ボクはいつものように…パチンコに行く。そして軍資金は3万から5万程度。だが、時間換算すれば1時間半もすればすっからかんの状態に陥る。でも、当たった時の感覚を忘れられずに今でも通い詰めている。
「おかえり」
僕を出迎えてくれているのは…ボクの妻。とても綺麗な髪で、誰もが見惚れるような人。そして、僕の妻こと『星街すいせい』はアイドルとして活動している…らしい。ボクは自分以外にはあんまり興味ないので妻が何をしているのかも知らない。あんまりメディアを見たりすることもないし。
「あ、ただいま」
「楽しかった?」
「…楽しくない。当たってないし」
当たってないのに楽しいと思えたらいいんだけど…。
「そっかぁ…」
すいせいさんはちょっと残念そうな顔をしたけど、すぐにいつもの表情に戻った。
「ご飯を作ったけど、食べてくれる…?」
「…ちょっと疲れたから先にお風呂入ってきちゃっていい?」
「うん!いいよ!」
ボクが着替えを持ってこようと自室へ戻ろうとすると妻が「先に入っちゃいいよ。着替えはちゃんと持っていくから」から言われたので、僕はそれに従って風呂場に向かうことにした。
風呂場でこれからについて考える。ボクは…仕事をしていない。うちの夫婦の収入源は妻のだけ。それだけでも生活が出来てしまっているのだからすごい。さすがにこのままにしておくのはボクがもうどうしようもない人間になってしまう。まあ、今でもそんな感じだけどね。
すると急に風呂の出入り口が開けられた。
「え、なんで…?」
そこには体をバスタオルを巻いて、ちょっと恥ずかしそうにしている妻がいた。
「いや、ちょっとお疲れ気味だったから背中を流してあげようかなぁって思ったんだけど…迷惑だったかな」
数秒だけ思考を巡らせた。
「ううん。お願いしようかな」
さすがにそこまで準備をして入ってきた人を返すのも悪い気がするしな。只でさえ、すいせいさんには色々と苦労を掛けている。
すいせいさんは手早く泡立てて背中を洗ってくれる。
「ボクと別れたいと思わないの?」
この質問は一度してみたかった。お世辞にも良い人間とは言えないし、ダメな人間を極めつつある。そんなボクと一緒にいるメリットが想像付かない。すいせいさんぐらい顔立ちが整っていればもっとイケメンやお金持ちと暮らす道だって全然ある。
「思わないよ」
「なんで?」
「だって私が好きだから」
それはとても淡泊で…当たり前のようなことのように話す。
「すいせいさんを魅了させるほどの魅力があるとは思えませんけど」
「それはキミが思っているだけ。だってすいちゃんはキミの魅力を知っているから」
こんなにしてもらってなんだが、ちょっとすいせいさんは狂ってる。ボクという人間を愛してしまうとは。
「そうなのか。ボクもそろそろ仕事探してみようかな」
「ううん、そんなことしなくていい」
すいせいさんの答えはボクが思っていたものとは全然違った。ボクの予想では「やっとそういう気持ちになってくれたんだね」みたいな感じになるかと思ったんだが。
「だが、さすがにすいせいさん一人じゃきついでしょ」
「大丈夫。私の稼ぐお金だけで何とかするし、それでダメならちょっとお仕事を増やせばいいし」
「なぜ…?」
「だってもし、キミが外に出たら浮気するかもしれないよね。そんなリスクを冒すぐらいならすいちゃんはずっと働かないまんまでいいよ」
ボクとすいせいさんは向かい合っているわけではないのに、ちょっと怖いと感じてしまった。声色だけでここまで人に恐怖を植え付けるのは自分の妻ながらすごいと思ってしまう。
「そうか…」
「うん!!すいちゃんはキミのことが好きだからね。キミの笑顔が好き。だから毎回、パチンコのためにお金を渡しているんだしね。もし、キミを誰かに奪われることがあったら何をしちゃうか分からないから」
「…わかった」
それから、ボクは仕事をすることなく、すいせいさんのお金を頼りにする生活を続けた。
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