たった1つの笑顔   作:粗茶Returnees

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 ウタの誕生日近づいてるらしいですね。特に何も考えてないです。思いつかんので。


シャボンディ諸島②

 

「そうそうベルナート。海軍本部がもうじき引っ越しするわよ」

 

「引っ越し? ……新世界にですか」

 

「ええ。新世界にあるG1支部と入れ替わるつもりのようね。新元帥らしい姿勢の表し方だわ」

 

「センゴク前元帥は、世界の中心に本部があることを重んじてた。それを変えるとなると、次世代の海軍は苛烈さを増しますね」

 

「四皇がいる新世界に構える。本気でこの大海賊時代を終わらせるつもりのようね」

 

 海賊王ロジャーの処刑により、時代を終わらせるつもりだったところを大海賊時代に変えられた。

 その子どもエースの処刑と世界最強の海賊白ひげとの戦争により、時代を衰退させるつもりが新時代に勢いを加速させられた。

 これらの事例があることが、新体制の海軍の在り方に影響を及ぼしているのかもしれない。真相は何にせよ、海軍は大きく変わる。世界徴兵による大戦力の補強も狙っている。

 すべての準備を整えたら、海軍は本格的に動き出すだろう。

 

「むしろまだ移動してなかったのか。……それよりコーティングの間どこに滞在しようか……」

 

「うちの店を使うといいわ。無法地帯にあるけれど、かえってその方がいざという時に戦いやすいでしょ?」

 

「それは助かりますけど、いいんですか?」

 

「ええ。この島の人攫いくらいなら相手にならないし、後日に海軍がわざわざ来ることもないわ」

 

「ではお言葉に甘えて」

 

「船は置いといて。職人に連絡したらデュバルちゃんたちに移動させてもらうから」

 

「ありがとうデュバル。助かるよ」

 

「いいってことよ! お礼に歌姫の歌をって言いたいところだが、そういうわけにもいかなさそうだな」

 

「それなら音貝(トーンダイアル)1つあげる。私の歌が録音されてて、まだ余ってるから」

 

「いいんですか!? ありがてぇぬらぁぁ!!」

 

「ケイミーたちとシャッキーさんの分もあると思う」

 

「いいのウタちん!?」

 

「うん! ルフィの友だちなんでしょ? ならあげる」

 

「ムギと知り合いなのか?」

 

「そうだよ。また機会があれば教えるね」

 

 話が固まり、ベルナートが船に飛び降りて音貝を3個取ってすぐさままた戻る。その身軽さと素早さに、デュバルやハチたちは目を丸くしていた。

 

「はいダイアル」

 

「あ、ああ。ありがとう」

 

「ベルナート。私の部屋入った?」

 

「ダイアルがそこにあるんだから入るしかないだろ……」

 

「そうだけど……むー」

 

 わかっていても感情というものはままならない。言葉では表せないものに、ウタは頬を膨らませることしかできなかった。

 2人のやり取りにくすくすと笑いつつ、シャッキーはボンチャリを取りに行く。ベルナートもボンチャリ屋へレンタルしに行った。借りた台数は2台だ。

 

「シャボン玉に取り付けるんだ? おもしろーい」

 

「オレが漕ぐから後ろに乗っといて」

 

「うん!」

 

「ゴードンさんの方も準備できました?」

 

「ああ。完了した」

 

「じゃあ行きましょうか。私も連絡のために一度店に戻るから、案内は任せてちょうだい」

 

 シャッキーが先頭を行き、その後ろをゴードン、一番後ろはベルナートとウタだ。ハチたちと手を振って別れ、見えなくなったところでウタは後ろから手を回し、ベルナートの背中にくっつく。

 

「運転荒かった?」

 

「ううん。快適」

 

「ならよかった」

 

「ベルナートの背中は大っきいね」

 

「そりゃあウタよりはな」

 

「そういうことじゃなくて」

 

「ええ……」

 

 大きいなとは思うが、それもまた違うのかなとも同時に思った。ベルナートの性格を考えると、背負うものに比べれば小さなものかもしれない。過去を捨てられる人ではないから、「大きい」というよりも「強い」か。

 相棒(パートナー)として、隣に立てているだろうか。力になれているだろうか。

 直接聞いても、優しい言葉が返ってくることは目に見えている。それでいてそれが本心なのも、予想の段階でわかる。ベルナートはそういう人間だ。

 

(難しいや)

 

 

 シャッキーの店は13番グローブにある。根の上にあるその店には、段数の多い階段を登るしかない。ボンチャリを階段の近くに起き、一行は階段で店へ。

 

「ここが私の店よ。中にあるものは好きに使っていいから、先にウタちゃんに部屋を案内するわね」

 

