ウルトラマンクライス   作:らいか@オリトラマン投稿者

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第4話「逆境のバッターボックス」

(1)

 

 リンカイシティの工業地帯。ーーークライスとスターウイングは、怪獣"ガンQ"と交戦していた。

 

 ガンQ。"奇獣"の異名の通り、その姿は、これまでに出現した怪獣の中で、最も奇異で不気味なものだった。その巨躯の半分以上ーーー二足歩行生物における上半身を占めるほどに、大きな単眼。肉塊のようなグロテスクなボディにもまた、無数の目玉が浮かび上がる。その姿は、見るものを怖気で震え上がらせた。ナユタもまた、その姿を見た時には、何か生理的な嫌悪感から寒気を感じずにはいられなかった。

 

 その姿のみならずーーーガンQは、今のナユタたちにとって、極めて厄介な性質を備えていた。

 

『ねえアステル、こいつ全然弱ってる気配ないけど!』

 

『・・・』

 

 クライスのライフゲージは点滅し、既に活動限界が近いことを知らせている。アステルは、初めて相見える奇獣の異様さに頭を悩ませていた。

 

(ーーー知性体の情動から産まれているとはいえ、シュライグの生み出す怪獣たちは"生物"だ。だが、こいつはどうだ?怪獣たちから感じる、生命の気配のようなものが・・・まるで感じられない)

 

 クライスが幾ら殴打しようとも。スターウイングが幾らそのレーザーで撃とうとも、ガンQの動きにはまるで怯みや疲れが見られない。ガンQは、まるで混乱する自分たちを嘲笑うような仕草と共に、それでも攻撃の手を止めなかった。

 

『ナユタ、距離を取れ。俺が足止めするから・・・スターレイで一気にケリをつけるぞ』

 

『わかった!』

 

 クライスはバック転でガンQの攻撃の間合いから離脱し、スターレイ・ストリームの構えをとる。そこに生まれる隙をカバーするべく、スターウイングはガンQの足元にレーザーを放ち、その動きを牽制した。

 

『スターレイ・・・』

 

 そして、十字に組んだ腕から、クライスの必殺の一撃は放たれる。

 

『ストリーム!』

 

 光のエネルギーの奔流。これまで多くの怪獣を葬ってきたその光は、ガンQの上半身ーーー最も巨大な眼球に向けて線を成す。

 

(やったか?)

 

 光線の命中を目撃し、勝利を見たアステルーーーだがしかし、現実は。

 

『・・・うそぉ』

 

『吸収してる?!』

 

 ーーーガンQの巨大な単眼は、スターレイ・ストリームを受けてなお壊れることなく、・・・アステルの表現の通り、それを吸収しているようだった。それでもクライスは光線の威力を高め、ガンQを焼き払うべく、強く力を込める。しかし、ガンQはそれすらも"吸収しきった"。やがてクライスの両腕から光は消え、エネルギーの消耗から、クライスは片膝をついて息を切らした。

 

(あの巨大な眼は、光線を吸収する)

 

 アステルは、スターレイ・ストリームが躱された時の二の矢として、スターウイングから放つ最大火力・ウイングオーバードライブの使用を考えていた。しかしウイングオーバードライブは、その高威力と引き換えに、とても大味な軌道で放たれる。ガンQがその眼で受ける姿勢を取れば、同じことを繰り返すだけだろう。何よりーーー

 

(光線ごとエネルギーまで吸われたか?クライスが、もう保たない)

 

 息を切らすクライスの身体からは、その姿を維持できなくなりつつあることを示すように、光の粒子が溢れ出していた。ライフゲージの点滅はより速くなってゆく。

 

 ・・・どうする。

 

『・・・一旦退くぞ、ナユタ。変身を解け。無理にクライスでい続けたら、お前が死ぬ』

 

『でも!こいつを放っといたら!』

 

 ガンQはナユタとアステルが到着するまでの間に、工業地帯の一角を破壊していた。もしここで戦いをやめたら、やがては市街地にも被害が及ぶだろう。アステルも、そんなことは当然わかっている。だが、

 

『いいかナユタ!お前はクライスだ。今この星であいつらと戦えるのは、俺と、クライスであるお前だけだ。・・・お前が死ねば、未来でより多くの人が死ぬことになるぞ!』

 

『・・・俺は、まだ戦える』

 

 クライスは立ちあがろうとするが、よろけて思うようにならなかった。全身からは、とめどなく光の粒子が溢れ出る。

 

『ナユタ!』

 

 その時・・・ガンQに異変が起きた。まるで身体全体で脈動するように、一瞬。その姿は大きく歪み、膨張し、また元に戻る。アステルはゾッとする。その異変には、見覚えがあった。

 

(・・・まずいな)

 

 アステルは理解していた。あの脈動のような現象を何度も繰り返した先に、怪獣が"どうなるか"ということを。

 

