出会いというのは一期一会。一度出会った人ともう一度会える保障というものはない。だから、一度の出会いをちゃんと大切にするべきと言われている。
だから、僕は一回一回の出会いを大切にしようと思っている。
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夜も更けてきてそろそろ眠ろうかと考える時間に入ってきた頃にドアを叩く音が部屋中に響き渡る。普通だったらこの音を聞いて誰もが怯えたりするかもしれない。でも、僕にとってこれは初めての経験じゃない。小さなため息を付いてから僕は玄関に向かうことにした。
ドアを開けるとそこには…髪色が赤く、片目に眼帯をしている女性が立っていた。
「宝鐘…さん…」
「キミ……」
それだけ口にすると宝鐘さんは急に倒れだした。普通の人だったらここで慌てたりするのかもしれないけど、こういうことが何回も続けばさすがに態勢も出来る。宝鐘さんはボクの隣に住んでいる人で何回か会ってから交流が続いている。
倒れている宝鐘さんを運ぶために近付くとお酒の匂いが充満している。宝鐘さんがボクの部屋を夜中に訪れるとしたらお酒に酔ってくる以外はない。
宝鐘さんを自宅に送り返したいところだけど、無断で女性の部屋に入るのはさすがにしない。だけど、放っておくわけにもいかないので、ボクは宝鐘さんを背負って自分のベッドに寝かせる。
ー------次の日ー-------
「本当にいつも迷惑を掛けてすんません~~」
宝鐘さんは地に頭をつけて誤っている。所謂……土下座。二十代後半ぐらいの女性が土下座をしている絵は見るに堪えない。
「大丈夫だから顔を上げてください!ここは人も通りますから。早く上げてくれないとボクが土下座させているみたいに見えちゃいますから!!」
「すいません~~~~~」
顔を上げた、宝鐘さんの顔はお世辞にも乙女がするような顔じゃなかった。目から涙、鼻から鼻水、口からよだれを垂らしている。
「もう大丈夫ですから落ち着いてください!可愛い顔が台無しですよ!」
このままここで話していても埒が明かないし、全くと言っていいほど落ち着く様子が見られない。これだと近所の人に変な誤解を受けるかもしれない。まだここには住んでいたいから誤解を受けるのだけは勘弁したい。
「宝鐘さん。一回部屋に入ろう。ここだと注目を浴びちゃうからね」
「はぁ…い」
家に入って三十分ぐらいしてやっと宝鐘さんは落ち着きを取り戻しつつあった。
「落ち着きましたか?」
「は…い、すみませんでした」
「それはよかったです。もう誤らないでください。ボクもそこまで迷惑をこうむっているわけではないので」
「あ、はい……」
「お酒もある程度にした方が良いと思いますよ。一週間に三回ぐらいは酔って、家に来てますし」
「す、すいません」
「少しずつでいいので直していってくださいね。あなたのような魅力的な女性が酔って、自分のところに来るたびにボクが気が気ではないですから」
外見は赤毛で顔立ちも整っている。十人に聞いたら十人が美人と答えるほどの顔立ちの良さ。よくこの酔っ払いぶりで今まで何もなかったと思うべき。
「…魅力的な女性……」
なぜか、その一部分だけ切り取って宝鐘さんは呟いた。
「はい、ですからもう少し自分のことを大切にしてお酒は程々になさった方が良いと思いますよ」
「…あの……少し前の言葉をもう一度お願いできますか?」
「少し前の言葉?」
「お酒は程々になさった方が良いと思いますよ。ですか?」
「もうちょっと前」
「少し前だと……魅力的な女性ですか…」
「そう、それ!魅力的な女性……魅力的な女性……魅力的な女性…」
暫くの間、宝鐘さんはずっと言い続けた。まるで壊れたロボットのように。
「それでまあ、これからもよろしくお願いしますね。たまには酔って来ても介抱してあげますから。毎日は困りますけど」
「はい、こっちこそよろしくお願いします!迷惑掛けないようにしますんで」
僕の隣に住んでいる宝鐘さんはとっても魅力的な女性だけど、ちょっとお酒を飲み過ぎてしまって夜中に訪問してきたりもしますが、いい人なんだろう。
続きを書いて欲しい話がある?
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