「離れてくれないかな?」
「いやです、ここは白上の特定席ですから」
「そこを退いてくれないと画面が見えないんですが……」
白上はあぐらをかいている自分の足に腰を下ろした。簡単に言えばボクの目の前に座っている。
ボクが頭を左右に動かしてみても、白上さんも同じように動かしてくるので全く画面が見えない。そして白上さんがこうしてくる時は大抵、ボクに対して何か不満を持っている時なのだ。
「なにか白上さんに対してやってしまいましたか?」
「…かまってくれない!」
「え?」
「最近、キミの仕事が忙しいのは分かってるけど、まるで私にかまってくれないじゃないですか。私もキミの仕事の邪魔をする気はないんだよ。ただ、私の事も少しは考えてくれても良いんじゃないかなと思うんですよ。私はキミと少しでも一緒に居たいんです!」
「う、うん。白上さんの気持ちは分かったよ」
ボクが目の前の白上さんの頭を優しく撫でた。頭を撫でられることが白上さんは好きなようで何か不機嫌になってしまった時は撫でている。
「よきです、よきです。それにしてもあなたは本当に撫でるのが上手いですね。頭を撫でる天才なんじゃないですかと考えてしまうほどに上手いですよ」
白上さんはいつもボクのことを高く評価してくれているようで嬉しいけど…頭を撫でる天才ってなんか変な称号だね。
「褒めても何も出ませんよ。白上さん」
「その白上さんって呼び方はそろそろ止めてくれませんか。で、できればでいいんですが、名前の方で呼んでくださると嬉しいのですが……」
白上さんは前を見ているので顔は見えないけど…少し赤らんでいる気がする。言われた内容に関しては別に承諾しても良いけど、それに何か意味があるのだろうか。苗字呼びから名前呼びに変わるだけ。
「…フブキさん、これでいいですか?」
「……///」
囁くように言うから私の頭は一瞬でバグってしまった。だって彼の吐息ですらも瀕死状態の私なのにウィスパーボイスで自分の名前を呟かれたら頭が働くなってしまうのは仕方のないこと。
本当だったら『さん』も外して欲しいところ。だけど、それは後々でいいですね。私と彼の時間はこれからも長くあるのだから。
「大丈夫ですか?」
「………」
私が何も返事をしないことに異変を感じ取ったのか、彼は慌てた様子で聞いて来た。
「大丈夫ですか!??」
「……だ、だ、だいじょうぶですよ、あはは…破壊力満点ですね。これは気を付けないといけませんね」
下手をすると一瞬で意識が飛んじゃうかもしれない。これほどまでに彼の声に破壊力があるとは思いもしませんでした。
「??」
「キミは全く分かっていないような顔をしていますね」
私は後ろを振り返って彼の顔を直視する。相手の吐息でさえも聞こえてしまうし、いつもより彼が近くに居て、良い匂いもしてきます。
理性を保つのだけで精一杯です…。
「…うん?」
「いや、なんでもないですよ。こちらの話です」
彼は何だかんだ言ってかまってくれるから私もつい甘えてしまうんですよね。というか、彼が白上のお願いを聞いてくれなかったことなんて今まで一度もないんじゃないかな。少なくとも、考えて思いつかないということはそうだと思う。
「そう?それなら良いんですが、しらか…フブキさんも狭くないですか?」
「ううん、全然大丈夫だよ。私は逆にキミの近くに居られてとても嬉しいよ。もうここから離れたくないぐらいだよ~」
多分、彼は気づいていないかもしれませんが、とんでもないほどのお人好しですよ。私が無理なお願いをした時だってキミは必至に叶えようとしてくれましたね。多分、キミにとっては誰かから望まれたそれに答えようとしてしまうんでしょうね。
それは良いことだと思うんですが……そのせいでキミは白上以外の女性とも話してしまうんですよね。キミに悪気がない分、怒れもしませんしね。
だけど、白上としては自分の好意を寄せている相手が他の女性と親しくしているところは見たくない。これは一度恋をしたことがある人ならわかるんじゃないかな。でも、白上は彼に制限を設けたりすることはできない。だって白上と彼は結婚しているわけでもないし、付き合っているわけでもない。彼と私は只の友人。
「そんなに気に入って頂けて良かったです」
笑顔で答える、彼を見ながら私はやっぱりこの人のことが———―———————
「好き」
続きを書いて欲しい話がある?
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ある
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ない