 しかし、アステルの予想に反して。脈動はその一度で止まり、ガンQ自体もピタリと静止した。その後、ややあって。ガンQは、まるで何かに吸い込まれるように、黒い霧のようになってクライスたちの目の前から姿を消した。

 

『た、倒したのか?』

 

『いや・・・』

 

 アステルは、スターウイングの中で首を横に振る。

 

『どうやら、あっちが先に退いた。死んではいない。・・・また、現れる』

 

 クライスはその肉体を維持できなくなり、ナユタは全身から力が抜けるのを感じながら、変身を解除した。

 

第4話「逆境のバッターボックス」

奇獣 ガンQ登場

 

(2)

 

「超爆発」

 

 ・・・変身を解き、大きく疲弊してボロボロになったナユタ。ナユタほどではないまでも、アステルもダメージを負っていた。ふたりは、破壊された建物の瓦礫にもたれかかるように、並んで座っていた。

 

「アステル、超爆発って、何」

 

 アステルの呟きに、ナユタが息を切らしながら問う。アステルは、一瞬だけナユタに目を合わせると、すぐにまた目を逸らし、こう答えた。

 

「・・・シュライグは、モンスライザーという道具を使って、知性体の情動から怪獣を生み出す。そして怪獣は、暴れることによって闇のエネルギーを生み出し、それはモンスライザーに還元される」

 

「うん、それはわかってるけど」

 

「最後まで聞け。・・・シュライグの目的は、単に怪獣を暴れさせることでも、それによって人の命を奪ったり、街を壊すことでもない。モンスライザーに闇のエネルギーを集めること、それが奴の目的だ」

 

 ナユタは相槌を入れる気力もないが、飛びそうになる意識の中、アステルの話に耳を傾けた。

 

「奴の作る怪獣は、モンスライザーにエネルギーを還元するのと同時に、自らの中にもエネルギーを溜め込んでいくんだ。そのエネルギーが、怪獣の肉体の許容量を超えた時・・・超爆発は起きる」

 

「・・・そうすると、どうなるんだ?」

 

「・・・この星で言えば、少なくとも街ひとつは消し飛ばすレベルで、文字通りの"爆発"が起きる。怪獣は消滅し、貯蔵されていたエネルギーは、超爆発によって莫大な量へと増幅される。そして、モンスライザーによってそのエネルギーは吸収される。シュライグは、この超爆発を狙って怪獣を作っているんだろう」

 

「・・・それが起きそうなのか?」

 

「あぁ。・・・あの怪獣の姿が、大きく歪むのを見たよな?あれは、超爆発の前触れだ。・・・惑星クレスタでも、同じことが起きたからな」

 

 ナユタは絶句する。街ひとつを消し飛ばす大爆発ーーーもし、そんなことが起きてしまったら。

 

「でも、だったらなんで怪獣は姿を消したんだ?!」

 

「それはわからん。わからないが・・・もしまたあいつが現れて、俺たちが倒しきれずに超爆発が起これば、甚大な被害が出る。そして、シュライグの手に莫大なエネルギーが渡ることになる。・・・父さんが倒した"前の使用者"は、モンスライザーで得たエネルギーで自らを強化し、宇宙全土の支配を掲げて暴虐の限りを尽くした。シュライグが、奴と同じことをしようとしているのなら。・・・厄介なことになる」

 

「・・・ダメだ、絶対に、そんなの」

 

 ナユタはそこまで言うと、体力の限界が訪れたかーーー瓦礫を背に気を失ってしまった。アステルは咄嗟にナユタを揺さぶる。

 

「おい、ナユタ!ナユタ!」

 

 ナユタの脈拍を確認するアステル。・・・死んではいない。ひとまず安堵し、それから・・・次にまたあの怪獣が現れた時、どうするべきか。思案する。

 

(スターレイ・ストリームは吸収される。スターレイより威力が劣るウイングオーバードライブも、おそらくは通じないだろう。ボディへの打撃やレーザー攻撃では、決定打にならない。・・・ならば、)

 

 アレを使うしかない。クライスとスターウイングが秘める、あの力を。

 

(3)

 

「シュライグ。どうして、あそこでやめちゃったの?」

 

 ユウリは不機嫌そうに、傍のシュライグに向けて言った。リンカイシティ。例のごとく、シュライグとユウリはビルの屋上に侵入し、クライスとガンQの戦いを見ていた。

 

 ユウリが言っているのは、クライスを倒す直前まで追い詰めたガンQを、シュライグがモンスライザーに吸い込んで撤退させたことについてだ。シュライグはユウリの方を見もせず、モンスライザーを撫でながら言った。

 

「前に話しただろう。超爆発。その兆候が見られたからだ」

 

「爆発させちゃえばよかったじゃん」

 

「説明は面倒だ。そもそも、お前に理由を話す義理もない。とにかく、今ではないと判断した」

 

「・・・あぁ、残念。見たかったな、ウルトラマンが死ぬところ」

 

 ユウリはそう言うとポケットからタバコを取り出し、火を点けた。煙を燻らせながら、天を仰ぐ。

 

