こよりは初めて恋をした。でも、その人は人間でこよりは吸血鬼。種族すらも違う。その人と初めて出会ったのはこよりが飢えで死にそうになって倒れていた時だった。そんな時に偶然、通りかかったのが彼だった。そして彼はこよりのことを心配してご飯を買ってきてくれたりした。でも、こよは吸血鬼だから人間が食べるようなものは食べない。
こよが死にそうな声で「肩を出して」と言うと訳の分からないような顔をしながらも彼は肩を出してくれた。そしてこよは牙を突き立てて血液を吸っていく。なにも言わずにそんなことをしたら怯えたり、困惑したりするのに彼は血液を飲んだ、こよりに向かってこう言ったんだ。
「キミが元気になって良かった」
その時の彼の顔が未だに忘れられない。たぶん、その時のこよりは恋をしたんだ。次の日からこよりは彼を探すようになった。吸血鬼は日光の前に姿を出すことが出来ないから朝は活動できない。だから、夜に限られちゃうんだけど、彼のことを探している。会える日もあるけど、会えない日もあったりする。
あと、一つ驚くことがあった。こよに吸血されると100%の確率で眷属になってしまう。でも、彼はそうならなかった。もしかしたら、彼にはなにかあるのかも。でも、こよとしてはこよの眷属になって欲しかった。そしたらずっと一緒に居られるから。
こよの眷属第一号に。
そしてそれは今日も同じこと。こよは真夜中になると活動を始める。
「今日も会えるかな……」
そんなことしか最近は考えていない。こよの頭が彼で支配されているかのように。まずはいつものように適当に街を徘徊している。街並みを眺めながらも彼のことを探している。そうこうしていると
「今日も会ったね」
聞き覚えのある声が後ろからしてきて振り返るとそこには…会いたかった人が笑顔で立っていた。
「あ、はい!!」
「なんか強張っているように感じるけど、どうでしたの?」
「なんでもないよ……」
急に会いたかった人が近くに居たら誰だって強張ってしまう。
「それにしても最近は会うことが多いね」
「そうですね……あの…少しでいいので話しませんか?」
「いいよ。じゃあ、近くのベンチにでも座ろうか」
こよと彼は近くにあった公園のベンチに腰を下ろしている。
「最近はどうですか?」
「色々と忙しいかな……最近はちょっと残業も多くてね」
確かに彼の目元とかを見るとそこにはくまなどが出来ている。本当に苦労しているのが伝わって来る。それに前に話した時よりも少し声にも元気がない気がする。
「大丈夫ですか?こよに出来ることなら何でも言ってください!こよはあなたに救われたので、あなたを救うためだったらこよは何でもやりますよ」
あの時、あなたがこよを救ってくれなかったら今のこよは絶対に存在しない。救ってくれたあなたが困っているんであれば絶対に助ける。
「心配してくれてありがとね。でも、大丈夫だよ。キミに心配されちゃうなんてよっぽど顔にも疲れが出てたのか……気を付けないとな」
「…こよに手伝えることがあったら本当に何でも言ってくださいね!!」
「う、うん。本当に困ったらこよに手伝ってもらうよ」
あなたが倒れてしまった悲しむ人もいることを忘れないで欲しい。
「僕の話なんかよりもキミはどうなんですか?最近」
「最近ですか……いつもと変わらず、朝はゲームをしていますね。外に出る訳にもいかないので…」
「吸血鬼だもんね…」
「本当に驚かないですね。普通の人だったら吸血鬼って言われたら疑ったりするものだと思うんですけど……」
「最初に聞いた時は少し驚いたよ。でも、キミと会うようになってから吸血鬼も人間もあんまり変わらないように思えたんだ。普通に面白かったら笑って、からかったら少し怒った顔をして、悲しかったら泣く。人間と変わらないような表情をしていたからね」
それでも『吸血鬼』と聞けば誰もが驚いて接してくれない人もいたりするのにあなただけはいつも笑顔でこよの事を見てくれる。だから、こよはあなたに惹かれたのかもしれない。
「それでもこよは嬉しいですよ。こよとこんな風に話してくれる人間はあなたぐらいですよ」
「そうなのか……こんなに可愛い子なのに…」
「か、かわいい!???」
「うん。可愛いよ。今の反応とかもね」
「…………///」
その後もこよと彼は色々と話した。久しぶりに話せたので興奮してしまったりもした。
「…いいよ」
そう言って、あなたは肩を出してこよに血を吸われるのを待っている。
「お邪魔しますね…」
私は彼を後ろから抱きしめる感じのポジションを取って牙を彼の肩に突き立てる。そして血を吸っていく。
「はあ~~おいしい~~」
「そうですか、それは良かったです。それじゃあ、僕は帰るね。キミも気を付けてね」
彼が去っていく後ろ姿はとても小さく見えた。呼び止めれば止まってくれるし、こよが無理を言って「まだ話したい」と言えば話してくれると思う。でも、彼はまた仕事に行かなくちゃいけない。こよの気分で呼び止めていい訳ではないのは分かってる。
そして彼の後ろ姿が見えなくなり、さっきの血の味を思い出していた。美味しかった。やっぱり彼の血の味は格別。でも、単純に血が美味しいだけじゃなくて…あなたの血だから美味しいのかも。
「次はいつ会えるかな~~」
続きを書いて欲しい話がある?
-
ある
-
ない