ねねはキミの全てを知りたい。
僕は仕事が終わって帰路に付いている。足元がおぼつかない程ではないが、お酒が入っている所為でそれなりに視界が歪んでみる。
「ち、ちょっと…飲み過ぎたかな…」
体育座りで座っていた…子供が立ち上がって僕の方に笑いかけてきた。
「ああ…やっと帰ってきたぁ~」
「え……ね、ねねさん…」
それは僕がお付き合いしている、桃鈴ねねさん。最近は忙しくてあんまり会えていないが、一カ月ぐらい前までは休みの日とあらばほとんど会っていた気がする。
「…も~あんまり飲んじゃダメってねね、言ったよね?」
「う、うん…。それはごめんだけど、なんでねねさんはこんなところで体育座りをしているの!?」
もう酔いも完全に覚めてしまった。だって自分の恋人が自分のマンションの近くの電信柱の下で体育座りをしているんだよ。これで酔いが覚めない方が難しいよね。
「え?ねねはただ待っていただけだよ」
「え?…」
ねねさんは別におかしいことはしていないって思ってる感じがするのは気の所為かな。僕とねねさんは連絡先だって交換しているし、来るなら連絡してくれればいいんじゃ…。
「…連絡先って交換してたよね」
「うん。もちろん!!」
「…そ、そうだよね…」
もしかして僕の方がおかしいのかなぁ。
「…キミは今日どこに行ってたの?」
「え、仕事だよ…」
「仕事の後は何をしていたの?」
「上司に誘われて数件だけ飲んだかな…」
「…そっかぁ…ねぇ、ねねはキミのことが好きだよ」
「そ、そうですか…あ、ありがとうございます!」
「ねねはキミの全てを知りたいの。ねねに全部教えてよ」
「え…?」
「飲みに行く時もどこかに出かける時も…何時に起きたのか…何時に寝たのか…ねねはキミの全てを愛しているの。だからキミの行動を全て知りたい!」
今までの…ねねさんとは全然違うと感じる。無邪気なねねさんではなくて…ねねさんの闇の部分に触れてしまった気がする。
でも、ここでねねさんを突き放したらこの子は一体なにをするか分からない。前から少し自分のことを大切に扱わないところがあったんだよね。
「…僕のことなんて知っても…面白くないですよ」
「ねねはしりたいの!」
ねねさんの目がちょっと濁っているように見えたけど…今はいつもの透き通ったような目をしている。
「そ、そうですか……教えればいいんですか?」
「うん!ねねにぜんぶおしえて!」
僕はさすがに少し悩んだけど…答えを出すことにした。
「わ、わかりました」
さすがにこんな彼氏彼女が存在するのかは分からないけど…それぞれの形があるはず。だとしたら、ねねさんのように全てを知りたい人だっているんだ。それでねねさんが満足してくれるなら。
「やった~~ねねはきみのことがだいすき~~」
ねねさんが抱き着いて来るが…とっても冷たい。どれだけ長い時間、外で待ち続けたのか。今の時期に夜、寒空の中に一人で体育座りをしていたら…凍死をする可能性だって十分にある。そんな中、ねねさんはずっと待っていた。
もうちょっとねねさんのことを考えられていたら…こんなことは起こらなかったのかもしれない。
「寒かったですよね…」
「さむかったよ…でも、きみはとってもあったかい~」
「それじゃあ…家に行きましょうか」
そして僕とねねさんは家へと向かった。
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