人はその人が居なくなって初めてその人の大切さに気付く。そして私も今それを肌に感じている。あの人がどれだけ私のことを考えてくれていたのか、どれだけ私がやりやすいように立ち回ってくれていたのか。正直、私は彼のことを見限っていたかもしれない。
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私のマネージャーはいない。それだけ聞いたらマネージャーが何かの事件に巻き込まれていなくなったように聞こえるかもしれないが、私のマネージャーさんが家の事情でどうしても実家に帰らなきゃいけなくなったでけ。そして今は代わりのマネージャーさんが代理として私のマネージャーはやってくれている。
マネージャーさんが代わってもそれほど大きな問題はないと考えていた。
でも、その考えはすぐに間違いだと気付かされることになる。いつものように収録に行っても何かが…違うように感じた。別に収録はいつものように進んでいく。大きなミスをすることなく時間が過ぎていく。でも何か違和感を感じずにはいられなかった。
そして収録が終わって…控室に戻るとそこにはマネージャーさんが待ってくれていた。
「マネージャーさん…」
「お疲れ様です!何か欲しいものとかはありませんか?」
「だ、だいじょうぶです……」
こんな普通の会話なのに……いつもと違うと寂しい。いつもだったらマネージャーさんが私のことを撫でてくれる。収録とか緊張するような時にマネージャーさんに撫でてもらうのが当たり前になっていた。私の他愛もないような話にも真剣に聞いてくれる。それだけでも私は嬉しかった。
彼が居た時は気付かなかったけど…彼に支えられていたんだな。私が少しでも落ち着いて収録に行けるように気を使ってくれていたんだと思う。本当に彼は優しい人だから。
それから私は代わりのマネージャーさんと三日間、一緒に仕事をした。それでも、やっぱり違和感はぬぐい切れない。でも、それは代わりのマネージャーさんが悪いんじゃなくて私が甘えているだけ。頭を撫でてくれたりするのは彼だけで普通のマネージャーさんだったらそんなことをしてくれる訳がない。代わりのマネージャーさんも私がなるべくいい心持ちで収録や撮影に行けるように色々と気を使ってくれていた。本当に感謝しかない。急なことだったのに嫌な顔をせずにやってくれているんだから。
マネージャーさんがいつ帰ってくれるのは分からない。急なことだったので何があったのかも分からないし、連絡をしても返ってこない。多分、あっちは色々と忙しくて返事を返す余裕がないんだろうし。そこで私が催促するような連絡をしたら迷惑になるかもしれないし。
今日はずっとスタジオでも仕事だったので…外をあんまり見なかった。
「暗い…」
日が沈んでもう…外は肌寒い季節。コートを着てはいるもののやっぱり寒いな。息を吐くと…白かった。
「さむ…はやく家に帰ろう」
この寒さから逃れるためにも少し早い足取りで家へと向かおうとした矢先に…後ろから誰かに肩を叩かれた。急なことだったので体がビクッとしてしまった。
振り返るとそこには――――――――――
「ま、まねーじゃーさん!!」
「ごめんね」
「え、かえってきてたんですか?」
「うん!携帯の電源が切れてて、そらさんが連絡をしてくれるのに全然気づかなかったんです。本当にごめんね、色々と心配を掛けちゃって」
「…いえ、それは仕方ないですよ。マネージャーさんも色々と忙しかったんだしね」
それからお互いに会っていない間の会話をした。こんな他愛もないような話でも話せるだけで嬉しかった。
「あの、マネージャーさん」
「どうしたんですか?」
「一つだけマネージャーさんに伝えたいことがあるんです」
「伝えたいこと?」
「はい……いつも私のことを支えてくれてありがとうございます。これからも私のことを支えてください!」
「え…あ、はい…もちろん」
マネージャーさんは急に私がそんなことを言いだしたものだから…疑問を隠せていない。でもこういう機会がなかったら私はマネージャーさんこと彼の大切さに気付けなかった。
本当に人は居なくなって…その人の大切さが分かるんだね。
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