あたしはクールな人だと思われることが多い。それはあたしの外見やクラスメイトへの接し方とかを総合してそう思われるんだろう。
「ねぇ…獅白さん!」
「どうしたの?」
「今度の文化祭でシンデレラをやることに決まったから…獅白さんに王子様役をやって欲しいんだけどいいかなぁ?」
「…うん。いいよ」
「あ、ありがとう!!皆に伝えて来るね」
楽しそうな顔をして皆に話に行こうとする彼女の背中を見ながら…やっぱりあたしって男っぽいのかなぁと思っちゃった。普通、王子様役なんて男子がやるものな気がするけど。まあ、お願いされたらしっかりとやり遂げるけどね。
そして放課後になると…あの人のところに向かう。しばらく…校舎を歩いてある教室の前で歩みを止めた。扉を開けるとそこには…一人の男子生徒が空いている椅子に腰を下ろして読書をしている。
「先輩は本当に読書熱心ですね」
「…そうでもないよ。あくまで…本があるから読んでいるだけだし」
「じゃあ…あたしに構ってくれないですか?」
「別にいいけど、何をすればいいの?」
「先輩はそのまんまでいいのでじっとしていてください」
あたしは先輩のところまで近寄って行って…先輩の膝元に座る。だけど、向きはもちろん、先輩の方向を見ながら。だから今の先輩とあたしの状況を説明すると…向き合う形。
「まず、膝に座って来ることも驚きだけど、普通反対じゃないかな」
「え~あたしにとってはこっちの方がいいもん」
先輩の前だけは…あたしはただの女子生徒になれる。先輩はあたしの全てを受け入れてくれる人。ラミィちゃんとかの前でもあたしは自分のスタイルを崩さない。それがあたしのやるべきことだと思っているから。でも、先輩は初めて会った時に『我慢してないですか?』と聞かれた。まるであたしの心の中を読まれているかのように。
「でも、これだと僕も獅白さんも動きずらくありませんか?」
「ううん。だって……抱き着けるもん」
先輩を包み込むように抱きしめる。抱きしめて改めて思ったけど、本当に先輩って女の子みたいに華奢な体。あたしが力を本気で抱きしめたら…骨が折れちゃうんじゃないかと思っちゃうほどに。
「先輩」
「なんですか?まずこの状況を説明してくれませんか?」
「ただ抱き締めているだけ。先輩ってしっかりとご飯とか食べてます?」
「食べてますよ」
「それにしては前に抱き着いた時よりも痩せているように感じるけどなぁ」
あたしは先輩のことなら何でも知ってる。もしかしたら、先輩よりも先輩に詳しいかもしれない。体重も身長も全て…。
「まあ、ちょっと痩せちゃいましたけど、食べていますよ」
「ほんとうですかぁ~~?」
「本当ですよ。そこまで心配しないでくださいよ」
「それならいいですけど……」
「それでいつ離してくれるんですか?」
「まだだめ…あたしが先輩と離れたくないもん!」
「そうですか…」
「うん!だからもうちょっとこのままにして」
いつかあたしも先輩だけの…シンデレラになれたらいいなぁ。そう思ったりするけど…それは簡単ではないのはあたしも分かってるつもり。先輩にとってあたしはまだ…ただの中の良い『後輩』止まり。まずはそれを乗り越えないと…この関係は進展しない。
「いつかはあたしだけの王子様にしてあげますよ」
あたしは蚊の鳴くような小さな声で呟いた。
「なにか言いましたか?」
「ううん。何でもない」
でも…今は先輩の温もりを感じることに全てを注ぎたい。
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