独占欲が強いことに気付いたのはここ最近。余は思っていたよりも執着が強くて、一度手放したくないものを見つけるとどんな手を使っても手放したくない。
それもこれも人間様に出会ってしまったから、出会わなければ余は知らずに生きられたというのに。だけど、人間様と会わなければ余はこの気持ちを知らなかった。こんなに誰かの事をずっと想うこともなかった。
だから、人間様と出会わなければ良かったなんて思う事はない。出会って貰ったものの方が多い。今まで想ったことのない気持ちを抱いたり、人間様と一緒にした食事はいつもの何倍も美味しく感じたこと、誰かと離れたくないと感じたのも……全部、人間様と出会えたから。もし、人間様と出会わなかったら余は知らなかっただろうからな。
「本当に今までありがとうね、百鬼」
「い、いやだ!まだどうにかすれば助かるかもしれないではないか!!」
「無理だよ。自分のことは自分が分かっているから。だから、そんな悲しそうな顔をしないでくれよ。いつものように眩しい笑顔をしてよ…」
「むりじゃ……人間様がそのような状態なのに笑顔でいられるわけないじゃろ」
余の目の前に広がっている光景を見て、最初に思ったのは目がおかしい。だって、赤い液体が水たまりのように溜まっている。そしてその上に人間様が横たわっている。赤い液体の正体はすぐに分かった。
人間様が元々体が悪いのが知っていたが、本人は「大したことないよ」といつも笑っていたから気にしていなかった。人間様が余に嘘を付く訳がないと信じ切っていた。人間様の性格からすれば余のことを心配させないためにどんなに状況が悪かったとしても「大丈夫だよ」というに決まっていたのに。
「これは仕方のないことなんだよ。元々、自分は長生きできる体じゃないから、こうなる覚悟はしていたよ」
「よ…よ、よは人間様に生きて欲しい。誰よりも近くで余のことを見て欲しい!!余のために生きて欲しい!」
こんなことを言ったとしても人間様が困るだけなのは余が分かっている。でも、何も言わずにいられない。
「…百鬼にそんな顔をさせちゃって本当にごめんね。最後までバレずにいれるかなぁ~と思ったんだけどね。よっぽど体の調子が悪いようだ…」
「余のことなんか気にしなくていい。人間様は自分の心配だけをしていればいいんだよ!」
「それは無理なことだ………好きな人のこれからを心配するのは普通のことだよ」
そして数十分もすると自分の死を近いと感じてきた。
ヤバい…少しずつ視界が縮んできた。致死量に達してきているということ……。耳も遠くなってきているし、呂律も回らわなくなってきている。これはいよいよ近づいているかも。この日が来ることはわかっていたことなのに何でだろう。
自然と目から雫が零れ落ちる。覚悟は出来ているつもりだったし、後悔を残さないようにしてきたはずだったのにな……。
「あ…あ……が…とう、な…き……り」
「人間様!ずっ~~~と傍にいるからな!」
涙を流しながら百鬼はずっと叫んでいた。本当は一人で息を引き取った方が良かったかも…。こんな風に泣く、百鬼の姿は見たくなかった。誰よりも自分のことを大切に想ってくれていた相手を最後には泣かせることになるなんて……
「人間様、大丈夫だからな。余はずっと人間様の側にいるからな。いつ如何なる時も余は人間様と共にいる。だから心配してないでな」
続きを書いて欲しい話がある?
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