ホロメン×オリ主   作:主義

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湊あくあは貢いでしまう

彼女は俺を拠り所としている。多分、彼女にとって俺はそれなりに価値のある人間に映っているんだと思う。余程、彼女の心の中には俺という存在が大きいということだ。

 

 

 

 

――――――――――――――

そして彼女は今日も訪ねて来る。

 

 

俺はインターホンで彼女だということを確認して扉を開ける。

 

するとそこには予想通りの彼女が立っていた。

 

 

「入っていいよ」

 

すると彼女は一瞬戸惑ったような表情をしたがすぐに笑顔に戻って遠慮がちに入って行く。そして入ったのを確認して俺は扉を閉める。

 

彼女は靴を脱いで突っ立っていて動こうとしないので僕は『許可』することにした。

 

 

「リビングに行っていいよ」

 

そう言うと彼女こと湊あくあはリビングへと歩いていく。

 

 

僕はそんな後ろ姿を見ながら出会った頃のことを考えていた。彼女と初めて会ったのは電車の中だった。あの時は湊あくあが痴漢に遭っていてそれを助けた。そしてそれが彼女の心を射止めることになったようだ。普通、被害者が助けた人に対して感謝することはあっても連絡先を交換して頻繁に会うということはしないものだ。だが、彼女はこれでもかって言うほどに連絡をしてきた。助けた日にお礼をしたいということで連絡先だけ交換したんだがその日からは30分に一度ぐらいの頻度で連絡をしてくるのだ。さすがにうっとおしくて連絡が来ても表示されないようにはしていた。

 

 

その日から色々とあって最終的にニ週間に一度ぐらいの頻度で俺の部屋を訪れる。さすがに俺は彼女に興味がないので家に上げるつもりは全然なかった。ただ会うだけでも…こちらとしてはかなり譲歩しているつもりだ。

 

彼女が俺に対して好意的な気持ちを抱いているのは分かっている。だからこそ一度だけ会ってそれで全てを終わらせるつもりだったんだけど。彼女はその時にプレゼントをしてきた。

 

 

 

 

 

 

そして現実に戻って僕は彼女の後を追ってリビングへと行く。

 

「適当なところに座ってていいよ」

 

 

「うん」

 

すると彼女はソファーに腰を下ろしてた。だがいつもより落ち着かない様子で貧乏ゆすりが出てしまっている。何度か会ったとはいえ男性の家に入ることに抵抗感はあるんだと思う。でもそれなら俺の家に行きたいとか言ったのかが分からないが。

 

俺は紅茶を用意して彼女に渡す。

 

「ありがとう」

 

紅茶を飲んでいる彼女はやっと落ち着けた様子だった。改めて彼女こと湊あくあはとても美人だ。性格はとてもシャイな感じだがそういうのに萌える男だっているはずだし。女性を守ってやりたいという考え方の男性だっていると思うし。容姿はもちろんいいし性格だってそこまで問題がないのだからモテるはずだ。

 

 

「あ、これを!」

 

そう言って湊さんはカバンから封筒を取り出して差し出してくる。それが何なのかは見なくても分かる。

 

 

「毎度ありがとう」

 

 

「あ、あてぃしは力になれてる?」

 

 

「うん。湊さんのお陰で俺もそれなりに余裕が出来ているし」

 

 

「よかったぁ」

 

痴漢のことがあって以来、湊さんは会うたびに封筒に数十万単位のお金を入れて渡してくれる。最初の頃はさすがに断ったがそれでも引かなかったので今では遠慮なく貰っている。だがもし湊さんとの縁を切るなんて話になったら『返せ』と言われるかもしれないから切れないんだ。もちろん貰っているお金を全部使っているわけではないが半分以上は家具やギャンブルに使っている。

 

 

「湊さんは僕といて楽しいんですか?」

 

 

「たのしいよ!」

 

湊さんは満面の笑みを浮かべている。僕はさすがにその笑顔を直視することはできない。

 

 

「そうかい。それなら僕も嬉しいよ」

 

