなくて、マネージャーのことを見つめていただけ。
「そ、それはただ見ていただけで……」
「そうなんだ。それなら良かった。てっきり嫌われたのかと思ってしまったので……」
本当にほっとしたのかマネージャーは柔らかな笑顔を浮かべていた。その顔は一瞬で私を夢中にさせた。目を離せない。マネージャーの表情一つ一つが私の心を揺さぶって来るのを感じる。ここまで誰かに自分が影響を受けるのは初めてかもしれない。
マネージャーの一喜一憂が全て私に影響を与えてくれる。
鈍感な自分でも理解してしまった。この気持ちの名前は………『恋』だ。私はマネージャーに恋をしてしまったんだ。
続きを書いて欲しい話がある?
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ある
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ない