 シュライグはそんなユウリの様子を一瞥すると、くつくつと音を立てて笑った。

 

(4)

 

「ナユタ!」

 

「ん・・・」

 

 ナユタが目を覚ましたのは、ほしぐも園。現在はアステルが寝泊まりしている部屋の、ベッドの上だった。ベッド脇に置かれた椅子にはミサキが腰掛けており、部屋の隅っこではアステルが胡座をかいて座っている。ミサキは心配そうな面持ちでナユタに語りかけた。

 

「よかった・・・ナユタ、覚えてる?アステルくんがここまで運んでくれたんだよ。リンカイシティで仕事してる時に巨大生物が出て、避難してる時に転んじゃったんだって」

 

 ナユタはアステルの方を見て、アイコンタクトを受け取る。アステルが、"そういうこと"にして説明したのだろう。

 

「・・・あぁ、覚えてるよ。びっくりしたな。アステル、ありがとうな」

 

「重かったぞ」

 

 実際はスターウイングを動かして運んだので、アステルがナユタを背負っていた時間はそう長くはなかったのだが。ナユタは、自身が気を失う前のアステルとのやりとりについて思い出していた。

 

「あ、巨大生物はまたウルトラマンがやっつけてくれたって!」

 

 ミサキの発言に、ナユタは一瞬記憶が混濁する。少し考えて腑に落ちた。そうか、確かに怪獣は消えた。街のみんなからは、クライスが倒したように見えているのか。

 

「・・・ん、もう大丈夫そうだ。ミサキもありがとうな」

 

「痛いとこない?大丈夫?」

 

「うん、全然大丈夫!・・・あー、アステル」

 

 ナユタは、少しわざとらしい口ぶりでアステルに語りかけた。

 

「あの、さっきまでの仕事の件でさ、ちょっと話したいことが。・・・ミサキ、ごめん、依頼者さんのプライバシーに関わる話をするから、ちょっとだけ席を外してくれないか?」

 

「え?」

 

 ミサキは、ナユタの顔をまじまじと見つめる。そして、なにかを感じ取ったように小さく頷くと、椅子から立ち上がった。

 

「仕事もいいけど、無茶したらダメだからね。みんなもナユタのこと心配してるから。お話終わったら声かけてね」

 

「うん、わかった」

 

 ミサキはそう言い残し、アステルの部屋を後にした。

 

「・・・ナユタお前、芝居下手だな」

 

「うるせ」

 

 アステルがナユタのぎこちない様子についての感想を述べると、少しの沈黙があり、ややあってナユタが口火を切った。

 

「俺、どのくらい寝てた?」

 

「時計見ろ。日付は変わってない」

 

 ナユタは、勉強机の上に置かれたデジタル時計を見る。19時7分。怪獣と戦ったのは昼前だったから・・・

 

「8時間くらいは寝ちゃったのか」

 

「そうだな」

 

「あれから怪獣は?」

 

「気配は感じない。・・・次にいつまた出るかはわからないな」

 

 ナユタは自身の唇を噛む素振りを見せた。再び沈黙があり、今度はアステルがそれを破る。

 

「・・・あいつに光線技は通じない。あの眼を避けて撃てばわからないが、まぁ、そう都合良くは当たってくれないだろうな」

 

「そしたら、死ぬまでタコ殴りにするしかないのか」

 

「さっき、少しでも手応えがあったか?」

 

「・・・」

 

 ナユタは、ガンQとの肉弾戦を思い出す。ダメージが通っている様子はなかった。スターウイングのビーム攻撃も同様だ。

 

「どうすりゃいいんだよ・・・アステル、何か手はない?」

 

「ある」

 

 アステルは、ナユタに目を合わせて言い切った。

 

「ほんとか?!」

 

「あぁ。光線も肉弾戦もダメなら、切断だ。あの怪獣を斬ればいい」

 

「・・・斬る?」

 

 ナユタの復唱にアステルは頷き、そのまま言葉を続けた。

 

「スターウイングは、クライスの武器に変形することができる」

 

「え!」

 

 アステルの発言に、ナユタは驚いて目を見開く。

 

「そんなことできたの?」

 

「あぁ。剣になる」

 

「剣!それだ!アステル!」

 

「・・・お前、簡単に言うがな」

 

 アステルは、一応訊いておくぞ、と前置きをした上でナユタに訊ねた。

 

「ナユタお前、剣なんか使ったことあるのか?」

 

「・・・ないけど」

 

 わかってはいたが。アステルは目を閉じて頷き、ゆっくりと立ち上がった。

 

「もう充分寝たな?・・・修行だ。ナユタ、お前は次にあの怪獣が出るまでに、剣を扱えるようになれ」

 

「剣・・・」

 

 ナユタは拳を握りしめ、ごくり、と生唾を飲み込んだ。

 

(5)

 

「えーっと・・・あった!」

 