なぜ湊さんがそこまで僕のことを気に入ってくれているのかは分からないが、気に入ってくれている間は彼女に養ってもらう。その予定だ。クズと言われようとそれは変わらない。だって湊さんは毎度会うたびに百万単位のお金を手渡しでくれる。そして何よりも湊さんはとても僕に会いたがってくれていて、毎日会いたいと言ってくれているがさすがに毎日はキツイので二週間に一度にしている。それに一度で百万だとしたら二週間に一度で充分。

 

稼ぐんだとしたらもっと会うべきかもしれないがさすがにそれは気が引ける。

 

 

 

 

 

少しの間話していると湊さんの腹の音が響く。湊さんはすぐに顔を赤らめて俯いてしまったが…生きていれば誰でもあるようなことなのでそこまで恥ずかしがる必要もないのではないかと思うが女性はそういうのを男性に聞かれるのは嫌がると前に聞いたことがあったな。

 

「なにか作ろうか?」

 

 

「…ううん!だ、だいじょうぶ!」

 

そしてまた湊さんのお腹から『胃が空っぽ』という合図が聞こえて来る。

 

 

「やっぱりなにか作りますよ」

 

僕は立ち上がって冷蔵庫の中身を見る。

 

 

「昨日買い出ししてなかったなぁ…」

 

今日は適当にカップラーメンで済ませてしまおうと思っていたので何か買っていない。

 

 

「ごめん、湊さん。今冷蔵庫が空なんだけど宅配を頼むか、近くのスーパーに行って作るんだったらどっちがいいかな?」

 

 

「え、キミが作ってくれるの?」

 

 

「うん。さすがに一人暮らしも長いからそれなりには作れますし。でも、湊さんの口に会うかは分からないですけど」

 

 

「た、たべる!!!たべたい!」

 

 

「そうですか。ではお買い物をしてくるので暫くここで時間を潰していて」

 

さすがに百万貰っているわけだし、料理の一品ぐらい作ってあげるべきだろう。

 

 

 

僕が買い物に行こうとしていたら湊さんも行くという話になって一緒に買い物に行った。結果的に全ての買い物を湊さんが払ってくれたお陰でこっちの出費はゼロだった。そして今はもう家に帰ってきて調理に取り掛かっている。

 

「あの…湊さんはなんでずっと見ているんですか?」

 

 

「だ、だめ?」

 

 

「いいですけど見ていてもつまらないと思いますし」

 

人の料理しているところを見て楽しいとは思えない。少なくとも僕は。

 

 

「ううん。キミの料理しているところを見ているのはとっても楽しい」

 

 

「そうですか」

 

本人が「見たい」というなら好きにさせておくがいいな。だって湊さんのお金にさせて貰っているところもかなりあるわけだし、あんまり湊さんの機嫌損ねるようなことをするべきではない。

 

人に料理をしているところを見られているのはあんまりいい気分はしないが、どうにか作り終わった。僕が作ったのは『オムライス』。湊さんに好きなものを聞いたら真っ先にオムライスの名前が出てきたから。

 

 

そして僕と湊さんは向かい合うように座る。

 

 

「召し上がれ」

 

 

「いただきます」

 

湊さんがスプーンですくって小さな口に運び…咀嚼する。誰かに自分の料理を食べさせるのは親を除けば初めての経験なので少しは緊張する。

 

 

「おいしいです!」

 

 

「そ、そうですか。よかったぁ…」

 

誰かに『美味しい』という言葉にここまで胸をなでおろしたのは初めての経験かもしれない。

 

 

「とってもおいしいです!」

 

 

 

そう言ってくれる湊さんの笑顔は輝いているように見えた。

 

 

 

 

 

湊さんは純粋に僕のことを好いてくれているんだとは思うが、僕は湊さんを金づるのような使い方をしてしまっている。自分の中でそろそろ止めた方がいいんじゃないかと思う気持ちもある一方で今更後戻りはできないという気持ちもある。

 

最終的に僕はこのまま突っ走ることにした。

 

それからも僕と湊さんの関係は続いたのだった。

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