急に……星街すいせいさんが抱き着いてきたら多くの人はどんな反応をするだろうか。嬉しいと思う人もいるかもしれない。
でも、少なくとも僕は嬉しいという感情よりも少し怖いという感情を抱いてしまう。
「…ほ、ほしまちさん…」
「なに~~」
僕はホロライブで働いている、一社員。別にすごい才能がある訳ではなく、ごく普通の社員。それ以上でもそれ以下でもない。そんな僕が星街さんに抱き着かれているのは本当に不自然でしかない。
「離してくれませんか?仕事に戻らないといけないんです」
「いやだ」
「何でですか?」
「だってすいちゃんはキミのことが大好きなんだ」
そう…僕は星街さんに好かれているようなんだ。自分は別に星街さんに好かれるようなことをした覚えはないし、接点だとほぼ皆無に等しい。それなのに1週間ぐらい前から星街さんは急に抱き着いてきたり、ボディタッチをしてきたりと急に接近してきた。周りもびっくりしていたがそれよりも僕の方がびっくりだよ。
「…あの…少なくとも僕って星街さんに好かれるようなことをしてないと思うんですけど……」
「ううん。すいちゃんはキミに惚れたの」
「…そ、そうなんですか…」
ここで星街さんとの話をしていると仕事に戻る時間が遅れてしまう。今は仕事が色々と忙しいから…一秒とも時間が惜しい。残業になる可能性が高くなるから。
「それで星街さん…そろそろ本当に離してくれないですか?」
「だめ。すいちゃんが1日分のキミの成分を吸い取るまでは離れちゃ」
「…成分?」
無理に剥がしたいところだけど、今それが出来ないのは分かっている。だって星街さんの力は予想以上に強いから。前に一度だけ…逃げようとした時があった。でも結果はもちろん、逃げられなかった。星街さんのあの細い体の一体どこにあんな力があるのか不思議でしかない。
「星街さんがなんで僕なんかのことを好いてくれているのか分からないですが、僕よりも良い人はたくさんいると思いますよ」
「…なに言っているの?」
急に星街さんは真顔になって…僕のことを見つめて来る。
「え_?」
「すいちゃんはキミだから好きなんだよ。キミ以外の人なんか興味ないよ。それに…キミより良い人なんていないよ。少なくともすいちゃんの中では。すいちゃんが大好きなのはキミなんだから」
まるで当たり前かのように話しているのが…本当にすごい。僕は恋なんかしたことないから『恋愛』は分からない。『恋愛』をするとこうなるのか…それとも星街さんの性格からなのなのかな。
「…そ、そうですか……///」
なんか急に顔が熱くなっている気がする。気のせいかな…。こんな風に直球で想いを伝えられることに全く慣れていない。
「…キミのそういうところもすいちゃんは大好きだよ…」
「そ、それ以上言わないでください…。ちょっと恥ずかしいので」
「へぇ~~キミを恥ずかしがらせるには愛を伝えればいいのか。これからはキミを恥ずかしがらせたい時はずっと愛を囁くね」
「止めてください…ってそれよりもそろそろ本当に離してくれますか?」
「…え~~」
「え~じゃないですよ。本当にそろそろ仕事に戻らないと残業確定になってしまうので」
「しかたないな~~」
少し不満そうではあるものの星街さんは離してくれた。このままずっと離してくれなかったら本当にどうすればいいのか分からなくなるところだった。
「…今日は残業かなぁ」
「大丈夫だよ」
「え?」
「すいちゃんはずっとキミを見守っているからさ。それにキミが良いのならすいちゃんも手伝うから」
何だかんだ言って星街さんはとても優しいんですよね。困っていたら助けてくれる。でも、さすがに星街さんに仕事を手伝ってもらう訳にはいかない。それは勿論…星街さんの仕事ではないのと同時に…自分を好いてくれているような人に幻滅させるようなところは見せたくないからね。自分でもこんな気持ちが湧きあがっているのが不思議だけど……。
「大丈夫ですよ。残業をしなくて済むように必死に頑張りますから!」
そしてオレは少し小走りで自分の仕事場に戻った。
それからいつもよりも仕事がはかどったお陰で…残業は免れたのだった。
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