 ナユタとアステルは、ほしぐも園の庭にある蔵にいた。外はもう暗い。蔵の中に明かりはなく、ナユタは懐中電灯を片手にそれを探し当てた。

 

「ヒデ兄、お借りします」

 

「誰だ、ヒデ兄って」

 

「これの持ち主だよ。剣道やってたからさ、ヒデ兄は」

 

 ナユタが探していたのは、竹刀だった。それは、かつてほしぐも園でナユタと共に生活をしていたヒデオが置いていったものだ。ちょうど2本あったので、ナユタは片方をアステルに手渡した。

 

「はい」

 

「・・・実物には程遠いが、まぁ、無いよりはいいか」

 

 ナユタとアステルはそのまま庭に出て、竹刀を片手に向かい合う。

 

「アステルは剣が使えるの?」

 

「光の戦士を舐めるな」

 

 アステルはそう言うと、ナユタから一歩距離を取りーーー華麗な剣舞を見せた。その剣捌きに、ナユタは思わず声を上げる。

 

「おー、すげぇな」

 

「長年の修行の賜物だ。すぐにここまでやれとは言わないが・・・少なくとも、振り回せばいいというものじゃない」

 

「・・・アステルはほんとにすごいな。格闘術も、剣術も」

 

 ナユタは伏し目がちに、苦笑いするようにそうこぼした。そして、こう続けた。

 

「ほんとに、アステルがクライスになれたらそれが一番いいよな」

 

「・・・お前、今それ言ってなんか意味あるのか?」

 

 アステルは思わず語気を強くする。ナユタの様子を見て、らしくない、と感じた。ナユタは慌てたように顔を上げ、笑顔を作る。

 

「悪い悪い。そうだよな、俺がやんなきゃ」

 

 よっしゃやるぞー、と声を張り上げるナユタ。アステルは、ナユタの様子を伺う。竹刀を握る手には、明らかに過剰な力が入っている。表情は笑っているが・・・いつもの笑顔ではない。アステルは、その表情に見覚えがあった。

 

(・・・あの時か)

 

 それは柴田からの依頼で、迷子犬のミルクを探した日の記憶だった。柴田宅にて、隣に座っていたナユタのことを思い出す。

 

"ミルクのことは家族同然に思ってるの。・・・だから、何卒お願いします。星島さん"

 

"・・・はい!お役に立てるよう、力を尽くします。任せてください!"

 

(こいつは、お人好しだ。それも、度が過ぎている)

 

 アステルはナユタのこれまでを思い返した。どうやらこいつは、人の役に立つことにこだわって生きている。それは裏を返せば、人の役に立てないことを恐れているということだ。ナユタは確かに度を越したお人好しではあるが、決してなにも考えていない能天気な男ではない。アステルはそう理解していた。

 

 ・・・考えてみれば、ナユタは怪獣も侵略宇宙人もいない星で、戦いとは無縁の生活を送ってきたのだ。そのナユタの両肩に、今は、多くの人の命がかかっている。

 

 自分には関係ないと目を背け、クライスターを手放してしまうことだってできたはずだ。いや、

 

(それができないから、こいつはこうなのか)

 

 だったら、今ナユタにかけるべき優しい言葉などない。戦いへの恐れは、鍛錬を積み重ねることでしか乗り越えられないのだから。少なくとも光の戦士として育てられたアステルにとっては、恐れとはそういうものだった。

 

「・・・そうだ。今はお前がクライスだ。勝つぞ、ナユタ」

 

 ナユタは貼り付けた笑顔のまま、おう、と返事をした。

 

(6)

 

「ねえ・・・ミサキ姉」

 

 時刻は22時前。ほしぐも園のリビングにて、サヤとレン、タケルがくつろいでいる。今日は宿直のミサキは、天満園長に提出するための日誌を書いていた。サヤは、窓の外のナユタとアステルを見ながらミサキに話しかける。

 

「あのふたりはなにやってるの」

 

「なんか、今やってる仕事で必要なことらしいよ。依頼者さんのプライバシーの関係で、詳しくは話せないって」

 

「竹刀振り回す仕事ってなに?大丈夫なの、それ」

 

 サヤは怪訝な表情をする。タケルも本を読む手を止め、会話に混ざってきた。

 

「格闘家にでもなるのかと思ってたけど、今度は剣道?」

 

「いやあれ剣道じゃないでしょ、どう見ても」

 

「・・・スポーツチャンバラの試合の助っ人の仕事?とか?」

 

「草野球とかならわかるけどさ」

 

「久しぶりにナユタ兄と野球してーなー」

 

 野球と聞いて、テレビでスポーツニュースを見ていた野球少年・・・レンも会話に入ってくる。

 

「レンは、ナユタを見て野球始めたんだもんね」

 

「おう、だからナユタ兄の無念は俺が晴らす!絶対甲子園行ってやる」

 

「レン、甲子園はいいけどさ、テレビそろそろ代わってくんない?ドラマ始まるから」

 

