僕の家には…猫又おかゆさんがいる。少なくとも僕と猫又さんの関係は数日前までタレントとマネージャーという関係だったはずだ。それい以上でもそれ以下でもなかった。なのに今は明らかにそれ以上に行こうとしてしまっている。
「ねぇ…ボクから離れちゃだめだよ」
「…猫又さん」
あの日。僕はちょっと体調が悪くて事務所に行くことが出来なかった。その日はちょうど猫又さんと何人かと打ち合わせをする予定だった。予想以上に体調が悪くて事務所の方にも連絡が出来なかった。これが全ての始まりだった。この時に事務所にだけでも連絡をしておけばこんなことになることはなかったんだ。
僕はベッドでしばらく横になっている間に寝てしまった。まだ熱は引いてないらしく体が火照ってる。やる気も出ないし、活力もない。それでも体を起こさなければならない。家には薬がないのだ。近くの薬局まで急いで行って帰って来るしかないな。
コートを着て、ドアノブをひねって開けるとそこには……驚くべき光景が広がっていた。だってそこには…猫又さんがいたから。
こんな寒空の中。外は普通にいるだけでも手がかじかんでしまうほどの寒さ。
「あ、無事だったんだね…」
「…なんで猫又さんが……」
「だってマネージャーさんが無断で休むなんてなかったもん。心配になっちゃう……全く連絡も取れないし…鍵も持ってないし…ここで待っているしかなかったから。でも、マネージャーさんが無事でよかった……」
言い終わると猫又さんは膝から崩れ落ちてしまいそうになった。急いで支えたけど、猫又さんはとてつもないほどに冷たい。ずっと外に居たんであれば納得できてしまう。僕なんかのために…。
その後は猫又さんを自分の部屋に寝かせて体調の回復を待った。猫又さんは二日間も寝込むという最悪の結果になってしまった。自分のせいでタレントさんが体調を崩した。この結果だけでもとても最悪だ。
その日から猫又さんは僕の近くから離れないようになってしまった。体調が治っても僕の側から離れなくなってしまった。
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猫又おかゆside
いつまで経ってもマネージャーさんと連絡が取れないし、来てもくれない。そこでボクはなんか妙な胸騒ぎと喪失感を味わった。マネージャーさんはいつもボクの隣に居てくれて支えてくれる。本当に感謝してもしきれないほど。だから今までそんなに真剣に考えたことがなかったけど、ボクはマネージャーさんが近くに居てくれないとだめなんだと。すっごく心配になっちゃう。多分、依存しちゃってた。この時、ボクは初めて気づいちゃったんだ。ボクがマネージャーさんのことをどう思っているのかも。
そして気づいた時にはマネージャーさんの部屋の前まで来ていた。
インターホンを鳴らしても返事が返ってこない。合鍵を持っている訳でもない。だから、ボクは待つことにした。それにもし、マネージャーさんが体調が悪くて寝ているんならインターホンを鳴らし続けて妨害するようなことはしたくない。
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「撫でて」
「あ、はい」
僕は猫又さんに言われるがままに頭を撫でた。今までは頭を撫でてなんて一度も言われたことがない。少なくともこんな風にスキンシップに見られるようなことはしたことがない。
「…マネージャーさんは撫でるのが上手いよね~~」
「そ、そうですか?」
「うん。とっても上手いよ~」
「マネージャーさんはボクのこと好き?」
「…………」
「まあ、マネージャーさんは真面目だもんね。聞かなかったとしても分かっていたよ。キミがボクのことをそういう目で見てくれないということはね」
もちろん、猫又さんのことはタレントとしてマネージャーとしてもとっても大切な人だと思っている。でもそこに『恋愛』感情というものは全くいない。公私混同はしてはならないから。
「…ごめんね」
「ううん。謝らないで。それでもボクはマネージャーさんの側に居たい」
これから僕と猫又さんがどんな風になるのかはまだ分からない。
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