ボクはキミの笑顔が一番好きなんだ。キミが笑っていないとボクも笑う事が出来ない。ボクはこの世界でたくさんの人が敵であってもキミが笑顔であれば生きていける。だからどうか、キミはずっと笑っていてね。そうでないとボクが笑う事が出来ないからさ。
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今日の配信を終えてひと段落していると、少し離れたところで体育座りをしているキミが恐る恐る立ち上がって近付いて来る。配信中はなるべく静かにして欲しいとお願いをしているから。
「お、つかれ」
まだたどたどしいけど、頑張ってボクへの労いを口にしてくれた。ボクは胸の前に置いた左手の手の甲に右手の小指側を直角にのせて、右手を上げながらお世辞をした。これは手話で『ありがとう』という意味を持っている。
隣の彼は耳が聞こえない。それは生まれながら。だから彼は生まれてから今まで一度も音を聞いた事が無い。それもあって言葉を正確に発音することが出来ない。それは普通のことで誰だって耳で発音を覚えていき、最終的に言葉を正しく発音出来るようになるんだから。
キミと一緒に暮らすようになってもう半年も経過した。最初はあんまり話し掛けてこなかったキミも少しずつ気を許してくれているのかな。それだったらとても嬉しいな。
ボクがキミと会ったのはもう半年も前のこと。その日のボクは食料品の買い物に出ていた。買い物が終えて、帰り道を歩いていると道の端で体育座りをしているキミを見たんだ。どうしたんだろうと思って声を掛けても応答はまるでなかった。だけど、このままここを立ち去る訳にもいかない。
何度も声を掛けると顔を上げてくれた。その顔を見たとき、ボクは驚きを隠せなかったのを今でも覚えている。だって顔には痣があったり、火傷の後があったりした。
何度呼びかけてもキミは返事を返してくれなかった。ボクは返事してくれない事に対して少し凹んでいたらキミは「み、みが…きこ、えないんで、す」と言ってくれた。そこでボクはキミは耳が聞こえないんだと知ったんだ。
それからは色々とあったりしたけど、最終的にキミとボクは一緒に暮らすようになったね。さすがに急に今までと違う所で生活するのはやっぱり慣れるまでは大変だと思うからボクがなるべく手伝うよ。手話を覚えたり、他にもコミュニケーションの方法を探したりした。キミが少しでも快適に暮らせるように。キミが少しずつでもここを自分の家だと思ってもらえるように。
「ボクはこれからもキミのために」
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