「どうせ録画してんだからいいだろ」

 

 サヤとレンはまた口論を始め、ミサキは、自分とナユタの学生時代のことを思い出して懐かしくなった。

 

(同じようなやりとりしてたなぁ。・・・こんなに激しくはなかったけど)

 

 ミサキは、ナユタから見て年齢が1つ上だ。サヤとレンの歳の差と、ちょうど一緒である。ミサキが10歳の頃、ナユタはほしぐも園に来た。精神的なショックから、言葉以外の記憶の大部分を失っていたナユタと初めて会った時、ミサキは、幼心ながらに彼のことを可哀想に思った。必要最低限のことしか話さず、ろくに食事も摂らない虚ろな目をした少年を、少しでも笑わせてあげたいと思った。

 

 ミサキは、ナユタに積極的に話しかけた。今日学校であったこと、面白いテレビのこと、好きな本のこと、欲しいもののこと。初めのうちは無感情にも見えたナユタだったが、少しずつ、少しずつ感情を表に出すようになり、現在の明るく人懐っこい人格を形成していった。

 

 ほしぐも園に来てから1年が経つ頃、天満園長と連れ立ってみんなで野球の試合を観戦に行った日の帰り道。ナユタは、俺もこれがやりたい、と興奮気味に話した。ミサキは嬉しかった。あの無表情な男の子が、夢中になれるものを見つけたのだ。・・・そこからは夢中になりすぎて、今のレンに負けないくらい、野球一直線になってしまったのだが。

 

 ナユタだけじゃない。ほしぐも園に来る子供たちは、少なからず心に傷を負っている。産みの親と離れなくてはならないような出来事が、その身に起きた子供たちなのだ。・・・ミサキ自身が、そうであったように。だからミサキは、そんな子たちがまた心から笑顔になれるように。幼い日々のナユタに対して抱いた感情が、ほしぐも園の保育士という道を志したミサキの出発点だった。

 

「・・・差し入れでもしてやるかぁ」

 

 ミサキは冷蔵庫からスポーツドリンクを2本取り出すと、庭で竹刀を振り回している男ふたりに向けて歩いていった。

 

(7)

 

「はぁっ!」

 

 ナユタは、アステルに教わった動きを懸命に実践する。ぎこちないその太刀筋を、アステルが片手の竹刀で次々といなしてゆく。竹刀と竹刀がぶつかり合う音が、夜の庭に響いていた。

 

「本気で打ち込んでこい!遠慮するな」

 

「遠慮はずっとしてねえ!」

 

 アステルはナユタが力づくで振り抜いた一撃を竹刀で受け止めると、そのまま押し返した。ナユタはバランスを崩し、尻餅をつく。

 

「力入りすぎだ」

 

「本気で来いって言ったり、どっちだよ」

 

「本気で打ち込む。余計な力を抜く。このふたつは両立できるもんだ」

 

 ナユタは深く息を吐いて、額の汗を拭う。もう10月だ、夜は肌寒くなってきたが・・・こうも動きっぱなしだと、全身汗だくだ。

 

「力を抜く、力を抜く」

 

「力を抜くことを考えてるうちは力抜けねーぞ」

 

「・・・はい、お師匠」

 

「その呼び方やめろ」

 

 アステルは教え方に迷っていた。やはりナユタは基礎的な身体能力に優れている。動きの飲み込みは早いのだが・・・全身に力が入り過ぎている。プレッシャーが、ナユタの身体能力であれば本来できるはずの動きをできなくしているのだ。アステルはそう理解していたが、今ナユタに伝えた通り、原因が精神面にある以上、力を抜けと言って抜けるものでもない。とはいえ、指摘しないわけにもいかない。たとえその指摘が、また新たなプレッシャーになってしまうとしても。

 

「よし、もう一回!」

 

 ナユタがそう言って立ち上がった時、ミサキの声がした。

 

「お疲れ様〜」

 

 ミサキは両手に一本ずつスポーツドリンクを持っていた。それぞれナユタとアステルに手渡す。

 

「おー、ありがとう!助かる!」

 

 ナユタはそう言って笑ってみせた。そのままペットボトルのキャップを取り、ごくごくと喉を鳴らしてスポーツドリンクを飲んだ。

 

「美味ぇー!生き返る!」

 

「アステルくんも、どうぞ」

 

「あぁ、いただきます」

 

 アステルもスポーツドリンクに口をつける。よく冷えていて美味い。アステルは、地球の飲食物がすっかり気に入っていた。

 

「調子どう?」

 

 ミサキがナユタに訊ねる。ナユタは口を拭いながら、ミサキに向けて親指をグッと立てた。

 

「いい感じだよ」

 

「仕上がってきてる?」

 

「そりゃーもう。仕上がりすぎてるくらいだ」

 

 ナユタは笑ってそう言うと、竹刀とスポーツドリンクを足元に置いた。

 

「アステル、ちょっと休憩いい?トイレ行きたい」

 

