僕は今、出来るだけ早く帰るために最寄り駅から自宅までを走っている。
「はぁ…はぁ…はぁ」
やっと玄関前まで来て、呼吸を整えてから僕は玄関のノブに手を掛けた。そして勢いよく引くと…そこには星街さんが笑顔でこちらを見ていた。
「お帰り」
「あ、た、ただいま…です」
明らかに笑っているけど…それが怒りからの笑みなのはわかる。だって殺気のようなものが溢れ出ている気がするし。
「こんな時間まで一体なにをしていたのか聞いても良いかな」
「…あ…え~と…ごめんなさい!」
「ううん。謝って欲しいわけじゃないの。キミが一体すいちゃんのことをほったらかして何をしていたのかを知りたいの?」
完全に怒っている。もしかしたら…僕は命日かもしれない。
「…ご、ごめん…。ちょっと付き合いで…」
「どこに行ってたの?」
「…キ、キャバクラに…」
星街さんの顔を直視はせず…必死に視界に入らないように視線をずらしている。だって見たら最後一生忘れられないぐらい…怖いもん。
「…すいちゃんのことよりも他の女のがいいってこと?」
「そ、そんなことないよ。僕は…星街さんのことが好きですよ」
あくまで誘われたから言っただけ……好奇心が無かったと言えば嘘になりますけど。
「だったらキャバクラになんか行かないよね」
「…そ、それは誘われらから…」
僕の答えを聞いた、星街さんは深呼吸をした。
「ねぇ…すいちゃんのこと嫌い?」
「好きですよ」
「だったら…すいちゃんのために今すぐ仕事を辞めて」
「え…」
「すいちゃんはキミが他の女と一緒にいるだけでどうしようもなくムカつくの。キミに触れていいのはすいちゃんだけ。キミはすいちゃんのことを面倒くさいと思うかもしれないけど…それでもすいちゃんはキミが全てなの。それぐらいキミのことが大好きだから」
星街さんは…僕のことを想ってくれているんだろう。少し怖いところもあったりするけど、それでも優しい人。
「…それで仕事を辞めて欲しいってことですか?」
「うん。すいちゃんはキミと一緒がいい。すいちゃんとしては家庭に入ってくれた方が良い気もする。でも、どうしても働きたいんだったら私が事務所に掛け合ってホロライブのスタッフとして就職させてもらうようにする。少なくともすいちゃんの目の届くとことに居て欲しい」
ここで僕はどんな選択をするのが正解なのだろうか。今回の件は僕が悪くて星街さんに心配を掛けてしまった。でも、仕事を辞めるという決断は簡単に決められる訳でもないですよね。もちろん、ホロライブのスタッフとして働き先があるなら…辞めてもと思う心もあるが、今の会社にもお世話になっている。
だけど、そんな僕の姿を見て…何かを決心したかのように話し始めた。
「私が無理なお願いをしてるっことは分かってるよ。すいちゃんの我儘の所為でキミを縛りたくないし。でも、どうしても不安になっちゃうの。キミがいる時は幸せ過ぎて考えないんだけど、キミと一緒じゃない時、ふとした時にキミは本当にすいちゃんのことが好きなのかなとかね。いつもはなるべく心配を見せないようにしているんだけどね」
そんなことを言われたら…断れないじゃん。僕は星街さんを不安にさせたくない。正直、僕でも星街さんが不安に駆られていたなんて考えもしなかった。
それに今の星街さんの顔を見たら…答えを迷ってられない。
「はぁ…そうですね。星街さんがそれで安心できるのなら…」
「じゃあ、辞めてくれるの!?」
「う、うん…」
僕がそう頷くと星街さんはさっきまでのテンションが嘘だったかのように満面の笑みを浮かべて僕の腕に抱き着いて来る。
「やった~~これからはずっとすいちゃんと一緒だね」
「そ、そうですね…」
そしてそれから、僕はホロライブのスタッフとしての第二の仕事が始まった。
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