「看板にぼったくりBARって書いてあったんだけど……」

 

「のこのこ来た客に法外な代金ふっかけて払わせてんだよ」

 

「なにそれこわい」

 

「ふふっ、相手が悪党な時だけよ。そもそもこんな所にある店になんて、その手の人間しか来ないもの。私も気兼ねなくぼったくれるってわけ」

 

 看板にもしっかりとぼったくるつもり満々だと表明されている。それでも来る客が悪いとはシャッキーの談である。

 

「シャッキーさん、買い出しが必要になったら行ってくる。泊めさせてもらうんだしな」

 

「そう? ならメモを渡すからちょっと待ってて」

 

「早速あるんだ……」

 

 シャッキーはウタに使わせる部屋を先に案内し、それが終わると冷蔵庫の中身を確認。買ってきてほしいものをリストアップすると、それをベルナートに渡した。

 

「……了解。それじゃあ買い出し行ってきます」

 

「ベルナート私も行くー!」

 

「ウタちゃんは留守番ね」

 

「ええー。留守番は退屈だから好きじゃないんだけどな」

 

「はっちゃんたちにお弁当を届けたいのよ。料理を手伝ってくれないかしら?」

 

「……そういうことなら」

 

 少し言葉を交した程度の仲なのに、ハチたちは船の管理もしてくれる。そんな心優しい人たちに何も返さないのは忍びない。音貝こそ渡したものの、もう少しお返しをしてもいいだろう。

 ウタはベルナートに手を振って見送り、シャッキーと一緒に台所へ。

 シャッキーがまな板や包丁、食材を取り出している間に手を洗う。

 

「ウタちゃん彼のことで悩んでる?」

 

「え!? なんで……」

 

「うふふ、女の勘よ」 

 

 聞かないほうがいいだろうと判断したゴードンは、奥の部屋へと引っ込んだ。これで話はこの場にいるシャッキーとウタだけが知るものとなる。

 シャッキーも手を洗ってから調理を始めていくと、図星をつかれて固まっていたウタが復帰した。

 

「わからなくて……どうしたらいいか」

 

「どうって?」

 

「ベルナートは隣にいてくれるって言ってくれてて、いつも助けてくれるんだけど……。私は……何かベルナートにできてるかなって」

 

「そういうこと。彼の力になりたいのね?」

 

「うん。だってベルナートは私の相棒(パートナー)だから。それでいろいろ考えてるけど、わからなくなっちゃって……距離感とかも全部」

 

「なら簡単ね。考えるのをやめて、心で決めたらいいの」

 

「心?」

 

「そう。自分がどうしたいのか、どう在りたいのか。難しく考えなくていいのよ。やりたいことをやる。それが彼の力にもなるから」

 

「……?」

 

「彼は誰でも船に乗せるような人じゃない。その彼がウタちゃんを乗せてツアーに手を貸してるのはなぜ?」

 

「…………ぁ!」

 

 その答えをウタはもう知っている。ベルナートはすでに語っている。

 ウタが自分の好きな音楽の道を、純粋に真っ直ぐと突き進むからだ。愛してやまない音楽と向き合い、歌い、客と一緒に楽しむ。"新時代"という夢に向かって邁進する。

 そんなウタだから、瞳を輝かせて歩み続けるウタだからベルナートは協力するのだ。

 

「お礼がしたいならそれはいいと思うけれど、特別なことをする必要も、ウタちゃんが変わる必要もない」

 

「私が、私の夢を追いかける……!」

 

「ええ。それが彼が喜ぶあなたの姿ね。覚えておいて、直接何かをすることだけが、人を支えることではないってことを。自分の気持ちに素直になって、突き進むといいわ」

 

「……そうだよね。ありがとうシャッキーさん! 頭と胸がスッキリした!」

 

「ふふっいいのよ。ダイアルのお礼なんだから」

 

 

 

 シャッキーの店に続く階段を降りきって、メモをポケットに入れる。ベルナートは刀を引き抜いて、周囲からぞろぞろと姿を現す集団にため息をついた。

 

「お前ら人攫いか。なら狙いはウタだろ」

 

「そうだ。七武海と一緒にいられちゃあ勝ち目がなかったが、お前1人なら話は別だ」

 

「数で押させてもらうぜ」

 

「歌姫ウタは10億。テメェも捕らえられりゃあ最低5億」

 

「たった2人で15億! こんな大金逃す手はねぇ!」

 

「商売根性見せるのはいいけど、一応先に言っとくぞ。手を引け」

 

 何人来られようと、実力差があるのだから問題ない。無駄な戦闘を避けられるなら避けておきたい。

 しかしベルナートのその気遣いは通じなかった。人攫いたちはそれを拒み、各々の得物を構える。

 