「行ってこい」

 

「サンキュー!」

 

 ナユタは小走りでほしぐも園の中に戻ってゆく。残されたアステルとミサキはその背中を見送った。ふたりの間に沈黙が流れる。冷たい風が吹いて、庭の木々をざわざわと揺らした。

 

「・・・ねえ、アステルくん。ふたりがなんの練習(?)してるか、わかんないけどさ」

 

 ミサキが口を開く。

 

「もしかして・・・ナユタ、あんまり上手くいってない?これ」

 

 ミサキは、ナユタが置いていった竹刀を指差して言った。アステルは、ミサキの突然の質問の意図を考えなくてはならなかった。

 

「ん?あぁ、うん、そうだな・・・あぁは言ってるが、あまり仕上がってはいないな。正直煮詰まってる」

 

「だよね?昔からナユタはね、自信がない時は、いつもこんな感じだったから」

 

「こんな感じ?」

 

 アステルが聞き返すと、ミサキは頷いて、足元の竹刀を拾った。

 

「なんて言うのかな・・・任せろ、とか、大丈夫、とか、さっきみたいに、やたら前向きなこと言ってみたり。自分に言い聞かせてる、みたいな感じ」

 

「あぁ・・・」

 

 アステルは納得した。確かにそうだ。ミサキはそのまま言葉を続ける。

 

「ああ見えてね、プレッシャーに弱かったりするんだ、ナユタ。誰かに期待されたりとか、大事な場面とか、そういう時になると、全部自分がやんなきゃーってなっちゃうから。・・・野球なんかもそうだったよ」

 

「・・・やっぱりあいつ野球やってたのか」

 

「あれ、知らなかった?」

 

 ミサキは意外そうな顔をする。一方、アステルはまた納得した。地球の文化に馴染むために持っておくべき知識、としてナユタが作ったメモの中に、やたら大きく"野球"の2文字があった。アステルは素直に野球の知識を仕入れたのだが、その後、果たして本当にこれは必要だったのか疑問に思ったものだ。

 

「小学生の頃から、高校までずっとね。上手かったんだよ。でも、いつも大事な時に打てなかった」

 

「大事な時?」

 

「大会とかね。また、そんな時に限って、2アウト満塁、3点ビハインドみたいな状況でナユタに打順回ってきちゃうの。そういう星のもとに生まれてるのかもね」

 

 ミサキは、竹刀で庭の芝とつつくようにしながら話を続ける。

 

「高3の夏の大会もね、そうだった。前の日からずっとあの調子だったよ。相手がすごい強豪校だったしね、自信なかったんだと思う。・・・その試合は負けちゃってさ、帰ってきてからずーっと、俺のせいだ、俺のせいだって。・・・なんの話だっけ?あ、そうそう、さっきからね、ナユタが自信ない時の顔してるから、大丈夫かなーって」

 

「・・・そういう時のあいつに、なにか俺にできることはあるか?」

 

 ミサキは驚いた。アステルが、とても真っ直ぐにミサキの目を見てそう言ったからだ。その蒼い瞳の奥にあるアステルの心は、おそらく本気でナユタのことを案じているのだろう。ミサキにはそれがわかった。

 

「・・・うーん、今のふたりの状況がよくわからないから、的外れになっちゃうかもだけど。もし私がね、あの夏の大会の時、ナユタのチームメイトだったら。こんな風に伝えたかったかなぁ」

 

 アステルは、その後に続くミサキの言葉に耳を傾け、聴いた。

 

(8)

 

 翌日のことだった。ガンQは再び姿を現した。時刻、出現場所、ともに前日とほとんど同じ。まるで待ち合わせでもしていたかのように。変身したクライスと、アステルと同化したスターウイングがリンカイシティ工業地帯に現れる。目の前に降り立ったクライスを全身の眼で見つめ、まるで嘲るかのように、ガンQは身を震わせてみせた。それに連動するかの如くーーーガンQの全身は脈動し、これで二度目となる兆候を示す。超爆発の兆候だ。

 

『アステル、今更なんだけど・・・あいつの中にエネルギー溜まってるんだよな?斬って大丈夫なの?』

 

『光の力で倒せば問題ない』

 

『そっか』

 

 ガンQを眼前に見据え、戦いの構えをするクライス。ここまでは昨日と同じだ。ーーーここからは、昨日と違う。

 

『よっし・・・やるか、アステル』

 

『・・・一夜漬けもいいところだが、最低限、剣術にはなっただろう』

 

『任せろって!大丈夫、俺があいつをーーー』

 

『ナユタ』

 

 アステルはナユタの言葉を遮る。クライスに変身している今、ナユタの表情はわからない。だが、こんな顔をしているんだろうという予想はできた。きっと、力の入ったぎこちない笑顔をしているのだ。

 

『・・・お前ひとりで戦うわけじゃない。そもそも、お前ひとりの力で勝てると思うな。とんだ思い上がりだ』

 

『・・・』

 

