いつかはこうなってしまうんじゃないかとシオンも分かっていた。最初はシオンも純粋な気持ちで彼のことが好きだった。だけど、どんどん沼地にハマっていくように落ちていった。今では好きという言葉では足りないぐらいに彼のことを想っている。
今の状況はあぐらをかきながら座っている男を目の前から抱きしめている。かれこそ、この状況が十分以上は続いている。
「そろそろ手を放してくれないかな?」
「い・や・だ」
シオンはより一層に抱きしめる力を強めて男を逃がさないようにしている。まるで小さな子供が親にお気に入りのぬいぐるみを取られそうになって必死に抱きしめているのと同じように。
「でも、この状態になって十分ぐらい経つと思うんですけど…」
「それがどうしたの?シオンはもっとキミを抱き着きたいの」
「そ、そうですか……」
男は諦めたようで帽子を被った少女?に抱き着かれている。よほど少女にとって満足なのか、顔は今にも溶けてしまうんではないかと思ってしまうほど。簡単に言えば、表情筋が仕事をしていない。
「シオンはキミの匂いが好きなんだ…」
そういうと同時にシオンは抱きしめている男の匂いを嗅ぎ始めた。人から匂いを嗅がれたりしたら不快感を抱く人も少なくないはずだ。なのに男は止めることもなく、されるがままにされている。
そして暫く時間が経過して男もさすがにずっと匂いを嗅がれることに疑問を持ったのか、シオンに対して言葉を発した。
「もう満喫した?」
「ま~だ~やっぱりこの匂いは落ち着くんだよね。もうシオンのものにならない?」
「それは毎度断ってるよね。答えはNOだよ」
男の答えを聞くとシオンは頬を膨らませて不満なのを男に対してアピールしている。
「……本当に頑固。シオンはキミが近くに居てくれた方が絶対に物事はかどるんだけどな」
「それぐらい好いてくれるのはとても嬉しいけど、ダメだよ」
「本当にキミは頑固。まだ昔のことを気にしているの?」
「…………」
「やっぱり。あれはキミのせいじゃない。キミが告白を断ったから自殺をしたんじゃないとシオンは思うよ。確かに目の前で人に自殺をされたらトラウマにならない方が無理な話だと思う。シオンだって同じ立場になったらトラウマになると思うよ。でも、そろそろトラウマから解放されても良いんじゃないかな」
シオンは男を抱きしめる力を弱めて優しく体をさするようにした。親が小さい子に対してするようなことと同じだ。
「……ありがとう、シオン。でも、まだ背負っていくよ。あの事は簡単に忘れることも出来ないし、忘れちゃいけない気もするんだ」
「そう?キミがそういうならシオンはキミが本当の意味で解放されるのを待つよ」
「ありがとね」
男はさっきとは違って少し笑顔を浮かべて答えた。その笑顔を見た、シオンの頬は一瞬で赤く染まった。普段から「クソガキ」と呼ばれることが多い彼女が女の子らしい一面を見せている。
「………///」
「どうしたの熱でもあるの?」
「ううん、だいじょうぶ! だいじょうぶ!!」
「そう?それならいいんだけど…そろそろ離れてくれないかな?」
「や~だ~ここはシオンの特等席だもん」
「そうかい……それにしてもシオンはここが好きだよね。他の人と何か違うの?」
「全然、違うに決まってる。キミだから意味があるんだよ。だってシオンが世界で一番大好きなキミだから」
そう満面の笑みを浮かべているシオンはとても幸せそうだった。
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