「はぁ。なら、二度とウタを狙わないように教えこまないとな」

 

「こっちは100人いるんだぜ」

「雪月花」

「どわぁぁぁ!?」

 

「…………は?」

 

 ベルナートの左側に展開していた右翼チームが、ただの一撃で吹き飛ばされた。ただの一撃でだ。ベルナートが刀をそっちに振り抜いただけで、30人の右翼チームが全員弾けとんだ。

 しかもその飛距離は遠い。この13番グローブから完全に追い出されている。

 

「安心しろ。誰1人死んじゃいねぇから。何人かは病院に運んだほうがいいかもな」

 

「ば、ばけもの……」

 

「ウタを狙うんだから、こっちも()()()で戦うさ。来るか? 残りの70人」

 

「舐めんじゃねぇ!」

 

「やれやれ」

 

 銃が構えられた時には、ベルナートはその場から姿を消していた。

 どこに消えたのだと探す左翼集団の中で、ベルナートも一緒にきょろきょろする。それが気づかれるのも、そう遅くはなかった。

 

「いたー!!」

「うぉぉ!? いつの間に!?」

 

「お前ら遅いよ。月時雨」

 

 刀についた()()()を振り払うと、斬られたことを自覚した左翼チームが次々に倒れていく。

 僅か2分も経たぬうちに、集まった人攫いチームの数は半数を切った。

 絶句している残りの人数の中から、リーダー格を見つけ出すとその男を峰打ちで殴る。

 

「がっ!」

 

「リーダー!」

 

「全員斬ってもいいんだけど、そうすると後処理が面倒なんだよ。残ってるお前らでそこの奴ら運び出して撤退しろ。二度とウタに近寄らないなら、残りは見逃してやるから」

 

 戦闘にもなっていないこれを、ベルナートは早く終わらせたかった。シャッキーのメモの裏面には、気にせず戦えと書かれていたがそういうわけにもいかない。

 騒がしくなるとウタも気づくだろう。最近何やら気にしている今のウタなら、余計なことを考えて背負い込もうとするかもしれない。ベルナートとしては、それを何よりも避けたかった。

 だからここでは速攻で終わらせたい。

 

「極力人殺しはしたくないけど、お前らが懲りないならこっちもそうするしかなくなる」

 

「くそっ……」

 

「あ、言い方が甘かったか? じゃあ改めて。死にたくなかったら失せろ。理解が足りないなら1人1本ずつ腕貰うぞ」

 

「いぎっ! わ、わかった約束する! 二度と歌姫は狙わねぇ!」

 

 脅しではなく本当にそうするつもりだったベルナートの気迫に、人攫いたちは顔を青ざめて降参した。残ったメンバーたちは負傷者に手を貸し、最初に飛ばされた右翼チームの方へと撤退していく。

 それを最後まで見届けてから、ベルナートは次の目的地へと歩を進めた。

 

「あとは海軍か。あっちは……オレ狙いだよな」

 

 

 

 

 

 全海兵を集め、パシフィスタも出動させている。海軍の目指す先はベルナートのいる13番グローブだったが、ベルナートが移動したことで海軍側も対応せざるを得ない。

 

「チッ。やっぱ早く決着がついたな」

 

「天喰いの勝利だとしたら……実力は相当の……」

 

「間違いなく天喰いが勝ってる。早く終わるのも当然と言えば当然か。……聞いた話じゃあ本来の懸賞金は倍以上。四皇の幹部レベルだ」

 

「……ぇ……!」

 

「そんな男相手に我々だけで……」

 

「奴が天竜人との因縁さえ無ければ放置できたんだがな。厄介な野郎だぜ」

 

「天竜人と言えば、歌姫ウタはどうしますか?」

 

「そっちは確実に放置だ。お前ら、天喰いを本気で怒らせたいのか?」

 

「い、いえ……」

 

 ベルナートの懸賞金は高いが、それに見合うような悪名は誰も聞いたことがない。揉み消された事件なのだからそれもそのはずなのだが、その一件以降は何もないのである。ニュースになってもおかしくない存在が、何も報道されない。それは本当に彼が何もしないからだ。

 そんな男を、四皇幹部クラスと評される実力者を、本気で怒らせてしまうとどうなるのか。想像するだけで海兵たちは息を呑んだ。

 

「戦桃丸さん! 奴の移動止まりました!」

 

「場所は?」

 

「1番グローブです!」

 

「よりによってそこか……。お前ら全員気を引き締めろ! 展開完了後、合図と同時に突入する!」

 

「「ハッ!」」

 

 

 

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