私は最近、暇な日に事務所に来ている。仕事でもないのに来ているのには理由がある。事務所のソファーに腰を下ろしながら私はため息を吐いた。こうなってしまったのは一週間前から。その日は事務所で仕事をする用があった。事務所に着いてマネージャーから言われていた部屋にいき、誰も居なかったのでマネージャーを待っている時。社員さんが気を利かせて私に飲み物とつまみ程度のお菓子を持ってきてくれた。その社員さんの優しい笑顔が未だに忘れられない。
ただ事務所で彼を一瞬だけ見ただけなのにそれが忘れられないでいる。彼のことを考えるだけで体温が高くなるのを感じる。
「今日は何かの打ち合わせですか?」
「は…い……」
私が振り返るとそこには…あの時の社員さんがいた。あの時と同じで笑顔を浮かべている。
「そうなんですか。頑張ってくださいね」
私が何も緊張して喋れないせいで話が終わってしまう。社員さんも会話が終えて、立ち去ろとしている。折角、会えたのにこれだけで別れるのは早いと思ってしまった。その思うのと同時に手が動いて、立ち去ろうとしている社員さんのスーツの袖を掴んでいた。
「なにかありましたか?」
「あ、あの……ちょっとだけ」
「ちょっと?」
「…は…はなし…ませんか?」
日本語覚えたての人みたいにたどたどしい日本語になってしまっていた。人生でマックスと言ってもいいほどに緊張している。指先は震えているし、頭が働いていない。
「別に僕としては大丈夫ですけど、獅白さんの方は大丈夫ですか?」
「だ、だいじょうぶです。時間はあるので」
「そうなんですか。では、打ち合わせが始まるまでの間、お話ししましょうか」
本当は『打ち合わせ』なんてない。だって社員さんと話すために事務所に来ただけなんだから。そして私と社員さんは休憩室のソファ―に腰を下ろした。
「獅白さんは好きな物とかあったりするんですか?」
「甘い物とか…ラーメン」
「ラーメン好きなんですか?」
彼は少し驚いた顔をしながら聞き返してきた。
「は、はい…」
「偶然ですね。僕もラーメン好きなんですよ」
「そ、そうなんですか?」
「好きですよ。休みの日にはラーメン店巡りをしたりしてますよ。最近は忙しくて出来ていないですけどね…」
まさか、彼もラーメンのことが好きだったなんて。
「あ、あの!」
「は、はい…?」
「よかったら…次の日曜日に一緒にラーメン店行きませんか!?」
あたしは勇気を出して彼を誘うことにした。
「え、べつにいいですけど、僕でいいんですか?」
「はい!あなたがいいです!」
「そうですか、じゃあ、次の日曜日に一緒にラーメン屋行きましょうか!」
「はい」
事務所からの帰り道の獅白ぼたんは珍しくスキップしていたのであった。
続きを書いて欲しい話がある?
-
ある
-
ない