白上には大好きな人がいる。その人は白上よりも1つ上の先輩。先輩は白上のことなんか覚えていない。だって話したことだって1回しかない。でも、白上の記憶にはその1回が深く刻まれている。
「はぁ……やっぱりカッコいいな…」
自分でも自分がやっている事が常軌を逸しているのは分かっている。このまま突き進むと超えてはいけない一線を越えてしまいそうで怖い。止めようと思っても止められない。白上が生まれて初めて『恋』というものを知った。友達が『好きな人がいるんだよ』とか言っていたけど、白上には理解できなかった。だって白上は誰かに対して特別な感情を抱いたことはなかったから。
でも、それを知るタイミングは急に訪れた。
その日の白上はとっても焦っていた。だって五限の授業に遅れそうになっていたから。廊下を走るという行動が悪いと思いながらも、遅れる訳にはいかなかった。そんな時に見えない角から誰かが出てきてぶつかってしまった。
「だ、だいじょうぶ?」
「…は、はい……だいじょ…」
頭をさすりながらも目を開けるとそこには…男の人が白上に手を差し伸べていた。別に普段の白上であれば『ありがとう』と言ってすぐに五限の授業に向かっていたと思う。
でも、なぜかいつものように…すぐに言葉を発せられなかった。自分でも自分がどうかしちゃったのかと思ったぐらいに。なぜか目の前の男の人に視線を独占されている。
そんな開いた口が塞がらないような白上を不思議に思ったのか、男の人は問いかけてきた。
「ど、どうしたの?何か僕の顔に付いているかな?」
「…いえ、そういう訳では!!あ、すいませんでした!!それじゃあ!」
白上は差し伸べられていた手を取らずに自分で立ち上がって急いで去った。
そしてその日から白上はその男の人のことが気になるようになった。名前も聞かなかったし、先輩なのか同級生なのかも分かっていない。特定するだけでも時間が掛かりそうだったけど、案外簡単に特定できた。だって彼は白上が住んでいるところからかなり近いところに住んでいた。登校している時にそのことに気付いた。
そして話は今に戻って…白上は彼の後を付けている。
「話し掛けたい…でも…」
そんな風に葛藤を繰り返していると後ろから急に肩を叩かれた。
「ひゃ!」
「びっくりし過ぎだよ。フブキ」
「なんだ、まつりちゃんか…。びっくりさせないでよ」
「ごめん、ごめん」
彼女の名前は夏色まつりちゃん。彼女は幼い頃からずっと一緒に居て、小学校も中学校も高校まで同じ。そしていつの間にか白上とまつりちゃんはずっと一緒に居るようになった。一番仲のいい友達でお互いを理解しあえる存在。
「聞くけど、今日もやってるの?」
「うん」
「もうさすがにやめた方が良いよ。まつりの方から先輩に遊びに行く約束でも取り付けてあげようか?」
「…い、いいよ。先輩と面と向かって話したら意識が飛んじゃうよ」
「そんな大げさな。でも、このまま続けるとフブキがいつかエスカレートしちゃいそうで怖いよ」
まつりちゃんは白上が先輩のことをストーカーのような行為をするようになってから前よりも多く声を掛けてくれるようになった。多分、本当に心配掛けちゃっている。友達が犯罪者になるところ何て見たくないだろうし。
「大丈夫だよ。白上はこれぐらいの距離がいいから」
「本当にいいの?フブキは可愛いんだからさ、先輩だって落とせると思うけどな」
「いいの。白上は先輩のことが大好きなのは事実だよ。もちろん、白上だって先輩に想われたいけど、いいの。先輩が幸せであれば…」
先輩のことを尾行のような事をしていく内に分かってしまった。先輩には想い人はいることに。だからそんな先輩の幸せを祈ってあげたい。
「…まつりはフブキのことが心配だよ」
「大丈夫だよ、まつりちゃん。白上は」
応援してあげたい。
応援してあげたい。
応援してあげたい。
でも――――――――――――
なんでこんなに悲しい気持ちになるんだろう。
続きを書いて欲しい話がある?
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ある
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ない