「余以外の人を見ないで!!」
「う、うん。分かってますよ」
隣を歩いている、百鬼さんは僕の腕に抱き着いて離れようとしない。恋人ならばこれも当たり前なのかもしれない。僕は恋人が出来たことが分からないのが正直なところ。
「人間様の恋人は余だぞ。余以外の女の人を見たりするのもダメだぞ」
「大丈夫だよ。百鬼さんは好きな事実は変わりませんから」
「それでもいやだ。人間様の視線は余が独占したいの!」
そう言ってくれるのはとても嬉しい。それぐらいに好かれているということなのだろう。
「僕の心は百鬼さんに掴まれているので大丈夫ですよ」
そう話しながら百鬼さんの方に視線を向けるとそこには…寂しげな顔を浮かべた、百鬼さんの姿があった。何か悲しませるようなことを言ってしまったか。
「ご、ごめん!!」
「ううん。別に人間様のせいじゃないよ。でも、心配なの。人間様が余から離れていこうとする夢を見るんだ。いくら呼び止めても全く見向きもしてくれなくて去っていく後ろ姿を見ることしかできなくて…本当に悲しかった。いつもその夢を見るから…ぐっすり眠れない。不安で押しつぶされそうになってしまう」
まさか急にそんな話をされるとは思ってもいなかった。それに百鬼さんがそこまで不安を抱えていたなんて知らなかった。いつも明るくて、僕のことを笑わせようとしてくれている彼女からは想像ができない。
「百鬼さんがそんなことを思っていたなんて。大丈夫ですから。絶対に離れないから」
こんな言葉を言ったとしても百鬼さんが安心することは出来ないかもしれない。言葉だけではやっぱり限界があると思って…足を止めた。
「ど、どうしたの?人間様」
百鬼さんが首を傾げながら不思議そうに僕の顔を覗き込んでくる。そんな百鬼さんのことを僕はすぐに包み込むように抱きしめた。
「え、に、にんげんさま!ど、どうしたんだ!??」
「すいません。百鬼さんがそんなに不安なんて初めて知ったので…。でも、これからは不安な時は言ってください。僕に出来ることなんて少ないですけど、少しでも百鬼さんの助けになりたいから」
言葉以上に行動で示した方が少しでも百鬼さんが安心することが出来るかもしれないと思って行動に移してみたのはいいものの百鬼さんの表情を見ることが出来ないからこれが正しかったのかが分からない。
「…あ、ありがと。人間様…やっぱり人間様は温かいな。これが人の温もりという奴のかな。人間様が近くにいるって感じることができる」
「それは良かったです」
「あの…一つお願いをしてもいいか?」
「なんですか?」
「嫌だったら…断ってくれてもいいからな」
「はい…」
「今日からしばらくの間、余と一緒に寝てくれないか?人間様が近くに居れば悪夢を見ずに寝れる気がする。勿論、人間様が一緒に寝るのが嫌だったら断っても良いんだぞ。余は人間様に無理強いはしたくないからな」
「いいですよ。百鬼さんは僕に気を遣う必要はないですよ。百鬼さんのためであれば全てを尽くす覚悟は出来ていますから」
僕は百鬼さんと初めて会った日に一目惚れをした。そして最終的にお互いに…同じ想いになり、今に至る。だから百鬼さんのためであれば自分の命が消えたとしても受け入れられる。
「ほんとうにいいのか?余は多分、人間様のことを抱きしめて寝るから苦しいかもしれないぞ」
「それぐらい大丈夫ですよ。僕の体で百鬼さんが安心して眠れるのであれば僕がどうなったとしても問題ないですよ。だからさっきも言いましたが、百鬼さんは僕を使ってください」
「使うなんてしたくない…。余は人間様が自分の意思で余と一緒に居たいと思って欲しい。余のことをとっても大好きになって欲しい、今よりも何倍も大好きになってほしい!」
「もう大好きですよ…」
「もっと…」
続きを書いて欲しい話がある?
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ない