「まけ~~」
「…く、くそ…」
「シオンちゃんに勝とうなんて百年早いんですよ」
俺の目の前で笑みを浮かべている…後輩。この後輩の名前は紫咲シオン。俺の一つ下の学年で学力優秀らしい。これはあくまで本人の口から聞いただけなので素直に鵜呑みは出来ない。本人らしく、人見知りも激しいらしく初対面の人と仲良くなるのにはそれなりに時間が必要らしい。だが、俺は初対面の時でさえもかなり煽られた覚えがあるんだがな。
そして俺と後輩は放課後の教室でチェスをしている。
「シオンも強いですけど、先輩が弱すぎるんじゃないですか~?」
「おい、その煽りは止めろ。今度こそ絶対に勝つ。後輩に負けたまんま終われるかよ」
「え~~いいの~先輩の心ズタボロにしちゃいますよ」
「お前に負けて終われないだろ。先輩として後輩に教育的指導が必要だしな。俺のことを煽ったことを後悔させてやる」
それから、俺と後輩は何度も勝負をした。具体的に言えば、俺が勝つまで。だが、いつまで経ってもその時は訪れず、最終的には後輩の温情で勝たせてもらった…という先輩のプライドがズタボロの終わり方。
「先輩って弱すぎじゃないですか~」
「うるさい!なんで勝てねぇんだよ。こんな煽りと顔ぐらいしかすごいところがないような奴に負けるのは俺のプライドが」
「先輩も後輩に対して優しさというものが足りないんですよ。もっと後輩のシオンを想う気持ちがあれば勝てたと思いますけどね」
「…はぁ…うるさ」
「ねぇ!!!そんな冷めた目でシオンのこと見ないで!」
「もっと可愛い後輩だったら俺も優しくするさ」
紫咲シオンという人間は煽りが全てみたいな奴で後輩としての可愛さなんて皆無に等しい。
「そ、それはシオンが可愛くないって言ってるってこと?」
「そうだな」
「先輩の目は節穴じゃないですか!どう考えたってシオン可愛いでしょ。同級生とか先輩からたくさん告白されているんですよ」
「それなら…彼氏の一人ぐらいはできたのか?」
「…い、いませんよ」
なんか自分で聞いておきながら自分がダメージを喰らう。俺も恋人いないし。
「なんか聞いて悪かったな」
「や、やめて!その哀れな目で見ないで!」
「いや、お前も俺と同じなんだな」
さっきまでこいつのことをうざいと思っていた気持ちが百パーセントだったけど、なんかちょっとだけ下がった気がする。
「そう言えば、なんでお前は俺といるんだ?」
「なにを今更聞いてるんですか?」
「いや、認めたくないが顔はいいんだし。色々と放課後は誘われたりしているだろ」
「まぁまぁ」
「それなら俺よりもいいやつがたくさんいると思うが…」
「…た、ただ…先輩が可哀そうだからってだけでシオンが会いたいからとかじゃないから!」
「おい、それは彼女がいない俺のことを可哀そうって言ってるのか」
まじで後輩にそこまで言われると…さすがにキツイものがあるな。
「だから…シオンが側にいてあげます」
「………?」
「先輩を一人にさせるとだめですから。シオンが隣に居てあげないとだめですし」
「…は?」
こいつの言っている意味が俺には理解が出来ない。俺は一人で問題ないし、さすがに後輩に世話されるほど落ちぶれてはいない。
「いいんです!!シオンが近くに居てあげるって言ってんだから素直に『はい』って言っとけばいいの!」
「…いやいや…お前はお前の好きな奴のところに行けよ。さすがに俺もお前までは面倒見切れねぇ」
「シオンがいてあげるって言ってんの!」
それから俺と後輩は言い争いを初めて…教師が声を聞いて注意するまで。
続きを書いて欲しい話がある?
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ある
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ない