ボクは自分で考えていた以上にキミのことを好きみたいだね。何でか分からないけど、目から雫が零れ落ちる。ボクってこんなにキミのことを想っていたんだね……。
キミは良い笑顔を浮かべて、キミよりも少し年上で大人びている女性に笑いかけていた。ボクと話している時よりも楽しそうな顔をしている。いつもならキミの笑顔はとても嬉しいはずなのに、今はとても胸のあたりが痛く感じる。
「キミのその笑顔…ボクに見せて欲しかったのに……」
見てないことにして立ち去って忘れればキミとの関係をこのまま続けられる。だけど、足も動かないし、キミのことを忘れることなんて絶対に出来ない。だって私にとってキミは全てだからね。もうキミなしじゃ生きていけないんだもん。キミ以外の人では絶対に満足できない。
「……………」
―――――――――――――――――
それから家に帰った、ボクは明かりをつけることもせずにリビングで体育座りをした。キミのことを見ていた時はキミのことで頭が一杯だったけど、いざ家に帰る途中や帰っている時に「キミはボクのことが好きじゃないんだな」と考えてしまう。考えを進めると良いことよりも悪いことの方にいってしまう。
「ただいま…ってどうしたの?」
ドアを開けると目の前に猫又おかゆが俯いた状態で立っていたのだ。誰だってドアを開けて、目の前に人が居たら驚く。そしてずっと動いていなかった猫又おかゆは男の目に視線を合わせた。
「ど、どうしたの?」
男が動揺したのはおかゆの目に涙が浮かんでいたからである。そして次の瞬間、おかゆは男に向かって抱き着いたのだ。
「ボクはキミの事が好きなんだ。これからもキミと一緒に歩んでいきたいんだ!ボクに出来ることのなら何でもやるし、キミの役に立つから僕を見捨てないで!」
「本当にどうしたの?なんか今日のおかゆ、おかしくないですか?」
「今日の昼間にキミが大人びた女性と一緒に歩いていたのを見たんだ」
それを聞いた、男は明らかに動揺して一歩後ずさった。
「……………」
「ボクはもし、キミが浮気をしていたとしてもキミのことが好き。この気持ちだけが抑えきれない。キミがボクに対して恋愛感情を抱いていなかったとしてもボクはキミのことを離したくないんだ」
「…………」
「だから、正直に言って。浮気をしたの?」
問われたから暫くの間は沈黙が流れて、三十秒ぐらいしてから男は答えた。
「…ごめん」
「…そうなんだね。やっぱりキミはボクのことをもう好きじゃなかったんだね」
「…………」
「ねぇ、教えて。僕の何がいけなかったの?キミに好かれるためなら何でもやるからさ。僕はキミじゃなきゃダメなんだ」
おかゆにとって男がどれほど大切な存在なのかは聞いていれば伝わってくるほど。
「いや……」
「ねぇ教えてよ!ボクがどうすればキミはボクのところに残ってくれるの?」
「………おかゆは悪くないんだ。魔が差して浮気に走ってしまったんだから。悪いのは自分」
「…キミも男性だからそういうこともあるんだと思うよ。ボクがキミの望むような人であればキミは浮気に走る事もなかった。だから言ってよ!キミの望むような奥さんになるからさ!」
こんな必死なおかゆは男も初めて見たようで少し戸惑っているように見える。だが、その必死さが物語っているのは彼に対しての『愛情』なのだ。どうしても手放したくない者でなければ、ここまで必死にはならないだろう。
「…おかゆ、ごめんね。こんな事になってしまって…」
男は何度も謝罪を口にした。するとおかゆが男の声を遮るほどの大きな声で叫んだ。
「もうそれ以上、謝らないでよ!!]
男も一瞬、肩がピクッとしたのが分かる。普段のおかゆではこれほど大きな声で物事を叫ぶなんてことはしない。
「キミは謝らないで!!今回はボクが悪かったんだ!それで終わりにしよう。また、前みたいに戻ろうよ」
おかゆはお酒を飲んで酔っ払った人のようにおぼつかない足取りで男の方に歩いていく。いつ倒れてしまってもおかしくない感じ。
そして最終的におかゆは男の目の前まで行き、立ち止まって男の目を射抜くように見た。その目には涙が浮かんでいた。
「前見たいにさ」
おかゆは両腕を広げて抱きしめられるのを待っている体勢に入る。男も一瞬、悩むような素振りを見せたがおかゆの背中に腕をまわして優しく抱き寄せた。
「やっぱりキミに抱きしめられると安心するな……」
それからおかゆは抱きしめられたまんま眠りに落ちた。抱きしめられた事で安心したのだろう。目元が少し腫れているのは…涙をそれほど多く流したから。
これから二人がどのような道を選んでいくのかは本人たちにしか分からない。
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