 ナユタは、その言葉に耳を傾ける。

 

『俺たちはチームだ。自分を信じられないなら、せめて俺を信じろ』

 

『・・・うん、』

 

 クライスはそう言うと、無意識に固く、強く握っていた拳を解いた。

 

 

『ありがとうな、アステル』

 

 

 ーーーそして、スターウイングと同化したアステルは唱える。それは、惑星クライスの言葉。スターウイングに秘められた力を引き出すための詠唱だ。言霊はやがて光となり、光はやがて炎となり、ーーースターウイングを包み、紅く染め上げてゆく。

 

『ーーー現れろ、ウイングソード!』

 

 詠唱を終えたアステルは、叫ぶ。炎に包まれたスターウイングは、翼を持つ飛行体の姿から、灼銀の刃を持つ紅の大剣・ウイングソードへと変わる!

 

『構えろ、ナユタ!お前の剣になってやる!』

 

 ウイングソードの柄をその手に持つと、クライスもまた、その全身に炎を纏う。胸部から肩にかけて覆う黄金のプロテクターは、まるで鎧のように右腕全体に延長し、その色を燃え盛るような紅に変えた。

 

「デヤァッ!」

 

 ーーークライスがウイングソードを勢いよく振り、全身を包む炎を払った時。紅きクライス・・・"ソードタイプ"は、ガンQの眼前にその姿を現した。

 

 スターウイングが、クライスの武器としてその力を与える時。クライスもまた、武器を操るために適した姿へと変わるのだ。ソードタイプは、大剣を軽々と振り回す剛力を備える。

 

 そしてクライスは、アステルから教わったように。剣を使って戦うための構えを取った。

 

『勝つぞ、アステル!』

 

『あぁ!』

 

(9)

 

「あれは・・・」

 

 シュライグは、クライスがソードタイプに変化した様を見て眉を顰めた。あれは、かつて惑星クレスタでの戦いで、クライスが見せた姿。剣を操り、数多くの怪獣と、・・・一度はシュライグを斬り、深い傷を負わせた忌まわしき姿だ。シュライグは思わず、下腹部の傷跡を手で押さえる。

 

「剣?・・・そんなもん出したから何?やっちゃえ、ガンQ!」

 

 ユウリが歓声を飛ばす。シュライグは、渋い表情をしたまま戦いの様子を静観する。

 

 ガンQは、人の笑い声にも似た咆哮を上げると、その巨大な単眼から紫色の光線を放った。光線がクライスを襲う。

 

「ハァッ!」

 

 ウイングソードの刃が閃く。クライスが光線を打ち返すが如くウイングソードを振り払うと、刀身から発せられた炎がガンQの光線を打ち消した。

 

『行け、ナユタ!』

 

 クライスはそのまま勢いよく大地を蹴り、ガンQに急接近。右手の剣を、ガンQに勢いよく振り下ろした。その剣閃は炎を伴い、ガンQの代表を焦がすような一筋の傷を与えた。

 

 のけぞったガンQは、それでも態勢を素早く立て直し、触手のような右腕をクライスに叩きつけようと振り回す。

 

(止める!)

 

 クライスにはその"太刀筋"が見えていた。素早く防御姿勢を取り、両手に持ち替えたウイングソードでガンQの攻撃を受け止める。一瞬の静止ーーー直後、クライスは静から動へ。今度は横一線にガンQを斬りつける。

 

(ナユタの太刀筋は荒いが、動けている・・・と思う)

 

 アステルの意識はウイングソードの中にあり、感覚もまた、剣に変わったスターウイングのそれと共有している。自分の身体を振り回されているようなものであり、これは慣れるまでに相当の時間を要した。父と比べてナユタの動きは荒く、久しぶりなのも手伝ってか、少し酔いそうだった。

 

 視界はウイングソードに寄せるとわけがわからなくなるので、光の力でリンクしているクライスのものを見ている。アステルは今、ナユタと同じ景色を見ているのだ。ゆえに、クライスの動きを客観視することはできないが・・・

 

 ウイングソードを握るクライスの手。少なくとも、不必要な力は入っていないように思った。

 

『そこだ!』

 

 クライスは素早くウイングソードを振り上げる。その斬撃はガンQの左の触手を切断し、ガンQは苦悶の叫びを上げる。

 

 苦悶はクライスへの明確な憎悪へと転じ、ガンQは暴れ狂う。その猛攻のひとつひとつをクライスはいなし、戦いのリズムを自分のものにしてゆく。

 

 クライスのライフゲージが点滅を始めた。活動限界が近づいている。

 

『ナユタ、ソードタイプはエネルギーの消耗が激しい。そろそろ決めるぞ!』

 

『わかった!』

 

 ナユタは、アステルからソードタイプの必殺攻撃についてレクチャーを受けていた。光の力に関する話だったので、竹刀で練習をした時は今ひとつピンと来なかったが・・・今こうして変身し、クライスとして戦っているうちに。何かに導かれているように、その必殺の斬撃のビジョンが頭の中に浮かんでいた。

 

「ハァァァッ・・・!」

 

 疲弊したガンQの隙を見て、両手で持ったウイングソードに光の力を集めるクライス。腰を低く落とし、構える。その刃に集約された光は、刀身そのものを紅く染め上げるような熱の力を生み出してゆく。

 

 危険を察知したか、ガンQはクライスから距離を取る。そして、クライスに向けて再び怪光線を放った。

 

『今だ!』

 

『あぁ!』

 

 クライスは左前方向へ跳び、ガンQの光線を回避する。そしてそのまま、両手で持ったウイングソードを渾身の力で振り抜いた。それはまるで、かつてバッターボックスに立ったナユタが、迫る白球を捉えるべくバットを振り抜いたように。

 

"もし私がね、あの夏の大会の時、ナユタのチームメイトだったら。こんな風に伝えたかったかなぁ。ひとりでするスポーツじゃないんだよー、誰のせいとかないんだよって。だから信じてほしい、って"

 

『バーンレイ・スラッシュ!』

 

 ウイングソードの刀身は激しい炎を放ち、より巨大な刃へと進化する。それは、闇を祓う聖なる光の炎ーーーそのエネルギーが集まり、研ぎ澄まされた刃だ。刃はガンQの身体を横一線に斬り裂き、致命の一撃を与える。切断された部位は聖なる炎に焦がされ、やがてそこからは光の粒子が漏れ出して、真っ二つになったガンQは消滅していった。

 

『・・・か、勝った?』

 

『あぁ。俺たちの勝ちだ』

 

『よかった・・・』

 

 クライスは、安堵した様子で腕を降ろす。クライスとウイングソードは光に包まれ、それぞれナユタとアステルの姿に戻っていった。

 

(10)

 

「ねえ!ガンQやられちゃったじゃん。やっぱりあの時爆発させればよかったんだよ」

 

「大局に影響はない」

 

「ていうかさ、昨日みたいに逃げればよかったじゃん!」

 

「あの方法は時間がかかるんだ。クライスが動ける時にやっても、そもそもうまくいかん」

 

 詰め寄るユウリに背を向けて、シュライグは言う。

 

「そもそも、お前の怪獣じゃないだろう、ガンQは」

 

「そういう問題じゃないし。ウルトラマンが死ねば、また私の怪獣が産まれた時、暴れやすくなるでしょ?」

 

 シュライグは、ユウリの心の中を読む。そして、怒るユウリに背を向けたままほくそ笑んだ。

 

ーーーいいぞ、藍沢ユウリ。焦らせ、育てろ、その情動を。

 

(11)

 

「ただいまー」

 

「おかえり!・・・って、アステルくん?!」

 

 ナユタとアステルは、ほしぐも園に帰ってきた。・・・アステルは、ナユタに背負われた状態で。出迎えたミサキが驚く。

 

「どうしたの?大丈夫、アステルくん」

 

「いやさ、アステル徹夜したまま仕事来てくれたから・・・さっき終わって、そのまま外で寝ちゃってさ」

 

 アステルはすーすーと寝息を立てる。昨日のガンQとの戦いから、アステルは寝ていなかった。そのままナユタに修行をつけ、ガンQと再戦し、久しぶりとなるウイングソードの力を行使した。とっくに体力は限界だったのである。

 

「そっか。仕事は大丈夫だったの?」

 

「え?」

 

「ほら、練習してたじゃん。チャンバラ」

 

「あー・・・」

 

 ナユタは、ミサキと会話しながらアステルの部屋に入る。アステルをベッドに下ろし、毛布を掛ける。ナユタは、そのままま部屋の隅に腰を下ろした。

 

「うん、なんとかうまくいったよ。アステルのおかげだ」

 

「そう。よかった」

 

 ミサキは、それを聞くと安堵したように微笑む。アステルくんは、ナユタに何を伝えたんだろうか。ーーーそこはきっと、私では入り込めない世界だから。ナユタがあんな顔をしている時に、引き戻してくれる誰かが、ナユタのそばにいてほしい。

 

「あ、そういえばまた巨大生物出たんでしょ?大丈夫だった?」

 

 ミサキはナユタにそう訊ねたが、・・・ナユタもまた、部屋の隅で寝息を立て始めた。

 

「・・・よっぽど疲れたんだねぇ。お疲れ様、ふたりとも」

 

 ミサキは座ったまま寝ているナユタにも毛布を掛けてやると、眠るふたりを置いて、部屋を後にした。

 

続く。




次回予告
ほしぐも園の子供たちを連れて、遊園地へ来たアステルとミサキ。そこに怪獣ガギが出現。バリヤーにより遊園地を閉ざす!

「ナユタ兄ちゃんは、助けに来てくれる?」

分断されたナユタとアステル。バリヤーを壊し、子供たちを助けることができるのか?

次回「ロスト・アンド・ファウンド」
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